本記事では最初になぜ経営者は孤独と言われるのか、その理由をご紹介します。そのうえで、どうしたらその孤独感から抜け出すことができるのかをご紹介していきます。
「経営者は孤独」と言われる理由
会社の経営について全責任を持っている
当然、経営者は会社の経営について全責任を持っています。その責任感の重さが何よりも孤独感を感じる大きな要因と言えるでしょう。個々の仕事や事業に関してはそれぞれ担当の責任者がいるかもしれませんが、それらすべての結果について責任を持つのが経営者なのです。
社員にYESマンが多く、本当の意見やアイデアが得られない
社長の意見や指示をよく聞いてくれる社員が多いものの、一方で、”自分って本当に信頼されているのかな?本当にこの方向でいいのかな?”と内心感じている社長も多いものです。反対意見も率直に、正直に発言してほしい、と思う経営者は多いですが、実際にはそのような反対意見が出てこずに悩んでいる人も多いでしょう。
社員に反発され、四面楚歌
逆に社員からの信頼を得られずに、反発されている社長もいるかもしれません。やることなすこと、社員から反発され四面楚歌の状態です。自分が社長なのになぜこうなってしまったんだろう?と悩んでいる人もいるでしょう。
頼れるアドバイザーが不在
経営者としての在り方や戦略等、会社経営の高度な側面について信頼できるアドバイザーがいない、というのも経営者に孤独感をもたらす原因と言えます。各業務の個別的、技術的側面を支援してくれるコンサルタントやアドバイザーは世の中に多くいますが、経営者の仕事や生き方について、一緒に悩んでくれる相手は少ないものです。
経営者の孤独を解決する方法
では次に、経営者の孤独感を解決、軽減していくための方法を見ていきましょう。
孤独の中で生きる方法を学ぶ
最初の解決法は、話が矛盾しているようですが、経営者自身が孤独の中で生きる方法を学ぶ、ということです。これは私の師匠でもあるマイケルE.ガーバー氏が書籍「起業家精神に火をつけろ」の中で語っている話です。
ちょっと長いですが、引用しますのでご覧ください。
会話調で話が進みます。アドバイザー役がマイケルE.ガーバー氏、アドバイスを受ける側はサラという経営者になります。
マイケルE.ガーバー:
議論を尽くし たうえで結論を出したとしても、きみは依然として、
結論や将来に対する不安に悩まされることになるだろう。 そして、深夜でも、早朝でも、 過去に経験がないような孤独感を味わうことになる。 こんな経験が、リードする力を決定づけることになるんだ。 リーダーは孤独なもので、自分で決断を下すときにも、
目の前で部下が決断を下すときにも、いつも孤独な立場を守らなければならない。 もちろん、孤独が楽しいなんてことはないよ。
リーダーシップを学ぶための最初の課題は、 孤独のなかで生きる方法を学ぶことである。 これは正しい判断だろうか本当にそうだろうか? 、何か問違っているのではないだろうか? リーダーは、
いつもこのように自問自答を繰り返すが、 周囲の意見を聞いてみようと考えることはない。 もちろん、リーダーは、 悪口を言う人が周りにいることにも気づいている。 謙虚なリーダーであれば、 周囲の意見のほうが正しいことに気付いて、 目の前の事実に行き詰まりを感じてしまうかもしれない。 でも彼はそれを口にすることはできない。 では、どうしてリーダーは孤独に耐えられるのだろうか? それは激務にも関わらず、
リーダーを務めることは何物にも代えがたい楽しみだからである。 さもなければ、誰もその苦痛に耐えられるはずがない。 また、
リードすること、もしくはリードされることが、 理想的な企業を作るための唯一の方法であるという信念によって、 孤独に耐えているリーダーも いるだろう。私の経験上、リーダーシップという難題に挑む理由は、 このほかには見当たらないのである。 リーダーシップの最初のレッスン「ひとりで生きることを学ぶ」では、 ビジネスで起こるすべてに対して、 きみが責任を負うことが求められる。つまり、ほかに責任を取る人間がいないんだ。 これについてどう思うかな。 サラ:
正直なところ、
