新入社員がすぐ辞める理由と対策

新入社員がすぐ辞める会社の4つの共通点|原因は本人ではなく採用の仕組みにある



最近、経営者の方からよく聞く大きな課題は採用です。求人しても人が集まらない。内定を出しても辞退される。そして何より深刻なのが、せっかく入社した新入社員がすぐ辞めてしまう、というものです。

採用は「人」に対するものだからある程度はしょうがない、と思われている方もいらっしゃいます。しかし実は採用こそ、「仕組み」にすべき最たる業務です。「人」にバラつきがあるからこそ、そこに仕組みを持ち込むことで、精度や効果を高めることができます。

いま、一人採用するのに数十万円~100万円かかると言われています。仕組みが不在であることによって、このコストが完全な無駄になってしまっている会社がたくさんあるようです。

今回は、新入社員がすぐ辞めてしまう会社に共通する4つの特徴と、その防ぎ方をお伝えします。

新入社員がすぐ辞めるのは、あなたの会社だけではない

まず前提として、早期離職はどこの会社でも起きています。厚生労働省が公表した令和4年3月卒業者の調査では、就職後3年以内の離職率は大学卒で33.8%、高校卒で37.9%、短大等卒では44.5%にのぼりました。いわゆる「3年3割」は、いまも変わらず続いています。

問題は、この数字が事業所の規模によって大きく変わることです。同調査では、規模が小さい事業所ほど3年以内離職率が高くなる傾向がはっきりと出ています。つまり中小企業ほど、新入社員がすぐ辞める確率が高い環境にある、ということです。

これを「うちは小さいから仕方がない」と受け止めてしまうと、そこで話は終わってしまいます。しかし規模の差がそのまま離職率の差になっているのは、大企業には当たり前にあるものが中小企業には欠けているからです。それが、採用から受け入れ、育成に至るまでの仕組みです。

裏を返せば、この仕組みさえ持てば、規模のハンデはかなりの部分まで埋められます。以下の4つは、新入社員がすぐ辞める会社に共通して欠けているものです。

新入社員がすぐ辞める原因① 適材適所が不明確

ビジョンや組織戦略が不在だと、そもそも自社にどんな職務が必要なのかがわかりません。また、能力面・人格面でどんな人が自社に合うのかがわかっていないと、求人の文面も曖昧になり、人が集まりません。

誰に来てほしいのか?が曖昧であるということは、集客でいえば、どんなお客様に何を買ってほしいのか?がわかっていない状態と同じです。集客と同じように、求人にも対象者の絞り込みが必要です。

ここが曖昧なまま採用すると、入社後に「思っていた仕事と違う」というズレが必ず生まれます。新入社員が数か月で辞めていく理由の多くは、能力不足ではなく、このズレです。そしてズレの原因をつくったのは、応募者ではなく、求める人物像を言語化しないまま募集をかけた会社の側です。

新入社員がすぐ辞める原因② 勘と経験に頼った採用

大半の社長は、「自分には見る目がある」と意識的・無意識的に思っています。たしかに、稀に本当に見る目がある社長はいるかも知れませんが、大半の場合にはそうではありません。「この人いいかも」と思って採用した人が、まったくの見当違いだったというケースに覚えがある人も多いでしょう。

誰を採用するか?という見極めは、属人的な仕事の最たるものです。だからこそ、その属人性を少しでも下げるために仕組みが必要です。

また、多くの企業では適性検査を使っているかも知れません。ただ、その検査結果が出たとしても、”その人と自社との相性”はどうすればわかるでしょうか。検査でわかるのは、あくまでその人単体の傾向です。自社の価値観や仕事の進め方と噛み合うかどうかは、自社側の基準が言語化されていなければ判定のしようがありません。

相性が悪ければ、いわゆるミスマッチということになり、早期退職に繋がってしまいます。面接の場で「なんとなく合いそう」と感じたかどうかを、採否の決め手にしてはいけません。

新入社員がすぐ辞める原因③ 受け入れが「歓迎会とオリエンだけ」

新入社員の歓迎が、簡単な歓迎会とオリエンテーションだけになっていませんか。

このケースがマズいのは、新入社員に自社の全体像が伝わっていないために、断片的な印象だけで、この会社は本当に自分に合うのかな?と判断されてしまうことです。入社直後の数週間は、本人が会社を評価し直している期間でもあります。ここで会社の目指すものが伝わらなければ、目の前の雑務や人間関係だけが判断材料になってしまいます。

もうひとつ致命的なのは、新人を受け入れる上司との相性です。これが悪いともう終わりです。誰が面倒を見るかを現場任せにしている会社では、配属先の上司次第で新入社員の定着率がまるで変わってしまいます。

新入社員の受け入れは、仕組みを創って、組織的に行う必要があります。実はこの受け入れの仕組みこそ、ほとんどの中小企業に欠けている仕組みです。この仕組みが不在であることによって、せっかくコストをかけて採用した人が短期間で辞めてしまいます。逆に、この仕組みがあれば、短期間で戦力になります。具体的な進め方は新入社員のオリエンテーション準備の記事でも解説しています。

