第二創業期とは:事業承継や新規事業との違い
第二創業とは、今ある事業の良さを活かしながら、新しい方向性で会社を作り直す取り組みです。ただ後継者に会社を引き継いだり、新しい事業を始めたりするだけではありません。会社の大切な伝統や強みは残しつつ、時代に合わせて大きく変えていき、会社に新しい命を吹き込むことです。
似たような概念として、以下のようなものがあります。
① 事業承継
社長が代わることで会社を引き継ぐことが目的です。基本的には、これまでの事業をそのまま続けていきます。
② 新規事業
今の事業とは別に、新しい分野に挑戦することです。会社の仕組みや経営方針は変わらず、新しい収益源を増やすために行われます。
③ 事業再生
業績が悪化した会社を立て直すことが目的です。コスト削減や経営の改善を通じて、元の事業を再び軌道に乗せます。
一方で、第二創業は、これらの要素を組み合わせ、会社そのものを抜本的に進化させることを指します。例えば、「社長が代わるだけでなく、ビジョンや経営方針も一新する」「新しい事業を始めると同時に、既存の事業の仕組みを作り直す」など、会社がまるごと生まれ変わるような変化を伴います。
第二創業のパターン
第二創業は、世の中の変化に合わせて会社が生き残り、成長するための大切な取り組みです。成功パターンには主に3つあります。
1. 新しい分野に挑戦する
今持っている強みを使って、新しい市場に進むやり方です。
例えば:
- 老舗の和菓子屋さんが、ネット販売やカフェを始める
- 印刷会社がデザインの知識を活かして、ウェブ広告の仕事も始める
- 機械部品を作っていた会社が、その技術で医療器具も作り始める
ポイントは、自社の「強み」を活かせる新しい場所を見つけることです。何でも手を出すのではなく、得意なことを基に広げていくのがコツです。
2. 商売のやり方を変える
今までの儲け方を根本から見直すやり方です。
例えば:
- 機械を売るだけの会社が、機械のレンタル+使い方サポートのセットで月額料金をもらう形に変える
- 飲食店が店で食事を出すだけでなく、自宅で作れる食材キットを売り始める
- ソフト会社が一回売り切りから、使い続ける限り料金を払うシステムに変える
ここで大事なのは「何を売るか」より「どうやってお客さんの困りごとを解決するか」を考えることです。
3. 会社の仕組みを作り直す
働き方や技術を新しくして、会社の体質を変えるやり方です。
例えば:
- 工場にセンサーやAIを入れて、生産の効率を大幅に上げる
- 上下関係の厳しい組織から、小さなチーム制に変えて、現場の判断で素早く動けるようにする
- データをもとに決断する文化を作り、お客さんの変化にすぐ対応できるようにする
これは単に効率を良くするだけでなく、会社全体が変化に強くなるための土台づくりです。
第二創業が必要となるとき
あなたの会社はこんな状況ではありませんか?
「今までやってきたやり方が、急に効かなくなった」
「売上が伸び悩み、なぜか会社が前に進まない」
「何も変えていないのに、なぜか全てが変わってしまった」
もしそうなら、第二創業を検討する時期かもしれません。
会社成長の4つの段階
まず知っておきたいのは、どんな事業にも成長のサイクルがあることです。それが以下の4つの段階です。
1. 幼年期(立ち上げ期)
この時期は「とにかく、どう売るか?」という時期です。
- 初めての商品を出す
- 必死に初めての売上を作る
- 試行錯誤の連続
多くの会社はこの段階で終わってしまいます。良いアイデアがあっても、実行力不足や市場の読み違えで先に進めません。
2. 青年期(成長期)
この段階では勢いがつき始めます。
- 小さいながらも利益が出ている
- 売上がある程度予測できる
- 仕組みはまだ完璧ではないが動いている
- 少人数チームながら士気は高い
この時期は忙しいけれど楽しい時期です。「そろそろ本格的に拡大しよう」と考え始める時期でもあります。
3. 成熟期(停滞期)
多くの経営者が苦しむのがこの時期です。成長が止まり、壁にぶつかります。
- 経費は増えている
- 売上は横ばいか下降気味
- 銀行残高が減っていく
- 締め切りが守れなくなり、社員の士気も下がる
この時期は「立ち往生」「燃え尽き」を感じやすく、辞めたくなる時期です。
ここで経営者は重大な選択を迫られます。