私に十分な力があると感じたことはないわ。いつも、 自分には向いていないように感じているの。 判断をしなきゃと思っても、その方法がわからないし、 それを学ぶ時間もなかったわ。 私はいつも自分はリーダーなんかじゃない、 ということを思い知らされているの。 リードという言葉自体が私には不似合いなのよ。「ボス」 と呼ばれても悪い気はしないけど、「リーダー」 と呼ばれると私には荷が重いの。リーダーシップというのは、 一流といわれる人が発揮するものであって、 アップルパイのお店を経営する私のような人間には、 無縁な言葉なのよ。だって、 私は毎日をなんとかやり過ごすために、 ちっぽけな判断ばかりを下している。そう考えれば、 私は決してリーダーではないわ。 マイケルE.ガーバー:
リーダーになるためには、
まずその言葉を受け入れて、 重要性と責任を認めるところからはじめなければならない。「 私はリーダーであり、 リーダーシップを発揮することが期待されている」という言葉が、しっくりこないといけないんだ、最初の課題は、 きみの内面がこの言葉を心地よく受け入れられるまで自分に言い聞かせるこことだよ。サラ、 ばかばかしいと思うかもしれないけれども、 リーダーとしての最初の責任は、 自分がリーダーであるという事実に居心地のよさを感じるようにな ることなんだ。リードする組織の大きさは問題ではない。 リーダーはリーダーだからね。むしろ、 小さな組織をリードする方法を学ぶことは、 将来に大きな組織を作るための準備になる。
以上、ちょっと難しかったかもしれませんが、まとめると次のようになるでしょう。
まず経営者に必要なのは、自分がリーダーであることを受け入れること。そして、リーダーとは孤独なものであると知ること。その代わり、リーダーには、孤独以上にリーダーとして生きることの楽しみがあると知ることです。
孤独感を軽減してくれる3人のアドバイザーを探す
次に、孤独感を軽減してくれる3人のアドバイザーを探すことです。この3人のアドバイザーとは、
- 原理原則を教えてくれる人
- 身近にいて第三者の視点を与えてくれる人
- 直言をしてくれる人
です。
1.原理原則を教えくれる人
一人目は、経営の原理原則、生き方の原理原則を教えてくれる人です。これは別に自分が親しい人とか知っている人でなくても構いません。過去の偉人や会ったことはないけれども尊敬している経営者などでもいいでしょう。彼らから原理原則を学ぶことで、それが自分の意思決定の指針になったり、悩んだときのヒントを与えてくれることになります。
日本と違い、海外の経営者の中には、宗教に入っている人が多いので、その経典が原理原則を教えてくれる存在になっていることが多いようです。
私の場合、10年来師事しているマイケルE.ガーバー氏がそれにあたります。その経験からも言えますが、原理原則を教えてくれる人を見つけることで、経営者としての学びや成長は圧倒的に早まると思います。
2.身近にいて第三者の視点を与えてくれる人
二人目は、身近にいて第三者の視点を与えてくれる人です。たとえば、コンサルタントやコーチ、または外部取締役、知り合いの経営者などがこれに当たるでしょう。彼らは自分の判断が正しいのかどうかを第三者の視点で判断してくれます。もちろん、彼らの判断が必ずしも正しいわけではなく、最終的に自分だけで決めないと行けないことには変わりはありませんが、自分が見落としていた見方や情報をもらえるので、より確からしい判断ができることになるでしょう。
3.直言をしてくれる人
三人目は、直言をしてくれる人です。これは主には社内に存在する人になるでしょう。幹部社員や創業メンバー、または一般社員の中でもずけずけと意見を言ってくれる人がいたりします。また、場合によっては家族がこの役割を果たしてくれることもあるでしょう。
社員の中で直言をしてくれる人は、最も貴重な存在と言えます。まず彼らは社長の意思決定の影響をダイレクトに受けます。社長の決定次第で自分の働き方や仕事内容が大きく変わるからです。また、彼らは上記の2人以上に、社長と多くの時間を過ごし、社内の状況も把握しているはずです。なので彼らからの意見は非常に貴重と言えます。
