スタートアップとスモールビジネスの違い

スモールビジネスとスタートアップの違い6点|どちらで始めるか



清水直樹
最近、スタートアップという言葉をよく聞きます。また、スモールビジネスという言葉もだんだん日本でも使われるようになってきました。自分が経営している、または起業しようとしているのがスタートアップなのか、スモールビジネスなのかによって経営の仕方が大きく変わってきます。そこでこの記事では両者の違いを解説していきます。

 

最初にお伝えした置きたいのは、この記事はスモールビジネスとスタートアップのどちらが良い悪いと判断、またはどちらかをお勧めするものではありません。あくまで両者の違いをご紹介するのが目的になります。

 

動画でも同じ内容を解説しています

スモールビジネスとスタートアップの違い【一覧】

本文で1つずつ詳しく見ていきますが、先に全体像を並べておきます。

  • ①創業の意図……スタートアップは世の中に無いものを生み出そうとする。スモールビジネスは自分で自分のボスになる、生計を立てる。
  • ②成長曲線……スタートアップは初期に赤字を掘って一気に立ち上がる。スモールビジネスは最初から黒字で緩やかに伸びる。
  • ③資金……スタートアップは投資家からの調達が前提。スモールビジネスは自己資金と借入が中心。
  • ④見る数字……スタートアップは利用者数や成長率。スモールビジネスは売上と利益。
  • ⑤出口……スタートアップは上場か売却。スモールビジネスは続けるか、家族や社員に引き継ぐ。
  • ⑥必要な市場……スタートアップは市場そのものを作る。スモールビジネスは既にある市場に入る。

どちらが優れているという話ではありません。ただ、自分がどちらをやっているのかを取り違えると、要らない苦労をします。スモールビジネスなのにスタートアップのつもりで赤字を掘れば資金が尽きますし、逆にスタートアップのつもりで最初から黒字を求めれば、そもそも新しい市場は作れません。

 

中小企業・個人事業主とは何が違うのか

スモールビジネスと中小企業は、ほぼ同じものを指しています。違うのは分け方です。中小企業は法律上の区分で、業種ごとに資本金や従業員数で線が引かれています。一方のスモールビジネスは、経営のスタイルを表す呼び方です。

個人事業主も、法人化しているかどうかという形式の違いなので、スモールビジネスに含まれます。つまり、日本の会社のほとんどはスモールビジネスです。本記事で扱うのも、その前提での話になります。

 

スモールビジネスとは?

最近、日本でも聞かれるようになってきたスモールビジネスという言葉。もちろん、もともとは海外で使われていた言葉です。

私が見るに、外資系のIT企業などが日本に進出する際、海外と同じように小さい会社のことを”スモールビジネス”と呼び始めたのが日本でもスモールビジネスという言葉が広がってきた一因かなと思います。

では、このスモールビジネス、どういう会社のことを指すのでしょうか?日本ではかなり定義があいまいな言葉として使われていますが、米国では米国中小企業庁がスモールビジネスについて定義をしています。

その定義は、主に社員数によって決まっています。たとえば、製造業では社員数1,500以下の会社をスモールビジネスと定義しています。その他の業界では150人とか、250人の場合もあります。

なので定義はされているものの、複雑な条件になっている、という印象です。

 

スタートアップとは?

では一方のスタートアップとは何でしょうか?こちらもあいまいで特にこれといった決まりはありません。ただ、通説ではシリコンバレーの伝説的な起業家であるスティーブ・ブランク氏の定義が有名です。

「Temporary organization designed to search for a repeatable and scalable business model」

 

再現性と拡張性のあるビジネスモデルを模索するために設計された一時的組織

この定義によれば、スタートアップはあくまで一時的な組織形態を指している言葉です。成功すれば大企業になり、失敗すれば倒産、または細々と続ける会社になります。

たとえば、昔の楽天やサイバーエージェントが今でいうスタートアップ(昔はベンチャーと呼んでました)になるでしょう。しかし今では両者とも大成功し、もはや大企業といえます。

また、再現性と拡張性という点も大切ですね。ローカルでしか通用しないビジネスをしているのであればスタートアップといえません。

 

では、次からスタートアップとスモールビジネスの違いを見ていきましょう。

 

