日頃会社の仕組みづくりをお手伝いしていますが、社長がこのマイクロマネジメントをしている会社というのは、どんな仕組みを入れてもなかなか仕組み化の成果が出にくいのです。
今日の内容は、私達が提供している仕組み経営という経営の考え方とメソッドがあるのですが、その中で社長のリーダーシップを診断するツールがあります。それによって、自分のリーダーとしての行動のうち、会社に悪影響を与えている部分がわかります。
そのうちの1つがこのマイクロマネジメントです。今日はその内容の一部をご紹介したいと思っています。
マイクロマネジメントとは?
まず、マイクロマネジメントとは何かという話なのですが、部下の細かい仕事にまでチェックし、口出しや手出しをするマネジメント方法のことを言います。
マネジメント方法というよりも、その人のマネジメントの癖と言った方がいいかも知れません。意図してマイクロマネジメントをしようと決めたわけではなくて、無意識のうちにこのマイクロマネジメントをしてしまっているということです。
なぜマイクロマネジメントはいけないのか?
一般的にはマイクロマネジメントはあまりよろしくないとされています。私も個人的にはそうだと思います。
では、何がいけないのかということで、大きく4つほど挙げております。他にもあるかもしれませんが、ざっと私が思ったところはこんな感じです。
マイクロマネジメントがいけない理由①社長の時間がとられる
まず社長の時間が部下の仕事の修正だけにとられるということです。
マイクロマネジメントしている人というのは部下が仕事をやっているところを後ろからのぞき込んで見て、こいつはミスしてないかなというのをずっとチェックしているわけです。
要は部下の仕事の手直しとか修正とか調整とか、そういうことばかりに時間が取られるということになってしまうわけです。
本来、社長のやるべきことはそういう仕事ではありません。もちろん部下の仕事のアウトプットを評価するというのは上司の1つの仕事ではあるのですが、それをやっていれば社長のしごとはオーケーということではありません。
ここで厄介なのは、マイクロマネジメントの社長というのは、部下のやってきた仕事のアウトプットを評価して、ああでもないこうでもないとやるわけですが、それをやっていると仕事をした気になってしまうわけです。本当は社長の仕事はそれではないのにも関わらず、そういった部下の仕事の調整、修正ばかりやっていることで社長の仕事をついついした気になってしまうという問題があります。
これは一番大きい問題です。本来の社長の仕事ができなくなってしまうということです。これは会社にとってはめちゃくちゃ大きい損失になります。
マイクロマネジメントがいけない理由②部下の自主性を削ぐ
次が、部下が自分で行動したり、判断したりすることを放棄するようになるということです。
部下の人は自分で仕事をやってそれを上司や社長に報告するのですが、逐一直されたりとか逐一細かい修正をされたりするという風になってくると、結局社長が判断するんでしょ?ということになって、自分では何も考えない社員になってしまうというわけです。
マイクロマネジメントがいけない理由③社員が言うべきことを言わなくなる
次は、社員が社長を恐れるようになり、言うべきことがあっても言えなくなるということです。
これも致命的な問題に発展する可能性があります。逐一、ああだこうだ言われると社員というのは上司の顔色を窺うということになります。そうなると本来言うべきことも言えなくなってしまうということです。これは良くない企業文化の特徴です。
マイクロマネジメントがいけない理由④能力がある社員ほど辞めていく
そして4つ目に、能力が高い社員ほど先に辞めていくというわけです。能力が高い社員というのは自分で判断して自分で行動して結果を出したいという特性を持っていますので、マイクロマネジメントの上司の元ではそういった判断とか行動ができないわけです。
そうするとこの職場にいても自分の思ったように働けないなということで別の会社に移ってしまうというケースがあるというわけです。これも非常に大きな悪影響になってきます。
要注意、マイクロマネジメントの兆候とは?
