「毎日忙しく働いているのに、なぜ会社は成長しないのだろう?」
「自分がいないと会社が回らない…この状況から抜け出したい」
もしあなたが経営者や起業家で、このように感じているなら、それは「仕事」と「ビジネス(事業)創り」を混同しているサインかもしれません。
日々、目の前の「仕事」をこなすことに追われ、本来経営者が注力すべき「ビジネス(事業)を創る」活動が疎かになっていませんか?
この違いを理解し、意識を変えることが、会社の成長とあなた自身の自由を手に入れるための第一歩です。
仕事をすることと、ビジネスを創ることの違い
以下は、仕事をすることと、ビジネスを創ることの違いを一覧にしたものです。
比較項目 | 仕事をする (Working in the business) | ビジネス(事業)を創る (Working on the business) |
焦点・目的 | 日々の業務遂行、目の前のタスク処理 | 経営者不在でも機能・成長する「仕組み」「組織能力」の構築 |
主な活動 | 営業、製造、サービス提供、問題解決、具体的指示、経理作業等 | 仕組み化、チームビルディング、財務・管理体制構築、戦略的意思決定、文化醸成等 |
依存対象 | 経営者(や特定社員)個人のスキル・経験・時間 | 構築された「仕組み」や「組織」 |
主な結果・効果 | 短期的な成果、属人化、経営者がボトルネックになりやすい | スケーラビリティ(成長可能性)、持続可能性、経営者の時間創出、社員の成長 |
時間軸 | 短期的・現在 | 長期的・未来 |
例えるなら | プレイヤー、職人、技術者 | 監督、オーナー、設計者、建築家 |
「仕事をする」とは? – 優れたプレイヤーであり続けることの限界
「仕事をする(Working in the business)」とは、日々の業務を遂行し、目の前のタスクを処理することを指します。
- 顧客への営業電話、商談、提案書の作成
- 製品の製造、サービスの提供、納品
- 緊急の問題解決、クレーム対応
- スタッフへの具体的な作業指示
- 請求・支払いなどの経理作業
これらは事業運営に不可欠であり、特に創業期には経営者自身が最前線でこれらを担う必要があります。しかし、この働き方だけでは、以下のような限界に直面します。
- 依存: 経営者個人のスキル、経験、時間に事業が依存してしまう。
- 限界: 経営者の労働時間や処理能力が、会社の成長の上限となる。
- 代替困難: 経営者が不在になると、事業運営に支障が出る。
これは、優秀なプレイヤーとして試合で得点を重ねている状態に似ています。あなたが休めば、チームのパフォーマンスは著しく低下します。
これは自分で経営しているとはいえ、結局のところ作業者として雇用されているのと大して変わりません。
「ビジネス(事業)を創る」とは? – 勝利し続けるチームと仕組みを設計する
一方、「ビジネス(事業)を創る(Working on the business)」とは、あなたがいなくても事業が自律的に機能し、成長し続けるための「仕組み」と「組織能力」を構築することです。
- 仕組み化: 誰がやっても高い成果を出せる業務プロセス(マニュアル、チェックリスト、システム等)を設計し、改善し続けること。
- チームビルディング: 理念に共感し、自律的に動ける人材を採用・育成し、適切な権限を委譲すること。
- 財務・管理体制の構築: 事業の状態を正確に把握し、適切な意思決定を行うための指標やルールを設定すること。
- スケーラビリティの確保: 将来の成長を見据え、拡張可能なビジネスモデルやインフラを整備すること。
- 企業文化の醸成: 会社の価値観を浸透させ、社員が自律的に判断・行動できる基盤を作ること。
- 戦略的意思決定: 事業の目標を設定し、それを達成するための計画を立て、実行・評価・修正するプロセスを確立すること。
すなわち「自社独自の再現性のある仕事のやり方(仕組み)」を創り、「社員を生かす土壌」を整える活動です。
例えるなら、監督やオーナーとして、長期的に勝利し続けるための戦略を描き、選手(社員)を育成し、チーム(組織)が最高のパフォーマンスを発揮できる練習方法や戦術(仕組み)を設計・導入することです。
「仕事をする」と「ビジネスを創る」の違いを知る重要性
この違いを理解し、「ビジネスを創る」視点を持つことは、なぜ重要なのでしょうか?
- 成長限界の突破: 経営者個人の能力を超えて、事業をスケールさせることが可能になります。
- 持続可能性の向上: 経営者に依存しないため、事業が長期的に継続・発展する基盤ができます。
- 経営者の時間創出: 日々の「仕事」から解放され、より重要度の高い戦略的活動や、経営者自身の人生を豊かにする活動に時間を使えるようになります。
- 社員の成長促進: 仕組みと権限委譲により、社員が自律的に考え、挑戦し、成長できる機会が生まれます。
あなたの時間はどちらに偏っていますか?
今、あなたの時間の使い方は、「仕事をする」ことと「ビジネスを創る」こと、どちらに偏っているでしょうか?