スタートアップとスモールビジネス:創業の意図の違い

スタートアップの創業の意図

ひとつめの違いは、創業の意図の違いです。スタートアップは創業当初から、飛躍的に成長されることを意図して作られます。

”ムーンショット”(かつて人類が月に到達することを目標にしたことから、壮大な目標のことを指す)や、スティーブジョブズの「宇宙に衝撃を与えたい」といった言葉に表れているように、世界中の人々に自分たちの影響力を及ぼすことを目標としています。スタートアップの起業家が集まるシンギュラリティ大学では、10億人に影響を与えるサービスを創ることがひとつの基準といわれています。

 

スモールビジネスの創業の意図

一方のスモールビジネスの創業の意図は、すべてとは言いませんが次のようなものです。専門家が独立して自分で自分のボスになる。地元で飲食店を始めて生計を立てていく。こう書くとスモールビジネスには夢が無いと思われるかも知れません。しかし実際のところ企業のほとんどはスモールビジネスであり、日本経済を回すうえで非常に大きな役割を担っています。

 

スタートアップとスモールビジネス:成長曲線の違い

スモールビジネスとスタートアップ

スモールビジネスとスタートアップの成長曲線の違い

スタートアップの成長曲線

スタートアップはそもそも飛躍的成長を遂げることを前提としますので、彼らの目指す成長曲線は上図のようになります。ほとんどのスタートアップは最初は売り上げがほぼゼロ、または非常に少ない状態で始まります。これは多くのスタートアップがまずは市場そのものを創り出すところからスタートする必要があるためです。


たとえば、AirBnBは、日本で言う民泊市場を切り開きました。しかし創業当初は民泊などという概念がありません。自らニーズがあることを確かめ、商品を開発し、市場を開拓していく必要がありました。

しかしひとたび、市場が存在することが確かめられると、一気に成長する(スケールする)フェーズに入ることが出来ます。スタートアップが急成長するのは、テクノロジーの力によります。テクノロジーを使うことで一人のユーザーを獲得するコストや、原価率が決定的に低くなるので、急成長出来るのです。

 

スモールビジネスの成長曲線

スモールビジネスにおいてはスタートアップよりも安定的で長期的な成長を目指すことがほとんどです。

スモールビジネスの大半は、すでに存在している市場に向けてビジネスを行います。たとえば、地元の飲食店、美容室、整骨院、システム開発、コンサルティングなどを開業する場合を考えます。すでに多くの同業他社が存在しますが、それはニーズが存在することが確かめられている証拠でもあるわけです。

そのため、多くのスモールビジネスではよっぽど戦略や立地を間違えない限り、開業時から売り上げが立ちやすいと言えます。

その反面、スモールビジネスではスタートアップのような急成長というのは見込みにくくなります。これはお店を開業した地元の市場規模に限界があるため、またはオーナーの時間的、身体的制約があるためです。飲食店では客席数でほぼ売り上げの限界が決まりますし、整骨院ではオーナーが一日に対応できる患者数で限界が決まります。

そのため、開業のリスクは低いが大きな成長も見込めない、というのが一般的なスモールビジネスといえます。

 

スタートアップとスモールビジネス:資金の違い

スタートアップの資金

スタートアップの場合、急成長を目指すがために、必要とされる資金も多くなります。もちろん、最初は創業者の自己資金でスタートします。ただ、初期段階で投資をしてくれるエンジェル投資家や、成長フェーズに入るために投資をしてくれるベンチャーキャピタルの存在が不可欠です。そのため、創業者は多くの時間を資金調達に使わなくてはいけないこともあるようです。

創業者は自己資金や調達した資金が枯渇する前に、成長フェーズに突入し、自力でキャッシュを稼ぐ力をつけることが求められます。

 

スモールビジネスの資金

スモールビジネスの場合には、自己資金で賄える程度の規模でスタートするか、または銀行などから融資を受けてスタートすることになります。先に言った通り、よっぽど間違えなければ早い段階でキャッシュを稼ぐことが出来ます。

 

スタートアップとスモールビジネス:KPI(重要指標)の違い

スタートアップのKPI

業態やサービス内容によりますが、インターネット系スタートアップの場合、少なくとも初期段階では利益よりもユーザー数やユーザーの継続率が重要な指標となってきます。

アマゾンは今でこそECの支配者ですが、ちょっと前までは赤字を垂れ流し、”あの会社はいつ潰れるんだ?”と常に言われ続けてきた会社でもあります。通常のビジネス感覚からすれば赤字を垂れ流し続けながら経営するなんて考えられないためです。普通の人にとっては利益こそが重要な指標なのです。

