数値化とは?定量化との違いと、数値化できないものの測り方



清水直樹
数値化の意味から、目標への落とし込み方、そして「数値化できない」と言われるものの測り方までを解説していきます。

数値化とは何か?

数値化とは、抽象的な概念や物事を具体的な数値で表現することです。主観的な要素を取り除き、客観的な情報に変換できます。数値にすることで、他者に情報を伝えやすくなります。会社経営で数値化が有効とされるのは、この2点があるからです。

かつては勘と経験に頼るしかなかったことも、いまは数値にできるようになりました。仕事の再現性が上がり、人材育成や売上向上のスピードも変わります。

この記事で扱う範囲を先に示しておきます。

  • 数値化と定量化の違い、言い換え表現
  • ビジョンから逆算して目標を数値に落とす5ステップ
  • 部門ごと・業務ごとの数値化の例
  • 数値化できないものをどう測るか
  • 数値化を続けるためのコツ

数値化と定量化・定量評価の違い

よく似た言葉があるので、先に整理しておきます。

  • 数値化…物事を数字で表すこと全般を指します。最も広い言葉です。「顧客満足を数値化する」のように使います
  • 定量化…量として測れる形にすることです。学術や品質管理の場面で使われる、やや硬い言葉になります。意味はほぼ同じで、日常のビジネス会話では区別せずに使って差し支えありません
  • 定量評価…数字にもとづいて評価することです。対になるのが定性評価で、こちらは言葉での評価を指します
  • 可視化・見える化…数値化した結果を、見える状態にすることです。数値化が先、見える化が後になります

順番で覚えると混乱しません。測れる形にする(数値化・定量化)→ 見える状態にする(見える化)→ 判断に使う(定量評価)という流れです。

数値化の言い換え表現

社内文書や提案書で使い分けたいときの言い換えです。

  • 定量化…最も近い言い換えです。硬い文書に向きます
  • 数字に落とす/数字にする…会話や社内チャットではこちらが自然です
  • 指標化する…測る対象を決める、という意味合いが強くなります
  • 可視化する…数値にして見えるようにする、という結果まで含めた言い方です
  • 目標を具体化する…目標設定の文脈で使われます

言葉を選ぶときの基準は1つです。相手が次に何をすればいいか分かるほうを選んでください。「数値化しよう」より「今期の指標を3つ決めよう」のほうが、会議は前に進みます。

数値化のメリット

数値化の重要性は、主観的な評価や感覚に頼らず、客観的なデータを手に入れられる点にあります。

目標到達への道筋が明確になる

数値化は目標を具体的な数字で表現し、達成までの計画や手順を明確にします。組織も個人も、目標に向かう道筋を持って計画通りに行動できるようになります。

改善が可能になる

数値化無くして改善なしです。進捗や成果が数値で見えるようになると、問題点や課題が明確になります。この情報をもとに改善策を立て、効果的な施策を実行できます。

部下へのフィードバックが明確にできる

数値をもとにした評価は客観的で具体的です。成果や進捗に基づいたフィードバックは、部下が自己成長につなげる助けになります。

相手に明確にコミュニケーションできる

数値は共通の言語です。数値を通じて情報を伝えると、意思疎通が円滑に行われます。

日々の活動の目的が明確になり、生産性が上がる

数値化により、日々の活動が具体的な目標に結びついていることが理解されます。作業の目的が明確になり、より集中して取り組めるようになります。

最終的な目標から逆算して数値化しよう。

数値化全体像
数値化全体像

数値化は全社的に取り組むべき課題です。会社が目指す最終的な目標(ビジョン)が明確でなければ、何を数値化すればいいのか分からないからです。

現場の管理職の方からよくいただく質問があります。「うちの部署では何を数値化したらいいでしょうか」というものです。その答えは会社全体の目標によって決まります。数値化は「全社⇒部門⇒個人」「長期目標⇒中期目標⇒短期目標」と逆算して設定しなければ意味がありません。現場で頑張って数値化に取り組んでいても、追っている数値が会社の長期的目標につながらなければ、逆に生産性を下げる要因になります。

