今回は、Netflixのビジネスモデルについて解説します。
TV・DVDに対する破壊的イノベーションとして台頭してきたライブストリーミングサービスのNo.1に君臨するNetflix。
本記事では、Netflixのサブスクモデルとオンデマンドモデル、そして収益構造について詳しく解説します。
Netflixのビジネスモデル
Netflixのビジネスモデル概要
Netflixのビジネスモデルは非常にシンプルなサブスクリプションベースで構成され、TVドラマ・映画・バラエティ番組のストリーミングサービスを見放題で提供しています。
サブスクプランは3つ:ベーシック、スタンダード、プレミアム。
Netflixは、このシンプルなモデルでディズニーを上回る時価総額2000億ドル(21兆円)まで成長しています。(2020年時点)
Netflixの仕組み|どうやって成り立っているのか
Netflixの仕組みは、3つの動きが円になってつながっています。
- 会員から毎月定額を集める……広告ではなく、視聴者から直接お金を受け取ります
- 集めたお金でコンテンツを作る・買う……ここに莫大な金額を投じています
- コンテンツが増えるほど会員が増え、解約が減る……そしてまた1に戻ります
ここが重要な点です。テレビ局は視聴率を広告主に売っていますが、Netflixは視聴者に直接売っています。お金を払っている相手が違うので、作るものの判断基準も変わります。広告主に嫌われない番組ではなく、会員が解約しない番組を作ればよいからです。
解約されない仕組みが本体
定額のサブスクリプションで難しいのは、集めることよりもやめられないことです。登録は数分で終わりますが、解約も数分で終わります。
だからNetflixは、良い作品を並べるだけでなく、次に何を見ればよいかを提示する仕組みに力を入れています。見終わった直後に「次はこれ」が出てくるかどうかで、翌月の解約率が変わるからです。
中小企業がこの仕組みから学べること
月額制のサービスを持っている会社であれば、そのまま当てはまります。契約を取る仕組みと、契約を続けてもらう仕組みは別物です。前者に人と予算を割いている会社は多いのですが、後者が誰の担当かも決まっていないことがよくあります。
継続の担当を決め、解約の理由を集め、次に使ってもらう場面を用意する。ここまでを形にして初めて、月額制は安定収入になります。やり方を人ではなく形に残す考え方は仕組み化にまとめています。
Netflixのビジネスセグメント
Netflixのビジネスモデルでは、大きく3つのセグメントでお金を稼いでいます。
- ドメスティックストリーミング:
アメリカ国内のメンバーシップ - インターナショナルストリーミング:
アメリカ国外の世界中のメンバーシップ - DVDレンタル:
アメリカ国内で展開しているDVDの郵便レンタルのメンバーシップ
それぞれのセグメントを詳しく見ていきましょう。
1.ドメスティックストリーミング

上記の表のとおり、Netflixのアメリカ国内のメンバーシップの数は44,738人(2015)から52,810(2017)に増加し、2020年には61,043,000人にまで増加しました。
このメンバーシップの増加は、コストの増加も意味しています。メンバーシップ獲得のために、同2年間でNetflixはコンテンツに3億3540万ドルの費用をかけています。
しかし、表の営業貢献利益(原語では「Contribution margin」)を見ると、37%と高い利益率を確保していることがわかります。営業貢献利益とは、本業での売上からコストを差し引いた利益のことで、Netflixがストリーミングサービスによって高い利益率を保てるビジネスモデルであることがわかります。
2.インターナショナルストリーミング

Netflixの海外セグメントは、2017年に国内セグメントと同じくらいの規模まで成長しました。2020年第4四半期の会員数は、ヨーロッパ・中東・アフリカで66,700,000人、南米で37,580,000人、アジアで25,490,000人にまで増えています。
こちらも、メンバーシップ獲得のためのコストはかなりかけており、2015年から2017年には約1億ドルのコンテンツコストの増加を計上しています。
営業貢献利益に着目してみると、2017年の利益率は4%、2016年は利益率がマイナスとなっています。これは、メディア業界におけるグローバル化によくみられる現象で、ユーザー獲得コスト増と現地の文化理解に時間を要するために一時的に利益獲得が困難となります。
3.DVDレンタル

今のNetflixというと、オンデマンドストリーミングのイメージしかない方も多いでしょう。
しかし、Netflixはも元々DVDの郵便レンタルからスタートした会社です。
そんなDVDレンタル事業は、売上はストリーミングに及ばないにしろ、高い貢献利益率を誇ります。2017年のデータを見ると、アメリカ国内のストリーミング事業の貢献利益率を上回る55%を記録しています。
このことから、DVDレンタルも規模は小さいけれども収益性の高いビジネスであることがわかります。
Netflixの収益構造
Netflixの収益構造を見てみましょう。

Netflixの収益性
Netflixは収益性の高いビジネスです。
2018年のNetflixの当期純利益は12億ドル、2019年は18.7億ドル、そして2020年には約27.6億ドルの利益を計上し、前年より47.91%増加しています。
ストリーミング市場全体の成長やコロナのStayHomeの影響もあり、登録者数、利益ともに毎年大幅に向上していることがわかります。
Netflixのキャッシュフローは赤字