しかし、ジェフベゾスは自社がスタートアップであり、いま大切なのは利益を上げることではないと理解していたようです。彼は赤字を出しながらもユーザー数の拡大や顧客体験に投資をし続け今に至ります。

ちなみに1994年創業のアマゾンが最初に利益を出したのは、2001年の第四四半期であり、単年黒字は翌年の2002年になります。

 

スモールビジネスのKPI

スモールビジネスのKPIは何といっても、、その月の利益額です。つまり、今月をいかにして乗り切ったか?がオーナーにとっては非常に大切になります。

これはスタートアップのように多額の資金調達をしていないので当たり前です。いかにして売上と利益を確保し、社員に給与を払い、ビジネスを継続させるか?が大事なのです。

 

スタートアップとスモールビジネス:出口戦略の違い

スタートアップの出口戦略

スタートアップでは基本的に、会社を売却するか上場させることが大きな中間目標となります。そうすることによって、初期に投資してきたエンジェル投資家やベンチャーキャピタルがリスクに対するリターンを得ることが出来るからです。逆にそういった出口戦略が無ければ、投資家は投資をしてくれず、早々に撤退、ということになってしまいます。

 

スモールビジネスの出口戦略

出口の選び方は出口戦略とイグジットプランの4つの出口で整理しています。実際に売る場合の価格の考え方は会社売却の相場と計算方法をご覧ください。

多くのスモールビジネスでは出口戦略が存在しません。もちろん、中には上場や売却を目指す創業者もいます。ただ、全体から見ればごく稀といえるでしょう。創業者一代でお店を閉じるか、家族や社員に譲ってビジネスを続けるというケースがほとんどです。

 

スタートアップからスモールビジネスになる

さて、これまでスタートアップとスモールビジネスの違いを見てきました。両者は創業の意図から経営の仕方まで全く異なります。ただ一方で、スタートアップだと考えられていた会社がスモールビジネスになるケースや、その逆のケースもあります。

創業当初は世界を変えたいと思ってスタートし、資金調達をしたとします。しかし以下のような要因で、想定したようなスタートアップ企業になれない会社もたくさんあります。

 

思ったほど市場を開拓することが出来ず、成長に限界

サービスに対するニーズが想定していた以上に少なく、成長に限界が来た場合です。このような場合、うまく対象市場をピボット(方向転換)出来れば良いですが、出来なければ成長が見込めなくなります。

 

資金調達が出来ない

スタートアップの場合、何回かに分けて資金調達をするケースが多いものです。それがうまくいかず、資金不足で大きなスケールが出来ないパターンです。

 

このような要因で、倒産はしないだけの利益は上がっているものの、それ以上の成長フェーズに行けない、ということになります。そうなると潰れもせず、大きな成長もしません。成長曲線がスモールビジネスのものに近づいていきます。

こうなると創業者の選択肢は二つに一つです。


ひとつめは、いまのままスモールビジネスとして経営を続けることです。

ふたつめは、どこかに会社を売却することです。もちろん、成長の見込みがあまりない状態なので、あまりプレミアは付きませんが、次のスタートアップをスタートさせるだけの資金は手に入るかも知れません。

 

スモールビジネスからスタートアップになる

逆にスモールビジネスからスタートアップになる(生まれる)ケースがあります。

たとえば、アメリカに37シグナルズというウェブデザイン会社がありました。普通のスモールビジネスです。

この会社、その後スタートアップの視点を取り入れて、Basecampというツールを開発。徐々にそちらに経営資源をシフトしていって、いま非常に有名な会社になっています。

また日本でも、クラウドサインや弁護士ドットコムという業界でも有名なサービスを展開されているのは、元々弁護士事務所を開業されていた方です。

私も昔、一度だけ法律の相談に行ったことがあります。当時はオフィスも全然小さく、所長自ら対応してくれました。当時はごく普通のスモールビジネスでしたが、今ではスタートアップになってます。

 

スモールビジネスとスタートアップに関するよくある質問

自分の会社はどちらなのか、どう判断すればいいですか?

いちばん分かりやすいのは資金の出どころです。投資家から資金を入れて赤字を掘りながら成長を狙っているならスタートアップ、自己資金と借入で黒字を出しながら続けているならスモールビジネスです。市場そのものを作りにいっているかどうか、という見方でも判断できます。

 

スモールビジネスは成長しないということですか?

