ファヨールの14の管理原則とは?100年たっても使える組織づくりの基本を経営者目線で解説



清水直樹

今日はファヨールの管理原則について紹介していこうと思います。

社員数が5人とか10人くらいになってきて、さらに会社を成長させていこうと思うと、いよいよこの組織をどうやってマネジメントしていくか、どうやって円滑に運営していくかが経営者にとって気になるところになってきます。

組織論というのは今、非常にいろんなタイプのものが出てきています。ただ、その大元にあたる原則は100年くらい前からずっと変わらずに存在しています。それがファヨールという人がまとめた14の管理原則です。

今日はその14個を一つずつ、私が中小企業の現場で見てきたことも交えながら紹介していきたいと思います。

 

動画でも解説しています。

原則を活用して組織づくりを進めるにはこちらから

 

ファヨールとはどんな人物か

まず、ファヨールという人がどんな人だったのかを簡単に押さえておきたいと思います。ここを知っておくと、14の管理原則の一つひとつがなぜそう書かれているのかが腹に落ちやすくなるからです。

アンリ・ファヨール(Henri Fayol、1841年〜1925年)はフランスの人です。鉱山技師として社会に出て、最終的にはコマントリー・フルシャンボー社という鉱山・製鉄の会社のトップを長年務めました。つまり、彼は学者ではなく経営者です。

ここが個人的にはかなり重要なポイントだと思っています。こういう原則を提唱するのは普通は学者が多いのですが、ファヨールは自分で会社を経営し、実際に人をマネジメントしながら、その経験の中から原則を導き出しました。しかも彼が引き受けたときの会社は経営難だったといわれています。それを立て直した人が「自分は何をやってきたのか」を言語化したのが、この管理原則なのです。

そのエッセンスを1916年にまとめたのが『産業ならびに一般の管理』(Administration Industrielle et Générale)という本です。日本でも翻訳が出ていますので、興味のある方は原典にあたっていただくといいと思います。

清水直樹

私が見ても、100年たった今でも8割、もしくは9割くらいは通用するなという感じです。実務家が書いたものなので、抽象論で終わっていないんですよね。

 

ファヨールの管理原則とは何か

ファヨールの管理原則とは、組織を管理・運営していくうえで守るべき14の指針のことです。「ファヨールの14の管理原則」「管理の一般原則」などと呼ばれます。

ファヨール自身が面白いのは、この14個を導き出しておきながら、これが全て絶対に正しいとは言っていないことです。場合によっては例外もあるし、状況に応じて使い分けるべきだという言い方をしています。原則というと硬く聞こえますが、実際には「経験則の整理」に近い性格のものだと考えたほうが実務では使いやすいと思います。

ですので今日紹介する14項目は、皆さんの会社の中で一つのチェックリストとして使っていただくのがおすすめです。これから会社を大きくしていこうという方であれば、自分たちの組織をどう作っていくかという時の指針にしてもらえればいいと思います。

 

ファヨールが分けた6つの企業活動

14の原則に入る前に、もう一つだけ前提を共有させてください。ファヨールは会社の活動を6つに分類しました。技術活動、商業活動、財務活動、保全活動、会計活動、そして管理活動です。

前の5つはイメージしやすいと思います。ものを作る、売る、お金を調達する、資産を守る、記録する。それに対して6つ目の「管理活動」だけが、当時きちんと語られていませんでした。ファヨールはそこに焦点を当てて、管理とは何をすることなのかを定義したわけです。

中小企業の現場に置き換えると、社長が現場仕事(技術活動や商業活動)に埋もれて、管理活動をやる時間がゼロになっている、というのはまさにこの6分類でいう管理活動の欠落です。100年前に指摘されていたことが、いまだに解決されていないともいえます。

 

ファヨールの管理の5要素(計画・組織・命令・調整・統制)

では管理活動とは具体的に何をすることなのか。ファヨールはこれを5つの要素に分けました。ここは14原則とセットでよく問われるところなので、押さえておくといいと思います。

一つ目が計画(予測)です。将来を見通して、行動計画を立てること。二つ目が組織です。計画を実行するための人とモノの構造をつくること。三つ目が命令です。メンバーを実際に動かすこと。四つ目が調整です。ばらばらに動きがちな各部門の活動を結びつけること。そして五つ目が統制です。計画どおりに進んでいるかを確認し、ズレを正すこと。