次にマイクロマネジメントの兆候ということなのですが、このマイクロマネジメントの厄介な部分というのは、やっている本人が気付かないわけです。ですので、自分が悪影響を及ぼしていることに気が付かないままう、ずっとマイクロマネジメント型で経営してしまうというわけです。
そうならないために私達の方で診断ツール等を作っているのですが、今日はその診断ツールの一部用意しました。ぜひこれに当てはまっていないか?をチェックしてみるといいのではないかなと思います。
- 完璧主義の傾向がある。
- 社員は細部への気配りが不十分だと思う。
- 部下を信用するのが難しい。
- 社員がうまく仕事を進められていない時、それを取り上げ自分でやってしまうことが時々ある。
- 社員に権限を持たせるという考えは賛成だが、うまくいったためしがない。
- 社員は私を恐れていると思う。
- 社員は私の考えに異議を唱えない。
もし皆さんがこういう現象が起こっているなと思ったら、もしかしたらマイクロマネジメントをしている可能性があります。
マイクロマネジメントが強みになるときもある?
ただ、ひとつ注意点として、①に、「完璧主義の傾向」があるというのがありますが、この完璧主義という言葉はいい部分もあるし悪い部分もあります。実は私達が使っているリーダーシップの診断ツールというのは、例えばあなたはマイクロマネジメントをしていますねという結果が出たとしても、それが100%悪いです、というものではありません。マイクロマネジメントの特性というのは実は別の方に活かせば長所になるという話なのです。
完璧主義も同じで、出しどころによっては完璧主義の傾向というのが強みになるということです。
例えば、非常にクリティカルな商品とかサービスを作っている場合には、やはり完璧な商品とか完璧なサービスでなければ市場に出した時に問題が起こるわけですから、中途半端にやってはいけないわけです。
最近だと、質よりもスピード重視でやっていこうということで、ちょっと不十分なものであっても世の中に出してみて反応を見て、それから完璧にしていくんだという考えがどっちかというと主流になりつつあります。
それでいい場合もあるし、それではいけない場合もあるわけです。例えば、乗り物のパーツを作っている場合には、どこかの部品が壊れたりすると事故が起こって場合によっては死亡事故になるわけですから、やはりそこは完璧にしないといけないわけです。
そういう意味で、とりあえず出してみようという考え方はそこでは危険になるわけです。なので、完璧主義というのは必ずしも悪いわけではないけれども、出しどころによってはこれも会社にとっては悪い影響になるということです。
マイクロマネジメントを治すには?
先ほどの診断項目を見ていただいて、自分はマイクロマネジメントをしているかもしれないと思ったら、次の点を確認してみましょう。
社長の仕事とは何かを理解する
まずは社長の仕事とは何かを理解しましょう。社長の仕事は、過去を見るのではなく未来を見ること。反応的な仕事ではなく能動的(主体的)な仕事をすることです。
社長は過去、現在、未来を同時に見る
部下の仕事をチェックしたりとか修正したりとかっていうのはどちらかというと過去の仕事です。自分が過去に部下に対してこれをやっておいてねと言ったものをチェックしたりするわけですから、それは過去の仕事ということになります。
問題は、それだけやっていると仕事をした気になってしまうということです。しかしこれは本来の社長のやるべき仕事ではないということです。
「はじめの一歩を踏み出そう」といういつもご紹介している本があるのですが、その中に経営者は3つの人格を持たなければいけないと書かれています。職人、マネージャー、起業家なのですが、そのうちマネージャーというのは過去を見る人格です。まさに部下の仕事をチェックしたりとか修正したりとかするのはこのマネージャーの人格になります。
でもそれだけやっていると会社というのは発展しませんよというのが、「はじめの一歩を踏み出そう」に書いてあることなのですが、それが起業家の人格を作って意識してやらないといけないということなのですが、この起業家の人格というのは未来を見る。焦点が未来にあたっているという人格なわけです。
成長している会社の社長は起業家的な人格で働いている時間が多いわけです。過去ばかり見ているのではなくて、未来を見ている時間が多いのが成長している会社の社長の特徴です。ですのでそれをやってみましょうということです。
反応的な仕事ではなく、能動的な仕事をする
そして反応的な仕事ではなく、能動的(主体的)な仕事をすること。反応的な仕事というのは、例えば部下が何か報告を上げてきた時に、それに反応してそれをチェックしようという仕事のやり方。もしくはお客様から電話がかかってきて、それに対応して仕事をしようというのがこの反応的な仕事のやり方になります。