1. ビジョンの明確な定義

最初に行うべきことは、会社の最終的なビジョンを明確に定義することです。企業がどのような状態にありたいのか、目指すべき方向は何かを把握する基本になります。業界リーダーになることを目指しているなら、それを具体的な言葉で表現します。

2. ビジョンを戦略的目標に落とし込む

ビジョンを実現するために、数年後には何を達成しないといけないのかという中間目標を設定します。仕組み経営ではこれを戦略的目標と呼んでいます。売上目標、利益率、市場シェアなど、会社ごとに異なります。5年後に売上を現在の2倍にし、利益率を10%向上させる、といった数値目標が考えられます。

3. 部門レベルまで逆算して数値化

次に、全体の戦略的目標を部門別に分解します。各部門が目標数値にどれだけ貢献すべきかを考え、部門ごとに具体的な数値目標を設定します。営業部門Aが売上の何割を担当し、それを具体的な金額で示します。製造部門が生産性向上でどれだけの利益をもたらすかも同様に定めます。

4.個人レベルに逆算して数値化

さらに部門の目標数値を個人レベルに落とし込みます。各メンバーの業績目標を設定し、その業績が部門目標や全体目標にどれだけ寄与するかを逆算します。各個人がビジョンの達成に向けた具体的な目標数値を持てるようになります。

5.数値チェックのサイクルを決める

数値目標や指標を設定したら、それをチェックするサイクルを決めます。サイクルが短いほど改善は早くなり、会社の成長スピードも上がります。ただし数値が出るタイミングや職場の環境にも左右されるので、自社に最適な期間を決めましょう。

チェックの場は、既存の会議体に組み込んでください。独立した「数値会議」を新設すると、忙しい月から消えていきます。

このように逆算して数値化していくことで、組織全体がビジョンに向かって一丸となり、各部門や個人が具体的な目標に取り組めます。社員も具体的な数値目標があることで、自分で進捗を追い、必要に応じて行動を調整できます。これが自律的な組織運営につながります。昨今OKRと呼ばれている手法と同じ流れですが、考えてみれば当然の数値化手法なのです。

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目標を数値化するときの3つの条件

「目標を数値化しなさい」と言われても、どんな数字でもいいわけではありません。使える数値目標には3つの条件があります。

  1. 担当者が自分の行動で動かせること…為替や景気のように、自分では動かせない数字を目標にしても意味がありません。動かせない数字は「見る指標」であって「追う指標」ではありません
  2. 週または月のうちに動きが見えること…年に1回しか出ない数字は、途中で軌道修正できません。追う数字は、期中に何度も確認できるものにします
  3. 誰が計算しても同じ数になること…定義が曖昧な数字は、会議のたびに数え方の議論になります。「新規顧客」とは何か。初回受注か、初回商談か。先に決めておきます

3つ目が抜けている会社が非常に多いです。数値化でつまずく最初の場所は、計算式ではなく言葉の定義です。

数値化した目標が機能しない4つの原因

数字を決めたのに動かない場合、たいてい次のどれかです。


  • 数が多すぎる…追う指標が10個あると、どれも本気で追えません。1部門3つまでが目安です
  • 行動につながらない…「顧客満足度を上げる」では、明日何をするかが決まりません。満足度を左右する行動(初回対応の時間など)まで分解します
  • 責任者がいない…後述しますが、名前の書かれていない数字は誰も追いません
  • 結果だけを見ている…売上は結果です。結果の数字だけを追うと、悪くなってから気づきます。手前の行動の数字を必ず一緒に置いてください

