多能工化とは?意味・読み方と失敗例、進め方4ステップ



清水直樹
多能工化は生産性向上や人材育成に有効な方法です。今日は多能工化の意味や導入方法についてみていきます。

 

労働人口の減少や働き方改革の推進が背景となり、採用難により社員数を増やすことが難しい会社にとって、人手不足への有効な対策となるのが「多能工化」です。

今回は、この多能工化の意味や読み方、単能工との違い、失敗例、そして導入を成功させるための仕組みづくりについてお話しします。あわせて、「多能工化はもう古いのではないか」という疑問にも正面からお答えします。

 

多能工化の意味とは

多能工化(たのうこうか)とは、1人で複数の業務を担当できる人材を育て、状況に応じて複数の業務を担ってもらう取り組みのことです。1人が複数の業務をこなせる人材のことを多能工と呼びます。

狙いは2つあります。特定の人に業務が集中している状態をなくすことと、誰かが休んでも業務が止まらない状態をつくることです。結果として労働環境の改善と生産性の向上につながります。

「兼任化・マルチスキル化・マルチタスク」という言葉で言い換えることもできます。

多能工化の読み方と言い換え

多能工化は「たのうこうか」と読みます。多能工は「たのうこう」です。もともとはトヨタ生産方式のなかで使われてきた言葉で、製造業の現場から広がりました。

社内で使うときの言い換えとしては、次のような言葉があります。

  • マルチスキル化……複数のスキルを持つこと。もっとも近い言い換え
  • 兼任化……複数の役割を兼ねること。組織の話に寄る
  • マルチタスク……複数の作業を並行して行うこと。厳密には意味が違う
  • クロストレーニング……担当を越えて教え合う訓練のこと

ただし、社員に説明するときは横文字を使わないほうが伝わります。「多能工化を進めます」と言うと、聞いた社員は「仕事が増える」と受け取ります。「誰かが休んでも回る状態をつくります」と言うほうが、目的がそのまま伝わります。

多能工化の反対は単能工

これに対し、多能工化が注目される以前は、多くの社員は単能工として1人が1つの業務を専門的に進めてきました。いわば業務のスペシャリストという存在であったわけですが、同時に業務が属人的となる傾向があります。そのため、担当者が不在になると業務が滞るなど、生産性を高めることが難しくなります。

つまり、多能工化の反対語は「単能工」、状態としての反対語は「属人化」ということになります。属人化とは?意味・読み方と対義語、解消方法をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。

なお、単能工がすべて悪いわけではありません。高度な専門性が必要な業務では、一人が深く極めたほうが成果は出ます。問題になるのは、その状態を放置したまま「その人が抜けたときにどうするか」を決めていないことです。一人に専門性を集めるなら、代わりを用意するか、少なくとも手順を書き残しておく必要があります。業務を切り分ける考え方そのものについては分業とは?分業化・分業制の意味とメリット・デメリットで解説しています。

 

多能工化するメリット

多能工化によってもたらされる、具体的なメリットしては次のようなものがあります。

業務の平準化

多能工化による最大のメリットが、業務負荷を平準化させられることです。一部の部署や社員に偏っていた業務を他の社員にも担当させられるようになり、業務量が平準化し、業務負荷が重かった社員の負担軽減が可能になります。また、繁忙期においても業務の進捗度合いによって人員を適切に配置できるので、一時的に業務の少ない部署と多い部署が発生するといった不平等な状況が生まれにくくなります。

リスク回避

複数の社員が業務を遂行できることで、業務の属人性が低減し、安定して業務を継続することができるようになります。また、多能工化の課程で手順や技能を教育する必要が発生するため、業務における課題や改善策が顕在化しやすくなるという側面もあります。これによって業務の合理化や手順の見直しも行うことができるため、会社としてはこれまで見えていなかったリスクを洗い出すことも可能になります。

柔軟性の高い組織づくり

社員が幅広いスキルを習得するため、会社の経営方針や戦略の変更があっても、スピーディーにその業務内容を合わせることができる組織になります。結果として、ニーズの変化に対応した商品やサービスを柔軟に提供できるようになります。市場での競争力を保ちやすくなり、優位に事業を続けられます。

チームワークの向上

社員の他の部署や業務への理解が深まり、多角的な視点を持つことができるようになります。単能工の職場ではそれぞれが職人的な存在になります。担当外の業務に対する無関心も生まれがちです。多能工化で複数の業務を担うと、同僚の気持ちや立場も理解できるようになります。社内に一体感とチームワークが生まれることが期待できます。

