経営者の仕事

経営者の仕事とは?3つの仕事内容と成長ステージ別の役割



清水直樹
経営者の仕事とは何かを解説します。いざ起業して経営者になったものの、あれ、経営者の仕事ってなんだっけ?という方、または先代から会社を継いで、何をすべきか?を日々悩んでいる後継者の方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、主に中小企業を対象に、経営者の仕事とは何か?を解説していきます。

この記事の信頼性

経営者の仕事を解説したはじめの一歩を踏み出そう

この記事は世界No.1の中小企業アドバイザー(米INC誌による)、マイケルE.ガーバー氏著「はじめの一歩を踏み出そう」の内容をベースにしています。世界700万部のベストセラーの内容を日本の会社に当てはめてご紹介していきます。執筆者である私はマイケルE.ガーバー氏のメッセージをおそらく日本で最も多く翻訳したり、代理となって発信してきましたので、本記事の内容も信頼いただける内容かと思います。

 

姉妹記事:社長の仕事とは?

「社長」という立場から見た仕事内容の一覧は、姉妹記事にまとめてあります。あわせてご覧ください。

 

経営者とは?社長・役員との違い

本題に入る前に、言葉の整理をしておきます。

経営者とは、会社の経営について最終的な責任を負う人のことです。法律で定められた用語ではないため、明確な線引きはありません。一般には次のように使い分けられています。

  • 経営者……会社の経営に責任を負う人の総称。社長・会長・役員をまとめて指すことが多い
  • 社長……社内での最上位の役職名。会社が自由に決められる呼び方
  • 代表取締役……会社法上の呼び方。会社を代表して契約などを行う権限を持つ
  • 役員……取締役や監査役など。経営に関わる立場だが、日常の判断まで担うとは限らない

呼び方を厳密に決めることに、あまり実務上の意味はありません。大事なのは名前ではなく、その人が何に責任を負っているかです。本記事では「会社をどうするかを最終的に決める人」という意味で経営者という言葉を使います。

役職としての違いをもう少し詳しく知りたい方は「会長と社長の違い|どちらが偉い?序列・権限と会長の6つの役割」をご覧ください。

 

経営者の仕事内容はこの3つ

経営者の仕事をわかりやすくいうと

経営者の仕事内容を一言でいうと、

1.会社が向かうべき目的地を定め

2.現在地を知り

3.そこに至るためにあらゆることを行うこと

です。

こう書けば単純に思えますね。

ただ、この3つは順番が大事です。目的地が決まっていなければ、現在地を知っても意味がありません。いまどこにいるかが分かるのは、どこへ向かっているかが決まっているからです。そして3つ目の「あらゆることを行う」の中身は、会社の成長段階によってまったく変わります。ここが本記事の中心になる部分です。

私が多くの経営者の方と接してきた経験を踏まえると、この仕事を実践できない人が多いようです。それには以下の二つの理由があります。

会社が向かうべき目的地を決められない

毎日、忙しく働いてはいるものの、最終的にどのような会社にしたいのか?その目的地や方向性が明確でない経営者もいます。こういった経営者は、私たちが職人型ビジネスと呼んでいる症状に当てはまっているケースが多いです。

職人型ビジネスは、自分の専門的な技術や知識をベースに起業したパターンです。毎日、自分が専門的な仕事をすることで成り立っています。とりあえずお客さんは来ますし、売上も立ちます。ところが自分が現場から離れることができないため、会社が成長しません。職人型ビジネスでは、自分がずっと働き続けて、会社の収支を成り立たせていく、という未来しかありません。

やりたいことはあるが、実行力がない

逆のケースもあります。こういう会社にしたい、こういう貢献をしたいという想いはあるものの、実行力に欠けている場合です。実行力がない経営者は、いわゆる夢想家とレッテル貼りをされてしまうことがあります。本人には実行力が欠けているという認識はありません。ただ、既存の事業を最適化するよりも新しい事業を試すことに目が行きがちなので、はたから見るとどれも中途半端に映ってしまうのです。