そうではありません。成長の仕方が違うだけです。スタートアップが一気に立ち上がるのに対し、スモールビジネスは同じ形を横に増やす形で伸びます。本文で紹介する事例のように、スモールビジネスから大きく育った会社はいくつもあります。

 

スモールビジネスとスタートアップ、どちらで始めるべきですか?

市場そのものを作るつもりがないなら、スモールビジネスで始めるほうが自然です。スタートアップの手法は、まだ誰も欲しがっていないものを世に出すための手法です。すでにニーズが確かめられている商売に投資家の資金を入れると、必要のない速度を求められることになります。

 

スモールビジネスと中小企業、個人事業主の違いは?

指しているものはほぼ同じです。中小企業は法律上の区分、個人事業主は法人化しているかどうかの違い、スモールビジネスは経営スタイルの呼び方です。日本の会社のほとんどはスモールビジネスにあたります。

 

スモールビジネスを大きくするには何が必要ですか?

社長個人の腕前ではなく、誰がやっても同じ成果が出る形をつくることです。スタートアップが資金で速度を買うのに対し、スモールビジネスは仕組みで再現性を買います。ここが両者の成長エンジンの違いです。この考え方は『はじめの一歩を踏み出そう』の要約で詳しく扱っています。

 

社長が現場から抜けられません。

スモールビジネスでもっとも多い悩みです。原因は本人の忙しさではなく、社長が持っている判断が誰にも渡されていないことにあります。自走するビジネスの作り方経営者の3つの人格をご覧ください。

 

スモールビジネスをスタートアップのように成長させる方法

というわけで、この記事ではスモールビジネスとスタートアップの違いを見てきました。最後にスモールビジネスをスタートアップのように成長させる方法をご紹介しておきます。

実はこのサイト、「仕組み経営」は世界No.1のスモールビジネスアドバイザーといわれる(米INC誌による)、マイケルE.ガーバー氏から直接教えを受け続けてきたメンバーが運営しています。

マイケルE.ガーバー氏はスモールビジネス向けにアドバイスをしてきたのですが、彼の意図は、「スモールビジネスをなんとか生き長らえさせる」ことにあったわけではありません。

彼はスモールビジネスのオーナーに起業家精神を伝え、スモールビジネスを急成長させるための考え方を伝えてきました。その例として良く挙げているのがレイクロックです。

 

視点の違いでスモールビジネスがスタートアップのように成長した

マクドナルドは一店舗のスモールビジネスから始まりました。創業者のマクドナルド兄弟は自社を成長させることなどに興味が無く、地元で愛されるお店を創り、自分たちが生活していければいいと考えていました。

マクドナルド兄弟は自社をスモールビジネスとしてしか捉えていませんでしたが、レイクロックは視点が違いました。

レイクロックはその一号店を見て、スタートアップ起業家のように考えました。これは複製可能で拡張可能なビジネスになる、と思ったのです。そして、実際に、マクドナルドをスモールビジネスから世界的な大企業へと成長させました。

実際にマイケルE.ガーバー氏の教えのおかげで同じように急成長した会社がたくさんあります。

スモールビジネスを経営されている方には多くのチャンスがある時代だと思います。

普通、スタートアップを始めるのは資金も人脈もない若者だと思われていますが、実はスタートアップで最も高い成長を記録する会社の創業者は平均45歳とも言われています。

スモールビジネスを既に経営されていて、ある程度資金も人脈もある、というほうが成功率が高いのです。

ひとつ例を挙げると、O2E Brandsという会社があります。


o2e-our-brands

この会社の創業者、ブライアン・スカッドモア氏は、大学時代に中古のトラックを7万円で購入し、ごみ収集の商売を始めました。まさに典型的なスモールビジネスです。

しかし彼はその後、マイケルE.ガーバー氏の教えを受け、”再現性と拡張性のあるビジネスモデル”を作り上げることに成功します。そして、いまでは世界で最も大きなゴミ収集会社になるだけではなく、外壁塗装などのフランチャイズビジネスを運営する年商300億円の会社になっています。

では彼はどのようにして自社を”再現性と拡張性のあるビジネスモデル”へと変えていったのか?その秘訣がビジネスの仕組み化です。

ビジネスを仕組み化することで、ビジネスに拡張性、再現性、そして永続性が生まれます。詳しくは以下のレポートや講座などでご紹介していますので、ぜひご覧ください。

 

▶Eブック「社長不在で成長する会社の創り方」

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