キャリア形成や働き方の改革

業務の標準化に伴い、一部社員に偏っていた労働時間の削減や、休暇がとりづらい環境の改善につながります。また、複数の業務を担当するために、社員は様々なスキルを習得することができます。多くの業務に挑戦しやすい環境が整い、社員の可能性が広がります。特に新人教育では前向きな動機づけにつながります。キャリア形成の面でも恩恵があります。

これらのメリットは、最終的にサービスや製品の品質向上と納期の遵守につながります。会社としては、より多くの利益を生み出せるようになります。

 

多能工化するデメリット

多能工化には大きなメリットがありますが、デメリットも事前に把握しておくことが必要です。ここでは3つに分けて説明します。

育成・教育に時間が必要

多能工化では、社員に複数の業務を習得してもらうための時間と手間がかかります。複雑な知識やスキルが必要な業務では、職場での実務を通じた訓練も必要になるため、育成時間は長くなります。このため、社員一人ひとりの適性を把握し、人材育成を長い目で見て計画的に行わなければなりません。

ここで多くの会社がつまずきます。育成の時間を、通常の業務時間の外に置いてしまうからです。手が空いたら教える、余裕ができたら教えるという形にすると、その日は来ません。多能工化を始めると決めたら、教える時間と教わる時間を業務の予定に入れてください。

管理者に豊富な経験が必要

多能工化による業務の効率化を実現するためには、適切なマネジメントが必須となります。管理者側が多岐にわたる業務内容全体を把握し、状況に応じた最適な人員配置をできなければいけません。また、社員それぞれには経験値やスキルにバラつきがあり、慣れ・不慣れの差が生じる可能性があることも念頭に置く必要があります。

人事制度の改定が必要

多能工化に伴い、人事制度を改訂・整備する必要があります。これまでの単能工=スペシャリストとは異なる評価基準を設けなければモチベーションの低下を招き、せっかく時間をかけて育成した多能工が早期離職してしまうといった事態も懸念されます。業務の幅に対する評価、それぞれの業務内における成果に対する評価など、貢献が正当に評価される人事制度の見直しが必要になります。

次の項目では、このようなデメリットを払拭し、多能工化のメリットを最大化する方法を説明していきます。

 

多能工化を推進する方法

多能工化するための適切な手順には、次のようなステップがあります。


ステップ1. 業務の棚卸しと課題の見える化

多能工化のための業務棚卸

まず、全体の業務を洗い出して、各社員の業務量や業務内容を把握していくことが必要です。各部門の状況が把握できれば、社員の仕事量や業務の流れを知ることができます。そのために、各部門で業務棚卸表を作ります。部門の全業務を大分類とし、各自の作業単位を小分類として分けていきます。そして、業務棚卸表をもとに実際の作業時間を算出し、人手が不足しがちな業務を明確にしていきます。具体的な時間の算出が難しい場合は、社員が忙しいと感じる時間帯の負荷の高い作業を特定していきましょう。

 

ステップ2. スキルマップによる作業習熟度の定量化

多能工化のためのスキルマップの例

次に、業務棚卸表の小分類をもとにスキルマップを作成していきます。 スキルマップとは、社員一人ひとりが持っている、業務に必要なスキルの習熟度を一覧表にしたものです。縦に業務、横に社員名を並べ、交差する欄に習熟度を書き込みます。これによって、属人化している作業や、特定の誰かに業務が偏っている箇所が目に見えるようになります。どこから手を付けるべきかが明確になります。

スキルマップの習熟度は4段階で足りる

習熟度の段階を細かく分けすぎると、記入する側が迷って手が止まります。次の4段階で十分です。

  • 0……できない
  • 1……教われば手順どおりにできる
  • 2……一人でできる
  • 3……人に教えられる

この表でいちばん重要なのは「3」が1人しかいない業務です。その人が辞めたら、教える人がいなくなります。多能工化を始めるとき、最初に手を付けるべきなのはこの列です。

もう一点、注意があります。スキルマップを人事評価にそのまま使わないでください。評価に直結すると、社員は自分の数字を高く書くようになります。表の目的は、いま会社のどこが薄いかを見ることです。評価に使いたい場合は、人事評価制度の作り方やトレンド、事例まとめを参考に、評価制度のほうを別に整えてください。

