人によって管理職の役割の認識が異なれば混乱のもと

管理職の役割は「この2つだけ」



清水直樹
管理職の役割とは何でしょうか?経営者も、管理職自身も、その理解が出来ている人は少ないのではないでしょうか。そこで今日は、管理職が果たすべき役割をシンプルに2つに集約してご紹介します。

 

動画でも解説しています。

 

管理職の役割とは?

管理職の役割とは、基準通りに業務が行われるように「コントロール」することと、自部門の目標を達成するために「マネジメント」することです。

個人事業を超えて成熟企業へステップアップするには、管理職がこの役割を果たすようにようにすることが欠かせません。

管理職とは?

まず、管理職とはどのようなポジションを意味するのかというと、店舗ビジネスであれば店長クラスから、一般には部下を持つ課長あたりからになります。

会社の成長ステージに合わせて考えてみると、次図のようになります。創業者が個人事業としてスタートし、そこから徐々に創業者個人に経営が依存する状態から抜け出す際に、管理職が大きな役割を果たすわけです。逆に、管理職が機能しなければ、会社経営はいつまでも経営者に依存し、非常にリスクの高い経営状態になります。

成長期に向かうために管理職が必要
成長期に向かうために管理職が必要

 

管理職の役割が社内的に定義されていないことが問題

では管理職の役割とは一体何なのか?

経営者も、管理職自身も、その理解が出来ている人は少ないのではないでしょうか。

世の中一般的には、

  • 管理職は部下の話を聞き、彼らの力を活かさないといけない
  • 問題を解決することが大切だ
  • 経営陣と現場との橋渡しをしないといけない
  • 部下に仕事を委任して成長させないといけない

等々、たくさんの役割が解説されています。

このように、「管理職の役割について様々な意見があることが、そもそも管理職が機能しない理由」なのです。

人によって管理職の役割の認識が異なれば混乱のもと
人によって管理職の役割の認識が異なれば混乱のもと

 

経営者が考える管理職の役割と、管理職自身が考える管理職の役割、そして、その部下が考える管理職の役割が異なってしまえば、もう八方ふさがりです。勘と経験で仕事をするしかありません。

先ほど、管理職の役割とは、基準通りに業務が行われるように「コントロール」することと、自部門の目標を達成するために「マネジメント」することと書きましたが、これについてより詳しく見てみましょう。

 

管理職の役割①コントロール

管理職の役割、ひとつめが、コントロールです。

これは、基準通りに業務が行われるように仕組みを創り、維持することです。

管理職は仕組みを創る

一般に、管理職の仕事は、部下のやる気を引き出したり、部下に指示を出したり、と人にかかわることが多いと思われています。

しかし、管理職は業務が行われる「仕組み」に焦点を当てなければなりません。なぜなら、人は頻繁に入れ替わります。そのたびに、自分が責任を持つ部門のパフォーマンスが上下してしまっては管理職失格です。管理職は、人が入れ替わっても同じように成果を出せる仕組みを創らなければならないのです。

言い方を変えれば、管理職は「部下が可能な限り簡単に成果を出せるような仕組み」を創るのです。

たとえば、顧客満足度95%という基準があったら、その基準を保つための仕組みを創るのが管理職の役割です。この場合、基準はさらに上の管理職(経営者など)が設定します。

仕組みを創るために、管理職には人間理解が必要

管理職は仕組みに焦点を当てる、といっても、人をおろそかにしていいわけではありません。効果的な仕組みを作るためには、深い人間理解が必要だからです。

先ほどの「顧客満足度95%」を達成するための仕組みを創るには、

  • どう行動すれば顧客が満足するのか?
  • どのような仕組みを創れば、社員が喜んで仕組み通りに仕事をしてくれるのか?

を考えなくてはいけないからです。

管理職は仕組みを維持する

さらに、管理職は作った仕組みを維持することが重要な責務になります。つまり、作った仕組みに通りにみんなが仕事が行われているのかを確認することです。

仕事の成果が基準値を下回っているのに、部下から嫌われるのを恐れて指摘できなかったり、まぁ、これくらいならいいだろう、という感じで妥協しては管理職の機能が破綻します。

管理職自ら規律を守ること

仕組みを維持するには、チーム全体の規律が必要になります。大切なことは、管理職が規律を持たなければ、部下も規律を持たないということです。そこで管理職には自己規律が大切な能力になります。

たとえば、先ほどの基準、「顧客満足度95%」を達成するために「注文から1週間以内に納品する仕組み」を作ったとしましょう。この仕組みを維持するために、毎日9時にチーム内でミーティングをし、前日の注文状況と未納品の注文を確認しているとします。



ここで管理職が、今日は午後から出張で忙しいから、朝のミーティングは無しにしよう、という感じで規律を破ってしまったら、そこから部門全体のほころびが始まります。

これはブロークンウィンドウ(割れ窓)理論と言われる有名な考え方です。建物の窓が壊れているのを放置すると、それが「誰も当該地域に対し関心を払っていない」というサインとなり、犯罪を起こしやすい環境を作り出し、ゴミのポイ捨てなどの軽犯罪が起きるようになる、という理論です。