目標を具体的な行動に割っていく作業には、マンダラ型チャートのような枠を使う方法もあります。決めた指標は経営計画書に書き、毎年見直してください。

部門ごとの数値化例

数値化の全体像は前述したとおりですが、質問が多い部門ごとの数値化について見てみましょう。各部門の数値目標は、会社のビジョンやその部門の役割に応じて異なります。以下はあくまで例です。自社の場合はどうなるかを考えながらご覧ください。

人事部門

  1. 従業員の満足度: 年次調査を通じた従業員の意見を基に満足度を定量的に評価し、数値目標を設定。
  2. 採用効果: 選考プロセスから入社後の成果をモニタリングし、新入社員のパフォーマンスを具体的な数値で測定。

経理部門

  1. 収益性: 売上高、利益率、投資収益率などの指標を通じて企業の収益性を数値化。
  2. コスト削減: 部門内の運営コストや効率を数値で評価し、削減目標を設定。
  3. キャッシュフロー: 予測されるキャッシュフローの改善を数値目標として定め、達成度をモニタリング。

営業部門

  1. 売上目標: 期間ごとの売上目標を数値化し、個々の営業担当者に配分。
  2. 新規顧客獲得数: 毎月の新規顧客の獲得数を数値で評価し、目標を設定。

マーケティング部門

  1. ブランド知名度: 広告効果やキャンペーンの影響を数値で評価し、ブランド知名度の向上を数値目標に。
  2. リード獲得数: イベントやキャンペーンによって獲得できる潜在顧客の数を数値化し、目標を設定。

開発部門

  1. プロジェクト進捗: 開発プロジェクトの進捗状況を数値でモニタリングし、スケジュール遵守を目標に。
  2. 品質評価: プロダクトの品質を具体的な指標で評価し、改善目標を数値で示す。

製造部門

  1. 生産効率: 生産ラインの稼働率やサイクルタイムの改善を数値目標として設定。
  2. 不良品率: 製品の不良率を定量的に評価し、品質向上を目指す数値目標を設ける。

総務部門

  1. オフィス運営コスト: オフィス関連の費用を数値でモニタリングし、節約目標を設定。
  2. 労働安全率: 事故やケガの発生率を数値で追跡し、労働環境の安全性向上を目標に。

業務ごとの数値化例

部門ごとと同様に質問が多いのが、業務ごとの数値化です。営業などであれば数値化はラクですが、間接業務は数値化しにくいから困っている、という話をよく聞きます。以下に例を見てみましょう。

人材育成

  1. 研修受講率: 従業員が実施された研修に参加する割合を数値で評価。
  2. スキル向上度: 研修後のスキル向上の度合いを数値化してモニタリング。

事務業務

  1. 作業効率: 業務プロセスの効率を数値で測定し、改善目標を設定。
  2. 誤り率: 作業におけるエラーやミスの発生率を数値で追跡し、精度向上を目指す。

接客業

  1. 顧客満足度: サービス提供後の顧客の満足度を数値で評価し、向上を目指す。
  2. サービス提供時間: サービス提供にかかる時間を数値で測定し、迅速な対応を目指す。

数値化できないものはどうするか?

企業運営には、直接的に数値化が難しい要素があります。企業文化、社員のモチベーション、提案の質。こうした複雑で主観的な領域です。ここが数値化の相談で最も多い部分なので、詳しく扱います。

「数値化できない」の正体は3つに分かれる

まず切り分けが必要です。「数値化できない」と言われるものは、実際には次の3つのどれかです。混ぜて考えるから手が止まります。

  1. 本当に測れないもの…ごく少数です。ほとんどの場合、これには当たりません
  2. 測れるが、測る手間が見合わないもの…毎日全顧客に電話して満足度を聞けば測れますが、割に合いません。これは「測らない」と決めるのが正解です
  3. 何のために測るかが決まっていないもの…大半がこれです。測れないのではなく、測って何を判断したいのかが決まっていないだけです

3番の見分け方は簡単です。「この数字が悪かったら、明日から何を変えますか」と聞いてみてください。答えが出ないなら、それは測る対象がまだ決まっていない状態です。数字への苦手意識の問題ではありません。測る前の設計が空欄になっているという構造の問題です。