採用した人が「使えるかどうか」を本人次第にしていては何も解決しません。その人が使えるかどうかは、採用する企業側の仕組みの問題なのです。

新入社員がすぐ辞める原因④ “とりあえず”の外部研修

どうやって育てたらいいかわからないがために、とりあえず外部研修に行かせていませんか。

私は新卒で入った会社で、6か月間という通常ではあり得ない期間、様々な外部研修を受けさせてもらいました。ただ、正直、その時に学んだことが実務に入って役に立ったという記憶はほとんどありません。だから言えます。新入社員を外部研修に行かせて戦力化するのは無理です。少なくとも新入社員の教育は内製化が理想と言えます。

これには理由が二つあります。

第一に、教育というのは、業務で求められる能力レベルと現在の能力レベルのギャップを埋めるために行われるものです。問題は、新入社員の場合、業務で求められる能力レベルがどの程度か理解していないということです。だから何を目指して学べばいいのかわからない。要するに学校教育と同じで、将来役に立つかわからないものをなぜ勉強しないといけないのか、と思ってしまいます。本人がそんな状態では教育の成果が出るわけがありません。

第二に、外部研修はスキルや知識を身につけることに主眼が置かれるからです。新入社員にとって重要なのは、スキルや知識よりも、新しく入った会社の仕組みや文化を正しく把握することです。要するに、会社に馴染むプロセスが大事なのです。それが出来て初めてパフォーマンスが発揮できます。これは外部講師に教えてもらうことはできません。


能力やスキルだけを教えていると、会社に馴染めるかどうかが本人次第、ということになります。環境適応力がある人はうまいこと馴染めますが、そうでない人は振り落とされてしまいます。そうなると、成果を出せるまでに時間がかかったり、会社のことが誤解されたまますぐに辞めてしまう、ということが起こります。

新入社員の早期離職を防ぐために、まず着手すべき3つのこと

ここまでの4つの原因は、いずれも「仕組みの不在」という一点に集約されます。では何から手をつければいいのか。優先順位の高いものから三つ挙げます。

1. 求める人物像を、社長の頭の中から出す

まず着手すべきは、どんな人に来てほしいのかを文章にすることです。スキルや経験だけでなく、自社が大切にしている価値観、判断に迷ったときに何を優先する人であってほしいのかまで踏み込んで書き出します。ここが決まっていない状態で募集をかけるのは、ターゲットを決めずに広告を出すのと同じです。

この「大切にしている価値観」を明文化したものが、いわゆるコアバリューです。何を基準に人を選び、入社後に何を求めるのかが一本の線でつながるため、採用と定着の両方に効いてきます。詳しくはコアバリューを軸にした会社づくりの記事をご覧ください。

これは一度書けば終わりではなく、実際に活躍している社員と、早期に辞めていった人の共通点を突き合わせながら精度を上げていくものです。過去の採用の失敗は、貴重なデータでもあります。

2. 相性を見る基準を、面接の外に置く

面接の場で相性を見極めようとすると、どうしても社長や面接官の主観に引きずられます。そうではなく、あらかじめ言語化した価値観に対して、応募者がどう反応するかを見る形に変えます。判断基準を面接の前につくっておけば、誰が面接をしても評価のブレが小さくなります。

適性検査を使うのであれば、検査結果そのものを見るのではなく、自社の価値観や職務要件と照らして解釈できる状態にしておくことが前提になります。

3. 入社後90日を設計する

受け入れの仕組みで最も効果が大きいのは、入社後の最初の90日に何をどの順番で伝えるかを決めておくことです。会社の成り立ちと目指すもの、自分の仕事が全体のどこに位置するのか、何をもって「できている」とみなされるのか。この三つが最初の3か月で伝わっていれば、新入社員が孤立して不安を募らせる余地はかなり減ります。

誰が面倒を見るのかも、現場任せにせず事前に決めます。上司との相性が離職を左右するのであれば、その相性を運任せにしない設計が必要です。

事例:採用と退職の繰り返しから抜け出した社労士事務所

実際に、離職が止まらない状態から抜け出した事例を紹介します。エイチアールプラス社会保険労務士法人の代表社員・佐藤広一さんのケースです。

佐藤さんは9年間の実務経験を積んで独立し、当初から想定以上の成果を出していました。その自信と、自分が培ったクオリティを落としてはならないという強い想いが、かえって問題を生みます。初めてスタッフを雇ったとき、「自分にとっての当たり前」ができないことに愕然とし、いつも怒鳴り散らしていたそうです。委縮したスタッフは辞めていく。以後、採用と退職を繰り返し、事務所の人的資源は低空飛行を続けました。結局、業務も営業も経理もすべて自分一人で抱え、当時の睡眠時間は4時間程度だったといいます。

転機になったのは、知人から勧められた一冊の本でした。「しくみ」で解決するという考え方に衝撃を受け、自分が井の中の職人であって、マネジメントの意識がいかに希薄だったかを思い知らされたと語っています。

