コアメンバーとは、組織の中心にいて、方向を決める判断に関わる少数の人のことです。会社でいえば、社長と一緒に経営を動かしている人たちを指します。この人たちが集まって経営を動かす仕組みが「経営チーム」です。この記事では、コアメンバーという言葉の意味から経営チームの作り方まで、避けるべき罠も含めて解説します。
この記事を読めば、以下のことが分かります。
- なぜ今、経営チームが企業の生死を分けるほど重要なのか
- 社長に依存せず、自律的に成長する組織を作るためのチームの役割
- 絶対に失敗しない経営チームのメンバー選定基準
- チームを機能不全に陥らせる「多様性」という危険な言葉の真実
- あなたの会社を次のステージへ導く、最強の経営チームを構築するための具体的なステップ
- コアメンバーという言葉の意味と、経営陣・幹部・ナンバー2との違い
- 経営チームを使って事業承継を進める5つの段階
※なお、経営チームの運営は、こちらの記事で解説している「経営者不在でも成長するための仕組み化」の全体像の一部です。
1. コアメンバーとは?意味と経営チームとの関係
まず「コアメンバー」という言葉を整理しておきます。この言葉は使う人によって範囲が違うので、社内で話がかみ合わない原因になりやすいためです。
1.1. コアメンバーの意味
コアメンバーとは、組織やプロジェクトの中心にいて、方向を決める判断に関わっている少数の人のことです。「コア」は核という意味の外来語で、そこから「中核メンバー」とも言い換えられます。
大事なのは、コアメンバーかどうかは肩書きでは決まらないという点です。肩書きが部長でも、方向を決める判断に関わっていなければコアメンバーではありません。逆に肩書きが無くても、その人がいないと物事が決まらないなら、その人は実質的なコアメンバーです。
判断に迷ったら、この一問で足ります。「その人が2週間まとまった休みを取ったとき、決められないことが出てくるか」。出てくるなら、その人はコアメンバーです。
1.2. コアメンバーと経営チームは何が違うのか
この2つは、指しているものが違います。
- コアメンバー……「誰か」を指す言葉。人の集合
- 経営チーム……「その人たちがどう動くか」を指す言葉。運営の仕組み
コアメンバーは新規事業や新店舗など、プロジェクト単位でも使います。一方の経営チームは、会社全体の経営に限って使う言葉です。
ここに、多くの会社がつまずく落とし穴があります。コアメンバーを決めることと、経営チームを作ることは別の作業です。名簿を作った時点で満足してしまうと、会社は何も変わりません。誰を入れるかを決めたあと、その人たちが何をどう決めるのかを決めて、はじめて仕組みになります。
1.3. コアメンバーの言い換え・類語
似た言葉がいくつもあります。指す範囲が微妙に違うので、並べて整理しておきます。
- 中核メンバー……ほぼ同じ意味。社内文書ではこちらのほうが伝わりやすい
- 主要メンバー……「関わりが深い人」くらいの意味。中心という含みは薄い
- 経営陣……役職で決まる集合。取締役や執行役員など
- 経営チーム……実際に集まって経営を動かしている集まり
- 幹部……部門を預かる立場の人。経営チームより広い
- ナンバー2……社長に次ぐ一人。複数人を指さない
ほかに「社長の右腕」「番頭」という言い方もあります。どちらも社長個人を支える一人を指す言葉で、チームを指す言葉ではありません。それぞれ社長の右腕が組織を壊す3つの理由と番頭の5つのタイプと役割で詳しく扱っています。
社内で使うなら「中核メンバー」か「経営チーム」を勧めます。「コアメンバー」は外来語なので、聞いた人によって思い浮かべる範囲が変わります。言葉を統一することより、その言葉に対応する責任範囲が書かれているかどうかが大事です。
1.4. コアメンバーの使い方と例文
実際の使われ方を5つ挙げます。
- 新規事業のコアメンバーを4名選んだ
- 来期からコアメンバーで月に一度の経営会議を行う
- コアメンバーの役割分担を文書にまとめた
- 創業時のコアメンバーが3人とも今も残っている
- この判断はコアメンバーで決める案件だ
うまい使い方には、必ず「何を決める人たちなのか」が入っています。「コアメンバーを集めて頑張ろう」だけでは、集められた側は何をすればいいのか分かりません。
2. 経営チームとは何か?その定義と重要性
まず、「経営チーム」とは何か、その定義から明確にしましょう。多くの人が誤解していますが、これは単に取締役や役員が集まった会議体のことではありません。
2.1. 経営チームの定義