数値化できないものを測る4ステップ

3番だと分かったら、次の順で進めます。

  1. 何を判断したいのかを1文で書く…「新人が1人前になるまでの期間を短くしたい」のように、判断したいことを先に書きます
  2. その判断に必要な観察できる出来事を挙げる…「1人で顧客対応を完了できた回数」「先輩に質問した回数」など、目で見えることを挙げます
  3. 数えられる形に直す…回数、時間、割合、金額。この4つのどれかに落とせば、たいていのものは数えられます
  4. 1か月試して、判断に使えたかを確認する…使えなければ指標を捨てます。捨てることを前提に始めるのが、数値化を続けるコツです

3番の「回数・時間・割合・金額」は覚えておくと便利です。企業文化のような大きな言葉でも、この4つに割れば必ず何かは測れます。

代理指標の考え方と注意点

直接測れないものは、それと連動する別の数字で代用します。これを代理指標と呼びます。

  • 社員の定着…離職率だけでなく、入社1年以内の離職者数や、面談で退職を相談された回数
  • 顧客との関係…満足度調査だけでなく、再購入率、紹介の件数、問い合わせへの一次返信までの時間
  • 現場の負荷…残業時間だけでなく、締切に間に合わなかった件数、手戻りの発生件数

注意点が1つあります。代理指標は、それ自体を目標にすると壊れます。離職率を目標にすると、辞めそうな人を引き止めるだけの運用になりかねません。代理指標は「様子を知るための窓」であって、追う対象ではないと社内で共有しておいてください。

アンケート方式

企業文化や社員モチベーションは主観的で、数値化が難しいとされています。ただ、定期的な従業員アンケートや調査を実施し、意見や感想を数値的に集計すれば、定量的なデータが得られます。従業員が仕事にどれだけやりがいを感じているかも定量的に評価できます。

設問の作り方には型があります。自己流で作ると、翌年と比べられない設問になりがちです。

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独自の指標の設定

会社のイノベーティブ度合いを測るにはどうすればいいでしょうか。直接は測れないと思われるかもしれません。ただ、イノベーティブで有名なスリーエム社では、全売上に占める新製品売上高比率という独自の指標を作り、それによって自社のイノベーティブ度合いを測定しています(アイリスオーヤマ社も同様の指標を使っています)。

また、仕組み経営では、会社がいかに自律的に運営出来ているかを測定するために、”経営自立度”という独自の指標を作っています。

独自指標をつくるときの目安は、他社と比べるためではなく、自社の去年と比べるために作るということです。他社比較を目的にすると、業界平均のある指標しか選べなくなります。

デジタル技術の活用

大和製麺所さんが運営するラーメン大学では、味の数値化に成功しています。ラーメン大学は7日間でプロの味が作れるという触れ込みで有名なラーメン店開業スクールです。普通、ラーメン屋を開業するには自らの足で食べ歩き、どこかで何年も修行し、おいしいラーメンの味を創り上げていきます。ラーメン大学ではデジタルクッキングという概念によって味を数値化し、短期間でおいしいラーメンを作れる仕組みを構築しています。

これらの具体例からも分かるように、数値化が難しいものも、新しいアプローチや独自の指標を導入すれば数値的な評価が可能になります。味という最も主観的なものが測れているのですから、たいていの業務は測れると考えてよいはずです。

数値化の例:ソフトバンク孫正義氏

ソフトバンクに入社し、2000年に社長室長を務めた三木雄信氏は、孫正義氏から学んだ数値化の仕事術を著書『孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術』(PHP研究所)などで紹介しています。その内容の一部を見てみましょう。

