スリーサークルモデルとは、家族経営を「家族」「所有」「経営」という3つの円(サークル)の重なりで捉え、会社に関わる人を7つの立場に整理するための基本フレームワークです。この記事では、スリーサークルモデルの意味・7つの領域の読み解き方・実際の課題整理への活かし方までを、図とあわせて解説します。
※動画でも解説しています。
スリーサークルモデル(3円モデル)とは?
スリーサークルモデルとは、ファミリービジネス(家族経営)を「家族(Family)」「所有(Ownership)」「経営(Business)」という3つの円で表し、それぞれの重なり方から会社の関係者を7つの立場に分類するモデルです。1982年にハーバード・ビジネス・スクールのレナート・タギウリとジョン・デイビスによって提唱された、ファミリービジネス研究の土台となっている考え方です。
この3サークルモデルというのは、家族経営をやっていくうえでは、絶対に知っておいた方が良い基本的な理論なのですよね。
日本の中小企業で家族経営をされている方は、ほとんどご存じないかもしれません。しかしファミリービジネスを運営するうえで欠かせない理論がスリーサークルモデルです。ぜひ覚えておいてください。
日本の家族経営の中で、非常に成功している事例として良く言われているのが星野リゾートさんですけれども、今の星野社長ですね。星野社長も、最初に引き継いだ時、非常に苦労されたそうです。
ただ、彼は海外でファミリービジネスを学んできました。その時に出会ったのがスリーサークルモデルです。これが自分の悩んできた原因なのだと気づかれたそうです。そこから家族経営の特徴を生かす形で成功させてきた。そういう話もありますので、ぜひ参考にしてください。
なお、日本企業の約90%は家族経営(同族経営)と言われ、中小企業に限ればそのほとんどが家族経営です。家族経営そのものの特徴やメリット・デメリットについては別記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
スリーサークルモデルが家族経営を複雑にする理由
一般企業の悩みは「所有」と「経営」の2つ

一般的な会社における社長の悩みは、業績向上とか組織づくりという経営における悩みです。
もう一つは、株主構成をどうするかとか、事業承継をどうするかという所有の悩みです。
社長が考える悩みは、所有の問題と経営の問題。この二つです。これが一般的な会社の悩みを分けたときのパターンです。円が2つなら、重なる部分は1つだけで済みます。
家族経営には「家族」という3つ目の円が加わる

家族経営の場合にはここにもう一個のサークルが入るわけで、それが家族になります。
普通の会社は、経営と所有の事だけやっていればいいのですけれども、家族経営の場合はここに家族という問題が入ってきます。
この三つ目のサークルが入り込むことによって非常にその会社全体をマネジメントしていくことの難易度が上がるというわけです。
これを見てても分かる通り、経営と所有だけだったら二つ重なる部分が一つあるんですけれども、三つになると重なる部分が7つに増えます。
サークルが1個、家族という要素が付け加えられただけで複雑性が増えます。
家族経営をやっていく時には、この経営・所有・家族という、この三つの視点から会社を見ていかないと課題を整理できませんよというのがスリーサークルモデルです。
このモデルがあったうえで家族経営を複雑にしている原因というのが二つほどあるかと思いますので、それをご紹介していきたいと思います。
スリーサークルモデルが示す難しさ①立場の違いによる意見の対立
一つ目が、立場による意見やスタンスの違いがあります。
スリーサークルモデルを見ると、会社にかかわっているメンバーは、サークルのうちのどこかに当てはまることがわかります。
A、B、C、D、E、F、Gと七つに分けられるということです。

皆さんの会社の中にいる人は、これのどこかに当てはまるという事です。どこに当てはまるかによって、その人が持っている意見や、主張というのは変わってきます。
皆で言いたい事を言うわけですから、それで会社の中が混乱するという話があるわけです。だから、立場が違えば、言ってくる意見も違うかという事を理解しないといけないという事です。
これを理解しないと、なぜこの人はこんなことを言うのだろうみたいな事で悩んでしまうというわけなのですね。
