今回は、Netflixのビジネスモデルについて解説します。
TV・DVDに対する破壊的イノベーションとして台頭してきたライブストリーミングサービスのNo.1に君臨するNetflix。
本記事では、Netflixのビジネスモデルについて、Netflixのサブスクモデルとオンデマンドモデル、収益構造について詳しく解説します。
Netflixのビジネスモデル
Netflixのビジネスモデル概要
Netflixのビジネスモデルは非常にシンプルなサブスクリプションベースで構成され、TVドラマ・映画・バラエティ番組のストリーミングサービスを見放題で提供しています。
サブスクプランは3つ:ベーシック、スタンダード、プレミアム。
Netflixは、このシンプルなモデルでディズニーを上回る時価総額2000億ドル(21兆円)まで成長しています。(2020年時点)
Netflixのビジネスセグメント
Netflixのビジネスモデルでは、大きく3つのセグメントでお金を稼いでいます。
- ドメスティックストリーミング:
アメリカ国内のメンバーシップ - インターナショナルストリーミング:
アメリカ国外の世界中のメンバーシップ - DVDレンタル:
アメリカ国内で展開しているDVDの郵便レンタルのメンバーシップ
それぞれのセグメントを詳しく見ていきましょう。
1.ドメスティックストリーミング
上記の表のとおり、Netflixのアメリカ国内のメンバーシップの数は44,738人(2015)から52,810(2017)に増加し、2020年には61,043,000人にまで増加しました。
このメンバーシップの増加は、コストの増加も意味しています。メンバーシップ獲得のために、同2年間でnetflixはコンテンツに3億3540万ドルの費用をかけています。
しかし、表の営業貢献利益(Contribution margin)を見ると、37%と高い利益率を確保していることがわかります。営業貢献利益とは、本業での売上からコストを差し引いた利益のことで、Netflixがストリーミングサービスによって高い利益率を保てるビジネスモデルであることがわかります。
2.インターナショナルストリーミング
Netflixのインターナショナルセグメントは、2017年にドメスティックセグメントと同じくらいに成長し、2020年の4Qのメンバーシップ数は、ヨーロッパ・中東・アフリカで66,700,000人、南米で37,580,000人、アジアで25,490,000人にまで成長しています。
こちらも、メンバーシップ獲得のためのコストはかなりかけており、2015年から2017年には約1億ドルのコンテンツコストの増加を計上しています。
営業貢献利益に着目してみると、2017年の利益率は4%、2016年は利益率がマイナスとなっています。これは、メディア業界におけるグローバル化によくみられる現象で、ユーザー獲得コスト増と現地の文化理解に時間を要するために一時的に利益獲得が困難となります。
3.DVDレンタル
今のNetflixというと、オンデマンドストリーミングのイメージしかない方も多いでしょう。
しかし、Netflixはも元々DVDの郵便レンタルからスタートした会社です。
そんなDVDレンタル事業は、売上はストリーミングに及ばないにしろ、高い貢献利益率を誇ります。2017年のデータを見ると、アメリカ国内のストリーミング事業の貢献利益率を上回る55%を記録しています。
このことから、DVDレンタルも規模は小さいけれども収益性の高いビジネスであることがわかります。
Netflixの収益構造
Netflixの収益構造を見てみましょう。
Netflixの収益性
Netflixは収益性の高いビジネスです。
2018年のNetflixの当期純利益は12億ドル、2019年は18.7億ドル、そして2020年には約27.6億ドルの利益を計上し、前年より47.91%増加しています。
ストリーミング市場全体の成長やコロナのStayHomeの影響もあり、登録者数、利益ともに毎年大幅に向上していることがわかります。
Netflixのキャッシュフローは赤字
高い利益水準を持つNetflixですが、キャッシュフローを見てみると、実はマイナスとなっています。
この理由は、オリジナルコンテンツの制作とコンテンツのライセンシングにコストを費やしているためです。
将来を見据えて持続的に顧客を獲得・維持するために特にオリジナルコンテンツの制作にはここ数年間大規模な投資を行っています。動画ストリーミング市場の競争が激しくなるにつれて、他と差別化するためにNetflixでないと見れないコンテンツを用意することが大きなカギとなるためです。
Netflixのビジネスモデルから学ぶこと
ビジネスモデルはマネタイズだけではない