- 「現状維持⇒縮小」
- 「変革」
の2つです。
「現状維持」を選ぶと、同じことを繰り返すだけで、最終的には「縮小」に向かいます。
「変革」は新たに成長軌道に乗るためのビジョンや事業モデルを探索することを意味します。
つまり、これが第二創業です。
第二創業が必要なサイン
あなたの会社が第二創業を考えるべき時期かどうか、以下のサインに当てはまるか確認してみましょう:
- 今までのやり方が効果を発揮しなくなった
- 売上が伸び悩んでいる
- 社員のやる気が下がっている
- 市場の変化についていけていない
- 将来の成長が見えづらい
これらに当てはまるなら、会社は成熟期に到達しており、第二創業を真剣に考えるべき時です。
例①星野リゾート:事業承継を機に第二創業
星野リゾートは、古い温泉旅館から全国的なリゾート運営会社へと生まれ変わった、第二創業の成功事例といえます。
1914年、長野県軽井沢で「星野温泉旅館」として創業した星野リゾートは、初代・星野嘉助氏のもとでスタートしました。当時、軽井沢は外国人別荘地として注目されており、内村鑑三や北原白秋などの著名人が訪れる文化リゾートとしての地位を築いていました。
しかし、バブル経済崩壊後、経営は低迷。1991年、4代目の星野佳路氏が社長に就任し、家業から企業への転換を図る「第二創業」を推進しました。
きっかけと決断
星野佳路さんは家業の温泉旅館を31歳で継ぎました。彼はアメリカの大学で学んだ時に、「運営特化型」という新しいホテルビジネスの形を知りました。そして1992年に「リゾート運営の達人になる」という新しいビジョンを掲げました。自社の旅館だけでなく、他の会社が持っている施設の運営を請け負う形に転換したのです。
新しい分野への挑戦
星野リゾートは温泉旅館の運営ノウハウを活かして「界」ブランドを展開しました。その後、都市型ホテル「OMO」や「BEB」など新ブランドも作り、活動範囲を広げていきました。さらに日本初の観光専門のリート(不動産投資信託)を立ち上げ、お金の集め方も革新しました。現在では海外への展開も始めています。
商売のやり方の変革
施設を「所有する」から「運営だけを専門にする」へとビジネスモデルを転換しました。問題のある施設を引き受けて再生させる手法を確立し、多くの施設で成功を収めています。また、マイクロツーリズム(近場での旅行)やワーケーション(仕事+休暇)など、新しい旅のスタイルを提案し続けています。
会社の仕組みの作り直し
星野さんが就任時に役員を一新し、意思決定の仕組みを変えました。観光人材の育成に力を入れ、それが会社の強みになっています。バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍など、何度も危機を乗り越える体制を作りました。特にコロナ禍では「18カ月生き残り計画」を全員で考え、明確な3つの方針(現金を守る、人材を維持する、サービスの優先順位を見直す)を掲げて乗り切りました。
成功の秘訣
星野リゾートの成功の秘訣は、明確なビジョン(「運営の達人になる」)を持ち続けたことです。また、既存の強み(温泉旅館のノウハウ)を新しい形で活かし、市場調査をしっかり行い、顧客視点でサービスを考えました。何より人材育成を最優先し、危機の時も守り抜いたことが大きな強みとなっています。
星野リゾートの例は、古い業界でも新しい発想と仕組みで大きく生まれ変われることを示しています。伝統を守りながらも、時代に合わせて大胆に変化する姿勢が、長く続く会社の秘訣なのでしょう。
例②スリーデイズキッチン:経営者の大病を機に第二創業
「大病」「投獄」「倒産」は、大成した経営者が共通して経験する転機であり、経営者として成長するために必要な経験であるという説があります。
ここでは、経営者の大病(大けが)をもとに、事業モデルを変革し、第二創業を成功させた海外事例をご紹介します。
これは私たち「仕組み経営」のもとになっているマイケルE.ガーバー氏の書籍(未翻訳)に書かれている事例であり、日ごろクライアントにもご紹介している米国の実話です。
卓越した職人型経営者
マリノ・サントスさんは建設現場の職人として独立開業した経営者です。黒い服に赤いスカーフが目印の彼は、自らの技術で「サントス・クルー」という会社を立ち上げ、高い技術力と結束力で評判を得ていました。どんな難しい工事でも引き受け、確実に成果を上げる会社として知られるようになりました。
