会長と社長の役割の違いとは?
結論から書きます。会長と社長の違いは、次の3点に集約されます。
- どちらも会社法で決まった役職ではない。社内での呼び名です
- 権限の差を決めるのは肩書きではなく代表権。「代表取締役会長」なのか「取締役会長」なのかで意味が変わります
- 担当する時間軸が違う。社長は今期の業績を持ち、会長は数年先と社外を持ちます
多くの記事は1と2で説明を終えます。ただ実際の会社で問題になるのは3です。時間軸の分け方を決めないまま会長職をつくると、会長と社長が同じ仕事を取り合う状態になります。この記事では法律上の整理から始めて、最後は役割分担を文書に落とすところまで扱います。
会長も社長も、会社法で決まった役職ではない
意外に思われるかもしれません。会社法に「社長」「会長」という機関はありません。法律が定めているのは株主総会・取締役・取締役会・代表取締役といった機関です。社長も会長も、会社が自分で決めた社内の呼称にすぎません。
とはいえ呼称が無意味というわけでもありません。会社法は、代表権のない取締役に社長という名称を付けた会社の責任について、次のように定めています。
株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。会社法第354条(表見代表取締役)
社長という肩書きを見た取引先は、その人に代表権があると考えます。法律はその信頼を保護しています。会長という呼称も同じ扱いです。呼び名は社内の都合で決められます。ただし対外的な効力までは社内の都合で消せません。
違いが生まれるのは「代表権があるか」
では実務上、会長と社長の権限差はどこで決まるのか。代表権の有無です。登記簿に「代表取締役」と載っているかどうかで、単独で契約を結べるかが変わります。
肩書きは大きく3通りに分かれます。
- 代表取締役会長…取締役であり代表権も持つ。契約や重要な意思決定を単独で行えます
- 取締役会長…取締役ではあるが代表権はない。取締役会での議決権は持ちます
- 会長(取締役ではない)…取締役会の外にいる立場です。名誉会長や相談役に近く、議決権はありません
社長側も同じです。代表取締役社長なのか、取締役社長なのかで意味が変わります。「代表取締役会長と取締役社長」という組み合わせなら、法的な決定権は会長にあります。逆に「取締役会長と代表取締役社長」なら、会社を代表するのは社長です。
自社がどちらなのかは登記簿を見れば分かります。曖昧なまま運用している会社は、まずここを確認してください。
会長、社長、どちらの序列が上?
一般的には会長が上です。日本の会社では会長が先代の社長であるケースが多く、社長は現在の業務執行の責任者という関係になります。最終決定権は会長が持ち、社長はその下で執行する。実質的に社長がナンバー2という形は珍しくありません。
ただしこれは慣習です。序列を実際に決めているのは、次の3つです。
- 代表権…前項のとおり、単独で会社を代表できるのは代表取締役だけです
- 株式の保有比率…取締役を選任するのは株主総会です。株式を過半数持つ人が、最後は人事を動かせます
- 取締役会の構成…どちらが推薦した取締役が多いかで、日常の議決が決まります
肩書きだけを見て「会長が上」と決めつけると実態を読み違えます。代表権のない会長でも、株式を7割持っていれば会社の最終権力者です。
肩書きより強いのは、株式を何パーセント持っているか
ここは中小企業ほど効いてきます。社長を交代しても株式を渡していない会社は多い。すると新社長は毎期の業績責任を負いながら、自分を解任できる人が社内にいる状態で仕事をします。
この状態が長引くと、社長は大きな判断を避けるようになります。設備投資も人事も、会長の顔色を見てから決めるようになるためです。組織の意思決定が遅くなる原因は社長の気概の不足ではありません。決定権が2か所に分かれている構造の問題です。
社長交代を計画するなら、株式の移転計画を同じ表の上で組んでください。事業承継が失敗する構造の多くは、経営・所有・家族の3つの円がずれたまま進むところから始まります。
会長と社長の担当領域はどう分かれるのか
