※本題に入る前に、大事なことがあります。本記事では売上を上げる方法について解説していますが、売上に最も影響を及ぼすのは、事業(ビジネス)モデルです。つまり、誰に、何を、どのように売るか?が売上に最も影響を及ぼします。ただし、事業モデルの変革はすぐできることでもありませんし、多くのエネルギーを要します。そこで本記事では、事業モデルそのものはそこまで変えずに、売上を上げる方法について解説をしています。
なお、「売上向上」「売上アップ」「売上拡大」「売り上げを伸ばす」といった言い方は、どれも同じことを指しています。呼び方に違いはありません。実務で問題になるのは呼び方ではなく、社内で「売上を上げよう」と言ったときに、社員が明日から何をすればよいのか分からない点です。売上は結果であって行動ではありません。だから号令として掲げるだけでは人は動きません。本記事で3つのステップに分けているのは、結果を行動まで降ろすためです。
売上を上げるために見るべきポイントは3つ
最初に全体像から考えてみましょう。売上を上げることは、ある程度まで科学的に可能です。というのは、売上を上げるために必要な施策は世の中にあふれているからです。それらを試し、効果があったものを伸ばしていく計画を立てれば良いのです。これはテストを繰り返すことで科学的に実行可能です。
一方、すべてが科学で解決するかというと、そうでもありません。実際に集客や販売に携わるのは会社の社員であり、彼らの心が動かなければ、いくら精緻な計画を立てても実行されません。また、売れる商品を生み出すことも全て科学というわけではなく、創り出す人の情熱や商品デザイン、ネーミングなどのアート的な要素が入ってきます。
それを踏まえたうえで、売上を上げるために見るべきポイントは、大別すると次の3つになります。

売上の目標
売上を上げたいと思った時、「ではどれくらい売上を上げたいのか?」を明確にするのが最初の一歩です。明確な目標が無い限り、次の販売計画も立ちませんし、必要な組織を組み立てることも出来ません。
販売計画
目標に基づいて販売の計画を立てます。ここは科学的に行います。目標を細かく、実行可能な打ち手へと分解していきます。
組織
販売計画を実行に移す組織を設計します。多くの場合、「目標⇒販売計画」までは完璧にロジックで組み立てることが出来ます。しかし、それを実行できるかどうかは別問題になります。そのため、やり切る仕組みを組み立てる必要があります。
そして、実際に多くの中小企業がつまずくのは、①でも②でもなく、③です。計画は立派なのに、実行されない。これが「頑張っているのに売上が上がらない」の正体であることが本当に多いのです。
次から詳しく見ていきましょう。
そもそもなぜ売上が上がらないのか?中小企業によくある5つの原因
具体的な方法に入る前に、まず「なぜ上がらないのか」を押さえておきましょう。私たちが中小企業の経営支援をしている中で、売上が伸び悩んでいる会社には、驚くほど共通したパターンがあります。心当たりがないか、チェックしてみてください。
原因1.目標が「なんとなく前年比◯%」になっている
根拠のない目標は、社員から見れば「社長がまた何か言っている」でしかありません。数字に納得感がないので、誰も自分ごととして背負わない。結果、計画が絵に描いた餅になります。
原因2.打ち手が「集客」に偏っている
売上が足りないと聞くと、多くの社長はまず広告や新規開拓を考えます。しかし後述する通り、新規顧客の獲得は最もお金と労力がかかる方法です。単価や購買頻度という、もっと安く早く効く打ち手を素通りしているケースが非常に多いです。
原因3.成約率のボトルネックを特定していない
ファネルのどこで見込み客が漏れているのかを測っていないため、効果の薄いところに投資し続けてしまいます。穴の空いたバケツに水を注いでいる状態です。
原因4.売れる人と売れない人の差が放置されている
トップ営業のやり方が本人の頭の中にしかなく、他の社員に移植されていない。いわゆる属人化です。この状態では、人を採用しても売上は比例して伸びません。
原因5.やることを増やし続けて、やり切れていない
新しい施策を始めては、成果が出る前にやめる。これを繰り返している会社は非常に多いです。売上が上がらない原因は「打ち手を知らないこと」ではなく、「決めたことをやり切る仕組みがないこと」なのです。
中小企業ならではの制約をどう扱うか
5つの原因のうち、中小企業でとくに効いてくるのが2つ目と5つ目です。大企業と条件が違うからです。