 

というわけで、経営者の仕事は、

1.会社が向かうべき目的地を定め

2.現在地を知り

3.そこに至るためにあらゆることを行うこと

という3つが必要になります。


とはいえ、具体的に何をすればいいのか?ということになると思いますので、以下に具体的に解説していきましょう。

 

経営者の仕事を図にしてみる

経営者の仕事をステージ毎に解説します。まず全体像を一覧にすると、次のようになります。

  • 創業ステージ……価値提供・集客・セールスを自分で回す
  • 初期成長ステージ……その3つを仕組み化し、自分は現場を離れる
  • 成長ステージ……組織・ブランド・財務の仕組みをつくる
  • 安定運用(成熟)ステージ……リーダーシップを発揮し、仕組みを改善し続ける
  • 承継ステージ……自分が去ったあとも成長できる形をつくる

ここで注目していただきたいのは、経営者の仕事が段階ごとに入れ替わっていく点です。前の段階で正しかったやり方が、次の段階では会社の足を引っ張ります。創業期に自分で全部やったことは正しく、成長期に自分で全部やろうとするのは間違いです。同じ行動でも、段階が変われば評価が変わります。

図にすると以下のようになります。

経営者の仕事はステージ毎に変わる

 

 創業ステージにおける経営者の仕事:商売の基本サイクルを自分で回す

創業ステージにおける経営者の仕事は、「価値提供」「集客」「セールス」です。

  • 価値提供・・・商品やサービスの開発、または提供
  • 集客・・・見込み顧客を集める
  • セールス・・・見込み顧客を顧客にする

全部自分でやることで「現場の勘」が身につく

創業ステージにおいては社員が社長一人、または数人しかいません。そのため、社長の仕事は次の3つになります。見込み顧客を集客し、セールスし、商品やサービスを提供(価値提供)することです。創業時にはとにかくこの3つをきっちり回さないと売上が立たず、商売が軌道に乗りません。したがって、経営者自ら集客、営業、価値提供に時間を使い、売上を上げる必要があります。

良く成長企業の創業者が「最初のころは全部自分でやったよ」と回想しているインタビューがあったりしますが、それは自分でこの商売の基本サイクルを回していたことを指しているはずです。自分でチラシまいたり、自分で営業したり、自分で商品を納品しに行ったり、、、等々。やることはたくさんあります。

経営者というのは、初期のころに全部自分で商売の基本サイクルを回すことで、いわゆる”勘”を身に付けます。どのような商品であればお客様受けがいいのか?お客様が望んでいるのは何か?等々、現場の勘という奴です。

逆に、創業社長から会社を引き継いだ場合、この経験を自分でしていないために、現場の勘が身につかず、苦労することが多いようです。

 

初期成長ステージにおける経営者の仕事:商売の基本サイクルを仕組み化し、現場を離れる

創業ステージを超えると、初期成長ステージに入ります。初期成長ステージ入る目安としては、”人手が足りずに顧客に対応できない”という状態が来たときです。

経営者が現場から抜けられるかどうかで成長できるかどうかが決まる

このステージは、商売の基本サイクルを頑張って回してきた結果、顧客も安定して増え、売上も安定してきます。このステージにおける経営者の仕事は、いままで自分が行ってきた「価値提供」「集客」「セールス」という仕事を、ほかの人でもできるように仕組み化することです。

商売の基本サイクルから自分の手を放すことができれば、多くの自由時間ができ、さらなる成長へと向かうことができます。逆にここから手を放すことができなければ、いつまでも現場が働くことになり、それ以上の成長を模索する余裕ができません。

ここが会社が成長できるかどうかの最初の分岐点となります。多くの会社がスモールな状態から抜け出せないのは、社長が現場から抜けることができないのが理由です。

 