権限の話が片付いたら、次は仕事の分け方です。実際に機能している会社は、時間軸と社内外で切っています。
- 社長…今期から3年先まで。社内のマネジメント、数字の達成、幹部の任免
- 会長…3年から10年先。社外との関係、業界での立ち位置、次の経営者を育てること
この分け方には理由があります。社長の仕事は評価期間が短く、どうしても目の前の数字に引っ張られます。会長が同じ時間軸を見ていると、指示が重複するだけで会社は前に進みません。社長の仕事を先に書き出し、そこに含まれないものを会長が引き受ける。この順番が正しい進め方です。
担当領域を決めたら組織図に反映してください。会長を組織図のどこに置くかを決めていない会社は、社員から見て指示系統が二重になります。
なぜ社長は会長になるのか。3つの型
「社長が会長になる理由」は会社によって全く違います。実際には3つの型があり、どの型かによって起きる問題も変わります。
①勇退型|経営を渡して自分は外に出る
後継者に経営を渡し、自分は社外活動や次世代の育成に移る型です。本記事が勧めるのはこの型です。会社にとっても本人にとっても、最も健全な形になります。
ただし勇退型が成立する条件は厳しい。社長の仕事が仕組みとして残っていることと、引退後にやることが決まっていることの2つが要ります。どちらかが欠けると、次の院政型に転落します。
②院政型|肩書きだけ譲って実権を持ち続ける
社長の肩書きは渡したが、決定権は手放していない型です。周囲からは代替わりしたように見えます。中身は変わっていません。
この型は本人に自覚がないことが多い。「相談されたから答えているだけ」という認識のまま、実質的には決裁を続けています。オーナーズトラップと呼ばれる状態で、会社が自分なしには回らない構造を、社長自身がつくり続けてしまいます。
院政型が続くと、新社長は育ちません。判断する機会を与えられないためです。数年後に「後継者に経営者としての力量が足りない」という話になります。ただ原因は本人の資質ではなく、判断の場数を用意しなかった構造にあります。2代目が力不足と言われる会社の多くは、この経路をたどっています。
③名誉職型|処遇のために席をつくる
創業家への配慮や社内のバランスを取るために会長職を置く型です。仕事の中身は決めずに席だけがある状態を指します。
短期的には摩擦が少ない。ただし役割が空白のまま席が存在するので、時間が経つと本人が仕事を探し始めます。探した先が現場だと、そこから二頭政治が始まります。名誉職として置くなら、意思決定に関与しないことを文書で明示してください。
会長と社長の二頭政治が起こす問題
会長がいる会社には、トップが2人いることになります。ここから問題が起こるケースが多い。
これを二頭政治といいます。会長という頭と、社長という頭がある状態です。
普通に考えれば、社長は会長から任されて会社を運営しています。実質的な組織のトップは社長です。ところが会長も組織の中で存在感を持ち続けます。「会長についていきます」「先代社長についていきます」というベテラン社員が出てきます。
ですので実質的な組織は、この図のような形になります。

正式には社長をトップとしたピラミッド構造があります。その横にもう1つ、会長をトップとした人脈があります。この2つで会社が動いている状態です。
会長派閥と社長派閥
こういう組織体制だと社長はやりづらい。会長の派閥に所属している社員がいるためです。この人には指示がしづらい。強く言えない。先代社長の息のかかったベテラン社員がいると、なかなか動かせないという事態が起こります。
会長の側にも言い分はあります。自分が築いた会社への影響力を保ちたいという気持ちは自然なものです。ただ、この組織構造だと社長がやりづらくなり、結果として会社がうまくいきません。
二頭政治の罠に陥らない会長と社長の関係づくりをしていく必要があります。ここで効くのは人間関係の努力ではありません。誰が何を決めるかを文書にすることです。
あわせて、社長を支えるナンバー2を誰にするかも決めておいてください。会長が実質的なナンバー2の位置に居座ると、本来その役を担うべき人材が育ちません。日本の会社で言えば番頭にあたる役回りです。
会長、社長の二頭政治を引き起こす「会長のジレンマ」とは?