- 人が足りない……新しい施策を始めると、いまの仕事をしている人がそのまま兼務することになります
- 広告予算に限りがある……効果が出るまで払い続ける体力がないので、途中でやめることになりがちです
- 社長が現場から抜けられない……計画を立てた本人が、実行する時間を持っていません
この3つがある以上、中小企業では「打ち手を増やす」より「いまやっている打ち手のどこで落ちているか」を見るほうが早く結果が出ます。新しい施策には立ち上げの手間がかかります。いまある流れの詰まりを外すだけなら、その手間がかかりません。
判断の一問はこれです。「いま、いちばん多くの見込み客が離れていっているのは、どの段階ですか」。知られていない段階なのか。知られているけれど問い合わせが来ない段階なのか。問い合わせは来るけれど成約しない段階なのか。ここに答えられないうちは、どの打ち手を選んでも当たりはずれの話になります。
売上を上げる方法①目標の設定
目標の必要性は今更言うまでもないかも知れません。しかし、漠然と売上を上げたい、というよりも、いつまでに〇〇事業を〇〇円にする、と明確に宣言することが大切です。
明確な目標があることによって、
- 次の販売計画において、何をいつまでに、どうするか?という基準を創ることが出来ます。
- 組織全体に統一感を与え、みんなの力を一つに向かわせることが出来ます。
逆に言うと、明確な目標がなければ次のようなことが起こります。
- 営業部は商品Aを頑張って売ろうとしているのに、開発部は商品Bの改善に力を入れている等、優先順位の掛け違いが起こる。
- ”どうせ社長の掛け声だけだろう”と思われてしまい、誰も数値責任を負おうとしない。
- 広告宣伝費にいくら投資すべきかなどの予算計画が立てられない。
売上目標の立て方
目標の立て方は一つしかありません。それは次の質問をすることです。
自社のビジョンを実現するにあたり、今期(来期)はどれだけ達成しなければならないか?
つまり、未来を基軸として今期(来期)の目標を決めるわけです。
世の中の大半の会社はこれとは逆の決め方をしています。つまり、今現在を基軸に、”今期(来期)は、前期の5%アップだ、10%アップだ”と決めています。言っちゃ悪いですが、経営計画の相談を税理士さんにしている社長は、ほぼこのような現在基軸の目標の立て方をしています。
現在基軸の目標設定が問題なのは、その目標に何の根拠も無いからです。5%アップや10%アップという数字はどこから出てきたのでしょうか?世の中の会社がそれくらい成長しているから?去年それくらい成長したから?大半の会社では、特に根拠もなく、前期と同じでは恰好が付かないので5%成長にしておこう、というような考えで目標を決めています。非常に受身的な考え方と言えます。
売上の目標はビジョンから逆算される
社長はまず自社の向かう先を決めなくてはなりません。それがビジョンです。自社は将来、このような会社になり、社会にこんなインパクトを与える。というビジョンがなければ、社員の誰も協力しようとは思わないものです。
前年比〇%アップというような目標であれば、社長でなくても立てられます。毎年、エクセルで自動的に5%アップの目標と計画を立てればいいだけです。これでは社長が存在している意味がありません。社長が会社に対してできる最大の貢献は、みんなが前のめりになるような”理想”を創造することなのです。
ビジョンを決めたら、次に今期(来期)やらないといけない達成目標を決めます。これが起業家的な会社が行っている目標設定の仕方です。
売上目標を分解する単位を決めておく
もうひとつ、目標設定の段階でやっておくべきことがあります。それは「何の単位で目標を追うか」を決めておくことです。
全社で1億円、とだけ決めても、現場の誰も動けません。事業別・商品別・顧客層別・担当者別のどこまで割り付けるのかを先に決めておくと、次の販売計画がそのまま実行計画になります。逆にここが曖昧だと、期末に「誰の責任で未達だったのか分からない」という状態になります。
目標設定でよくある失敗
最後に、目標設定でありがちな失敗も挙げておきます。
ひとつは、高すぎる目標を掲げてしまうことです。ビジョンから逆算することは大切ですが、初年度からいきなり3倍というような数字を出すと、社員は最初から諦めます。「頑張れば届くかもしれない」と思える水準に刻むことが重要です。