立場を理解しておけばどうでしょうか。「この人はこういう立場だから、こう言っているのだな」と自分の頭の中で整理できます。
スリーサークルモデルの7つの立場(A〜G)
A:親族社員以外の株主
まずAの人達はどういう人達かというと、親族社員以外の株主です。この人達は株を持っていますが、家族でもなく、ビジネスにかかわっているわけでもありません。社員でもない。つまり第三者の株主ということになります。
B:資産を持たず、役員・従業員ではない親族
Bの人達というのは資産を持たず、役員・従業員ではない親族という事ですね。オーナー家族なのだけれども、会社の株は持っていない。そして、会社の社員でもない。言ってみればただの家族ということです。この人達は特に関係ないと思われるかもしれません。しかし、そうではありません。家族がいる方ならお分かりのとおり、その家族の意見やアイデアや価値観はオーナー経営者に影響を与えます。だから彼らも関係者としてBに入ってきます。
C:一般役員・従業員
次はCですね。Cは一般役員・従業員という事になります。この人達は家族経営の会社で働いているのだけれども、株主でもないしオーナーの家族の一員でもないという事なので、家族経営で働いている社員の人達という事になります。
D:株を持ち、従業員ではない親族
Dは何かというと所有権を持っていて且つ家族であるという事ですね。株を持ち従業員ではない親族という事です。
E:株を持たない親族の役員・従業員
Eは、株を持たない親族の役員、従業員という事になります。
F:親族以外の株を持つ役員・従業員
Fは親族以外の株を持つ役員・従業員という事です。この人達は株主であり且つ社員でもあるという事で、例えば、社員の持株会等をやっているところではこういう人達がいるということですね。
G:株を持つ親族の役員・従業員(オーナー社長など)
最後Gの人達というのは、オーナー社長。株を持つ親族の役員・従業員という事です。この人達は会社の株を持ち、家族の一員であり、かつその会社で働いています。社長自身がGに当てはまるケースが多いはずです。
奥様が会社の中で働いていて株も持っているなら、Gに当てはまります。息子さんが役員になっていて、かつ株も譲っているなら、その方もGです。
こんな感じで家族経営の場合には、七つのタイプの七つの立場に人が分散されるわけです。それぞれ皆さん自分の立場で物を言うわけだから、いろんな意見で会社がゴタゴタ揉めるという事になるわけです。
家族経営では、それぞれの立場の人がいます。その意見を尊重することが一つ大切です。なお、立場の違いが放置されたままだと、非家族社員の不満が積み上がっていきます。この点は「家族経営が頭おかしいと思われる理由と対処法」で詳しく扱っています。
スリーサークルモデルが示す難しさ②3つの視点それぞれの計画が欠如する
二つ目の大変な理由が、各視点からの発展・存続計画の欠如です。
家族経営をやっていく場合には、所有という観点と、ビジネス・経営という観点と、ファミリー・家族という観点、この三つありますね。
このそれぞれに対して、計画が必要だという事です。
普通の会社はビジネスの計画だけを立てています。家族経営では三つの計画が必要です。ここを理解しないと、また揉めることになります。

①経営(ビジネス)の計画
経営の観点からの計画とは、会社のビジネスモデルをどうやって時代に合うものにしていくか、人材をどうするか、財務をどうするか、経営チームをどう作るか。こうした計画のことです。
②所有(オーナーシップ)の計画
オーナーシップの計画としては、株主構成をどうするか、事業承継をどう進めるか、相続をどうするか。こうした話があります。これらの計画は経営の計画とは別に立てなければなりません。家族経営では、世代を経るほど株主が分散していきます。これは大きな問題です。とくに3代目に差しかかる時期が難所になります(同族経営はなぜ3代で潰れるのか)。そこに対処する計画も立てておく必要があります。
③家族(ファミリー)の計画
そして三つ目が家族の計画です。子育てをどうするか、跡継ぎをどう育てるか、家訓を作るならそれをどう進めるか。こうした話になっていきます。
家族経営の場合には、時間軸がどんどん変化していくことで、経営も変化していきます。10年経てば、子供も大人になり、子供をどうやってビジネスに参加させていこうかという話も出てくるわけです。