この「計画→組織→命令→調整→統制」という流れは、現在のマネジメントサイクルやPDCAの原型といわれています。今日紹介する14の原則は、この5つの管理活動をうまく回すための具体的な指針だと理解してもらうと、位置づけがはっきりすると思います。

 

ファヨールの14の管理原則を一覧で確認する

先に全体像を見ておきましょう。

No. 原則 要点
1 分業 同じ努力でより多くのものを生産する
2 権限と責任 権限は命令できる権利であり、責任と切り離せない
3 規律 企業と従業員の間の約束が守られること
4 命令の一元性 従業員は1人の上司からのみ命令を受ける
5 指揮の統一 一人の長と一つの計画
6 個人利益の全体利益への従属 企業全体の利益は個人の利益に優先する
7 従業員の報酬 公平で、熱心さを奨励し、合理的限界を超えない
8 集権化 環境に応じ許される限り、管理者に権限を集中する
9 階層連鎖 権限系統の尊重と迅速性の両立
10 秩序 物的秩序と社会的秩序、適材適所
11 公正 正義に思いやりを込めたものが公平
12 職位の安定 仕事に慣れるまで異動を行わない
13 創意 計画し実行する自由を全階層に与える
14 従業員の団結 分割統治の誤用や文書の濫用を避ける

 

※原則6の「個人利益の全体利益への従属」は、訳書によって「全体利益の優越」と表記されることもあります。原則4も「命令の一元性」「指令の統一」と訳が分かれますが、内容は同じです。

それでは一つずつ見ていきます。

 

ファヨールの管理原則1.分業

一つ目が分業です。同じ努力で、より多くのものを生産すること。

この分業とは、組織の基本というか定義そのものです。組織は分業と調整で成り立っているので、分業は組織づくりの原則というより組織そのものの定義ですが、要は今まで1人でやっていたことを2人でやる、2人でやっていることを3人でやるという意味です。


ここで大事なのは「同じ努力でより多くのものを生産する」という部分です。たとえば社員数5人で売上2.5億円くらいの会社があったとします。社員数が倍の10人になったら、単純に考えれば売上も5億円になるのが一番いい分業の仕方ということになります。

ところが一般的にはそうなりません。なぜ社員が倍になっても売上が倍にならないかというと、社員が増えれば増えるほど摩擦が増えるからです。人が増えればバックオフィスをやる人が必要になったり、稼ぐ人たちをマネジメントするマネージャーが必要になってきます。そういう人たちは直接的には売上に貢献しないので、社員数が倍になったからといって売上が倍になるわけではないのです。

ここで説明している分業とは、なるべくそういう摩擦を減らして、各メンバーが同じ努力でより多くのものを生産できるようにすることです。ちなみにファヨールは分業を無制限に進めることには慎重で、行き過ぎると弊害があるとも述べています。ここは後述の「創意」との兼ね合いになる部分ですね。

 

ファヨールの管理原則2.権限と責任

二つ目が権限と責任です。権限は命令できる権利であり、責任と切り離せない。

これは、その人が与えられている責任があるわけです。売上をこれくらい上げるとか、この数字をこのくらいにするという責任があると思うのですが、それを達成するのに必要なだけの権限を与えられないといけないということです。

たとえば売上を1億円上げるのがその人の責任だとして、それを上げるために「広告費は30万円です」と言われるとなかなか厳しいわけです。1億円を上げるためには、業界にもよりますがそれなりの広告費を使える権限を与えないといけない。責任と権限はイコールにしていかないといけないということです。

中小企業でよく起きるのは、この逆です。責任だけが重くて権限がない。部長という肩書きは与えられているのに、5万円の備品を買うのにも社長決裁が要る、という状態ですね。これでは責任を果たしようがありませんし、結果として「うちの管理職は当事者意識がない」という話になってしまいます。当事者意識の問題ではなく、構造の問題であることのほうが多いです。

なおファヨールは、権限には地位から生じる公式の権限と、その人の経験や人格から生じる個人的な権限があると分けています。役職を与えただけで人が動くわけではないというのは、当時から見抜かれていたわけですね。