  • 数値化の仕事術は4つのプロセスに分けられる。①現実の事象を数値で把握する、②分析して問題のありかと原因を探る、③解決策を考えて実行する、④結果を再び数値で把握・分析する。
  • 数値化はあくまで手段であり、目標達成のための道具である。数値化そのものが目的になってしまう状態に注意する。
  • 数値化が問題解決につながらない理由として「分け方が甘い、あるいは不適切」ということが挙げられる。営業部の売上を全体だけで見るのではなく、「新規顧客獲得数」や「業種ごと」に分けると、具体的な問題点が浮かび上がり、解決策が見つかる。
  • 売上を「継続的な売上」と「一時的な売上」に分け、その割合を把握することは、企業の基盤の強化や業績の安定につながる。特に「継続的な売上」の比率を増やすことが重要である。
  • 会社の文化として「数字で考え、数字で語ること」を求める。リーダーシップ層から現場まで、数字を意識して仕事を進める。
  • データ分析手法(プロセス分析、散布図と単回帰分析、重回帰分析、パレート図分析、T勘定、差異分析、LTV分析)は、複雑な統計学の知識や高度な表計算のスキルがなくても利用できる。
  • ソフトバンクでは、経営陣が見る数字と一般社員が見る数字が基本的に同じであり、全社員が共有している。社員全員が数字を理解し、業務改善に活かすことが求められる。

中小企業が真似できるのは、最後の2つです。高度な分析より、経営陣と社員が同じ数字を見ているかどうかのほうが先に効きます。

数値化のコツ

最後に、数値化の際のコツについて付け加えておきます。

理念から逆算する

先ほどビジョンから逆算して数値化すると言いましたが、指標の設定にあたっては、同時に会社の理念も意識することが大事です。理念を掲げている会社は多いですが、その多くがお飾りになってしまっています。そうならないために、理念を数値化するとどうなるのか、という視点での発想も大事です。

たとえば「社員を大事にする」という理念があるなら、平均給与を数値化することで給与の公平性や労働環境の向上を確認できます。福利厚生制度を数値化し、利用状況や効果を数値で把握すれば、効果的な制度の構築や改善が可能になります。

「数値化 – 改善 – 標準化 」を回す

仕組み経営では、数値化とセットで「標準化」「改善」をお伝えしています。この三つのサイクルを高速で回すことによって、会社の成長スピードが高まります。上記に述べてきた方法によって「数値化」を行います。次に、その数値を改善するための活動に取り組みます。改善出来たら、それを標準化して社内で再現可能にします。

たとえば営業活動において、成約率という数値を設定したとします。これまでの営業プロセスでは成約率30%です。これを「改善」します。営業の資料等を変えて成約率40%が出せるようになったとします。そうしたら、そのやり方を他の人も再現可能にするために「標準化」するのです。これによって会社全体のパフォーマンスが上がり、成長につながります。

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見える化=見えてしまう化せよ

数値化したら、その進捗や結果を見える化する必要があります。見える化とは言い換えれば”見えてしまう化”です。ありがちな間違いは、設定した数値がソフトウェアの奥深くに入り込んでしまい、アクセスするのが面倒な状態になることです。こうなると多くの場合、その数値は放ったらかしになります。


そうならないように、数値化したらイヤでも目に入ってくる状態にするのが理想です。以下の記事でその辺のことを書いています。

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数値のオーナーシップを移す

「数値の責任者がいない会社」では、誰も当事者意識を持てません。数字は単なる飾りとなり、社員は自分ごととして捉えないのです。

すべての数値(売上、顧客満足度、在庫回転率、求人応募数など)には責任者が必要です。多くの中小企業では、数字が悪化したとき誰が説明するのかという役割が曖昧なままです。社員は無関係でいられます。結果として、社長だけが孤独に数字を見つめ、焦り、疲弊していきます。

社員も数字に真剣になるためには、数字のオーナーシップを移すことが重要です。単に数字を共有するのではなく、「この数字の責任者はあなたです」と明確に任せます。責任者が決まれば、その数字に意味が生まれます。どうすれば良くなるかを考える主語が生まれるのです。