一方、直言をしてくれる人は得難いものです。多くの人は社長には遠慮してしまって直言することができません。彼らを得るには、謙虚な気持ちで日々過ごし、直言できる文化を社内に作っていかなくてはいけません。これは一朝一夕にはできません。
※3人のアドバイザーについては動画でも解説していますので合わせてご覧ください。
経営チームを作る
経営チームとは、その名の通り、経営の仕事をするためのチームのことです。
元々、チームというのは、何かの目的を達成するために協力し合うグループのことを指します。経営チームの目的とは、ビジネスの戦略を立案することです。会社が成長するにつれ、戦略的な仕事にチームで取り組むことが可能になります。
意思決定を集団で行うことは、時として適切でないことはあります。集団による意思決定は、大概にして時間がかかり、焦点を失い、複雑になります。現場における細かな意思決定は、スピードが求められるため、集団よりもリーダー単独による意思決定のほうが向いています。
一方、社長が担うべき、戦略に関する意思決定は話が異なります。戦略の決定は瞬時に行わないといけないものではないからです。戦略の決定はより長期的に大きな影響をもたらし、ビジネス全体の浮き沈みにかかわってきます。そこで、経営チームを作り、幅広い知識や経験、多様な視点、複数の選択肢を得ることによって、偏りのない意思決定ができるようになるでしょう。
このような経営チームを作ることができれば、経営者の孤独感は軽減されるはずです。
正直に話す(心理的安全性)
3人のアドバイザーを得るため、または経営チームを作るにあたっても必要なのが、経営者自身が正直に物事を話す、ということです。多くの経営者は、”自分は経営者らしくあらねばならない”と過度に思い込み、”経営者という仮面”をかぶって働いています。
しかし、このような仮面をかぶっていては、社員からの本当の信頼や信用を得ることはできません。仮面を被れば被るほど、裸の王様になり、孤独感が増大していくものです。
マイケルE.ガーバー氏は、
あなたのリーダーとしての能力は、あなたがすべてのことについて良く知っているかどうかによって決まるものではない。あなたの知識によって決まるものではない。それは、あなたが自分の強さや弱さについて、いかにオープンであるか、いかに正直であるかによって、決まるものである。
と言っています。
直言をしてくれる人を社内に作るためにも、経営チームを運営していくためにも、経営者は自分を飾らずに正直に話し、正直に振る舞うことが大切です。
また、以前グーグルが発表して話題になった、心理的安全性という言葉があります。チームの生産性を高めるためにはこの心理的安全性が必要だということです。
以下、同社の記事から引用します。
プロジェクト・アリストテレスの結果から浮かび上がってきた新たな問題は、個々の人間が仕事とプライベートの顔を使い分けることの是非であったという。
もちろん公私混同はよくないが、ここで言っているのはそういう意味ではなく、
同じ一人の人間が会社では「本来の自分」を押し殺して、「仕事用の別の人格」を作り出すことの是非である。
多くの人にとって、仕事は人生の時間の大半を占める。そこで仮面を被って生きねばならないとすれば、それはあまり幸せな人生とは言えないだろう。
社員一人ひとりが会社で本来の自分を曝け出すことができること、そして、それを受け入れるための「心理的安全性」、
つまり他者への心遣いや共感、理解力を醸成することが、間接的にではあるが、チームの生産性を高めることにつながる。
経営者がいつも本来の自分であることによって、ほかのメンバーも経営者に人間味を感じることができ、社長の良い面も悪い面も受け入れてくれるようになるのではないでしょうか。それが結果として、経営者の孤独感を軽減することにつながるはずなのです。
経営者が孤独から解放されるために
以上、経営者が孤独を感じる理由とその解決法についてご紹介してきました。
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