 

ファヨールの管理原則3.規律

次に規律です。これは「企業と従業員の協約」と書かれていますが、要は会社の中のルールです。

こういうふうに働こうというルールがないと、組織としてはダメだということになります。

ここで一点補足しておくと、ファヨールは規律を「従業員を縛るもの」とは考えていません。規律とは企業と従業員の間で交わされた約束が守られている状態のことであり、その責任の相当部分は経営側にあると言っています。つまり社員が規律を守らないとき、まず疑うべきは経営者の側の約束の曖昧さだということです。これはなかなか耳の痛い指摘だと思います。

 

ファヨールの管理原則4.命令の一元性(指令の統一)

次に命令の一元性です。従業員は1人の上司からのみ命令を受ける。

これは各構成員、メンバーにとって上司は1人であるという原則です。仕組み経営の中でもいつもお伝えしている原則ですが、上司が2人いると組織が混乱するので、必ず1人の部下には1人の上司という原則があります。

これも中小企業で崩れやすいところです。組織図の上では課長の下にいるのに、社長が直接その社員に指示を出してしまう。悪気はないのですが、これをやると社員は誰の話を聞けばいいのかわからなくなりますし、間に立たされた課長は権威を失います。結果として、その課長は指示を出さなくなり、ますます社長が現場に入らざるを得ない、という悪循環に入ります。社長依存の会社ではほぼ例外なくこれが起きています。

 

ファヨールの管理原則5.指揮の統一

次は五つ目、指揮の統一です。一人の長と一つの計画ということです。会社の中には一人の長がいて、一つの計画に向かってやっていこうという話です。

これは当たり前のように思えますが、そうではないケースがたまにあります。よくあるのは家族経営の会社、ファミリービジネスの会社で、先代が会長に納まっていて息子が社長をやっている会社です。会長が思いっきり実務から引いていれば問題ないのですが、会長が実務まで口出しをしてくる場合、いわゆる二頭政治といわれるものになります。会長も長だし社長も長だし、2人とも計画を持っているということで、二人の長で二つの計画になってしまう。これはよくないという話です。

家族経営がうまくいく大きな原則は、会長になったら実務には口出ししないことです。それがここでも言われている感じですね。そう考えると、ファヨールは100年前からこういうことを言っているわけで、素晴らしい見識だと思います。

前の「命令の一元性」と混同されやすいのですが、違いはシンプルです。命令の一元性は「一人の部下に上司は一人」という個人レベルの話。指揮の統一は「同じ目的の活動には一人の長と一つの計画」という組織レベルの話です。

 

ファヨールの管理原則6.個人利益の全体利益への従属

企業全体の利益は個人の利益より優先する、という原則です。

これは組織で働いている以上、組織のメンバーは理解しておくべきことですし、社長もそういう人が欲しいと思っていると思います。

「個人」というと分かりづらいと思うのですが、部分最適よりも全体最適を目指しなさいという話だと理解するといいでしょう。一部門とか一つの役職のためだけにルールを変えたり、組織の方向を変えたりするのではなく、全体が良くなるようにやっていきましょうということです。

ただし、これを社長が振りかざすと単なる滅私奉公の要求になってしまいます。ファヨールは、この原則を成り立たせるのは経営者の模範と公正さだと言っています。全体利益を優先しろと言う側が、まず全体利益のために動いているかどうかが問われるわけです。

 

ファヨールの管理原則7.従業員の報酬

従業員の報酬。公平なもので、熱心さを奨励し、合理的限界を超えないこと。

公平さを感じさせるものであり、かつ「これくらいもらえるんだったら頑張ろう」という気になれる、熱心さを奨励するものであるということです。

そのうえで、合理的限界、つまり会社としての経済力の限界を超えないようにしましょうという、当たり前のことも言っています。この三つの視点で報酬を考えましょうということですね。


給与制度をつくるときに、この三つのどれかが抜けているケースは本当に多いです。公平だが頑張る気にならない制度、頑張る気にはなるが会社が払いきれない制度、会社は払えるが不公平に感じられる制度。三つ同時に満たすのは簡単ではありませんが、少なくとも「今うちの制度はどれが弱いのか」を診断する物差しにはなると思います。