もうひとつは、売上目標だけを立てて利益目標を立てないことです。売上は値引きすればいくらでも作れます。粗利率とセットで管理しなければ、忙しくなっただけで手残りが減った、という事態になります。
売上を上げる方法②販売計画を練る
目標が決まったら、次にそれを実現するために販売計画を練ります。販売計画と言うと、大体次のような表を作ることを指します。

社長が大所的に状況を把握するだけであればこの表でも良いかもしれませんが、実行に移していくためにはこれだけでは全く足りません。
売上を上げる方法は無限大
計画とは目標を分解していくことを指します。そして、その分解の仕方にはほぼ際限がありません。分解をすればするだけ、目標達成に必要な打ち手が見えてきます。
松下幸之助氏は「道は無限にある」と言っていたといいますが、まさにその通りです。
ではどのようにして販売計画を立てていくべきか見ていきましょう。
売上を達成する方程式
売上目標を分解する方程式として良く知られているのは次のものです。
売上=(顧客数)×(取引当たり単価)×(購買頻度)
この3つをさらに細かく6つの要素まで降ろした考え方は、売上アップの方程式|売上を6つの要素に因数分解する方法で解説しています。
たとえば、1年間の顧客数が100社、取引当たり単価が100万円、購買頻度が年に平均2回だとすると、
売上=100社×100万円×2回=2億円
となります。自明の理ですね。
逆に考えれば、売上を4億円にしたいと思ったら、方法はいくつか考えられます。
- 顧客数を100社から200社にする
- 取引単価を100万円から200万円にする
- 購買頻度を平均4回にする
というように、どれかの要素を倍にすれば4億円になりますし、「顧客数を100社から140社にし、取引単価を140万円にし、購買頻度は平均2回のまま」であっても、約4億円になります。顧客数を倍にしたり、単価を倍にするよりも、こちらの計画のほうが現実的かも知れませんね。
ここが方程式の一番の効用です。ひとつの要素を2倍にするのは大変ですが、3つの要素をそれぞれ1.26倍にすれば、掛け算で売上は2倍になります。「2倍にしろ」と言われると社員は固まりますが、「1.3倍を3か所」なら、現実的な打ち手が出てきます。
このように目標を分解することで、いくつもの方法が考えられるようになるわけです。
次から、上記の方程式をさらに分解し、打ち手を増やしていく方法を見ていきましょう。
売上アップの打ち手を増やす
まず、ひとつの顧客層向けに販売をしている場合、基本となる方程式は上記の通り(顧客数)×(取引当たり単価)×(購買頻度)で良いですが、複数の顧客層向けに販売をしている場合、この方程式をそのまま複製して分解することが大切です。
なぜならば、顧客層別に販売する商品や施策が異なってくるからです。たとえば、法人向けと一般消費者向け両方に商品を販売している場合、集客の方法も営業の仕方も異なりますので、これらは分けて考えたほうが良いでしょう。そのため、方程式としては以下のようになります。

顧客数を増やす
まず顧客数を増やすことについて考えてみましょう。最初に言っておきますが、売上を上げるにあたって、これが一番お金もかかるし、大変な方法です。もっと楽に、お金をかけずに売上を上げたいと思ったら、後述する単価を上げる、購買頻度を高める、からスタートしたほうが良いでしょう。とはいえ、顧客数を増やすことも持続成長のためには必須の活動ですので、その方法を見ていきましょう。
顧客数を増やしたいと思った際、ファネルを意識することが欠かせません。全ての顧客はいきなり商品を買うのではなく、資料請求したり、試したり、営業から話を聞いたりと、様々なステップを踏んで購入の決断をします。購入の決断までの流れを図示したものがファネルです。ファネルの設計の仕方は各社毎に異なるため、独自に設計する必要があります。
以下の図はファネルの例になります。

ファネルを見てみると、顧客数を増やすには二つの方法があることが分かります。ひとつめは、ファネルの上から入ってくる数(潜在顧客)を増やすことです。ふたつめは、ファネルの各ステップの成約率を上げることです。
潜在顧客を増やすには多くの場合、現金がかかります。一方、成約率の改善はお金をかけずにできることが多いです。そのため、まずは成約率を十分に満足できる状態にし、その後にお金を使って潜在顧客を増やすようにしましょう。逆の順序で行うと、ザルに水を入れている状態になり、投資効果が悪くなります。
1.成約率を上げる