マリノさんのような姿は、日本の多くの中小企業経営者にも見られます。自分の腕や判断力、人脈を生かして会社を成長させてきた「職人型社長」です。こうした会社では、社長自身が現場で指示を出し、重要な判断はすべて社長が行います。
予期せぬ大けが
しかし、マリノさんの人生は突然の交通事故で大きく変わりました。重傷を負った彼は、長期間現場に出ることができなくなりました。これまで彼の指示で動いていた職人たちは戸惑い、会社の運営も滞りがちになりました。
この状況は多くの中小企業が抱える課題を浮き彫りにしています。経営者一人に頼りすぎていると、その人が不在になった時に会社全体が機能しなくなる危険性があるのです。
社長に依存しないモデルへの変革
半年間の療養期間を経て、マリノさんは大きな決断をしました。「これからは自分がいなくても会社が回る仕組みを作る」という方針を立てたのです。
今までは「マリノさんだからできる」と言われていた仕事を、誰でも同じように行える形に変えていくことにしました。これが「仕組み依存」の経営への第一歩です。
具体的な変革
マリノさんはまず、自分の頭の中にあった技術やノウハウを「見える化」しました。
- 工事の手順や注意点を詳細に文書化しました
- 特にキッチン工事について、パターン化された設計と施工方法を開発しました
- 必要な道具や材料をセットにして、準備の手間を省きました
- 新人教育の方法を標準化し、短期間で基本技術を身につけられるようにしました
こうした取り組みの結果、「スリー・デイズ・キッチン」というサービスが生まれました。これは従来は職人の腕次第だったキッチン工事を、誰が担当しても3日で完成する仕組みに変えたものです。
仕組みがもたらした成果
この変革により、マリノさんの会社には多くの変化が生まれました。
- マリノさん自身が現場にいなくても、品質の高い工事ができるようになりました
- 新しい職人の育成が効率的になり、人手不足が解消しました
- お客様への納期が明確になり、信頼が高まりました
- 一度作った仕組みを繰り返し使えるので、効率が向上しました
- マリノさん自身は新しいサービス開発や会社の将来を考える時間が持てるようになりました
人依存のビジネスから仕組み依存のビジネスへの変革
マリノさんの事例から学べることは、「人依存の経営」から「仕組み依存の経営」への転換の重要性です。
「人依存の経営」では、社長の技術や判断、人脈に頼って会社を運営します。社長が中心となって動くため、小規模な会社では効果的ですが、成長するにつれて限界が見えてきます。社長一人の力には限りがあるからです。
一方「仕組み依存の経営」では、社長の能力や時間に依存せず、決まったルールやシステムで会社が回ります。誰が担当しても同じ品質の仕事ができ、社長がいなくても日常業務は滞りなく進みます。
マリノさんは不運な事故をきっかけに、職人型から仕組み型へ転換しました。その結果、会社は以前より大きく成長し、マリノさん自身も新たな経営者として生まれ変わりました。
多くの中小企業で見られる「社長が全部やっている」「社長に聞かないと何も決められない」という状況は、実は会社の成長を妨げています。マリノさんのように、自分の持つ知識やノウハウを「仕組み」に変えていくことも第二創業への道なのです。
例③Keap:使命感に目覚めて第二創業
次も海外の事例です。Keap社は2007年頃、3人の創業者によって立ち上げられました。
創業者たちは、中小企業を支援する営業・マーケティングソフトの開発に取り組んでいました。当時の代表は、4人の子どもを抱え、学生ローンの支払いに追われる厳しい状況。仲間と共に「とにかく生き抜く」という一心で事業に打ち込んでいました。
最初の3年間は資金繰りに苦しみながらも、徐々に軌道に乗り始めます。当初の計画は「売上が1千万ドルに達したら会社を売却する」という単純なものでした。
転機となった問いかけ
業績が上向き始めた2005年から2007年、創業メンバーはマイケルE.ガーバー氏の「ドリーミングルーム」というプログラムに参加します。そこで彼らは繰り返し問われました。
「なぜこのビジネスをしているのか?」 「本当の目的は何なのか?」
この問いかけが、会社の方向性を大きく変えるきっかけとなりました。
