ワンマン経営の危険性を感じていた
幸之助氏はワンマン経営の危険性を感じており、衆知の経営を大事にしました。
ワンマンはとかく失敗する場合が多い。成功する場合もありますが、究極において失敗する。
いかにすぐれた人といえども、その知恵にはおのずと限りがある。「三人寄れば文殊の知恵」という言葉もあるように、多くの人の知恵を集めてやるに如くはないのである。
パナソニックグループによる衆知経営の実践
関連会社の元社長を務めた有田健一氏が、「論叢 松下幸之助」に寄稿した内容によれば、衆知経営を実践するためには、組織構造から考え直すことが大切であることがうかがえます。
同氏は社長に就任後、組織構造を根本から見直すことに着手しました。具体的には、社員が持つ多様な技術を整理し、共通性のある技術者をグループ化しました。例えば、空調、建築、水処理などの技術者をそれぞれのグループに分類しました。これらのグループは、「エンジニアリング・ビジネス・ユニット(EBU)」と名付けられ、各ユニットが独立採算で経営し、利益を生み出すよう指示されました。これは、従業員に自主性と自立性を促し、サラリーマン根性からの脱却と「社員稼業」の精神を植え付けることを目的としています。
自分の哲学と方針を持つ
衆知経営を実践するには、他者の意見を聞きつつも、自分の主体性を保ち、経営者としての主座を守りながら衆知を集めることが大切です。
衆知を集めるといっても、自分の自主性というか主体性はしっかりともっていなくてはならないということである。こちらの人の考えを聞き“それはそうだな”と思い、また別の人から違う意見を聞かされて“それもそうだ”というように、聞くたびにふらふら揺れ動いているというようなことでは、聞いただけマイナスということにもなりかねない。あくまで自分の主体性をもちつつ、他の人の言葉に素直に耳を傾けていく。いいかえれば、経営者としての主座というものをしっかり保ちつつ衆知を集めていくところに、ほんとうに衆知が生きてくるのである。 -松下幸之助
論語で語られる”和して同ぜず”と若干近い考え方かもしれません。