成約率は、営業の組織の作り方そのものに左右されます。成約率を上げる方法は、ファネルの作り方やどのような営業方法をしているのか(営業担当者が訪問しているのか、ダイレクトメールを送っているのか等)によって異なります。ただ、どんな場合においても大切なのは以下のような点です。自社に当てはめて実行できているかどうか見てみてください。
ボトルネックから手を付ける
ボトルネックとは、ファネル全体の成果を決定してしまっている点のことを指します。たとえばウェブサイトへのアクセスが10万件、資料請求が1000件、商談が4件、成約が2件という実績が出ている場合を考えてみましょう。この場合、ボトルネックはどこでしょうか?おそらく、資料請求から商談への転換率がボトルネックです。資料請求1000件につき商談4件なので、転換率が0.4%と低いです。これだけ低いということは改善点がたくさんあるはずです。まずそこから手を付けましょう。0.4%が1%になっただけでも、成約は5件に増える計算になります。
ここで大事なのは、ボトルネック以外を触っても売上はほとんど動かない、ということです。この例でウェブサイトのアクセスを10万から12万に増やしても、成約は2件が2.4件になるだけです。労力の投下先を間違えないでください。
訴求が潜在(見込み)顧客の心に刺さっているか確認
自社のウェブサイトやチラシなどで訴求している点が、実は潜在(見込み)顧客の心に刺さっていない可能性もあります。たとえば、自社のウリは品質だと考え、ウェブサイトやチラシで品質が良いことを謳っていたとします。しかし顧客が求めているのは品質はもとより、対応スピードである可能性もあります。どんな訴求が刺さるかは、正確にはテストを繰り返して決め込んでいきます。
緊急性を持たせているか確認
緊急性は成約率を高める鉄板の方法です。言い方を変えれば、”なぜ今行動しなくてはいけないのか?”を伝えられているか確認しましょう。
次のステップを明確に提示しているか確認
たとえば、潜在顧客に資料を送った際、”次に何をしてほしいのか?”を明確に伝えていますか?資料に電話番号やメールアドレスを載せておけばいいだろう、と考えていませんか?資料をみてよっぽど興味がある人なら電話やメールをするかもしれませんが、ちょっと興味がある程度の人はしないものです。そのため、次にどうしてほしいのかを明確に伝えます。たとえば、申し込み書を送ってほしいのか、デモを見てほしいのか、等々です。
人によってばらつきがないか確認
これはどちらかというと組織(やり切る力)の話になりますが、担当する人によって成約率にバラつきがある状態は見逃せません。たとえば、商談の成約率が60%の営業マンがいたとしても、もう一人の営業マンが10%しか成約していなければ、平均で35%の成約率になってしまいます。本当は60%で決まる商品力があるにも関わらず、これはもったいないことです。
このバラつきは、売上を上げる上で最大の伸びしろでもあります。成約率60%の営業担当が何をどの順番で話しているのかを分解して言語化し、他のメンバーが再現できる形にする。新規顧客を増やすより、はるかに安く確実に売上が上がります。
未来像を伝えているか確認
顧客は商品を買うことによって、自分の人生に何かしら良いことが起こることを期待しています。そのため、”バラ色の未来”を魅せてあげる必要があります。これはファネルの上から下まで、常に意識しておかないといけないことです。
2.潜在顧客を増やす
潜在顧客とは、あなたの会社の商品に興味があるはずだが、そのことにまだ気が付いていない、または、まだあなたの会社のことを知らない人たちのことを指します。よっぽどの大企業であっても、対象顧客をすべて獲得しつくした、という会社は無いはずです。したがって、どんな会社でも潜在顧客が存在することになります。
潜在顧客を継続して集める形をどう作るかは、集客の仕組み化とは?全体像と8ステップの作り方で扱っています。顧客数を増やすには、この潜在顧客にアプローチをし、自社を知ってもらい、商品に興味を持ってもらい、成約につなげる、という活動が必要になります。潜在顧客へのアプローチは業界によってそれこそ無限の打ち手があるのでここで全てを書くことは難しいですが、大きく分けると2つのタイプがあります。
ひとつは、インバウンド(潜在顧客のほうからあなたを探しに来てもらう方法)。店舗の看板、駅の看板、ウェブサイト、オウンドメディア、SNS、紹介制度などがあります。