高い利益水準を持つNetflixですが、キャッシュフローを見てみると、実はマイナスとなっています。
この理由は、オリジナルコンテンツの制作とコンテンツのライセンシングにコストを費やしているためです。
将来を見据えて持続的に顧客を獲得・維持するために特にオリジナルコンテンツの制作にはここ数年間大規模な投資を行っています。動画ストリーミング市場の競争が激しくなるにつれて、他と差別化するためにNetflixでないと見れないコンテンツを用意することが大きなカギとなるためです。
Netflixのビジネスモデルと経営戦略から学ぶこと
同社の人事制度や組織文化については組織文化とはもあわせてご覧ください。
ビジネスモデルはマネタイズだけではない
一般的に言われるビジネスモデルには誤解があります。ビジネスモデルは、単純なマネタイズ戦略のことを指すのではありません。
- どうやって稼ぐか
- 製品・サービスをどうやって市場で利用可能にするか
- 自社のビジネスだけでなくステークホルダーにどうやったら価値を提供できるのか
ビジネスモデルとは、自社のビジネスをサステナブル、スケーラブルにするための複合的な戦略を指します。
Netflixはサブスクリプションという形で安定した収益の循環を作りました。それだけでなく、オンデマンドという考え方のもと、番組を作る側としての価値も生み出しています。
また、Netflixの会員はサブスクライバーだけでなく、流行のNetflixオリジナルコンテンツを広めるインフルエンサーとしての役割も担っています。
イノベーションとは、ビジネスモデルの新しい組み合わせ
Netflixのビジネスモデルは、真新しいアイデアではありません。
ビジネスモデルに関し、私たちはイノベーティブという表現をよく使いますが、実際には真新しいビジネスモデルのアイデアは中々生まれません。
イノベーションとは、現存するビジネスモデルを新しい市場や業界に適用することで生まれます。
Netflixのサブスクリプションモデルも、元々は新聞や学術論文で数十年前から使われてきました。
テクノロジーの進化をビジネスモデルに組み込む
テクノロジーの進化に伴い、従来のビジネスモデルが新しい産業に適用できるようになり、Netflixのビジネスモデルもその一例です。
Netflixは、Netflix ISP Speed IndexというISP(Internet Service Provider)がNetflixのストリーミングに最適なインターネットへの接続スピードを提供していることを示す月次のレポートを作成しています。
NetflixやGoogleのようなテックジャイアントは、テクノロジーの進歩によって成長してきました。
安定したネットワーク接続が顧客獲得と維持には必須なのです。
オンデマンドビジネスモデル
テック業界において、Netflixのようなオンデマンドビジネスモデルは当たり前になってきました。
TVでは長年、供給されるプログラムは厳格にスケジューリングされてきました。というのも、多くの企業で働くスケジュールが均質化され、人々の生活スタイルは個人間であまり差がなかったためです。
しかし時代と技術の進化にともない、フリーランスやフレックスタイムを導入する企業が増えました。時間にとらわれない生活を選ぶ人が増えてきたのです。
そんな世界の変化、新世代の需要に対し、生まれてきたのがオンデマンドビジネスモデルです。
Netflixは、実はDVDレンタルの時代からネットで予約⇒自宅にいつでも配送のオンデマンドスタイルを取っています。そして、テクノロジーの進化と共にそのリードタイムを極限まで縮めたストリーミングサービスへと変わっていったのです。
サブスクリプションモデルの展開
Netflixのサブスクリプションモデルは、非常に大きなスケールで展開しています。しかし、これは一夜の成果ではなく、現在の会員数獲得までにかなりの投資をした結果です。
ビジネスセグメントのインターナショナルストリーミングで利益率が低かったように、Netflixはコンテンツの制作とライセンス獲得にかなりのコストを費やしています。
2017年から2018年にかけて、コンテンツ制作・獲得コストは177億ドル⇒193億ドルと16億ドルも増加しており、オリジナルコンテンツとグローバルにおけるTVドラマや映画などのコンテンツ掲載資格の取得にかなり投資をしていることがわかります。
一般的にサブスクリプションモデルは、単純な売切りビジネスよりもセールスが難しく・長期化すると言われています。
登録は簡単でも、良いコンテンツを配信し続け、システムを保守し、顧客サポートを充実させなければ、すぐに解約されてしまうためです。
サブスクであれば安定的に楽に稼げる、というわけではないということです。
サブスクだからこそ、会員登録後のカスタマーサクセス・サポート、顧客を継続的に満足させる仕組みづくりに大きな労力やコストが必要となるのです。
最後に
いかがだったでしょうか?
Netflixのビジネスモデルについて解説してきました。
DVDレンタルから始まったNetflixがテックジャイアントと呼ばれるまでに成長してきた背景には、オンデマンドモデルを実現するテクノロジーの進化・シンプルなサブスクリプションモデルを成功させる莫大な投資が隠れていました。
今後もストリーミングサービスをけん引するNetflixの向かう先から目が離せません。
最後に、この記事でいちばん持ち帰っていただきたい点を書いておきます。Netflixが変えたのは「見るもの」ではなく「お金の受け取り方」です。1本ずつ貸す形から、月額で預かる形へ。ここを変えたことで、作るべきものの判断基準も、社内で見るべき数字も、全部が変わりました。
ビジネスモデルを変えるというのは、商品を変えることではありません。誰から、どういう順番でお金を受け取るかを変えることです。
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