第二創業への決断
当初、代表は「このままでいいのではないか」と売却志向に固執していましたが、仲間たちの熱意に押され、次第に考えが変わっていきます。
「なぜ私たちはもっと上を目指さないのか」
彼らは気づきました。
お金を稼ぐことも大切だが、本来の目的は「中小企業という困難な現場で奮闘するすべての人々を支援すること」だと。この気づきが新たなビジョンをもたらしました。
新たなビジョンと社内文化の構築
会社は短期的な売却計画を捨て、「中小企業発展のための革命を起こす」という壮大な目標に舵を切ります。
同時に、従業員一人ひとりの夢や目標を大切にする「ドリームマネージャー」という社内プロジェクトを立ち上げました。
これは社員が自らの夢を明確にし、その実現に向けた具体的なステップを共に考える仕組みです。シンガーソングライター志望の社員が『アメリカン・アイドル』のオーディションに合格するなど、実際の成果も出ています。
成長と未来
この会社の第二創業は、単なる事業の再生ではなく、経営者自身が原点に立ち返り、自分たちの目的を見つめ直すプロセスでした。
「自分たちが中小企業向けソフトウェア界の第一人者になろう」
「誰もやらないなら、自分たちがやる」
現在、同社はオフィス内に「マーズ・ミッション」という目標を掲げ、2016年までに顧客数10万、売上2億ドルを目指しています。
この事例から学べること
この例は、第二創業が単に新しい事業を始めることではなく、「経営者自身の人生の目的の発見」から始まることを示しています。
短期的な成功や出口戦略を求めるのではなく、真に価値のある長期的なビジョンを構築することで、企業は新たな成長ステージに進むことができるのです。
例④デジタルスタジオ社:経営危機からの第二創業
経営者であれば、一度は「このままでは会社が立ち行かない」と感じる瞬間があるかもしれません。しかし、その危機を乗り越え、新たなビジョンのもとで会社を再構築することができれば、まさに「第二創業」と言えるでしょう。
ここでは、受託開発事業でスタートしたデジタルスタジオ社の事例を紹介します。
より詳しい内容は以下のインタビュー記事でご紹介しています。
仕組み化・マニュアル化の事例を紹介します。 今回のインタビューは、株式会社デジタルスタジオ 代表取締役 板橋 憲生様です。 板橋さんは、システム開発会社として起業後、日本の優れた商品を海外に販売するためのプラットフォーム[…]
同社は最初は順調に成長していましたが、ある時、大きな危機に直面しました。社員の大量離職が発生し、会社を畳むことも考えました。
しかし、そこからの再生の過程が、事業運営の方法を根本から変えることになったのです。
受託開発ビジネスの限界と危機
創業当初、同社は顧客の依頼に応じてシステム開発を行う「受託開発」のビジネスを展開していました。売上は着実に伸びていたものの、ある時、主力社員の多くが一気に辞める事態が発生しました。
- 業務の属人化が進んでいたため、特定の社員がいなければプロジェクトが回らない状況にあった。
- 経営者自身も現場業務に深く関与しており、社員に業務を委ねる仕組みが整っていなかった。
- 新たな人材を採用しても、業務の引き継ぎがうまくいかず、教育コストが高すぎるという課題を抱えていた。
「仕組み化」との出会い
そんな時、「仕組みで回る会社づくり」という考え方に出会います。
「優秀な個人に依存するのではなく、組織の仕組みを整備することで会社を成長させる」という考え方を講座で学ばれ、以下のような考え方へ変革されました。
- 経営者自身がいなくても会社が回る仕組みを構築する。
- 業務の標準化を進め、誰でも成果を出せる環境を作る。
- 社員の責任と権限を明確にし、主体的に動ける組織に変える。
第二創業としての再スタート
まず行ったのは、業務の「見える化」でした。属人的になっていた業務を洗い出し、明確なプロセスを作成しました。また、組織図を見直し、各ポジションの役割と責任を明確にしました。
さらに、教育・研修の仕組みを整備し、新しい社員が短期間で業務に馴染める環境を作りました。その結果、組織としての安定性が増し、経営者自身が現場から手を引いても、事業が問題なく回るようになったのです。
そして、この仕組み化の成功を受け、次のステップとして海外進出を決断。フィリピンに拠点を開設し、現地での開発チームを立ち上げることに成功しました。