 

ファヨールの管理原則8.集権化

次は集権化です。環境に応じ許される限り、管理者に権限を集中すべき、とする原則。

会社の組織づくりをしていくにあたって、多くの人が悩むのは集権化するか、分権化するかです。社長がトップダウンで権力を持ってやっていくか、それとも現場の意見を尊重してやっていくか。この狭間で悩むケースは結構多いと思います。

ここでファヨールが言っているのは集権化なので、あくまで社長が権限を持って進めていくということです。ただ、重要なことが書いてあって、「環境に応じて許される限り」とありますので、環境によっては集権化が適さない場合もあるわけです。

これは私もそうだと思います。鉱山のようなビジネスは、環境的に比較的変化が少なかったはずです。しかし今はそうではなく、現場が一番情報を持っていたり、お客さまからの要望にリアルタイムで応えなくてはいけない時代です。そう考えると、必ずしも集権化がいいとは限りません。

14原則の中で、現代の中小企業がそのまま採用しにくいのはこの原則だと思います。ただ、ファヨール自身が「集権か分権かは程度の問題であり、最適点を探すのが管理者の仕事だ」という趣旨のことを言っていますので、原則というよりバランスの取り方の話として読むのが正しいと思います。

 

ファヨールの管理原則9.階層連鎖

そして階層連鎖です。権限系統の尊重と迅速性の二つを考慮して調整する。

これは組織には階層構造がないといけないということです。仕組み経営でもいつもお伝えしているとおりですね。

最近「フラット組織」という言葉が非常に流行っていますが、その代表格がホラクラシーといわれる組織構造です。ザッポスという会社が世界で一番大きいホラクラシー組織として有名です。あそこには一見、階層構造がないように見られていますが、私が何回か見学しに行って社員の方に話を聞いたら「実際のところ階層構造はあるよ」と言っていました。「リード・リンクという立場の人がいて、実際その人がチームに指示を出して動かしていく」という話でしたので、階層構造がない組織は実態としてあり得ないと思います。

そのうえで、権限系統の尊重と迅速性の二つを考慮しましょうということです。階層構造はあるべきだけれども、あまり階層が多いと迅速性が失われます。これはよく日本企業でいわれていることですが、そうなってはいけないので、迅速性を重視したうえで組織の構造を作りましょうと言っています。

ここでファヨールが提案したのが、いわゆる「ファヨールの渡り板」と呼ばれる考え方です。本来なら階層をいったん上まで上がって、また下りてこないと伝わらない情報を、同じレベルの部門同士が横で直接やり取りしてよいことにする。ただし、それぞれの上司の了解を得たうえで、という条件付きです。現代でいえば部門横断のプロジェクトチームや、部門間の直接連携ルールにあたります。100年前に、階層構造を保ちながらスピードを出す方法まで考えていたわけですね。

 

ファヨールの管理原則10.秩序

次は秩序です。物的秩序、つまりものの置き場と、社会的秩序、つまり人の地位を適材適所で行うこと。

組織づくりには秩序が必要だということです。ファヨールの言い方でいえば「あるべきものが、あるべき場所にある」状態ですね。工具や書類がどこにあるかわからない会社は、たいてい人の配置も曖昧です。逆にいうと、現場の整理整頓は組織の状態を映す鏡でもあります。

適材適所については、まず職務が定義されていることが前提になります。どんな仕事なのかが決まっていないのに、人だけを当てはめようとしても適材適所にはなりません。中小企業の採用がうまくいかない原因の多くは、実はここにあります。

 

ファヨールの管理原則11.公正

11個目、公正です。公正(正義=justice)に思いやりを込めたものが公平。

ちょっと深い言葉が書いてありますが、要は公平感を持たせるということです。

公正とは正義なので、ルールにのっとってきっちりやっていくということです。ただ、それだけをやっていくと人間はやはり反発もありますし、人間味がないと思われてしまう。だからそこに思いやりを込めなさい、そうすると公平感がある組織になりますと言っているわけです。

これも非常にいい言葉だなと思います。組織づくりにはこの公平感が大切だということですね。ルールだけの会社は冷たくなり、思いやりだけの会社はえこひいきになる。その両方が要るという話です。