経営チームとは、会社のビジョンと目標を共有した人たちが、それぞれの専門性と視点を持ち寄って会社全体の成長にコミットする集まりのことです。
重要なのは、彼らが自分の部門の代表者ではないという点です。会社全体の未来を創る当事者として集まります。社長個人が背負っていた重責を分担し、共に会社を経営していくパートナー。それが経営チームです。
2.2. 経営チーム・経営陣・運営陣の違い
この3つは似ていますが、指しているものが違います。
- 経営陣……役職で決まる集合。取締役や執行役員など、会社が対外的に示す肩書きの集まり
- 経営チーム……実際に集まって会社の方向を決めている集まり。肩書きの集合と一致しないことがある
- 運営陣……日々の運営を回している人たち。団体やイベントの運営でも使う言葉で、会社の経営とは限らない
「どこまでが経営陣か」に法律上の線引きはありません。会社法が定めているのは「取締役」「代表取締役」「監査役」といった機関であって、「経営陣」という言葉そのものは法律用語ではないためです。だから会社ごとに範囲が違います。
自社の実態を測るなら、この一問が使えます。「その人が反対したら、その案は止まるか」。止まるなら経営陣です。肩書きは役員でも、反対しても何ひとつ止まらないなら、その会社の経営陣は実際にはもっと狭い範囲にとどまっています。
2.3. なぜ今、経営チームが重要なのか
多くの会社は、社長の個人的な能力や頑張りで成長する「個人商店」からスタートします。しかし、そのやり方には必ず限界が来ます。会社を「個人商店」から、社長がいなくても成長し続ける真の「企業」へと変貌させる。そのために不可欠な仕組みこそが、経営チームなのです。

社員数が増えれば、一人の経営者の知識や経験だけで全ての舵取りをすることは不可能です。「社長一人の限界」を突破し、会社を次のステージへ進めるために、経営チームは計り知れないメリットをもたらします。
「個人商店」の限界を突破する
社長一人の視点や能力には限界があります。マーケティング、技術、財務、人事…異なる専門性を持つメンバーが集まれば、社長個人の得意・不得意という枠を超えられます。意思決定の質が上がります。これは社長依存の経営から脱却して、組織として戦うための第一歩です。
「企業」としての永続性と事業承継を可能にする
「社長が倒れたら、この会社は終わりだ」――多くの中小企業がこの恐怖を抱えています。これは事業承継がうまくいかない最大の理由です。経営チームは、この問題を解決する鍵となります。チームとして経営を行うことで、リーダーシップが分散され、日々の業務の中で自然と次世代のリーダー候補が育ちます。
社長は経営チームのメンバーを日々見ています。そのなかから、会社の価値観を最も体現している人物を後継者として見出すことができます。外部から突然後継者を連れてくるという、リスクの高い賭けをせずに済みます。着実な事業承継が現実的な選択肢になり、会社は個人の寿命を超えた「企業」としての永続性を手に入れます。具体的な進め方は「5. 経営チームを使った事業承継の進め方」で扱います。
3. 経営チームの作り方5ステップ
では、どうすれば自社にとって「最強」と言える経営チームを構築できるのでしょうか。順番は次の5つです。
- ステップ1 メンバーを選ぶ(誰を入れるか)
- ステップ2 構成とバランスを取る(何人で、どの部門から)
- ステップ3 話し合う範囲を決める(何を扱う場か)
- ステップ4 運営方法を決める(いつ、どこで、誰が、どうやるか)
- ステップ5 決めたことを文書に残す
多くの会社はステップ1と2で止まります。メンバーを決めた時点で経営チームができたつもりになり、3以降を決めないまま集まり始めるのです。すると議題が毎回その場で決まり、話は現場の相談に流れ、半年もすると誰も来なくなります。
「メンバーを選んだのに機能しない」の原因は、ほぼ全部ステップ3から5の空欄にあります。人選の問題ではありません。
3.1. ステップ1 メンバー選定の絶対条件
とはいえ、誰を入れるかが土台になるのは確かです。ここでは、私が自らの失敗経験と多くの企業を支援するなかで見出した、絶対に外せない選定基準をお話しします。
人格は主人公、才能は召使
これは中国の古典『菜根譚』にある言葉です。著者は明の時代の洪自誠(こうじせい)で、前集に「徳者才之主、才者徳之奴」という一節があります。読み下せば「徳は才の主、才は徳の奴なり」。意味は「才能は人格に使われるものであり、人格次第で才能は良くも悪くもなる。だから才能よりも人格が何倍も重要だ」ということです。
経営チームを作る際、これを絶対に忘れないでください。
- 営業成績がトップだから