そこから最初に着手したのは、採用手法の改善ではありませんでした。3年後を見据えた組織図を描くことです。役割を整理して体系づけると、自分が抱えている役割の多さが見えると同時に、どのポジションにどんなスペックの人材が必要で、どこから手当てすべきかという採用方針が立ちました。

ここで佐藤さんが得た最も大きな変化は、自分の感情と組織上の役割を分離できたことです。「自分と合うかどうか」ではなく「組織として必要な人材なのかどうか」を採用基準にする。原因②で述べた、勘と経験に頼った採用から抜け出す実例がこれです。実際、自分が苦手なアウトソーシング領域には、そこを得意とする人材を採用しました。結果として自分は得意な業務に集中でき、事務所経営に充てる時間を確保できるようになっています。

入社後についても、スタッフひとり一人に研究テーマを与え、緊急ではないが重要なことへの意識づけを行いました。全員がすべての領域を深掘りすることは不可能でも、一人ひとりが得意領域を持てばチーム力が上がる。自分が答えられない質問にも、詳しいスタッフが対応できるようになります。さらに、スタッフには新規開拓の営業を課さないことを明言しました。数量は自分が担うから、単価を上げるための価値提供に徹してほしい、という役割の切り分けです。

もちろん、一度で軌道に乗ったわけではありません。作ったチェックリストが形骸化し、あるのに見られていない状態が起きました。そこで始めたのが、佐藤さん抜きでスタッフだけが集まる月末ミーティングです。一か月を振り返って起きた事象を共有し、人のせいにせず仕組みで解決する。その場でチェックリストを改善していきます。ちなみにチェックリストの最初の項目には「チェックリストを見る」を入れたそうです。

「これはゴールが無いのかなと思います」と佐藤さんは言います。常にメンテナンスし、人のせいにしない文化をつくろうとしている、と。早期離職を防ぐ仕組みとは、一度作って終わりの制度ではなく、こうして更新され続けるものだということがよくわかる事例です。

>>離職率低下の事例詳細はこちら

「本人の問題」にした瞬間、同じことが繰り返される

新入社員がすぐ辞めたとき、最も起こりやすいのは、原因を辞めた本人に求めてしまうことです。最近の若い人は、と語り始めた時点で、次の採用でもまったく同じことが起こります。佐藤さんの事例で言えば、怒鳴られて辞めていったスタッフを「うちの水準に届かなかった人」と片づけていたら、事務所はいまも低空飛行のままだったはずです。

採用にはお金と労力がかかります。にもかかわらず、採用後のちょっとしたプロセスが欠けているがために、その投資が丸ごと消えていく。これは避けたいところです。

逆に言えば、早期離職は自社の仕組みの穴を教えてくれる情報でもあります。辞めた理由を個人の資質に帰さず、どのプロセスが欠けていたのかという視点で振り返れば、一人辞めるたびに仕組みは強くなっていきます。

よくある質問

新入社員が入社1年以内に辞めるのは、どのくらい普通のことですか

厚生労働省の調査では、大卒の3年以内離職率は33.8%です。3人に1人が3年以内に辞めている計算になります。ただし、これは「よくあることだから放置していい」という意味ではありません。事業所規模が小さいほど離職率が高いという傾向が出ている以上、中小企業にとっては対策の有無がそのまま数字に表れる領域です。

辞めそうな新入社員は、面接で見抜けますか

面接官の直感で見抜こうとするほど精度は落ちます。見抜くべきなのは本人の資質ではなく、自社との相性です。そのためには、自社が何を大切にしているのかが先に言語化されている必要があります。基準がない状態でいくら面接回数を増やしても、判断は主観のままです。

新入社員研修は外部に出さないほうがいいのでしょうか

すべてを否定するものではありませんが、会社に馴染むプロセスだけは外注できません。自社の仕組みや文化を伝える部分は内製化し、汎用的なビジネススキルの補完として外部を使う、という切り分けが現実的です。順番を逆にすると、本人は何のために学んでいるのかがわからないまま研修期間を終えることになります。

受け入れの仕組みをつくるには、どのくらい時間がかかりますか

完璧なものを最初から用意しようとすると止まります。まずは最初の90日で伝えるべきことを紙一枚に書き出すところからで十分です。一人採用するたびに、うまくいかなかった箇所を書き足していけば、数回の採用を経て実用的な仕組みになります。佐藤さんの事例のように、月に一度振り返って更新する場を持てば、精度は自然と上がっていきます。


まとめ

新入社員がすぐ辞めるのは、本人の忍耐力の問題でも、時代の問題でもありません。求める人物像が決まっておらず、採用が勘に頼っていて、受け入れが雑で、育成が外部任せになっている。この4つが重なったときに、早期離職は構造的に起こります。

そしてこの4つはすべて、会社側が仕組みとして整備できるものです。人にバラつきがあることは変えられませんが、そのバラつきの受け止め方は変えられます。

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