仕組みを維持するためには割れ窓理論をよく理解しておくことが大切です。作った仕組みが一回でも守られなければ、そのうち、一回が二回になり、二回が三回になり、いずれ仕組みが形骸化します。仕組みが形骸化すれば、基準が保たれなくなり、会社全体のパフォーマンスに悪影響を与えるのです。

 

管理職の役割②マネジメント

管理職の役割、ふたつめが、マネジメントです。

これは、目標達成のために現状の仕組みを変更することです。

 

管理職には攻めと守りが必要

先述した「コントロール」はどちらかというと守りの役割です。多くの大企業では、管理職がコントロールばかりしているので、官僚的になります。

また、コントロールしかしていない管理職の部内にいる社員は、決められたことをやっているだけなので、動機づけが行われず、成長もしません。

そこで、管理職の攻めの役割、マネジメントが登場します。マネジメント自体にも様々な定義がなされていますが、突き詰めれば、目標達成のために現状の仕組みを変更していくこと、と言えるでしょう。

管理職は全社目標を自部門の目標に分解する

まず、管理職は、全社目標を自分が責任を持つ部門に細分化して自分たちの目標を設定し、経営陣と合意します。当然ながら、会社の全社目標はトップリーダーが決めます。

(会社によっては、管理職自身が部門の目標を設定するのではなく、経営陣から強制的に目標設定されることもあるでしょう)

たとえば、全社目標が売上100億円だとした場合、営業部門の管理職が立てるべき目標は、それを分解した「顧客数300社」という感じになるかもしれません。人事部門の管理職であれば「採用人数30人、離職率30%削減」という感じになるかもしれません。

どの部門であっても管理職は全社目標に沿って、自部門の目標を設定しなくてはいけません。目標がなければ、毎日、何のために仕事をしているのかわからなくなるからです。

そして、自部門の目標が全社目標に沿ったものであるかどうかを経営陣と話し合い、合意したうえで正式な目標として設定します。

 

管理職は何とかして目標を達成する

管理職は合意した目標をなんとか達成する(これがマネージの語源)ために、方策を考えます。実はこれこそが、Manage(マネージ)の語源です。なんとかして、という通り、倫理的、法的に問題がなければ、あらゆる手段を使って目標を達成すること。これが管理職が果たすべき責任です。

 

目標達成のための仕組みを変更する

もし、既存の仕組みでは目標を達成できないのであれば、それを変更します。

これまでは顧客への納品を一週間以内に終わらせる仕組みで運営されていたとします。しかし、このままでは顧客満足度95%が達成できないとわかったら、納品を3日以内に終わらせる仕組みを創ると決めます。

そして部下と一緒に試行錯誤して仕事のやり方を変え、3日以内に納品するやり方を開発します。3日以内に納品する仕組みが見つかったら、その仕組みがいつでも守られるように「コントロール」します。

こうするとより高度な仕組みができることになりますので、その仕組みに沿って仕事をすることで部下は成長していきます。

仕組みの変更にはたとえば、以下のようなパターンが考えられます。

業務プロセスを変更する

業務プロセスを変更して、これまで納品まで一週間かかっていたものを3日以内に納品できるようにします。そのためには、まず現状の業務プロセスを可視化します。そして、要らないプロセスはないか?短縮できるプロセスはないか?と問いかけ、ムダなプロセスを排除して納品をスピードアップさせます。

社員育成の仕組みを変更する

もし、3日以内に納品するために社員のスキルが足りないのであれば、これまでの教育の仕組みが悪かった、ということになりますので、その仕組みも変更の対象になるでしょう。

使う道具を変更する

目標達成するために、使う道具を変更するのも手です。3日以内に納品するのが難しい理由が、古いパソコンを使っていて処理に時間がかかる、というのであれば、最新のパソコンに変更することです。

 

管理職を機能させるには仕組み経営へ

というわけで、まとめますと、管理職の役割は以下の二つになります。

コントロール・・・基準通りに業務が行われるように仕組みを創り、維持すること

マネジメント・・・目標達成のために現状の仕組みを変更すること



この二つは一見、矛盾するようですが、両輪で回すことが大切です。コントロールだけでは、基準を守るだけの創造性が無いチームになります。マネジメントだけでは業務に安定性が生まれません。守るべき部分は守り、変えるべき部分は変えるというバランスが大切なのです。

これをご参考に、自社内での管理職の役割を明確にし、皆の共通認識にしておくことが大切かと思います。

なお、仕組み経営では、経営者が立てるべき目標や基準作り、さらに管理職が作るべき仕組みづくりのご支援をしています。詳しくは以下の体験ウェブセミナーをご活用ください。

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