もうひとつは、アウトバウンド(こちらから積極的に潜在顧客にアプローチする方法)。広告、ダイレクトメール、チラシ、展示会、コールドコール(テレアポ)などがあります。
インバウンドは効果が出るまで時間がかかる一方で、いったん軌道に乗ると獲得コストが下がっていきます。アウトバウンドはすぐに反応が取れる一方で、止めれば流入も止まります。どちらか一方に寄せるのではなく、短期のアウトバウンドで数字を作りながら、長期のインバウンド資産を育てる。この二本立てが中小企業には現実的です。
今現在、どんなに強固な顧客基盤を持っている会社であっても、既存顧客は時間が経つにつれ減っていきます。それはあなたの会社の商品に満足できなくなった、というだけではなく、ライフステージが変わって商品が必要なくなった、引っ越しして通えなくなった、死亡した(倒産した)など、自社ではコントロールできない要因であることも多いわけです。なので潜在顧客へのアプローチは継続して行っていかないと、いずれ自社は衰退へ向かうことになります。
取引当たり単価(客単価)を上げる
取引当たり単価は客単価とも呼ばれます。ここを上げることは、売上のみならず、利益にも大きな影響を与えます。取引当たり単価を上げるには、以下の3つの選択肢が考えられます。
商品はそのままで価格を最適化する
いま自社で販売している商品の価格を、どのようにして決めましたか?競合商品がたくさんある商品であれば、だいたい相場が決まっているので、競合と同じくらいにしたかも知れません。一方、世の中に類似商品が無い場合、意外と社長の勘や感覚で決めているケースも多いです。実は本来、もっと高い値段でも販売できるのに、安易に値決めしたばかりに低い利益率にとどまっているケースもあります。
値決めは経営と言われている通り、価格は重要なのです。売価1,000円、原価500円の商品があった場合、1個売れば粗利益は500円です。ここから売価を20%アップさせると粗利は700円となり、40%ものアップとなるからです。
以下の記事を参考に、自社の価格が本当に最適なのかを確認してみると良いでしょう。
既存商品のバージョンアップをする
既存商品を少しバージョンアップさせることで、より高い価値を感じてもらい、単価を上げることも出来ます。以下はそのいくつかの方法です。
機能を変える
Facebookは当初、男女のマッチングサイトとしてスタートしたことは有名です。その後、ハーバード大学内での交流を促すSNSへと進化し、さらに他大学へと展開し、最終的には誰でも参加できるSNSになってブレイクしました。このように、機能を改善していくことで、新たな顧客層を獲得したり、より高い金額で販売できるようになります。
提供方法を変える
商品の提供方法を変えることでも単価を上げることが出来ます。たとえば研修会社の場合、いままでオンラインで提供していた内容をオフラインにすることで価格は上げられます。
市場を変える
商品そのものにそれほど手を加えなくても、対象市場を変えることで単価が上がることがあります。典型的なのは、いままで個人向けに販売していたものを法人向けに提供する方法です。また、逆に法人向けに販売していたものを個人向けに販売することも出来るでしょう。
デザインを変える
商品デザインは、知覚価値(製品に対して抱く品質や費用に対する総合的な価値判断)に大きな影響を与えます。アップル社の商品が高くても売れるのは、優れたデザインにあるところも大きいです。
パッケージを変える
商品自体は変えずに、パッケージだけ変えて付加価値を高めたケースもあります。キャットフードの「Super Gato」は、当初、他のキャットフードと同じようなパッケージにしていましたが、まったく売れずに困っていました。そこでパッケージをネコが好むような箱型にしてからヒット商品になりました。

名前を変える
名前も知覚価値に影響を与える大事な要素です。名前を変えただけでヒット商品になった事例は数多くあります。
見せ方を変える
特に新しいカテゴリーの商品の場合、その商品が一体何なのかを消費者が理解するまでに時間がかかります。カップヌードルが発売された当初、画期的な商品であるにもかかわらず、実はたいして売れなかったそうです。そこで、いままで麺売り場に置いていたのを止めてスープ売り場に変えたところ、爆発的に売れるようになりました。麺売り場には、おいしい麺を食べたい人がやってきます。そんな中で、インスタントな麺なんて目に入らない人が多かったわけです。一方、スープ売り場には、手軽に小腹を満たしたい人が来ます。そんなニーズにカップヌードルはぴったりだったのです。このように、その商品はいったい何のニーズを満たすのか、何の代替になるのかを示すことで、高い価値を感じてもらうことが出来ます。