- 卓越した技術スキルを持っているから
といった「才能」だけでメンバーを選ぶと、組織は必ず後で歪みます。組織のトップに立つ人間は、最も人格に優れた人物でなければなりません。高い人格を持つリーダーの下でこそ、メンバーの才能は会社のために最大限に発揮されるのです。
全体思考ができる人を入れる
経営チームのメンバーは、会社全体の利益を最優先で考えられる「全体思考」の持ち主でなければなりません。
「営業部の利益を優先したい」「技術部門の都合を押し通したい」といった、自分の部署の利益だけを考える「部分最適」の発想を持つ人は、経営チームに入れてはいけません。
私が経営チームで失敗した事例
実は、私が20代で会社を倒産させた最大の原因がこれでした。
当時、私はモバイル系のベンチャー企業を立ち上げ、4人の経営陣で運営していました。しかし、社長である私以外のメンバーは、それぞれ自分の経営する会社を掛け持ちしている状態でした。
創業当初は、皆で大きなビジョンを語り合い、士気も高かったのです。しかし事業が思ったように伸びず、業績が厳しくなってきました。すると徐々にメンバーの足並みが乱れ始めたのです。
彼らは、私が立ち上げた会社の会議よりも、自分の会社の仕事を優先するようになったのです。ひどいケースでは、会社の資金を自分の会社に有利な形で流すような案件を画策する者まで現れました。
定期的な打ち合わせの機会も失われ、信頼関係は完全に崩壊。次第にメンバーは会社に顔を出さなくなり、あれほど熱く語り合った会社は、あっけなく消滅してしまいました。
失敗の根本原因は明確です。私たちのチームはビジョンや価値観で繋がっていませんでした。「稼ぎたい」という目先の利益、つまり「利」だけで繋がっていたのです。苦しい時に会社全体のために踏ん張れる「全体思考」が、誰にもなかった。それが、私の最初の会社の悲しい結末でした。
諫言(かんげん)できる人を入れる
諫言者(かんげんしゃ)とは、目上の相手に対しても臆することなく、率直に意見や反対意見を言える人のことです。「諫言」は目上の人の過ちをいさめる言葉という意味で、古くから君主と臣下の関係を語るときに使われてきました。
社長のあなたに「それは違うと思います」「この計画にはこういうリスクがあります」とハッキリ言ってくれる人を、必ずチームに入れてください。
もし、経営チームを作っても、メンバーが社長のイエスマンばかりでは何の意味もありません。それは結局、社長が一人で決めているのと同じです。それでは視点の漏れはなくならず、裸の王様になってしまいます。
社内にそういう人物がいなければ、外部から迎えるのも有効な手段です。例えば、客観的な視点で財務状況を指摘してくれる税理士やCFO、あるいは社長自身のメンターやコーチといった存在です。彼らは社長が道を踏み外しそうになったとき、あなたを止めてくれる命綱になります。
なお、社内から諫言者が出てこないとき、原因は社員の性格ではありません。反対意見を言った人が、そのあとで損をしていないかを先に確認してください。一度でも「言ったら冷遇された」場面を見た社員は、二度と言わなくなります。人を替えても、この構造が残っていれば同じことが起きます。
計画・数字への落とし込みができる人を入れる
経営チームのメンバーは、ビジョンや目標を、具体的な計画や数字に落とし込める能力が必須です。
社長が「今期は売上20%アップを目指すぞ!」と高らかに宣言したとします。それに対して、「素晴らしいですね!頑張りましょう!」と精神論で返すだけでは不十分です。
「では、その目標を達成するために、A事業でいくら、B事業でいくら必要です。そのためには、四半期ごとにこのKPIを達成する必要があり、具体的なアクションプランはこうです」
このように、目標をブレークダウンし、実行可能な計画と管理可能な数字にまで落とし込める人。これができない人は、経営者ではなく単なる作業者です。経営チームには、作業者ではなく、経営を執行できる人間が必要です。
3.2. ステップ2 チームの構成とバランス
次にチーム構成をどうするかを見ていきましょう。
危険ワード「多様性」の罠
「多様性(ダイバーシティ)が重要だ」という言葉をよく耳にします。しかし、こと中小企業の経営チームにおいては、この言葉は非常に危険な罠をはらんでいます。
結論から言うと、経営チームに「価値観の多様性」は不要です。むしろ、害悪です。
もちろん、社会全体で見れば多様な価値観が存在することは素晴らしいことです。しかし会社は一つの目標に向かって進む共同体です。特に数百名規模までの組織で価値観がバラバラの人間が集まると、必ず内部から崩壊します。