社員が数字に真剣にならないのは熱意不足ではありません。その数字に名前が書かれていないからです。名前が入った数字は人を動かします。責任者を決めるところまでを経営チームで分担しておくと、社長ひとりが全部の数字を抱える状態から抜けられます。

数値を分解させる

社長の長期目標は志が込められた”想いの結晶”です。ただ現場が動くには、具体的な行動指針への分解が必要になります。幹部の役割は、ビジョンを”現場の言葉”に翻訳することです。

幹部は数字でビジョンを語れることが最低条件です。数字はビジョンを現実に変える設計図だからです。「年商10億」という目標を、市場・商品・部署別の数値目標や行動計画に分解できる力が求められます。

幹部が数字に強くなれば社長の思考負担が減り、社長は本来の仕事に専念できます。組織は”社長の脳”だけでなく”幹部の脳”でも動き始め、自律する組織へと変わります。この力をどう見極め、どう育てるかは幹部候補の育成で扱っています。

数値の向上を仕組み化する

仕組み経営では、数値化した指標を継続的に向上させていくために、仕組み化を進めています。数値の改善が個人のスキルに依存していては再現性がなく、持続的な成長につながらないからです。

たとえば、先ほど事務業務の数値化で挙げた「作業効率」という指標を考えてみましょう。作業効率は個人の努力、たとえばパソコンスキルの向上や段取りの良さで左右されます。そういったスキルを訓練するのも大事かもしれませんが、いずれにしろ人に左右されます。ある人は効率よくできても、別の人はできないということになります。私たちの目的は会社全体のパフォーマンス向上ですから、これでは長期的な解決策になりません。

自社の独占的な仕組みを作る

そこで、作業効率を上げるにはどういう仕組みを作ればいいか、と考えます。作業の順序を変える、道具やツールを変える、人員配置を変えるなどです。これによって恒常的に作業効率が上がるようにするのが仕組み化です。

人は大事ですが、人は会社の独占的資産ではありません。いくら優秀な人でも、いずれ去ってしまう可能性があります。しかし、ひとたび創り上げた仕組みは自社の独占的資産であり、ずっと社内に残り続け、効果を生み続けます。そのような考えで数値化とその改善に取り組むことが、持続的な成長につながります。

数値化についてよくある質問

数値化と定量化は何が違いますか?

実務ではほぼ同じ意味で使って構いません。定量化のほうがやや硬い言葉で、学術や品質管理の場面で使われます。強いて分けるなら、数値化は数字にすること全般、定量化は量として測れる形にすることを指します。

数値化できないものは、無理に数値化すべきですか?

無理に測る必要はありません。判断に使わない数字を測っても手間が増えるだけです。「この数字が悪かったら明日から何を変えるか」に答えられないなら、測らないと決めてください。

追う指標はいくつが適切ですか?

1部門あたり3つまでを目安にしてください。10個あると、どれも本気で追えません。少なく始めて、使えなかったものを捨てながら入れ替えるほうがうまくいきます。

数値化すると社員が数字に追われて疲弊しませんか?

疲弊するのは、結果の数字だけを追わせている場合です。売上のような結果は、社員が直接動かせません。動かせる手前の行動(訪問件数、初回対応の時間など)を一緒に置くと、何をすればいいかが分かるので負荷の感じ方が変わります。

数値化はどこから始めればいいですか?

すでに社内にある数字から始めてください。新しく測り始める前に、試算表や日報にある数字のうち、誰も見ていないものを1つ選びます。責任者を決めて、月次で確認する。この1周が回ってから、測る対象を増やしてください。

小さな会社でも数値化は必要ですか?

必要です。むしろ人数が少ない会社ほど効きます。社長が全部を見ていられるうちは会話で足りますが、目が届かなくなった瞬間に判断材料がなくなります。見えなくなってから作るのでは間に合いません。

仕組み化の詳しいことについては以下の仕組み化ガイドブックに載せていますので、合わせてご覧ください


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