一般的に言われるビジネスモデルには誤解があります。ビジネスモデルは、単純なマネタイズ戦略のことを指すのではありません。
- どうやって稼ぐか
- 製品・サービスをどうやって市場で利用可能にするか
- 自社のビジネスだけでなくステークホルダーにどうやったら価値を提供できるのか
ビジネスモデルとは、自社のビジネスをサステナブル、スケーラブルにするための複合的な戦略を指します。
Netflixに関していうと、サブスクリプションモデルというマネタイズモデルを取り、安定収益を生み出すエコシステムを作るだけでなく、オンデマンドというコンセプトの下、メディアプロダクションとしての価値も生み出しています。
また、Netflixの会員はサブスクライバーだけでなく、流行のNetflixオリジナルコンテンツを広めるインフルエンサーとしての役割も担っています。
イノベーションとは、ビジネスモデルの新しい組み合わせ
Netflixのビジネスモデルは、真新しいアイデアではありません。
ビジネスモデルに関し、私たちはイノベーティブという表現をよく使いますが、実際には真新しいビジネスモデルのアイデアは中々生まれません。
イノベーションとは、現存するビジネスモデルを新しい市場や業界に適用することで生まれます。
Netflixのサブスクリプションモデルも、元々は新聞や学術論文で数十年前から使われてきました。
テクノロジーの進化をビジネスモデルに組み込む
テクノロジーの進化に伴い、従来のビジネスモデルが新しい産業に適用できるようになり、Netflixのビジネスモデルもその一例です。
Netflixは、Netflix ISP Speed IndexというISP(Internet Service Provider)がNetflixのストリーミングに最適なインターネットへの接続スピードを提供していることを示す月次のレポートを作成しています。
NetflixやGoogleのようなテックジャイアントは、テクノロジーの進歩によって成長してきました。
安定したネットワーク接続が顧客獲得と維持には必須なのです。
オンデマンドビジネスモデル
テック業界において、Netflixのようなオンデマンドビジネスモデルは当たり前になってきました。
TVでは長年、供給されるプログラムは厳格にスケジューリングされてきました。というのも、多くの企業で働くスケジュールが均質化され、人々の生活スタイルは個人間であまり差がなかったためです。
しかし、時代やテクノロジーの進化に伴い、フリーランサーや企業におけるフレックスタイムの導入が増加し、時間にとらわれない生活スタイルを選択する人が増えてきました。
そんな世界の変化、新世代の需要に対し、生まれてきたのがオンデマンドビジネスモデルです。
Netflixは、実はDVDレンタルの時代からネットで予約⇒自宅にいつでも配送のオンデマンドスタイルを取っています。そして、テクノロジーの進化と共にそのリードタイムを極限まで縮めたストリーミングサービスへと変わっていったのです。
サブスクリプションモデルの展開
Netflixのサブスクリプションモデルは、非常に大きなスケールで展開しています。しかし、これは一夜の成果ではなく、現在の会員数獲得までにかなりの投資をした結果です。
ビジネスセグメントのインターナショナルストリーミングで利益率が低かったように、Netflixはコンテンツの制作とライセンス獲得にかなりのコストを費やしています。
2017年から2018年にかけて、コンテンツ制作・獲得コストは177億ドル⇒193億ドルと16億ドルも増加しており、オリジナルコンテンツとグローバルにおけるTVドラマや映画などのコンテンツ掲載資格の取得にかなり投資をしていることがわかります。
一般的にサブスクリプションモデルは、単純な売切りビジネスよりもセールスが難しく・長期化すると言われています。
登録は簡単でも、常に良いコンテンツを配信し、システムメンテナンスを行い、顧客サポートを充実させないと、すぐに解約されてしまうためです。
サブスクであれば安定的に楽に稼げる、というわけではないということです。
サブスクだからこそ、会員登録後のカスタマーサクセス・サポート、顧客を継続的に満足させる仕組みづくりに大きな労力やコストが必要となるのです。
最後に
いかがだったでしょうか?
Netflixのビジネスモデルについて解説してきました。
DVDレンタルから始まったNetflixがテックジャイアントと呼ばれるまでに成長してきた背景には、オンデマンドモデルを実現するテクノロジーの進化・シンプルなサブスクリプションモデルを成功させる莫大な投資が隠れていました。
今後もストリーミングサービスをけん引するNetflixの向かう先に目が離せません。
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