人時生産性とは
人時生産性とは1人が1時間に稼ぎ出す利益のことを指し、いかに効率的に利益を上げているかを表している数字になります。
より詳しく言いますと、人時生産性が高い会社は少ない労力で多く儲けている会社だと言えます。
一方でこの数字が低い会社は、みんな忙しく働いているのに儲からない会社だということです。これは非常にまずい状況になるわけですね。
したがって、人時生産性は経営者にとっては大事な数字になってくるということです。
人時生産性の計算式
次に人時生産性の計算式です。
粗利を総労働時間で割ったものが人時生産性です。

粗利の部分は正確には、付加価値額という数字なのですが、ざっくり言うと粗利ということです。
また、粗利ではなく、営業利益で計算してる場合もありますけれども今回は一般に使われている粗利で計算しています。
総労働時間は全スタッフの労働時間を合算したものです。
この計算式を使っていただければ、皆さんの会社の人時生産性もすぐ出せるかなと思います。
月間で計算するのもいいですし、年間で計算することもできます。
これが高いか低いかで皆さんの会社がいかにうまく稼げればどうかがわかるということですね。
人時生産性の求め方とエクセルでの計算方法
実際に自社の数字を出すときの手順は3つです。
- 期間を決める……1か月か1年かを先に決めます。途中で変えると比較できなくなります
- 粗利を出す……売上から売上原価を引いた金額です。決算書や試算表から取れます
- 総労働時間を合計する……正社員だけでなく、パート・アルバイトの時間も全部足します
エクセルで計算する場合は、次の3つの列を作れば足ります。A列に粗利、B列に総労働時間、C列に「=A2/B2」。これだけです。
ここでいちばん間違えやすいのが総労働時間です。実際に働いた時間ではなく、契約上の所定労働時間で計算してしまうと、残業が多い会社ほど数字が良く出てしまいます。残業も休日出勤も含めた実際の時間を使ってください。
月ごとに並べて折れ線にしておくと、施策を打った月と数字の動きが見比べられます。1回計算して終わりにせず、毎月同じやり方で出し続けることのほうが大事です。
人時売上高との違い
似た言葉に人時売上高があります。混同されやすいので整理しておきます。
- 人時生産性=粗利÷総労働時間
- 人時売上高=売上÷総労働時間
違いは分子だけです。ただし意味はかなり変わります。人時売上高は、仕入れの高い商品を売れば簡単に上がります。安く仕入れて安く売る商売と、高く仕入れて高く売る商売を並べても比較になりません。
自社の稼ぐ力を見るなら人時生産性、現場の作業量に対する売上の効率を見るなら人時売上高、という使い分けになります。小売業では両方を並べて見ている会社が多く、人時売上高の目安として1万円前後を置いている例があります。ただし業態によって仕入れ率がまったく違うので、この数字は他社と比べるより自社の推移で見るほうが役に立ちます。
人時生産性の目安は5000円?
では、人時生産性がどれくらいだったらいいのかという目安をご紹介します。
業界によって全然違うのですが、だいたい5000円が目安と言われております。
5000円上回っていれば、うまく稼げている、下回っていると大して稼げていない会社ということになります。
ただこの金額に達していれば良いのかというとそうでもないんです。その理由は後ほどご紹介しますが、5000円いっていない会社はここを一つの目標にするのがいいと思うんですけれども5000円いっているからと言って、そこで満足して改善を止めてはいけないということですね。
人時生産性の国際比較と推移

このグラフは、数字が小さくて見づらいかもしれませんけれども生産性本部がだしている、労働生産性の国際比較2020年度版になっております。
これを見ていただくと、日本が21位です。金額としては47.99ドル、だいたい5,000円ぐらいです。先ほど目安として5,000円と言いましたが、これは日本の平均値がその水準だからです。
ただし、これは日本の平均であって、国際的に見れば高い数字ではありません。世界百何十か国の中で21位は悪くないのですが、先進国の中ではかなり低い水準です。
最近「日本が安くなった」とよく言われますが、ここにも原因があります。人時生産性が低いことが、日本人の給料がなかなか上がらない原因のひとつだとも言われています。
日本がこれほど低い理由は、国の政策にもあります。ただしもう半分の要因は、経営者自身がこの数字に注目してこなかったことにあるのではないかと思います。
対照としてわかりやすいのはアメリカで、77ドルです。日本の1.5倍ぐらいはあるわけです。そう考えると日本の生産性はめちゃくちゃ低いですね。
バブル期も日本は人時生産性が低かった