 

ファヨールの管理原則12.職位の安定

次は12番目、職位の安定です。仕事に慣れるまで異動を行わない。

これは具体的ですよね。部署の異動、職種の異動などをあまり頻繁にやるな、一つの仕事に慣れるまで動かすな、ということです。そうしないと社員が疲弊しますし、会社としても、せっかく育ってきた人が戦力になる直前で別の仕事に移ることになります。

ファヨールは、平凡な管理者でも長く定着してくれるほうが、優秀だがすぐ辞める管理者よりも望ましいという趣旨のことまで言っています。定着そのものに価値があるという見方ですね。人手不足が続く今の中小企業にとっては、むしろ100年前より切実な原則かもしれません。

 

ファヨールの管理原則13.創意

次は創意です。計画し実行すること。全ての階層にその自由を与えることで意識を高める。

これもいいことを書いていると思いました。計画し実行するのは組織の原則的な行動ですが、大事なのは全ての階層にその自由を与えること、それによって士気が高まると言っているところです。

普通は計画を上層部がやり、末端のメンバーが実行する形になります。そうではなくて、全ての階層においてその階層なりの計画を立てさせなさい、そして自ら立てた計画で実行させなさいという話です。その自由を与えなさいと言っています。これは非常に大切だと思います。

上層部には上層部なりの計画があります。会社の長期的なビジョンや長期計画があると思うのですが、それに基づいて各部門や各役職において、自分たちの仕事の計画を作るようにしなさいと言っているわけです。自分たちが作った計画だから、それに基づいてやろうという気になる、士気が高まると言っているわけですね。


この原則は、先ほどの「集権化」と一見矛盾するように見えます。ただファヨールは、権限の所在は上に置きながらも、計画を立てる自由は下にも与えるべきだと考えていました。決めるのは誰かをはっきりさせることと、考えることを独占することは別だ、ということです。

 

ファヨールの管理原則14.従業員の団結

そして団結です。分割統治の誤用や、文書の濫用を避けるということです。

分割統治というのは、社員同士を対立させて管理しやすくするやり方です。これは短期的には効くように見えても、組織の力を削ぐので使うなと言っています。

もう一つの「文書の濫用」も面白い指摘です。口頭で話せば5分で済むことを、わざわざ文書でやり取りすると誤解が生まれ、対立の種になる。だから話せることは話しなさい、ということです。これは今でいえば、メールやチャットの応酬で話がこじれるのと全く同じですね。100年前に手紙で起きていたことが、今はチャットで起きているだけだと思います。

 

ファヨールとテイラーの違い

ファヨールとよくセットで語られるのが、科学的管理法のフレデリック・テイラーです。混同されやすいので、違いを整理しておきます。

テイラーが取り組んだのは、現場の作業をどう効率化するかという問題です。作業を分解し、時間を測り、標準的なやり方と一日あたりの適正な作業量を決める。視点は工場の作業者に向いています。いわば下から積み上げる管理です。

一方のファヨールが見ていたのは、会社全体をどう運営するかという問題です。経営者や管理者が何をすべきかを定義し、組織全体に共通する原則を示しました。視点は経営トップから下りていきます。

ですから両者は対立するものではなく、対象とする層が違うと考えるのが正確です。テイラーは現場の仕事のやり方、ファヨールは組織の動かし方。仕組み経営でいえば、業務手順の標準化がテイラー的な仕事で、組織図や役割定義、責任と権限の設計がファヨール的な仕事にあたります。会社を仕組みで動かそうと思ったら、どちらも必要になります。

 

ファヨールの管理原則を現代の中小企業でどう使うか

ここまで14の原則を見てきました。では実際に自社でどう使えばいいのか、という話をしたいと思います。

私のおすすめは、14個すべてを一度に導入しようとしないことです。そうではなく、まずチェックリストとして使うことです。今の自社の組織を思い浮かべながら、14項目を一つずつ「守れているか、崩れているか」で見ていく。この作業をすると、たいてい2つか3つ、明らかに崩れている項目が出てきます。