オプションを用意する
取引単価を上げるために昔から使われている方法が、オプションを用意することです。マクドナルドのポテトセットや松竹梅モデルなどは有名です。他にも、まとめ買いを提案する、上位顧客向けの特別商品を用意する、顧客が商品の使用前後で必要とするサービスを提供する、などやれる方法はたくさんあります。
特に松竹梅モデルは、中小企業がすぐ試せる打ち手です。単品しか用意していない会社が上位プランを作ると、一定数の顧客は必ずそちらを選びます。「高いものを売りつける」のではなく、「もっと払ってでも良いものが欲しい顧客の選択肢を奪わない」という発想です。
購買頻度を上げる
年に1回しか買ってもらっていなかった商品を、年に2回買ってもらうだけでも売上は2倍になります。多くの場合、これは顧客を2倍にするよりも簡単な方策と言えます。購買頻度を上げる方法としては以下のようなものが挙げられます。
新商品を開発する
いくらヒットしている長寿商品があるといっても、いずれは商品ライフサイクルの終焉を迎えます。そのため、新商品開発は常に取り組んでいかないといけない活動です。逆に新商品を次々に市場に投入していけば、購買頻度が上がり、一人の顧客が使ってくれる金額も増えます。
商品開発については、ユーザーインタビューが役立ちますので、以下の記事もご参考にされてください。
ユーザーインタビューはこうやろう。新規事業を立ち上げたい社長はこのステップを欠かすな。
購入頻度をアドバイスする
購入頻度を顧客にアドバイスするだけでも頻度が上がります。たとえば、あなたが美容室に行った際、どれくらいの頻度で来店すべきかをアドバイスされたことがありますか?普通は自分の感覚で「伸びてきたな~」と思ったら予約をします。しかし本物のプロの美容師は、その人がいつも最高の見た目で居られるように、来店頻度のアドバイスをする、と聞いたことがあります。多くの場合、顧客は専門家である美容師さんよりも、美容に関する知識が少ないものです。なので、本当に顧客のためを思うのであれば、どうすればその人がいつも最高の見た目でいられるのかをアドバイスしたほうが良いのです。
同じことが、あらゆるサービス業に言えます。ウェブサイト制作会社であれば、どれくらいの頻度でウェブサイトをリニューアルすれば時代についていけるのかをアドバイスしてあげます。整骨院であれば、どれくらいの頻度で来院すれば健康的に過ごせるのかをアドバイスしてあげます。もちろん、このアドバイスを受け入れてもらうためには、専門家として腕があり、顧客から信頼されていることが大前提です。
コミュニケーション頻度を上げる
一回買ってくれた顧客を放置していませんか?その顧客を継続的にフォローするだけでも、購入頻度を上げることが出来ます。顧客が再購入してくれない理由は以下の二つです。
- 1回買ってみたけど、満足できなかった
- 忘れてた
満足できなかったのであれば商品を改善するしかありませんが、単純にあなたの会社のことを忘れていて再購入しなかった、というケースもあるのです。そういった顧客には、メールやSNS、DMなどでフォローすることによって再購入を促すことが出来ます。
なお、これは売上を上げる方法の中で、最も費用対効果が高い部類に入ります。すでに一度お金を払ってくれた人にもう一度買ってもらうコストは、新規顧客を獲得するコストの数分の一で済むからです。にもかかわらず、多くの中小企業では顧客名簿が営業担当者の名刺入れの中にあるだけ、という状態になっています。
定期購入モデル(サブスク)を導入する
自社にサブスクを導入するのも手です。なんでもかんでもサブスク化している時代ですが、失敗事例も結構あります。失敗している事例の多くは、顧客から見た際に、圧倒的な経済価値が見いだせないことに原因があります。もともとサブスクが流行り出したのは、高額なソフトウェアを購入できない中小企業向けに、サブスク型で低価格で導入できるソフトウェアを提供し始めたことにあります。セールスフォースやアドビなどがその代表格です。彼らは圧倒的な経済価値を顧客に提供したから成功したのです。
圧倒的な経済価値がないにもかかわらず、自社に安定的な収入がもたらされるから、という理由でサブスクをスタートするのは失敗の元です。