もし、日々の「仕事」に追われていると感じるなら、意識的に「ビジネスを創る」ための時間を確保することから始めてください。週に数時間でも構いません。その時間を使って、業務プロセスの見直し、チームメンバーとの対話、将来の戦略について考えるなど、一歩を踏み出しましょう。
「ビジネスを創る」働き方へシフトするための簡単ガイド
「仕事をする」状態から「ビジネスを創る」状態へ移行するには、意識的な努力が必要です。以下に、今日から始められる簡単なステップをご紹介します。
現状把握から始める(Awareness & Analysis)
- 時間の見える化: まず1週間、自分が何に時間を使っているかを記録してみましょう。「仕事をする」時間と「ビジネスを創る」時間はどれくらいか、そして多くの時間を費やす割に成果に繋がりにくい、価値の低い活動である『D時間』(※)は何かを把握します。
※ 時間価値の考え方:活動は価値に応じてA・B・C・Dに分類できます。A時間(最重要戦略活動:例 1%の時間で50%の成果)、B時間(高価値な仕組み作り・チーム育成等:例 4%で64%の成果)、C時間(必要な日常業務:例 15%で80%の成果)、そしてD時間(低価値活動:例 80%で20%の成果)です。このD時間を特定し削減することが、高価値なA・B時間へのシフトの第一歩となります。
- 課題の特定: 繰り返し発生している業務、頻繁に起こる問題、自分がボトルネックになっていると感じる点をリストアップします。これらが「仕組み化」の候補です。
「ビジネスを創る」時間を確保する(Create Dedicated Time)
- 聖域化: 週に最低2〜3時間でも良いので、「ビジネスを創る」ための時間をスケジュールに組み込み、他の予定を入れない「聖域」とします。(例:「フォーカスデー」「プライムタイム」)
- 環境整備: その時間は電話やメールをオフにするなど、集中できる環境を作りましょう。
小さな「仕組み化」に着手する(Start Systemizing)
- 一つ選ぶ: ステップ1で特定した課題の中から、取り組みやすいものを一つ選びます。
- 現状プロセス記録: まずは現在のやり方を簡単に書き出します。完璧である必要はありません。
- 改善と文書化: どうすればもっと良くなるか考え、簡単なチェックリストや手順メモ、テンプレートなどを作成します。これが最初の「仕組み」です。可能であれば、担当スタッフを巻き込みましょう。
一つ、手放してみる(Delegate & Empower)
- 委任候補選定: 自分がやっている「仕事」(特に価値の低いD時間)の中から、今週一つ、他の人に任せられるものを選びます。
- 明確な依頼: 目的、期待する成果、必要な権限を明確に伝えて依頼します。
- 信頼と支援: 任せた後は、細かく口出しせず見守ります。ただし、困ったときに相談できる体制は整えましょう。これは「人が生きる土壌」作りの一環です。
外部の視点を活用する(Seek External Perspective)
- 信頼できる経営者仲間、メンター、コーチなどに、現状や課題について話してみましょう。客観的な意見やアドバイスが、新たな気づきを与えてくれます。
焦らず、継続する(Iterate & Be Patient)
- このシフトは一朝一夕には実現しません。小さな成功体験を積み重ね、仕組みを少しずつ改善していくことが大切です。完璧主義にならず、まずは始めること、そして続けることを意識しましょう。
まとめ:経営者は仕事をするな。ビジネスを創れ。
現場の仕事に追われている経営者は多いです。
営業に出かけ、スタッフの相談に乗り、経理も最終チェック。やることは山ほどあるし、それをやってこそ「仕事をしている」という実感すらある。
けれども——その姿を客観的に見ると、それはもはや「経営」ではありません。
「仕事をするな、ビジネスを創れ」
これは、経営者の“生き方”の問題です。
多くの人は、「現場に関わる=責任感がある」と思いがちです。
しかし、現場の仕事にずっと関わり続けていては、会社が“その人頼み”になります。つまり、あなたが休めば、会社も止まる。誰かに任せようにも、あなたしか知らない判断や進め方ばかりだから、怖くて任せられない。
これは、組織として極めて不健全な状態です。
では、どうすればいいのか?
その答えが「仕組みを創ること」です。
ただし、ここでいう「仕組み」とは、よくある“マニュアル”や“チェックリスト”とは違います。
他の会社が真似できない価値の出し方を、誰がやっても実現できるようにする。それこそが、本来の意味での仕組みです。
仕組みがあるからこそ、社員は「何をすればいいか」が明確になり、迷わずに力を発揮できます。挑戦のハードルが下がり、自信が育ち、成長の連鎖が起きるのです。
つまり、仕組みを整えるとは「社員が育つ環境をつくる」ことであり、それは結果として、会社全体が強くなる道でもあります。
仕事をするのではなく、ビジネスを創ることに取り組みたい方は、以下から仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。