ステップ3. 業務の標準化、マニュアル化

多能工化するためには、業務が誰がやっても、ほぼ同じ成果が出るようにしていかなければなりません。つまり、標準化、マニュアル化が必要です。多能工化する業務を棚卸したら、自社における標準作業を定義します。そのうえでマニュアル化していきます。

標準化とマニュアル化の手順は業務標準化とは?進め方5ステップと進まない理由【売上9倍の成功事例も】マニュアルの作り方7ステップ。テンプレートと種類別の実例つきをご覧ください。

この順番は必ず守ってください。標準化が済んでいない業務に人を動かすと、教える人によって教え方が変わります。教わった側は「前の人と言っていることが違う」という状態になり、結局その業務は誰のものでもなくなります。多能工化が失敗する原因の大半は、この工程を飛ばしたことにあります。

ステップ4. 多能工化の推進計画の立案・実行

スキルマップなどをもとに、想定した期間内で目指すべき計画を立案し、実際に多能工化へ向けた人材育成に取り組んでいきます。人材育成は「いつ」「誰が」「誰に」「何を」「どのように」行うのかを明確にし、計画的かつ継続的に行う必要があります。進捗状況を誰もが把握できるように、星取表のようなもので可視化していきます。

 

多能工化が失敗する理由

メリットやデメリットを理解し、適切なステップを踏んだにもかかわらず、「会社の問題」「本人の問題」が起因となって多能工化が失敗するケースがあります。

会社の問題

社員の適性を確認していない

社員の適性を理解しない、あるいは無視したまま強引に多能工化を進めると、社員のモチベーションを削いでしまう恐れがあります。適性テストを行ったり、スキルマップも併用して社員の業務内容を事前にチェックしておく必要があります。もちろん、ある社員が有能だからといって業務を押し付けすぎると精神的苦痛を感じますし、そもそもの目的である「業務の定量化」からも逸脱してしまいます。

教育期間が適正でない

人材育成には時間がかかることは前述した通りです。多能工化の実現を急ぐあまり教育期間が短くなると、業務をしっかり習得できません。結果として、やる気や士気の低下につながります。高度なスキルを要する業務ほど、OJTを含む長い教育期間が必要であることを理解し、業務に支障の出ないような育成計画を立案することが必要です。

定期的な評価や振り返りが行われていない

想定した期間内で多能工化を実現するためには、定期的に評価と振り返りを繰り返すことが必要です。計画どおりに人材育成を進められることはまれです。必ず何らかの問題が出てきます。必要があれば計画の修正をしていかなければなりませんし、社員への定期的なフィードバックがあればモチベーションの向上にもつながります。また、多能工化した社員の負荷が高まっていないかも確認してください。会社側の都合だけで業務を割り振り、振り回していないかという視点です。社員の目線に立って話を聞く場が要ります。

社員の側に現れる問題(原因は説明と段取りにある)

次の2つは社員側の振る舞いとして現れますが、原因をたどるといずれも会社側の段取りに行き着きます。

本人が育成を当たり前だと勘違いし、企業や周囲への配慮がない

多能工化へ向けた育成期間中は、業務に従事する時間が減ってしまうこともあり、周囲の社員によるフォローが必要な場面も発生します。そのことを理解しない振る舞いをすると周囲との軋轢を生み、チームワークを向上させるための取り組みでもあった多能工化が逆効果となってしまいます。現在は単能工であっても、事前に業務全体を見渡してもらうことが必要です。育成期間中に周囲の社員がどのように自分の業務をフォローするのかを、あらかじめ理解してもらいます。

ただし、これを本人の配慮の問題として扱うと解決しません。誰がどれだけカバーするのかが決まっていないと、フォローする側の負担は誰の目にも見えないままになります。育成期間に入る前に「この期間、この業務は誰が引き受けるか」を書いて共有しておけば、配慮があるかないかという話にはなりません。

多能工化の目的を本人が理解していない

単能工から多能工へ移行する過程において、業務負担増加を懸念する社員からの反発が生まれるケースがあります。業務範囲は広がるものの、業務全体として見た場合、業務量の平準化が図れることやキャリア形成においても有益であることを理解してもらえるような説明をすることが必要です。さらに、前述したように適切な人事評価制度を準備し、内容を明示できるようにしておく必要もあります。

説明するときに気をつけたいことがあります。「業務量が平準化する」という説明は、いま負荷が軽い人にとっては負担が増えるという意味になります。全員に同じ説明をして納得を得ようとすると、必ずここで止まります。誰にとって何が良くなるのかを、個別に言えるようにしておいてください。

多能工化はもう古いのか?