成長ステージにおける経営者の仕事:商売の基本サイクルを高速で回すための仕組みづくり

現場を離れて経営者の時間が出来たら、次にやるべきことは、商売の基本サイクルをさらに高速で回すために仕組みづくりを行うことです。より具体的に言えば、「組織」「ブランド」「財務」に取り組みます。

  • 組織・・・人の採用や育成などの組織戦略
  • ブランド・・・自社のポジショニングや顧客体験などの最適化
  • 財務・・・予算計画やキャッシュフロー計画等

これらの3つの仕組みづくりに取り組むことで、商売の基本サイクルを回すのはより簡単になります。

経営者の仕事は、自ら現場で働くことよりも、社員の仕事を楽にすることに移行する

組織づくりを行い人が採用出来て育っていけば、商売の基本サイクルを回せる人が増え、加速度的に成長できます。

また、ブランド力が高まれば、集客やセールスの仕事も楽になります。

財務力があれば、多くの予算を採用や広告、商品開発に投資できるため、レバレッジが効きます。

このステージで経営者が間違ってしまうのは、社員をもっと働かせて、力業で商売の基本サイクルを回そうとすることです。

実際には経営者がやるべきことは逆です。

つまり、このステージでは、経営者は、社員の仕事をいかに楽にさせてあげられるか?ということを考えないといけません。社員は現場で商売の基本サイクルを回してくれているわけですから、彼らが楽に仕事をできるような仕組みづくりをしてあげれば、商売の基本サイクルは勝手に高速で回るようになります。

 

安定運用(成熟)ステージにおける経営者の仕事:リーダーシップ

安定運用ステージに入ったかどうかを判断するのは難しいものです。目安としては、組織・ブランド・財務の仕組みがある程度整った段階と言えるでしょう。

このステージに入ると、経営者は現場の仕事にほとんどかかわらなくなります。人事部や総務部、財務部といったスタッフ部門の人材も揃ってきます。いわゆる本当に経営者らしい立場になると言えるでしょう。

このステージにおける経営者の仕事は、ずばり、リーダーシップです。リーダーシップという言葉にも色々と意味がありますが、ここでいうリーダーシップとは、会社の目的地や方向性を明確にし、それを組織全体に共有することだと言えるでしょう。


仕組みの絶え間ぬ改善こそ経営者の仕事

安定運用ステージでは、これまで作り上げてきた様々な仕組みが会社内で動いているはずです。ここで大事なのは、それらの仕組みが、会社の目的地や方向性に向けて連動して動いているかどうかを絶え間なくチェックし、改善し続けることです。

実際、大企業の経営者が日々やっていることを見てみてください。ビジョンを語り、価値観を組織内に共有し続けている。ほとんどこの2つです。

ちなみに補足になりますが、このリーダーシップの役割は、何も安定運用ステージだけに求められるわけではありません。創業ステージ、初期成長ステージ、承継ステージすべてに共通する仕事と言えます。

 

承継ステージにおける経営者の仕事:自分が去った後に、より大きく成長できる仕組みづくり

どんな経営者であっても避けられない事実は、いずれ経営者を誰かに譲り、自分は去らなくてはいけない、ということです。経営者としての最後の仕事は、その時に向けて準備をすることです。

大事なのは、そのタイミングが来てから準備するのでは遅い、ということです。自分が病気になったり、または死んでしまったりしてからでは、承継の準備ができないのです。一般的には5年〜10年かけて承継の準備をします。そのため、自分が引退するタイミングを決め、そこから逆算して準備をする必要があります。これをいわゆる出口戦略と言います。後継者をどう選ぶかについても、あわせて考えておく必要があります。

出口戦略については以下の記事で詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。

▶ビジネスと社長の出口戦略(イグジットプラン)完全ガイド

経営者の最後にして最大の仕事

承継は、単に経営者という役職を誰かに引き継げばいいわけではありません。大事なことは、経営者が交代した後も、会社が成長し続けられるような仕組みづくりを行うことです。有名な格言で次のようなものがあります。