世界の歴史を見ても、戦争の多くは「価値観の違い」、特に宗教戦争のような根深い対立から生まれています。会社の中を戦争状態にしてはいけません。
価値観が合わない人とは、そもそも一緒に働くべきではないのです。
ただし、勘違いしないでください。私たちが否定しているのは「価値観の多様性」だけです。
能力、専門性、経験、背景、年齢、性別の多様性は、むしろ大歓迎です。
- マーケティングのプロ
- 技術開発の鬼
- オペレーション改善の達人
- 新卒入社の若手
- 子育て中の女性
こういった異なる能力や背景を持つ人々が集まるからこそ、革新的なアイデアが生まれます。
重要なのは、根底にある「会社のコアバリュー(核となる価値観)」を全員が共有していること。この土台の上でこそ、多様な能力がシナジーを生むのです。
人数は社長を入れて3〜5人が目安
経営チームは、社長と、鍵となる管理職数人、場合によって外部のアドバイザー1〜2人で成り立ちます。理想的なのは社長に加えて2〜4人、多くても6〜7人です。
構成の一般例は次のとおりです。
- 社長
- CFO(最高財務責任者)などお金を見る人
- マーケティング・営業部門の責任者
- 製造部門の責任者(製造が事業の中心となる業種の場合)
- 外部メンバー(税理士、弁護士、経営コンサルタントなど)
これはあくまで一般論です。自社の経営チームを機能させるために誰を入れるかは、部門構成に合わせて考えてください。会社の組織図を先に描いておくと、どの機能から出すべきかが見えます。
人数が増えるほど、決まらなくなります。8人を超えたあたりから、経営チームは議論の場ではなく報告会になります。全員が一言ずつ話すだけで時間が終わるためです。迷ったら、増やすより減らすほうが機能します。
部門と特性のバランスを取る
チームを構成する際は、部門とメンバーの特性のバランスを意識しましょう。
- 部門のバランス 会社の規模にもよりますが、基本は以下の3つの機能から選出するのが良いでしょう。
- 販売部門(マーケティング、営業)
- 技術・商品部門(開発、製造、専門サービス)
- 管理部門(バックオフィス、オペレーション、経理) これに社長を加えた4人体制が、最初の経営チームとしては理想的です。
- 特性のバランス
- 攻めと守り: 常に新しいことに挑戦する「攻め」のタイプと、リスク管理や足場固めが得意な「守り」のタイプ。両方のバランスが重要です。目安としては、未来志向の議論をしたいので「攻め6:守り4」くらいの比率がおすすめです。
- 年齢のバランス: 経験豊富な年長者だけでなく、新しい視点を持つ若手を積極的に登用しましょう。ベテランばかりのチームでは、組織は確実に老化します。経営チームの平均年齢が30代に収まるのが理想です。会社の若さは、経営陣の若さに直結します。
3.3. ステップ3 話し合う範囲を決める
メンバーが決まったら、次は「この場で何を話すのか」を先に決めます。ここを決めていない経営チームは、必ず現場の相談で埋まります。
経営チームが扱う対象として、次の10項目を目安にしてください。
- 会社の理念
- 戦略
- 高度な意思決定
- 全社的・長期的な計画
- 主な財務的決断
- 重要指標の計測
- 会社のポリシーやルール
- 価格戦略
- 大きなプロジェクト
- 影響力が大きい人材の採用や解雇
逆に言えば、ここに載っていない話は経営チームで扱いません。「今月の売上が足りない」「あの案件の納期をどうするか」は、各部門の会議で扱う議題です。
線を引くときの目安は一つです。「今週中に決めないと止まる話は現場の会議。3か月先に効いてくる話が経営チーム」。緊急の話は必ず重要な話を押しのけるので、先に線を引いておかないと経営チームの時間は消えます。
自社にどんな会議が必要かを一覧で設計する方法は、会議体とは?意味・一覧サンプルと設計方法で扱っています。
3.4. ステップ4 運営方法を決める
続いて、運営の仕方を4つ決めます。
- いつやるのか……頻度と時間帯。月に一度なのか、隔週なのか
- どこでやるのか……対面かオンラインか
- 誰がやるのか……司会役と議事録役
- どのようにやるのか……進め方のルール
4つのうち、いちばん飛ばされるのが「誰がやるのか」です。司会と議事録を決めないまま始めると、社長が話して社長がまとめる場になります。それは経営チームではなく、社長の独演会です。
司会は社長以外が務めるのが原則です。社長が司会をすると、議題の順番も打ち切りのタイミングも社長が握ることになり、結局は一人で決めているのと変わりません。会議そのものの進め方は、定例会議のあり方に具体例があります。