「多能工化はもう古い」「時代遅れではないか」という声を聞くことがあります。この疑問には理由があります。

「古い」と言われる2つの理由

一つ目は、言葉の出どころです。多能工化はトヨタ生産方式のなかで生まれた言葉で、製造ラインを前提にしています。そのため、製造業以外の人にとっては自社の話に聞こえにくいという事情があります。

二つ目のほうが重要です。多くの会社で、多能工化が「人手が足りないから手伝わせる」という意味で使われてきたからです。この使われ方をすると、社員から見れば単なる業務の押しつけになります。「多能工化」という言葉に良くない印象がついているのは、たいていこちらが原因です。

ジョブ型人事制度とは矛盾しないのか

もう一つよく聞かれるのが、この点です。職務の内容を明確に定義するジョブ型人事制度が広がるなか、一人が複数の業務を担う多能工化は逆行しているのではないか、という疑問です。

結論から言えば、矛盾しません。ジョブ型が明確にするのは「その職務に何を期待しているか」です。多能工化が扱うのは「一人が担える職務の数」です。見ているものが違います。


むしろ、順番があります。職務の内容が書かれていない状態で多能工化を進めると、担当が曖昧な何でも屋ができあがります。何をどこまでやる人なのかが誰にも分からなくなり、評価もできません。先に一つひとつの職務を書き、そのうえで「この人はAとBを担える」という形にするのが正しい順番です。職務の書き方は職務記述書とは?書き方5ステップとテンプレート・記入例ジョブ型人事制度とは?メリットと導入方法、中小企業の判断で解説しています。

古いのは言葉ではなく、使われ方のほう

整理すると、古くなったのは多能工化という考え方ではありません。「人が足りないから手伝わせる」という使われ方のほうです。

本来の多能工化が目指しているのは、誰かが休んでも業務が止まらない状態です。手伝わせることと、渡せる形にすることは別のことです。前者はその場をしのぐだけで、翌月も同じ状態が続きます。後者は一度やれば残ります。

人が採用しにくい時代に、一人が抜けたら止まる業務を抱えたままにしておくことのほうが、はるかに古い経営です。

多能工化の事例

実際の導入事例を挙げておきます。皆さんの企業においてどのように実現できるのかをイメージする参考としてください。

多能工化事例①株式会社 ユニバーサルポスト(製造業、社員数150名)

以下、同社の資料より抜粋してご紹介します。

導入前の課題

作業が属人化し、スキルのある社員に業務が集中していた。チーム単位でのマネジメントができず、関連部署との連携も不足していた。業務領域が広がる中、社員からは人事評価制度の見直しを求める声が上がっていた。

取り組み内容

業務の棚卸しによって作業工程や技術レベルを可視化し、育成計画表を作成した。また、業務分析によるムダの洗い出しと改善策を実施した。さらに、経営トップ自らが、多能工化が会社の重要取組事項であることを宣言するとともに、働き方改革も評価対象に含めた、新評価制度への見直しを進めた。

取り組みの成果

担当以外の業務も経験したことで、新たな知識やスキルを習得でき、お互いをカバーし合える職場環境を実現した。生産性を念頭に置いて、効率的に業務を行う意識が部署内に芽生えた。社内全体では、会社の方針を全社員の9割が理解し、有給休暇取得率が約12%向上、月当たりの残業時間は約5時間削減、改革の進展度を全社員の7割が実感できるようになった。

多能工化事例②星野リゾート(サービス業、社員数2,000人)

星野リゾートはホテル業界では珍しく、多能工化を実現していることで有名です。同社の経営全体については星野リゾートのビジネスモデルと経営戦略|強み・企業理念もで解説しています。

導入前の課題

ホテル経営において、清掃と調理に労働が集約し、昼間は待ち時間となる「中抜けシフト」が常態化して生産性を損ねていた。また、「大卒はフロント、料理専門学校卒業者だけがレストラン」という根拠のない固定観念があった。ここから脱却し、顧客満足度の向上につながる改革が必要となっていた。

取り組み内容

全員がフロント・客室・ レストランサービス・調理(補助業務)をこなせるように教育した。それぞれのスキルの習得度と実践度を細かく数値化し、この数値が上昇するとどんなメリットがあるのかを理解させることに努めた。また、各部門の長を立候補制にするなど、社員の自立性を尊ぶ会社の理念の徹底化を図った。