何か外部環境から刺激があって、それに対して反応して仕事をするというのがこの反応的な仕事になります。
言い方を変えると受け身的な仕事です。これだけやっていても、会社を維持はできるかもしれないけれども成長は難しいということです。むしろ能動的な仕事を自ら積極的に会社のビジョンとか目標に向けてこういうことをやっていこうということで進めていくのがこの能動的な仕事になります。
マイクロマネジメントをしている会社の社長は、反応的な仕事で忙しくなってしまいます。そこに満足するのではなくて、能動的な仕事も取り入れていきましょうということです。
休暇を取ろう
次は、休暇を取ろうです。これはマイクロマネジメントの話でよく言われる笑い話なのですが、マイクロマネジメントをしていた社長が怪我をして、一週間とか一か月とか会社を休んだとします。そして体調が回復して戻って来たら会社が前よりも良くなっていたということが良くあります。
なぜかというと社長がマイクロマネジメントをしていた時よりも、社員が自主的に働くようになって、会社が前よりも良くなってきたという話です。なので、意図的にそういう休暇を取ってしまうというのも1つあるのかなと思います。
もちろんこれは休暇を取って、どこかに旅行に行くわけではなく、会社に行かずに、他の場所で仕事をするというだけでも、マイクロマネジメントを克服する大きなステップになると思います。
コーチを付ける
3つ目、コーチを付けよう、です。マイクロマネジメントをしているということを気付かないわけですので、それを第三者に指摘してもらわないといけないので、そういう場合にはコーチを付けましょうということです。
マネージャーを付ける
あとはマネージャーを付けようということです。どうしてもマイクロマネジメントしてしまう特性の人というのはいます。そういう場合には、誰かを自分の代わりにマネージャーに昇格させたり、もしくは誰かを引っ張って来てマネージャーにするということです。
そして、マネージャーに部下の仕事の修正とか調整をしてもらう。自分はそこには関わらないという組織体制にするというのも1つあるのかなと思います。
10倍の原則を知ること
次に10倍の原則です。マイクロマネジメントしてしまう人は、どうしても部下の仕事に納得がいかない、我慢できないということでついつい手をだしたり、口を出したりしてしまうわけです。そこで考え方を変えましょうということです。10倍の原則とは、人に何かお願いして任せる場合には、自分が1時間でできる仕事は部下に任せたら10時間かかること。それを最初の段階では許容してあげなさいという話です。もちろん部下もその仕事に慣れてきて熟練してきたら、その10時間が5時間になったり3時間になったり、最終的には社長と同じ1時間でできるかもしれないけれども、最初に新しい仕事を委任する場合には10時間かかるという風に想定して委任しろという話です。
そうすれば、1時間でできなかったからといって、いちいちイライラする必要がなくなるわけです。そのような感じで仕事の配分をしてみましょうという話です。
委任の仕組み
最後、委任の仕組みを創ろうということです。マイクロマネジメントをする社長は比喩表現で言うと、社員が仕事をし出すと背後から監視していることになります。そうなると社員のプレッシャーになりますし、生産性が下がるわけです。
例えば社員のちょっとしたパソコンの操作のミスとか、資料の作り方のミスとかそれを即座に指摘するというのがマイクロマネジメントなんですけれども、それをやらないためには委任の仕組みというのが大切です。部下にお願いした仕事はいつ報告してもらうのか、どういう形式で報告してもらうのかを予め決めておけば、背後からずっと監視し続ける必要はないわけです。そういう仕組みを創るというのも大事かなと思います。
委任の仕方が属人化しないようにする
マイクロマネジメントするのは社長だけではなくて、皆さんが雇った管理職の方々もしてしまう可能性があるわけです。
そこで、委任の仕方を属人性に任せるのではなく、会社の仕組みとして、マイクロマネジメントがなされないようにしていく必要があります。
仕組みを作って、マイクロマネジメントしなくても回るようにする
というわけで今日はマイクロマネジメントについて、その意味と悪影響と直すためのヒントをご紹介しました。ぜひ皆さんも自分がマイクロマネジメントをしていないかということを考えてみていただくといいのかなと思います。
なお、仕組み経営では、会社を仕組み化し、マイクロマネジメントしなくても会社が上手く回るようにするお手伝いをしています。詳しくはぜひ以下からご覧ください。