3.5. ステップ5 決めたことを文書に残す
最後に、ここまで決めたことを1枚の文書にします。入れるのは次の5つです。
- メンバーと、それぞれが何に責任を持つか
- この場で話し合う範囲(ステップ3で決めたもの)
- 開催の頻度・時間・場所
- 司会役と議事録役
- 決め方(全員一致か、多数決か、最終決定は社長か)
5つ目がいちばん重要です。決め方を決めていないと、意見が割れた瞬間に「じゃあ社長が決めてください」に戻ります。それでは経営チームを作った意味がありません。全員一致を目指すのか、議論のうえで社長が決めるのか。どちらでも構いませんが、書いてあることが大事です。
どこまでを誰に渡すかの線の引き方は、仕事の任せ方と権限委譲のコツで詳しく扱っています。
この文書があると、メンバーが入れ替わっても経営チームは続きます。無ければ、人が変わるたびにゼロから作り直しになります。経営チームを仕組みと呼べるかどうかは、この1枚があるかどうかで決まります。
4. 経営チームが直面する課題と解決策
最強のメンバーを集めても、チームが常に順風満帆とは限りません。ここでは、経営チームが直面しがちな課題とその解決策を解説します。
4.1. よくある課題
- 創業者(社長)との衝突: 権限移譲が進まず、結局社長がすべて決めてしまう。
- メンバー間の対立: コミュニケーション不足や価値観のズレから対立が生まれ、機能不全に陥る。
- 意思決定の遅延: 議論ばかりで何も決まらない。責任の所在が曖昧になる。
- 機能不全: チームが名ばかりの存在となり、当事者意識が欠如する。
4.2. 課題解決のためのアプローチ
- 役割と責任の明確化: 誰が何に対して責任を持ち、どこまでの権限を持つのかを明文化します。これにより、「船頭多くして船山に登る」状態を防ぎます。
- 効果的な会議運営: 定期的に経営会議を行い、アジェンダを事前共有し、ファシリテーターを立てて議論を進めます。議事録を取り、決定事項と担当者を明確にすることも重要です。
- 第三者の活用: チーム内の対立が解消できない場合や、議論が停滞している場合は、外部のコーチやコンサルタントにファシリテーションを依頼するのも非常に有効です。
- 定期的なチーム診断: 半年や一年に一度、チームの機能度や貢献度を客観的に評価し、改善計画を立てる機会を設けましょう。
5. 経営チームを使った事業承継の進め方
人に依存した会社では、承継後にうまくいくかどうかは「後継者の資質次第」とされます。一方、仕組みに依存した会社では、経営の仕組みの完成度と、承継の仕組みが鍵を握ります。
その承継の仕組みで重要な位置を占めるのが経営チームです。経営チームが機能し出すと、承継は次の5段階で進められます。
- 第1段階 社長が経営チームを作り、社長が主軸となって運営する
- 第2段階 準備段階に入り、経営チームの中から新社長候補を選び出す
- 第3段階 その人を主軸に経営チームを運営する。社長は一員として参加する。肩書きをCOOにするなど、対外的にも次期社長だと分かるようにする
- 第4段階 新社長を正式に任命する。前社長は経営チームに残るが、メンター役に徹する
- 第5段階 前社長が経営チームから抜けて、承継が完了する
この順番の要点は、社長が一気に降りないことです。段階を踏むことで、新社長候補の力を実際の運営のなかで確かめられます。社長との信頼関係も保ったまま渡せます。
後継者を外から連れてくるかどうかで悩む前に、自社に経営チームがあるかを見てください。経営チームが機能している会社では、候補はすでにその中にいます。候補が見当たらないとき、問題は人材の不足ではなく、経営の判断に関わる場が社長の頭の中にしか無いことのほうです。
選び方の基準は後継者の選び方に、承継が泥沼化する構造は事業承継が失敗する3つの構造にまとめてあります。
6. 成功事例に学ぶ!強い経営チームの共通点
経営の神様ピーター・ドラッカーは、成果をあげる経営チームの条件として「共通の目標と価値観」「相互理解と信頼」「補完的な能力」「責任と権限の明確化」を挙げています。
これはまさに、私たちがこれまでお話ししてきたことそのものです。
JAL再建の経営チーム
有名な事例として、日本航空(JAL)の再生が挙げられます。稲盛和夫氏のもと、幹部たちが「JALフィロソフィ」という共通の価値観を徹底的に学び、共有しました。その結果、部門の壁を越えた一体感が生まれ、V字回復を成し遂げます。大企業においても価値観の共有がいかに重要かを示す好例です。
7. コアメンバー・経営チームに関するよくある質問
コアメンバーは何人くらいが適切ですか?