取り組みの成果

多能工化の成功により中抜けシフトが解消され、生産性と収益の向上につながった。また、社員が顧客と接点を持つ機会が増えたことで、「顧客満足度と利益の両立」というビジョンを全社員に深く浸透させることができた。その結果、日本を代表するリゾートホテルチェーンという評価を得られるようになった。

 

多能工化の失敗例3つ

実際に起きやすい失敗を3つ挙げます。どれも珍しいものではありません。

失敗例① 標準化を飛ばして人だけ動かした

人手が足りない部署に、別部署の社員を応援に出しました。ところが受け入れ側にはマニュアルがなく、その日いた人が口頭で教えることになりました。教える人によって手順が違うため、応援に入った社員は毎回やり方を確認することになります。

結果として、教える側の手が止まり、応援に入る前より部署全体の生産性が落ちました。ステップ3を飛ばすと、これが起きます。

失敗例② できる人にばかり業務が集まった

スキルマップを作ったところ、飲み込みの早い社員がすぐに複数の業務をこなせるようになりました。すると、その社員に仕事が集まるようになります。評価も報酬も変わらないまま、業務量だけが増えていきます。

半年後、その社員が退職しました。多能工化のつもりで進めたことが、結果としてもっとも優秀な社員に負荷を集める形になっていたのです。これは本人の耐性の問題ではありません。増えた業務が評価に反映されない設計になっていたことが原因です。

失敗例③ やって終わりで、続かなかった

半年かけてスキルマップを作り、マニュアルも整えました。ところが、その後に更新する担当も時期も決めていませんでした。1年もすると業務のやり方が変わり、マニュアルは実態と合わなくなります。実態と合わない書類だと一度でも見なされると、その後は誰も読みません。

スキルマップとマニュアルには、更新する人と更新する時期を書類そのものに書いておいてください。「毎年、期の初めに各部門の管理職が見直す」と一行あるだけで寿命が変わります。

多能工化に関するよくある質問

多能工化の読み方を教えてください

「たのうこうか」と読みます。多能工は「たのうこう」です。トヨタ生産方式のなかで使われてきた言葉です。

多能工化と多能化は違いますか

指しているものはほぼ同じです。「多能工」という語が製造業の職種を思わせるため、事務職やサービス業では「多能化」「マルチスキル化」と呼ぶこともあります。呼び方を議論することに時間を使う必要はありません。

多能工化の反対は何ですか

反対語は「単能工」です。1人が1つの業務を専門的に担当する状態を指します。状態として見た場合の反対は「属人化」です。

何から始めればいいですか

業務の棚卸しからです。ただし全社一斉にやろうとしないでください。まず1部署、あるいは1業務を選びます。選ぶ基準は「その人が辞めたら会社がいちばん困る業務」です。スキルマップで「3(人に教えられる)」が1人しかいない列を探すと見つかります。

中小企業でもできますか

できます。むしろ人数が少ない会社ほど必要性が高くなります。社員10人の会社で1人が辞めると、業務の1割が止まります。大企業なら他の人が引き受けられますが、中小企業ではその余力がありません。


社員から反発が出ます

反発の中身を確かめてください。多くの場合、「仕事が増えるのに給料が変わらない」という点に集約されます。これは正当な指摘なので、精神論では解決しません。担える業務が増えたことを評価にどう反映するかを、始める前に決めておく必要があります。

教える時間が取れません

時間が無いのではなく、教える時間が誰の予定にも入っていない状態です。週に30分でかまわないので、曜日と時間を決めて固定してください。手が空いたら教えるという形にしている限り、その日は来ません。人を育てる仕組みについては人を育てる仕組みとは?中小企業が実践すべき4ステップと失敗しない教育法をご覧ください。

まとめ:多能工化推進のためには業務の仕組み化

多能工化を進めると、業務量の偏りが解消されます。社員が幅広いスキルを習得することで生産性も上がります。社員満足度と定着率の向上にもつながります。特に人材難に直面する中小企業にとっては、多能工化がもたらす恩恵は非常に大きなものだということが言えます。

しかし、これまでご説明したとおり、多能工化にはメリットと同時にデメリットもあります。作業内容を可視化し、評価のしくみを見直し、業務へ影響を与えないように育成を進めるためには、業務の仕組み化が必須となります。

多能工化は、業務効率を上げて働きやすい環境をつくり、業績と社員の待遇の向上につながる取り組みです。ぜひ皆さんの会社でも仕組みづくりに取り組んでいってください。

仕組みづくりについては、以下の仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。


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