二頭政治が生じる原因の一つに「会長のジレンマ」があります。
会長は本来なら社長に経営を任せ、自分は落ち着いた生活を送りたいと考えています。一方で社長の働きぶりが気になります。自分の存在価値も示したい。表向きは経営を任せたと言いながら、裏では現場に口を出したくなる。この葛藤がジレンマです。
ジレンマが強くなると、会長は経営に介入し続けます。社長との間に権限をめぐる対立が生まれます。その結果が二頭政治です。
会長職は社長を任命し、必要に応じて支える役割を担うべきものです。ジレンマによってその範囲を超えて経営に深く関与すると、組織の一体性が損なわれます。意思決定も遅くなります。
ジレンマの原因は人柄ではなく、引退後の計画がないこと
ここが本記事で最もお伝えしたい点です。会長が口を出してしまう原因を、本人の未練や独占欲に求める説明をよく見かけます。この見方だと打つ手が「我慢する」しかなくなります。実際にはもっと具体的な原因があります。引退したあとに何をするかが決まっていないことです。
引退の動機には2種類あります。次世代に任せたほうがうまくいくという押し出す側の動機と、引退してやりたいことがあるという引き寄せる側の動機です。拙著『仕組み化の経営術』では、この2つが揃っている必要があると書きました。
プッシュ型の動機だけだと、会社への未練が残ります。引退したものの、ついつい会社に出社し、経営に口出しをしてしまう可能性があります。そうなると経営チームから煙たがられることもあり、お互いにとって好ましくありません。清水直樹『仕組み化の経営術』
予定が空いていれば、人は会社に行きます。行けば気になることが目に入ります。目に入れば口が出ます。順番はいつもこれです。会長の人柄の問題ではありません。
したがって対策も具体的になります。会長になる日までに、会社以外の予定を先に埋めてください。業界団体の役職、社外取締役、講演、地域活動、学び直し。何でも構いません。空白の時間を残さないことが、二頭政治を防ぐ最も実効性のある方法です。
社長を辞めた後の生活を描けないまま交代日だけが近づくと、たいてい交代そのものが延期されます。高齢になっても引退できない社長の多くは、能力ではなく計画の欠落でつまずいています。
会長と社長の役割の違いを明確にする
このジレンマを解決するためにやるべきことは、会長の仕事を明確にすることです。
会長は基本的に社長を退いた人が就く役職なので、会社経営についてはベテランです。ただし会長というポジションについては1年生です。会長として何をすべきか分からない。社長とどう関わればいいのか分からないという悩みが出てきます。
そこで会長はどういう働き方をすればいいのか。6つの役割に分けて説明します。
①会長は社外、社長は社内
1つ目は社外活動に力を注ぐことです。会長は業界内外での人脈づくりと、事業機会の創出に努めます。業界団体への参加や他業界の経営者とのつながりを通じて、会社の発展に寄与します。一方で社長は社内のマネジメントに専念します。この役割分担は、会社の対外的な成長と内部の安定を両立させるために有効です。
実務上の目安を1つ挙げます。会長の予定表のうち、社外の予定が7割を超えているか。下回っているなら社内に関与しすぎている可能性があります。
②会長は社長の支援
2つ目は社長の支援に徹することです。会長は豊富な経験を活かし、社長のコーチやメンター役になります。社長が会社の仕組みづくりを行う際に、適切な助言を提供します。
ここで大事なのは、指示ではなく助言にとどめることです。両者の差は「決めるのは誰か」に表れます。会長が結論を出せばそれは指示です。選択肢を並べて社長に決めさせるなら助言です。会長が発言したあと、社長が別の結論を出しても構わない状態になっているか。ここを確認してください。
③会長が幹部育成
3つ目は幹部育成の責任を担うことです。会長は社長を育てた経験を活かし、次世代の経営者育成に取り組みます。社内の育成プログラムの講師を務めるなど、直接的に関与することで会社の将来に貢献します。
社長は部長や課長までは育てられるかもしれません。ただ社長の次の社長を育てた経験はありません。会長には社長を育てた経験があるので、今の社長のさらに次の社長も育てられます。会長は幹部候補の育成において最も適任です。
