第五水準のリーダーシップとは?
第五水準のリーダーシップとは、「ビジョナリーカンパニー2」の中で最初に紹介されている概念であり、普通の会社が偉大な会社(ビジョナリーカンパニー)になるために必須の経営者の在り方と言えます。
前作「ビジョナリーカンパニー」においては、ビジョナリーカンパニーはカリスマ的リーダーによって作られたものではないことが明らかにされました。むしろ、カリスマ性とビジョナリーカンパニーは逆相関の関係にもあります。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
ではビジョナリーカンパニーを創ったリーダーはどういう人物なのか?その問いに答えるのがこの第五水準のリーダーシップです。
第一水準~第五水準までの説明
「第五水準」というからには、第一~第四もあるわけですが、その段階を示したのが以下の表です。
第一水準 | 有能な個人。才能、知識、スキル、勤勉さによって生産的な仕事をする。 |
第二水準 | 組織に寄与する個人。組織目標の達成のために自分の能力を発揮し、組織の中で他の人たちとうまく協力する。 |
第三水準 | 有能な管理者。人と資源を組織化し、決められた目標を効率的に効果的に追及する。 |
第四水準 | 有能な経営者。明確で説得力のあるビジョンへの支持と、ビジョンの実現に向けた努力を生み出し、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与える。 |
第五水準 | 個人としての謙虚と職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる。 |
「ビジョナリーカンパニー2」の中では第一~第四のリーダーシップについては詳しくは説明されていません。イメージでは、第四水準のリーダーがいわゆるカリスマ的なリーダーと言えるでしょうか。
また、大事なこととしては、第五水準の能力を十分に獲得したリーダーは、すべての水準の能力を持っているということです。彼らは引き出しを持っていて、時と場合によって自分の能力を引き出せるわけですね。
第五水準のリーダーシップ=謙虚さ+不屈の精神
第五水準のリーダーを特に特徴付けているのが、謙虚さと不屈の精神です。一見すると相矛盾する二つの素質を兼ね備えているのが特徴です。
ビジョナリーカンパニーが持つ特徴が「ANDの才能」です。これは理念か、利益かどちらか?ではなく、理念も利益も追及する、というように、どちらか(OR)ではなく、両方(AND)追いかけるということです。
リーダーシップについてもそれと同じで、謙虚さと不屈の精神の両方を追求するということですね。
この二つをより詳しく見てみると次のようになります。
個人としての謙虚さ | 職業人としての意思の強さ |
驚くほど謙虚で、世間の追従を避けようとし、決して自慢しない。 | 素晴らしい実績を生み出し、偉大な企業への飛躍をもたらす。 |
野心は自分個人ではなく、企業に向ける。次の世代に一層の成功を収められるように後継者を選ぶ。 | どれほど困難であっても、長期にわたって最高の実績を生み出すために必要なことはすべて行う固い意思を示す。 |
鏡ではなく窓を見て、他の人達、外部要因、幸運が会社の成功をもたらした要因だと考える。 | 偉大さが永続する企業を築くために基準を設定し、基準を満たさなければ決して満足しない。 |
静かな決意を秘めて行動する。魅力的なカリスマ性によってではなく、主に高い基準によって組織を活気づかせる。 | 結果が悪かった時、窓の外ではなく鏡を見て、責任は自分にあると考える。他人や外部要因や運の悪さのためだとは考えない。 |
どうすれば第五水準のリーダーになれるのか?
では次に、最も気になるであろう話題、どうすれば第五水準のリーダーになれるのか?を扱っていきます。
結論から言えば、ジムコリンズ氏は、「第五水準のリーダーになるための十段階というようなものが創れればよいが、残念ながらそこまで確かなノウハウを提供できるほどのデータはたまっていない」と言っています。
つまり、第五水準のリーダーになれる確実な方法などはないということです。
一方で、同氏は、このテーマに関していくつかの示唆を提供してくれていますので、ご紹介しておきましょう。
第五水準のリーダーになる芽を持っていない人もいる
世の中には2種類の人間がいて、100万年経っても第五水準のリーダーになれない人もいるとのことです。彼らは私利私欲のために働き、自分の死後も永続するようなものを創ろうという発想がありません。
このような特性を持つ人は出世競争に勝ちやすく、最高位のリーダーにまで登りつけることも多い点も指摘されています。だからこそ、第五水準のリーダーが率いて、ビジョナリーカンパニーになれる会社が少ないのでしょう。
世界観が変わる体験をしている
本書で紹介されている第五水準のリーダーのうち、何人かは世界観が変わるような体験をしています。たとえば、難病に侵される、戦争での体験、改宗などです。しかし、このような体験をしていない第五水準のリーダーも多く、世界観が変わる体験が必ずしも必要なものとは限りません。
第五水準のリーダーが行っていることを実行することで第五水準のリーダーに近づける
ジムコリンズ氏は、第五水準のリーダーになるために唯一、確からしい方法として第五水準のリーダーが行っていることを行えば、第五水準のリーダーに近づけるとも書いています。
つまり、ここでご紹介した第五水準のリーダーの特徴は、彼らの”態度”と言えますが、彼らの”行動”を真似することで、”態度”が身についていくというわけです。
これは私たちも多くの経営者の方と接している中で理解できる話です。意識を変えて行動を変えようとするよりも、行動を変えることで意識が変わることのほうが多いのです。私たちの師匠でもあるマイケルE.ガーバー氏も次のようなことを言っています。
事業に真摯に取り組むことこそ、真の自己開発につながる。
第五水準のリーダーシップについての自己診断
では最後に第五水準のリーダーシップについて、自己診断できるチェック項目をご紹介しておきましょう(ジムコリンズ氏のHPを参考)。
- 我が組織のリーダーは、自分自身ではなく、大義、組織、仕事に対する野心を第一に持っており、その野心を実現するために必要なことは何でもするという鉄の意志を持っています。
- 我が組織のリーダーは、第五水準のリーダーの意思決定、つまり会社の長期的な偉大さのための意思決定を行っています。
- 我が組織のリーダーは、成功した時には外部に要因を見つけ、失敗したときには鏡を見て自分に責任があったと考えています。
- 我が組織のリーダーは、卓越した基準、勤勉さ、犠牲、誠実さをもって社員を鼓舞するのであって、カリスマ性で人を鼓舞するようなことはしません。
- 我が組織のリーダーは、、最善の答えを求めて対話し、議論します(頭の良さをアピールしたり、出世のためのポイントを獲得することはしません)。
リーダーシップに興味がある方はこちらの記事もご参照ください。
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