第二創業の結果
この改革の結果、会社はV字回復を遂げられました。
この事例は、先ほどのマリノサントスの話と同様、経営の考え方を「人依存から仕組み依存へ」と変え、仕組みで成長する企業へと生まれ変わった事例といえます。
事例⑤良品計画:創業理念の再解釈による第二創業
無印良品は1980年に「わけあって、安い」をテーマにして生まれました。この理念の背後には、「権力や体制に疑問を持ち、弱者や儚いものへの思いやりから、理想的な未来を見つける」といった哲学がありました。
無印良品といえば、マニュアル(業務基準書)「MUJIGRAM」が有名です。これは同社をかつての属人的な経営スタイルから、仕組み依存への経営スタイルへ変革させた原動力になったものです。
今回のテーマは無印良品のマニュアル、MUJIGRAMについてです。 無印良品を経営する良品計画は、母体であった西友から独立後に右肩上がりの成長→38億円の大赤字→V字回復を経験しました。このV字回復を成し遂げられたのは、2,000ペー[…]
しかし、創業から40年以上が経ち、社会や経済の状況は大きく変わりました。高度経済成長時代は終わり、今は長期的な停滞が続いています。その中で、無印良品が追い求めている「本当に良い生活、良い社会とは何か」という問いは、さらに重要になっています。また、行き過ぎた資本主義や収益至上主義、企業間競争が引き起こす格差や環境問題に対し、無印良品は再び向き合おうとしています。
その結果、良品計画は「第二創業」を始めました。そのきっかけは、創業当時の理念を現代的に再解釈することでした。
現代社会に対する反省
無印良品は、単なる商品やサービスを提供するのではなく、社会に貢献する「社会のインフラ」になるという新たな考え方を取り入れています。経営者である堂前宣夫氏は、会社を「公器」として、地域社会の課題解決に貢献する存在に変革しようとしています。
第二創業における2つの使命
無印良品の「第二創業」においては、2つの大きな使命があります。
- 日常生活を支える商品を、良心的な価格で提供すること。創業時の「わけあって、安い」の精神を再定義し、現代社会にふさわしい商品を提供することです。
- 店舗を地域のコミュニティセンターとして活用し、地域と共に課題に取り組むこと。これにより、地域とのつながりを強化し、社会的貢献を果たそうとしています。
具体的な取り組み
地域に根差した活動として、無印良品は2021年に地域事業部を立ち上げ、地元の農家や自治体と連携した商品開発を進めています。また、地域の高齢者への出張販売や、「まちの保健室」として健康管理サービスを提供するなど、地域のニーズに対応しています。
さらに、無印良品は環境問題にも積極的に取り組んでおり、商品の回収と再生を進める「ReMUJI」や、プラスチック削減のための紙製フックへの切り替え、食糧危機に対応するためのコオロギせんべいの開発などを行っています。
現代社会への新たな挑戦
無印良品の第二創業は、過去の理念をそのまま繰り返すのではなく、現代の社会問題に向き合いながら、より広い社会貢献を目指して進化しています。創業当初の「消費社会へのアンチテーゼ」は、今では「過度な資本主義や社会問題へのアンチテーゼ」となり、地域社会との連携を強化することで、社会的インパクトを与えることを目指しています。
無印良品の第二創業は、現代社会の課題に一つの解決策を提供する可能性があり、その動向が今後ますます注目されることでしょう。
第二創業を成功させるために
では、第二創業を成功させるためにどういう手順で考えていけばいいのかを見ていきましょう。
新たなビジョンを明確にする
第二創業を成功させるためには、これまでの延長ではない「新しい未来像」を描くことが必要です。これは単に「売上を伸ばす」「新しいサービスを出す」といったレベルではなく、企業としてどのような存在になりたいのか、社会にどんな価値を提供するのかを明確にすることが求められます。
そして、そのビジョンは多くの場合、経営者自身の人生の目的と連動したものである必要があります。
具体的なアクション
- 自分の人生観・価値観を再整理し、経営の軸を見つける
- 社員や顧客の声を集め、会社の本質的な強みを見つける
- 5年後、10年後に会社をどのような姿にしたいのかを言語化する