【まとめ】売上を上げる打ち手と、着手すべき優先順位
ここまで出てきた打ち手を、コストと即効性の観点で整理しておきます。売上を上げたいとき、多くの社長は左端(新規顧客獲得)から手を付けますが、実際に着手すべき順番は逆です。
| 優先度 | 打ち手 | コスト | 効果が出るまで |
|---|---|---|---|
| 1 | 既存顧客へのフォロー・再購入促進 | ほぼ不要 | 数週間 |
| 2 | 価格の見直し・松竹梅の導入 | ほぼ不要 | 1〜3か月 |
| 3 | ファネルのボトルネック改善(成約率) | 低 | 1〜3か月 |
| 4 | 売れる営業のやり方の標準化 | 低(時間はかかる) | 3〜6か月 |
| 5 | オプション・上位商品の開発 | 中 | 3〜6か月 |
| 6 | 新規顧客の獲得(広告・展示会など) | 高 | 3か月〜 |
| 7 | 新商品開発・新市場開拓 | 高 | 6か月〜 |
上から順に試していけば、お金をかけずに売上を動かせる余地がまだ残っていることに気づくはずです。
売上を上げる方法③組織の力でやり切る
売上を上げるために必要な要素、最後の3つ目はやり切る力です。上記で目標や様々な計画を考えてきましたが、それを実行しなければ何の成果も上がりません。そこで、組織にやり切る力が必要となります。組織に関しては様々な仕組みが必要となりますが、代表的な仕組みを以下に挙げておきましょう。
組織戦略
組織戦略とは、計画をやり切るために、誰が何を行うのかを明確にすることです。そのために組織図が必要となります。組織図を創り、そこに人を当てはめます。人を当てはめる場合には、その人の得手不得手を考慮します。いわゆる適材適所というヤツです。たとえば売上に関連するところで言うと、営業を担当する人の中にも、新規開拓が得意な人と、既存顧客との関係性を深めてリピートを生み出すことが得意な人がいます。昔は営業と言えば新規も既存もひとくくりに担当することが多かったですが、最近ではこの二つを分け、人の得手不得手を踏まえて配置することもよく見られます。組織戦略についてはこちらの記事をご参考にされてください。
会議システム
計画をきちんと実行できているかどうか、目標に対して今なにをすべきなのかを決めていくのが会議です。会議は会社の中で非常に重要度が高いにも関わらず、社員からは嫌われていることが多いです。その理由は、会議の仕組みづくりが出来ていないからです。会議の仕組みづくりがうまく行っていれば、これほど売上に貢献する仕組みはありません。
評価の仕組み
その人が出した成果に対して報いるのが評価です。売上を上げようと思ったら、売上に貢献した人をきちんと評価してあげる仕組みが必要です。それがなければ「やってもやらなくても変わらないしな・・・」ということになり、販売計画の実行力は地に落ちます。評価は等級や給与制度など、他の人事の仕組みとも連動しています。詳しくは人事評価制度とは?作り方5ステップと評価項目の例をご覧ください。
売り方の標準化(仕組み化)
そしてもうひとつ、売上を上げ続けるうえで欠かせないのが、売り方そのものの標準化です。
多くの中小企業では、売上が特定の人に依存しています。社長が動けば売れる、あのベテランが行けば決まる。これは属人化が売上の面に出た状態です。しかしこの状態では、その人の時間が上限になり、売上もそこで頭打ちになります。さらに深刻なのは、その人が抜けた瞬間に売上が崩れることです。
私たちが仕組み化と呼んでいるのは、業務をマニュアル化して効率化することではありません。「自社独自の、再現性のある仕事のやり方」を構築することです。売上で言えば、誰がやっても一定の成果が出る売り方を、自社の言葉で定義していく作業になります。
マイケル・E・ガーバー氏が指摘した通り、成功している会社とそうでない会社の違いは、社長個人の能力ではなく、事業を「仕組み」として捉えているかどうかにあります。売上を上げる打ち手をどれだけ知っていても、それが人に依存している限り、会社の成長は社長の体力に縛られ続けます。
売上を上げる取り組みは、90日単位で回す
最後に、実行の進め方について触れておきます。
売上を上げる施策は、1年計画で立てると必ず途中で形骸化します。中小企業の現場は日々変化しますし、期初に立てた前提が半年後には変わっているからです。そのため、90日を1サイクルとして回すことをおすすめしています。