人時生産性の推移を見てみましょう。
日本は1970年から50年ほど、ずっと20位前後を行き来しています。GDPが世界3位の割には働き方の効率が悪い国だということです。バブルの頃の日本は非常に豊かだったと記憶している方もいると思いますが、その時ですら20位前後でした。
バブルの時はとにかく労働時間が多かったわけですね。1時間あたりの稼ぎは少ないんだけど、労働時間を増やして全体の生産高を上げていた時代なんですね。
私たちは中小企業向けの仕組み化をお手伝いしています。仕組み化の目標のひとつが生産性を高めることなので、人時生産性は仕組み化ができているかどうかの指標にもなります。
業種別・業界別の人時生産性の平均値は?
次に、業種別・業界別の人時生産性の平均値を見てみましょう。
- スーパーマーケット 3000円前後
- 家電販売店 4000円前後
- 旅館・ホテル 4000円前後
- 美容室 2000円前後
- 居酒屋 3000円前後
(渥美俊一氏の書籍を参考)
これと比べて、皆さんのビジネスの状態を測る目安にしてもらうとよいと思います。
ただこれはあくまで平均なので、これを上回っていればいいというわけではありません。そもそも日本企業は稼げてないので、平均で満足してはいけません。
ちなみに、どの業態も日本平均の5,000円を下回っています。これは、ここに載っていない大手製造業の生産性が高いためです。大手の製造業では、生産工程が自動化されますので人時生産性が高いわけです。
ただ、中小企業や非製造業はそれをはるかに下回る金額で推移しているということですね。
スーパーマーケットの人時生産性
業種のなかでも、スーパーマーケットは人時生産性という言葉がもっとも早くから使われてきた業界です。上の一覧では3,000円前後が目安になっています。
この業界でこの指標が定着したのには理由があります。売場面積も商品も決まっているなかで、パート・アルバイトを含めた人の配置だけは日ごとに変えられるからです。何時に何人入れるかを決めることが、そのまま利益に直結する。だから時間あたりで測る必要がありました。
改善の手も、他業種より具体的です。品出しの時間帯をずらす。発注の担当を集約する。値引きの判断基準を決めて、担当者ごとのばらつきをなくす。どれも「もっと頑張る」ではなく、決めごとを変える話です。この考え方は業務標準化にまとめています。
外食/飲食業界の人時生産性データ
業界別の中でも、外食産業の人時生産性のデータがありましたので見てみたいと思います。
これは農林水産省が出しているデータになります。

これの一番右の列に人時生産性が出ています。
平均値で3,259円となっており、大手でもそれほど生産性が高くないのが実態です。ただし、いま外食産業は自動化を進めています。この数字を上げようと各社が努力しているところだと思います。
人時生産性をどう改善&向上させるか?
計算式が粗利÷総労働時間なので、上げる方法は2つしかありません。粗利を上げるか、総労働時間を減らすかです。労働生産性全体の考え方は生産性向上とはで扱っています。
では、人時生産性をどうやって改善&向上していくかを見ていきます。
人時生産性の計算式は、分子が粗利、分母が総労働時間なので、粗利を上げるか、労働時間を減らすかという話になります。
業界とか業態によっても打つ手は無限にあると思うんですけれども、ここでは、全業界に共通することを申し上げようと思います。
粗利を上げる
より利益率の高い、価値のある商品やサービスの開発
単に価格を上げればいいということではなく、お客様にとって、より価値のある価値を感じてもらえる商品とかサービスを提供するしていくということです。
人手を介さない/労務を伴わない商品やサービスの開発
例えばサービス業であれば1時間いくらみたいな感じで課金しているケースが多いと思います。当然ながらそこに人が入っているわけですが、プラスして何かモノを売ったりすることで、人手を介さずに粗利を積み上げることができます。
新人を即戦力化する仕組み
教える内容を個人の裁量に任せない方法は人を育てる仕組みをご覧ください。
新しく入ってきた社員が早く稼げるようにする仕組みをつくるということですね。新人がなかなか活躍できずに社内でぶらついているという状況だと人時生産性というのは高まりませんね。
中小企業でも新卒社員を雇っているケースが増えていますが、やっぱり1年くらいは稼ぎには繋がらないわけですね。そうすると必然的に人時生産性は低くなっていきます。
総労働時間を減らす
業務を仕組み化し、一人がマルチタスクできるようにする
複数の工程をこなせる人を増やす考え方は多能工化にまとめています。
組織づくりの基本は分業なんですけど、分業するとボトルネックが生まれるんですね。こっちの人は忙しいけど、こっちの人は暇、みたいな感じになります。そうすると暇な人の時間は無駄になります。分業すればするほど、一見効率的になるように思えますが、上手くバランスを取らないと人生産性を高まらないわけです。
その解決策のひとつとしては、一人の人がいろんな業務をできるようにするということです。そのために、仕事を仕組み化しておくことが大切です。
業務を可視化し、無駄な手順を無くす、または簡潔化する
どこに時間がかかっているのかを見えるようにする方法は見える化で解説しています。
業務のプロセス分解して、本当にこの手順はいるのかな?と考えていくことです。
ITを活用して業務を標準化し、自動化する
ウチの場合だとマーケティングをオートメーション化していますので、この部分は人手を介さずに業務が進んでいます。
働き方の柔軟化
パートアルバイトの方みたいに、フルタイムで働きたくないんだけれども自分の空いた時間を活用して働きたいという人を活用することです。そうすることで、業務量と労働量のバランスをうまく取ることができます。
まとめ|人時生産性は「測って終わり」にしない
最後に要点を整理します。
- 人時生産性=粗利÷総労働時間。総労働時間は所定ではなく実際の時間を使います
- 目安は5,000円。ただしこれは日本の平均であって、良い水準という意味ではありません
- 業種別の平均は2,000〜4,000円台。スーパー3,000円前後、家電4,000円前後、美容室2,000円前後
- 人時売上高とは分子が違う。稼ぐ力を見るなら人時生産性のほうです
そして、いちばん大事な点を書いておきます。この数字は測ること自体には意味がありません。測ったあとに何を変えるかが決まっていて初めて意味を持ちます。
数字が低かったときに「もっと効率よく働こう」で終わる会社では、翌月も同じ数字が出ます。粗利を上げるのか、時間を減らすのか。どちらを、どの業務で、いつまでにやるのかを決めるところまでが一続きの作業です。やり方を人ではなく形に残す考え方は仕組み化にまとめています。
人時生産性を高めるための仕組み化なら
というわけで今日は、人時生産性についてご紹介しました。先述した通り、人時生産性を高めていかなければ、日本は働いても豊かにならない国になってしまいますので、ぜひ自社の人時生産性を高めていただければと思います。
なお、仕組み経営では、会社の仕組み化を通じて、人時生産性を高め、稼げる会社にしていくご支援をしています。
詳しくは以下から仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。