といったことを行い、人生でどんな事業を作り上げたいのかを明確にすることです。
なお、この辺は拙著「仕組み化の経営術」に詳しく記載していますので、よろしければ手に取ってみてください。
経営スタイルを「人依存」から「仕組み依存」に変革する
特に事業承継を機に第二創業を目指す場合、経営スタイルの変革が求められることが多いでしょう。
先代が創業者の場合、先代の職人的な能力や人脈に基づいて起業し、それを武器に成長してきたことが多いはずです。そのため必然的に経営スタイルは、先代社長に依存する職人型経営になっています。
職人型経営については以下で解説しています。
清水直樹 会社が成長するにつれ、仕事が社長自身や特定の社員に集中してしまう傾向があります。そうなると、その人がいなくなったらビジネスが回らなくなってしまう危険性があります。 このような状態を「人依存」の経営と呼んでいます[…]
清水直樹 職人上がりの社長が陥る典型的な失敗パターンがあります。このパターンを乗り越え、会社経営を成功させる方法をご紹介します。 職人上がりの社長が失敗する理由 熟練した職人が独立して自らの事業を起こし、社長となること[…]
そのような状態で会社を引き継いだ場合、後継者は先代の属人的な経営スタイルを真似することができず、苦労するのです。
そのため、経営スタイルを根本的に変え、「仕組み依存」、つまり、経営者のカリスマ性や職人的の能力に依存しない形で運営される会社にしていくことが大切です。
これは先ほどのマリノサントスやデジタルスタジオ社の事例がまさにそれです。
ビジネスモデルを見直す
第二創業は、既存事業の構造を根本的に見直すことも含まれます。現在のビジネスモデルが次の成長を阻害しているのであれば、どこに課題があるのかを分析し、再設計することが必要になります。
ビジネスモデルを見直す際のポイントについては、以下にまとめていますので、ご参考にされてください。
清水直樹 今日は会社を継ぐ社長が何を勉強すべきか?という話をさせていただきます。 最近は会社を継いだ、または継ぐ予定の方からのご相談が増えております。そんな中で、 社長と[…]
短期的な成功を生み出し、変革を定着させる
第二創業は長期的なプロセスですが、社内外の信頼を得るためには、短期間で成果を出すことも重要です。小さくても目に見える成功を積み重ねることで、組織内の抵抗を減らし、変革の流れを加速させることができます。
たとえば、業務のムダを減らすことで「時間が浮いた」「作業が楽になった」と社員が実感できるような改善を行うと、変革への抵抗が弱まります。
また、社内のIT機器を最新版にし、社員の満足度をアップさせるのも一つの手です。
そのほか、売上や利益に直結する小さな成功を積み上げるのも有効です。たとえば、新しい商品やサービスの販売を試験的に行い、短期間で成果を上げることで、社内外に「この変革は意味がある」と認識させることができます。成功事例を積極的に共有し、関わった社員を称賛することで、組織全体の士気も高まります。
第二創業するなら仕組み経営へ
以上、第二創業について、事例や方法を見てきました。
もしあなたが第二創業を考えているなら、まず最初に必要なのは「自分の人生の目的や価値観」を明確にすることです。
企業を運営するうえで、最も大切なのは、経営者自身がどんな人生を送りたいのか、どんな価値を大切にしたいのかをしっかりと定めることです。経営者のビジョンや価値観がぶれなければ、事業の方向性も迷うことなく進んでいきます。そして、これが会社の文化や社員の行動にも大きな影響を与えます。
しかし、価値観やビジョンを定めたとしても、ただの「夢」や「目標」に終わってしまっては意味がありません。それを実現するためには、どんな方法で動き続けるのか、実行可能な「仕組み」を作る必要があります。事業が安定し、スケールできる環境を整えることこそが、第二創業を成功させるための鍵となります。
私たち仕組み経営では、経営者が事業に深く関与せずとも、組織全体が自立して動き、安定的に成果を生み出せる仕組みを作り上げるご支援をしています。これにより、経営者が自分のビジョンや本来の仕事に集中できるようになり、社員一人一人も自立して働き、成長することができます。
より詳しいことは以下から「仕組み化ガイドブック」をダウンロードしてご覧ください。