最初の2週間で現状の数字(顧客数・単価・頻度・ファネル各段階の転換率)を洗い出し、ボトルネックを特定します。次の2週間で打ち手を3つに絞り込み、担当者と期限を決めます。残りの10週間で実行し、毎週の会議で進捗だけを確認する。90日後に結果を振り返り、次の3つを決める。
打ち手を3つに絞るのがポイントです。10個やろうとすると、全部が中途半端になって何が効いたのかも分かりません。3つなら、やり切れますし、検証もできます。
売上を上げる際に注意すべきこと
ここまで方法を見てきましたが、正直に注意点も書いておきます。
売上を追って利益を失うことがある
最も多い失敗がこれです。値引きと販促費で売上は作れますが、粗利率が落ちれば手残りは減ります。売上目標には必ず粗利目標をセットにしてください。
広告に依存すると、止めた瞬間に止まる
広告は即効性がありますが、資産になりません。広告で獲得した顧客をリピートさせる仕組み、紹介を生む仕組みまでセットで設計しないと、永久に広告費を払い続けることになります。
現場が疲弊して離職につながる
売上目標だけを強く押し出すと、現場は疲弊します。特に人員に余裕のない中小企業では、無理な数字が離職を招き、かえって売上が落ちるという逆回転が起こります。打ち手を増やすときは、必ず「何をやめるか」もセットで決めてください。
成果が出るまでには時間がかかる
価格見直しや既存顧客フォローは比較的早く効きますが、標準化や組織づくりは半年から1年単位の話です。すぐに効くものと時間がかかるものを混ぜて、短期の成果で現場のモチベーションを保ちながら、長期の仕組みを育てるという設計が現実的です。
売上を上げる方法についてよくある質問
Q. 売上を上げるために、まず何から手を付けるべきですか?
自社の数字を「顧客数×取引単価×購買頻度」に分解するところからです。どの要素が同業と比べて弱いのかが見えれば、打ち手は自ずと絞られます。そのうえで、コストがかからず即効性のある既存顧客へのフォローと価格の見直しから着手するのが定石です。
Q. 広告費をかけずに売上を上げることはできますか?
できます。むしろ広告を出す前にやるべきことが残っている会社がほとんどです。成約率の改善、既存顧客への再購入促進、価格の最適化、オプションの追加。これらはいずれもほぼ費用をかけずに実行できます。
Q. 売上目標はどれくらいの水準に設定すべきですか?
ビジョンから逆算した数字が原則ですが、現場が「頑張れば届くかもしれない」と感じられる水準に刻むことが大切です。届かないと最初から分かる目標は、設定していないのと同じです。
Q. 値上げをすると顧客が離れないか心配です。
一定数は離れます。しかし粗利で考えれば、売価を20%上げれば粗利は40%増えることもあります。全顧客に一律で上げるのではなく、新規顧客から新価格を適用する、上位プランを作って選んでもらう、といった段階的な方法が現実的です。
Q. 社員が計画通りに動いてくれません。どうすればいいですか?
これは意欲の問題ではなく、仕組みの問題であることがほとんどです。目標が自分の仕事に翻訳されていない、進捗を確認する会議がない、成果が評価に反映されない。この3つのどれかが欠けていないか確認してみてください。
Q. 売上を上げる方法と、仕組み化はどう関係しますか?
打ち手を知っているだけでは、その実行は社長や一部の優秀な社員の力量に依存します。仕組み化とは、その打ち手を誰がやっても一定の成果が出る形に落とし込むことです。売上を「上げる」ことと「上げ続ける」ことの差が、ここにあります。
まとめ:売上を上げる方法は無限大
以上、売上を上げる方法についてみてきました。テーマがテーマだけに非常に広範囲にわたってしまいましたが、まずは全体を俯瞰し、自社が手を付けていないところを探すのに使ってもらえればと思います。
改めて整理すると、売上を上げるには、ビジョンから逆算した目標を立て、それを顧客数・単価・頻度に分解して打ち手を洗い出し、それをやり切る組織をつくる。この3つが揃って初めて、売上は継続的に伸びていきます。そして最後の「やり切る組織」こそが、多くの中小企業にとっての本当のボトルネックです。
本文中にも書きましたが、売上を上げる方法は無限大にあります。少しのことをトライしただけで諦めないようにしましょう。
なお、仕組み経営では、ここで述べてきたようなことも含め、”仕組みで持続成長する会社づくり”のご支援をしています。詳しくは以下から「仕組み化ガイドブック」をダウンロードされてください。