④会長は会社のフロントマン
4つ目はフロントマンとしての役割です。会長は会社の象徴的な存在として、セミナーや講演を通じて知名度の向上に寄与します。実務は社長以下の経営陣に任せ、会長自身は対外的な活動に注力します。この活動は会社のブランドづくりに大きく貢献します。
私の師匠のマイケル・E・ガーバーさんも、自分でつくった会社を早々に退いて会長になりました。会長になったときの役割はフロントマンです。会社の象徴としてセミナーや講演活動を行い、会社を売り込む。実務は社長以下の人たちがやるという分担でした。
ヴァージン・グループの創業者リチャード・ブランソン氏も会長職にありました。彼はまさにフロントマンです。2021年には自社が開発した宇宙船に自ら搭乗し、宇宙飛行を行っています。冒険家的な気質を持つ起業家です。彼の名前が知られるほどヴァージンという会社も知られる。まさに会社の顔と言えます。
⑤会長は特定事項についての拒否権を持つ
5つ目は、特定の重要事項について拒否権を持つことです。会長はすべての意思決定を社長に委ねるのではありません。リスク管理の観点から一部の事項に拒否権を残します。取締役の人事、本社移転、大型資産の処分、新規事業の立ち上げ、経営陣への賞与支給。これらに会長の承認を必要とすることで、会社の安定性を高められます。
イギリスの出版事業家フェリックス・デニス氏は、自分が創業した会社の会長に退いたあと、経営陣が自分の許可なく決めてよい範囲から5項目を外しました。著書『How to Get Rich』に書かれている内容です。
- 取締役の選任と解任
- 本社の移転
- 重要な資産の処分または事業の閉鎖
- 大きな新製品または新規事業の開始
- 経営陣が自分たちに賞与や昇給を与えること
この5つ以外については、経営陣は年初に合意した利益目標に向けて自由に動いてよい。デニス氏はそう決めていました。彼が各社の役員会に出席する回数は、年に4回から6回程度だったと書いています。
業務を丸ごと委任するのでも、全部を握るのでもありません。一部だけ権限を残し、残りは渡す。この線引きこそが会長職の設計です。
⑥会長は重要人事や大型投資に関与する
6つ目は重要人事や大型投資に関与することです。一定レベル以上の役職者の採用や、大規模な投資案件については会長の意見を求めます。この関与は社長の意思決定を支え、重要事項について慎重な判断を下す助けになります。
ただし「関与」の中身を決めておかないと、⑤の拒否権と混ざります。関与は意見を述べるところまで。決定は社長。この境目を先に決めてください。
以上のように、会長は社外活動・社長支援・幹部育成・フロントマン・拒否権の行使・重要事項への関与という6つの役割を担います。会長がこれらを適切に果たすことで、社長との役割分担と相互理解が生まれます。
例)松下幸之助が会長を退任したときに決めたこと
松下幸之助氏はパナソニックグループの創業者です。1961年に社長を退いて会長となり、1973年7月19日の取締役会で会長も退任して相談役に就きました。パナソニックの公式社史に記録が残っています。
ここで注目したいのは、退任にあたって決めたことです。氏は自分が抜けたあとの席を空白のままにしませんでした。後任の会長には高橋荒太郎氏、社長には松下正治氏が就いています。会長を血縁ではない人物に、社長を娘婿に。役割ごとに人を分けて配置しました。
そして自分は相談役という第3の席に移りました。取締役会の外の立場です。議決には加わりません。創業者が経営の意思決定機構から自分を外したという点が、この人事の要点です。
席を決めただけではありません。氏の発言集には、このとき「新生松下」に向けて会長・社長・その下の役員の役割を明確にした執務方針が残っています。以下がその内容です。
- 会長、社長は真に一体となって会社業務全般を統御していくこと。社員が会長に言ったことは社長にも伝達され、社員が社長に言ったことは会長に伝達されるように、意思疎通を図ること。重要問題についてはお互いが全てを知りあっているように努めること。