中小企業でよく崩れているのは、私の経験では次のあたりです。

一つ目は命令の一元性です。社長が組織図を飛ばして現場に直接指示している。二つ目は権限と責任です。責任だけ渡して権限を渡していない。三つ目は指揮の統一で、これは特にファミリービジネスにおける会長と社長の二頭政治として現れます。この3つのどれかが崩れているだけで、他の施策の効果はほとんど消えてしまいます。

逆に、そのまま鵜呑みにしないほうがいい原則もあります。先ほど触れた集権化がその代表です。変化の速い業界で、現場が一番顧客情報を持っているような会社であれば、権限は下ろしたほうがうまくいきます。ファヨール自身が「環境に応じて」と留保をつけていますので、そこは自社の事業特性に合わせて判断すべきところです。

つまり使い方としては、まず14原則で自社の土台に穴が空いていないかを点検する。穴を塞いだうえで、新しい組織論やマネジメント手法を取り入れていく。この順番がいいと思います。土台が崩れたまま流行の手法を入れても、ほぼ機能しません。

▶「組織づくりの原則・進め方」についてはこちらの記事に詳しく解説しています。

 

ファヨールの管理原則の限界と注意点

最後に、正直な話として限界にも触れておきます。

ファヨールの管理原則は、比較的環境変化の少ない産業を前提に生まれています。鉱山や製鉄の会社を長年経営した人の経験則ですので、そもそも変化の速さは想定されていません。ですので、階層と命令系統を重視する部分は、変化への対応スピードという点では弱くなりがちです。

もう一つ、原則同士が場面によってぶつかることがあります。集権化と創意はその典型ですし、規律と公正、分業と団結もそうです。どちらを優先すべきかまでは、原則は教えてくれません。そこを判断するのが経営者の仕事だということですね。ファヨール自身が「原則に硬直的なものはない、程度の問題である」と言っているのは、まさにこのことだと思います。

それでも、100年たって8割か9割は通用するという事実のほうが重要だと私は考えています。組織論は次々と新しいものが出てきますが、そのほとんどはこの14原則のどれかを言い換えたもの、あるいはどれかに反対したものです。だからこそ、原点を知っておく価値があります。

 

ファヨールの管理原則に関するよくある質問

ファヨールの14の管理原則で特に重要なものはどれですか

中小企業の実務という観点でいえば、命令の一元性、権限と責任、指揮の統一の3つだと思います。この3つが崩れると、他の原則を守っていても組織は混乱します。なお、資格試験対策として問われやすいのは、分業、命令の一元性、指揮の統一、権限の集中(集権化)、階層組織のあたりです。

ファヨールの管理の5要素とは何ですか

計画(予測)、組織、命令、調整、統制の5つです。管理という仕事を分解するとこの5つになる、というのがファヨールの整理で、現在のマネジメントサイクルの原型といわれています。

ファヨールの「命令の一元性」と「指揮の統一」はどう違いますか

命令の一元性は、一人の部下が命令を受ける上司は一人であるべきという、個人レベルの原則です。指揮の統一は、同じ目的を持つ一連の活動には一人の長と一つの計画があるべきという、組織レベルの原則です。前者は人、後者は計画に関する話だと考えるとわかりやすいと思います。

ファヨールの管理原則は今でも使えますか

大部分は使えます。ただし集権化のように、環境によって適さない原則もあります。ファヨール自身が例外の存在を認めていますので、絶対のルールではなく自社を点検するチェックリストとして使うのが現実的です。

ファヨールの著書は何ですか

1916年に発表された『産業ならびに一般の管理』(Administration Industrielle et Générale)です。日本語訳も出ていますので、原典にあたりたい方はこちらをご覧ください。

 

ファヨールの管理原則を活かして組織を成長させる

以上、ファヨールの14の管理原則を紹介しました。ご覧いただいたとおり、今でも通用する組織の原則かなと思います。


組織論はいろいろありますが、まずは申し上げたような原則が守られているかどうか。それがあったうえで、新しい組織のやり方や運営の仕方を取り入れていくといいのではないかと思います。

なお、仕組み経営では今ご紹介したような原則を活用し、組織を成長させていくためのご支援をしています。詳しくは以下から仕組み化ガイドブックをダウンロードしてぜひご覧ください。


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