そんな感じでこの三つがそれぞれ影響し合って、家族経営というのは運営されていくという事ですね。そこの難しさがあるので、家族経営は大変だという事なのです。
なので、そのマネジメントがうまく出来ないと、家族経営というのはやっぱり良くないみたいな雰囲気になってしまうという事です。
スリーサークルモデルを自社の課題整理に活かす3つのステップ
スリーサークルモデルは、知識として知っているだけでは意味がありません。実際に自社の状況を整理してみることで、はじめて頭の中がすっきりします。ここでは、モデルを実務に落とし込むための3ステップをご紹介します。
ステップ①関係者を7つの立場(A〜G)に振り分ける
まず、社長本人・配偶者・後継者候補・親族株主・古参の役員・一般社員など、会社に関わる人を一人ずつA〜Gのどこに当てはまるかを書き出してみましょう。「この人は株は持っているが経営には関わっていないからDだ」というように分類していくと、それぞれの立場の違いが視覚的に見えてきます。
ステップ②意見の対立を「立場の違い」として捉え直す
分類ができたら、いま社内で起きている対立を思い出してみてください。多くの場合、その対立は「人柄の問題」ではなく「立場の違いから来る当然の意見のズレ」であることに気づきます。たとえば、株を持つだけの親族(D)は配当を求め、現場で働く社員(C)は待遇改善を求めます。これは対立ではありません。立場が違えば見えている景色が違うというだけのことです。この捉え直しができると、感情的なもつれがかなりほどけます。
ステップ③経営・所有・家族それぞれに計画があるかを点検する
最後に、自社に「経営の計画」「所有(承継・相続)の計画」「家族の計画」の3つが揃っているかを点検します。多くの家族経営では、経営計画はあっても所有や家族の計画が空白になっています。この空白こそが、将来の揉め事の火種です。承継の計画が空白のまま時間が過ぎると何が起きるかは「事業承継が失敗する3つの構造」にまとめてあります。3つのうちどれが欠けているかを把握するだけでも、次に手を打つべきテーマが明確になります。
という事で、是非このスリーサークルモデルで皆さんのビジネスをとらえてみると、抱えている課題がすっきりするんじゃないかと思います。
スリーサークルモデルに関するよくある質問(FAQ)
Q. スリーサークルモデルとは何ですか?
スリーサークルモデル(3円モデル)とは、家族経営を「家族」「所有」「経営」という3つの円の重なりで捉え、会社に関わる人を7つの立場に分類するフレームワークです。1982年にハーバード・ビジネス・スクールのレナート・タギウリとジョン・デイビスが提唱した、ファミリービジネス研究の基礎理論です。
Q. なぜ円が3つになると重なりが7つに増えるのですか?
円が2つの場合、重なる領域は1つだけですが、円が3つになると「それぞれ単独の領域が3つ」「2つが重なる領域が3つ」「3つすべてが重なる領域が1つ」の合計7つの領域が生まれます。この7つが、そのまま会社に関わる人の7つの立場(A〜G)に対応します。
Q. 一般企業とファミリービジネスは何が違うのですか?
一般企業の悩みは「経営」と「所有」の2つの視点で整理できますが、ファミリービジネス(家族経営)にはここに「家族」という3つ目の視点が加わります。この家族という円が入ることで関係者の立場が複雑になり、経営の難易度が一段上がります。
Q. スリーサークルモデルは中小企業でも役立ちますか?
はい。日本の中小企業のほとんどは家族経営であり、社長本人がスリーサークルモデルのG(株を持つ親族の役員)に該当するケースが大半です。関係者を7つの立場に整理するだけで、社内の意見対立や承継の課題が構造的に見えるようになるため、規模を問わず有効です。
家族経営がうまく行く仕組みづくりなら仕組み経営
以上、スリーサークルモデルの意味と、それが家族経営を複雑にする理由、そして自社への活かし方をご紹介してきました。7つの立場に分けても、3つの計画を立てても、それを社長の頭の中だけに置いておくと次の世代には渡りません。渡せる形にすることが仕組み化です。仕組み経営では、スリーサークルモデルなどを参考にしながら、家族経営がうまく行く仕組みづくりをご支援しています。詳しくは以下から仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。