- 会長、社長は確固たる経営の基本方針を遵守することに精励し、同時に広く社会から寄せられる我社への要望と期待に正しく応えていくことに努力すること。
- 現業は専務または常務どまりとすること。副社長は複数の分野を大所高所から担当する。会長、社長は、経営に関しては重要かつ基本的な問題について指摘し指示するものとし、個々の業務に関する具体的指示をする必要のなくなることが望ましい。
- 会長、社長が右のごとき執務方針を励行しても、各担当者が報告し、指示を仰ぐことも多いと思われる。その場合にも、右に述べた方針を堅持する心構えをもって対処すること。
- 本年度の基本方針である「新生松下」発足の方針を強化していくこと。
- 会長、社長はじめ、現業重役諸氏は、社会の全ての人々を師表と仰ぎ、大事なお得意と考え、常に礼節を重んじ、謙虚な態度で接することを率先垂範すると同時に、全従業員にこの重要性を徹底すること。
1と4に注目してください。二頭政治への対策が2つ書かれています。1は情報を片方だけに集めないこと。社員が会長に言ったことは社長にも伝わるようにする、という取り決めです。派閥は情報の非対称から生まれます。ここを塞いでいます。
4はさらに実務的です。方針を決めても、担当者は今までどおり会長に報告し、指示を仰ぎに来る。それを見越したうえで「それでも方針を堅持せよ」と書いています。ルールを決めただけでは元に戻るという前提に立った文章です。
3は担当領域の線引きにあたります。現業は専務・常務まで。会長と社長は個々の業務に具体的な指示を出す必要がなくなることが望ましい。本記事でいう「会長は3年から10年先を持つ」と同じ考え方です。
中小企業でここまでの3層構造をつくる必要はありません。ただし考え方は同じです。抜ける前に、抜けたあとの席と、その席の仕事の中身を決める。自分の席だけでなく、後任の席も、その下の席も決める。決めずに抜けると、空いた席をめぐって社内が動き始めます。
会長と社長の役割分担を文書に落とす4ステップ
ここまでの内容を、自社で実行する手順に落とします。話し合いで済ませないでください。人が入れ替わっても残るのは文書だけです。
ステップ1|会長の職務契約書をつくる
職務契約書とは、組織図上の各役職について「目的」「仕事内容」「基準」を記した文書です。会長職についてもこれをつくります。
書く内容は3つです。会長という役職は何のためにあるのか。具体的に何をするのか。どうなっていれば果たしたと言えるのか。たとえば幹部育成なら「年間の育成プログラムを4回実施し、受講した幹部が翌年に自分の部門で同じ内容を実施できる状態にする」といった書き方になります。
会長と社長の職務契約書は同時につくってください。片方だけだと重複が見えません。作成した文書は経営計画書に綴じ込み、幹部が読める状態にしておきます。
ステップ2|拒否権を持つ項目を一覧にする
会長の承認が必要な事項を書き出します。デニス氏の5項目が出発点として使いやすいはずです。自社に合わせて金額の基準を入れてください。「1件3000万円を超える投資」のように数字で切ると運用できます。
一覧に載っていない事項は社長が決める。この原則を明文化しておくことが重要です。載せなかったものは渡したという意味になります。
ステップ3|会長が出る会議と出ない会議を決める
会長が全部の会議に出ている会社は、事実上まだ社長です。会議体を一覧にして、会長が出席する会議に印を付けてください。取締役会には出て、部門の定例会には出ない。この線引きが役割分担を社員に伝えます。
会議に出ないと決めた以上、そこで決まったことに後から意見を言わない。ここまで含めてルールです。
ステップ4|会長の任期と引退日を決める
会長職を無期限にしないでください。3年なら3年と決めます。期限がある役職は、期限までに引き継ぎを終える動機が働きます。
そして前述のとおり、引退後の予定を先に埋めます。ここまでやって初めて勇退型が成立します。
並行して、社長の仕事のうち何を引き継ぐのかも書き出してください。社長の引継ぎで失敗する会社は、引き継ぐ中身を決めないまま日付だけを決めています。逆算して5年あれば、順番に渡していけます。
会長と社長についてよくある質問
会長と社長、どちらが偉いのですか?