経営チームとして動かすなら、社長を含めて3〜5人が目安です。多くても社長に加えて6〜7人までにしてください。人数が増えるほど、一人あたりの発言時間が減り、決まらなくなります。プロジェクト単位のコアメンバーであれば、3〜4人でも十分に回ります。
社員が何人になったら経営チームが必要ですか?
明確な人数の線はありません。目安は「社長が全社員の仕事ぶりを直接見られなくなったとき」で、おおむね20〜30名前後です。ただし人数よりも、社長が判断待ちの案件を抱え始めたかどうかのほうが確かなサインです。決裁を待つ列ができているなら、人数に関係なく必要になっています。
コアメンバーと経営陣は同じ意味ですか?
違います。経営陣は役職で決まる集合で、取締役や執行役員などを指します。コアメンバーは実際に判断に関わっている人を指します。肩書きが役員でも判断に関わっていない人はいますし、その逆もあります。両者がずれている会社では、会議で決めたことが後からひっくり返る現象が起きます。
経営チームのメンバーは役職で決めるべきですか?
役職だけで決めないでください。役職で決めると、その部門を代表して発言する人が集まります。経営チームに必要なのは、自分の部門ではなく会社全体で考えられる人です。役職を土台にしつつ、本文で挙げた4つの条件(人格・全体思考・諫言・計画への落とし込み)で選んでください。
経営チームと経営会議は同じものですか?
経営チームは人の集まり、経営会議はその人たちが集まる場です。経営チームがあっても会議の設計がなければ機能しませんし、会議だけあってもメンバーが選ばれていなければ報告会になります。両方が要ります。会議そのものの回し方は経営会議とは?取締役会との違いとアジェンダ例・資料の作り方で解説しています。
家族や親族をコアメンバーに入れてもよいですか?
入れて構いません。ただし選定の基準は他のメンバーと同じにしてください。問題になるのは、親族だから入っているのか、条件を満たしているから入っているのかを、他のメンバーが判断できない状態です。基準を先に文書にしておけば、この疑問そのものが起きなくなります。
コアメンバーを決めたのに機能しません。原因は何ですか?
多くの場合、ステップ3から5が空欄です。何を話し合う場なのか、いつ誰がどう進めるのか、意見が割れたときにどう決めるのか。この3つのどれかが決まっていないと、集まりは続きません。人選を見直す前に、この3点が文書になっているかを確認してください。
まとめ:最強のチームで、会社の未来を創る
経営チームは、単に優秀な人材を集めただけでは機能しません。共通の価値観という土台の上に、多様な能力を持つ人格者が集まります。そして会社全体の未来にコミットする。それが経営チームです。
コアメンバーを選ぶのは入口にすぎません。何を決める場かを決め、運営の仕方を決め、それを1枚の文書に残す。ここまでやって、はじめて社長がいなくても回る形になります。
社長一人の力には限界があります。しかし、正しく構築され、機能する経営チームが持つ力は無限大です。それは、社長が不在でも自律的に成長し続ける、「仕組み」そのものなのです。
あなたの会社にとっての「最強の経営チーム」とは、どんな顔ぶれでしょうか? この記事が、そのチームを創るための一助となれば幸いです。
社長の属人経営から脱却し、会社を仕組みで成長させませんか?
本日お話しした経営チームの構築と運営は、「社長がいなくても成長する会社」を作るための仕組み化の重要な一部です。
「もっと詳しく仕組み化の全体像を知りたい」「経営チーム作りで失敗したくない」。そうお考えでしたら、会社の仕組み化の全体像と、今日から実践できる具体的なステップを網羅した「仕組み化ガイドブック」を無料で差し上げています。
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