優れたリーダーは、現役時代に実績を作る。しかし、偉大なリーダーは自分が去ったあとにも実績を作る。

たとえばアップル社は、スティーブジョブズが去った2011年も業績を上げ続けています。

むしろ、彼が去ってからのほうが業績の伸びが著しい、と言ったほうが良いかも知れません。彼は現役時代に実績を出しましたが、さらに大事なことに、自分が去った後も、業績を上げ続ける会社を創ったのです。

一般的に、カリスマ経営者ほどこれができません。カリスマであるがゆえに、経営がその人個人に依存してしまうからです。結果として、その人が去った途端に成長できなくなります。

スティーブジョブズもカリスマ経営者でしたが、彼を本当にカリスマたらしめているのは、その人物像や舞台上でのパフォーマンスではありません。彼が、在籍中に、”自分がいなくなっても成長できるようにするための仕組み”を創っていたことこそが最大の功績であり、カリスマと称賛される理由なのです。

詳細はこちらの記事に詳しく書いてあります。

▶スティーブジョブズの最大の功績は?

 

経営者の仕事に関するよくある質問

経営者の仕事を一言でいうと何ですか?

会社が向かう目的地を決め、現在地を知り、そこに至るためのあらゆることを行うことです。ただし3つ目の中身は成長段階によって変わります。創業期なら自分で売ること、成長期なら仕組みをつくること、成熟期なら方向を示し続けることが中身になります。

経営者の仕事と、社長の仕事は違いますか?

指しているものはほぼ同じです。「社長」は社内の役職名、「経営者」は経営に責任を負う人の総称という違いがあるだけです。社長という立場から見た仕事内容の一覧は、冒頭でご紹介した姉妹記事にまとめてあります。

経営者の役割とは何ですか?

「仕事」と「役割」はほぼ同じ意味で使われますが、あえて分けるなら、仕事は日々やること、役割は会社の中で担っている機能を指します。経営者の役割は、判断が止まらないようにすることです。会社の中で誰も決められない案件が出たとき、最後に決めるのが経営者です。逆にいえば、決められる人を増やしていけば、経営者が決めるべき案件は減っていきます。

経営者になったら、現場の仕事はやめるべきですか?

段階によります。創業期はやるしかありません。問題は、人手が足りずにお客様に対応しきれなくなった段階でもまだ現場にいる場合です。この分岐点で現場から手を放せるかどうかが、その後の成長を決めます。働き方そのものの考え方は「経営者は仕事をするな|仕事とビジネスを創ることの違い」で扱っています。

後継者として会社を継ぎました。何から手をつければいいですか?

本記事で述べたとおり、創業者が自分で商売の基本サイクルを回して身につけた「現場の勘」を、後継者は持っていないことが多いものです。これは能力の差ではなく、経験した工程の差です。まず、自社の価値提供・集客・セールスがどう回っているのかを、一度自分の目で追いかけてみてください。そのうえで、仕組みとして足りない部分を見つけるのが順番です。

経営者の仕事に必要なスキルは何ですか?

段階によって変わりますが、共通して必要なのは「決めること」と「任せること」の2つです。どちらも生まれつきの資質ではなく、判断の基準を書き出したり、任せる範囲を決めたりといった作業で身につきます。必要なスキルの全体像は「経営者に必要なスキル30選」の記事で整理しています。

 

経営者の仕事を正しく行いましょう

以上、本記事では経営者の仕事について解説してきました。

あらためて申し上げたいのは、経営者の仕事は固定されたものではないという点です。会社の段階が変われば、やるべきことは入れ替わります。いま自分が使っている時間が、いまの段階に合っているかどうか。それを定期的に見直すこと自体が、経営者の仕事の一部です。私どもでは、本記事でご紹介したステージ毎の経営者の仕事に基づき、中小・成長企業を成長させる仕組みづくりをご支援しています。詳しくは以下のガイドブックからぜひご覧ください。


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