慣習上は会長です。ただし法的な決定権は代表権のある側にあり、最終的な権力は株式を多く持つ側にあります。「代表取締役会長と取締役社長」なら会長が上、「取締役会長と代表取締役社長」なら社長が上と読んでください。
会長は取締役でなくてもなれますか?
なれます。取締役ではない会長は、取締役会での議決権を持ちません。相談役や名誉会長に近い立場です。対外的には会社の代表者に見えるため、代表権がないことを取引先に誤解させない配慮が必要になります。
会長と相談役、顧問はどう違いますか?
いずれも会社法上の機関ではありません。一般には、会長が経営に関与する立場、相談役と顧問は求められたときに意見を述べる立場として使い分けられます。関与の度合いは会社ごとに異なるので、自社で定義して文書に残してください。
会長の報酬はどう決めればよいですか?
職務契約書に書いた仕事内容と基準に対して決めます。実務から離れているのに社長より高い報酬が続くと、社員は役割分担を信じません。役割を減らしたなら報酬も見直す。この整合が組織への説明になります。
社長が会長になる適切なタイミングは?
社長の仕事が仕組みとして残り、引退後の予定が決まったときです。年齢で決めるものではありません。逆に言えば、この2つが揃わないうちに肩書きだけ変えると院政型になります。
会長を置かないという選択もありますか?
あります。社長交代と同時に取締役も退き、経営から完全に離れる形です。会社にとっては最も分かりやすい形になります。経営から引退する方法を整理したうえで、会長職を置く必要が本当にあるかを検討してください。
社長から会長へ勇退する仕組みづくりなら
ここまで会長の仕事を6つと、役割分担を文書に落とす4ステップを紹介しました。
もちろん、これ以外の役割もあるはずです。自分には合わないというものもあると思います。1つのヒントとして、ご自身の仕事として定義していただければと思います。
仕組み化すれば社長から会長への勇退も可能
日頃、会社の仕組み化をお手伝いしています。仕組み化の目標はいくつかあります。
会社を仕組み化して組織を整え、もっと成長させていくというものがあります。仕組み化して自分でなくても経営できるようにし、事業承継するというものもあります。どこかの会社に売却するという目的もあります。
そのうちの1つが、自分は社長を退いて会長になり、社長として誰かを新しく任命するという勇退です。会長への勇退を目指すことも、仕組み化の目標になります。
仕組み化すると、自分の仕事を社員に任せていけるようになります。最終的には今やっている社長業すら他の人に任せられます。そして自分は会長となり、毎日出社するのではなく月に1回、週に1回といった関わり方に移れます。
ここで鍵になるのが経営チームです。人依存の会社では、承継後にうまくいくかどうかは後継者の資質次第とされます。仕組み依存の会社では、経営の仕組みの完成度と承継の仕組みが握ります。社長が経営チームをつくり、その中から次の社長候補を選び、候補を主軸に切り替え、前社長はメンター役として残り、最後にチームから抜ける。この段階を踏むと、能力を確かめながら承継を進められます。具体的な進め方は承継の5ステップにまとめています。
仕組み経営では、会長へ勇退するための会社の仕組みづくりから、会長と社長の体制づくりまで一貫したご支援をしています。詳しくは以下からガイドブックをダウンロードしてご覧ください。


