会社を成長させる4つの方法

会社を成長させる4つの方法とは?規模と質の両輪で伸ばす経営戦略



「会社を成長させたい」——経営者であれば誰もが持つ願いです。しかし、いざ会社の成長を実現しようとすると、「何を、どの順番で手を打てばいいのか」で迷う社長は少なくありません。この記事では、会社を成長させる4つの方法(アンゾフの成長マトリクス)を軸に、規模と質の両面から会社を成長させる考え方を、中小企業の実例を交えて解説します。

会社を成長させるとは?2つの成長パターンを理解する

まず会社を成長させるというときに、2つのパターンがあることを知っておきましょう。この2つを区別できているかどうかで、打つ手がまったく変わってきます。

パターン①会社の規模(売上や利益、社員数)を成長させる

ほとんどの人がイメージする成長とは、こちらの会社の規模を成長させるということでしょう。売上や利益などの財務データを成長させること、社員数や店舗数など会社の大きさを成長させるということです。目に見えて数字が伸びるため、成長を実感しやすいのがこのパターンです。

パターン②会社の質を成長させる

二つ目の成長は、会社の質を成長させる、ということです。たとえば、企業文化をより良いものにする、社員を成長させる、顧客との関係を強くする、ブランド力を上げる、内部の仕組みを強化するなどです。数字には表れにくいものの、長期的に会社が成長し続けられるかどうかは、こちらの質的成長にかかっています。

会社の規模拡大だけを目指すことの注意点

ほとんどの社長は会社を質的に成長させるということを意識することはないでしょう。しかし、規模だけを追い求めると、どこかで成長の踊り場が訪れます。それどころか、社員が大量にやめたり、不祥事を起こしたり、顧客が離脱したり、と成長させてきたつもりが衰退してしまうこともよくあります。

会社の質的成長は、木で言えば会社の根っこを成長させることです。大きな木ほど根がしっかりしているように、会社規模を成長させたければ質も成長させることが大切です。

根がしっかりした大きな木は、会社の質的成長を象徴している

質を無視して規模を追求する悪い例としては、次のようなものがあります。

  • 社員や店長が育っていないうちに店舗数だけを増やす。

⇒店舗のオペレーションがグダグダで顧客が離脱。

  • 商品やサービスの質が低いのに顧客数だけを追い求める。

⇒一回だけの顧客ばかりになり、成長が止まる。

  • とにかく社員数を増やす。(社員数=社長の器という発想)

⇒会社の文化が作られず、離職の増加や人間関係の悪化。

社長としてはどうしても規模を追いがちになるのはわかります。しかし、質も同時に高めなければ、成長させようと思って一生懸命やっていたつもりが、衰退の入り口に足を突っ込んでいるケースもあるのです。一時期メディアで取り上げられていた急成長企業が、今度は縮小のニュースばかりになる、というのはよくあることだと思います。

自己啓発の大家、ジグ・ジグラー氏は、

3歩進むために2歩後退することを恐れてはならない

と言っています。これはまさに規模だけを求める社長に伝えたい言葉です。目先の規模拡大を一度立ち止まって見直し、質を固め直すことが、結果として大きな成長につながります。

会社の成長ステージと、社長の役割はどう変わるのか

会社を成長させる方法を考える前に、押さえておきたいのが「成長ステージによって、社長がやるべきことは変わる」という事実です。同じ「会社の成長」でも、創業したばかりの会社と、社員が数十人いる会社とでは、社長に求められる役割がまったく違います。

創業期:社長がプレイヤーとして数字をつくる

創業期は、社長自身が営業も商品開発も現場も回す時期です。この段階では、社長の個人的な馬力がそのまま会社の成長スピードになります。多くの中小企業は、この「社長の頑張り」で一定の規模まで成長します。

成長期:社長がプレイヤーから仕組みづくりへ移行する

問題は、社長の頑張りだけで伸ばせる規模には限界があるということです。社長が現場に張りついている限り、会社は社長の時間とキャパシティ以上には大きくなれません。ここで社長がやるべきなのは、「自分がいなくても回る仕組み」をつくることです。私たちが職人型ビジネスと呼んでいる、社長やベテラン社員の個人的な能力に依存した状態から抜け出すことが、次の成長ステージへの分かれ道になります。

成熟期:社長が会社の未来をつくる仕事に集中する

仕組みが回り始めると、社長は日々の業務から解放され、事業の方向性や新たな成長戦略といった「会社の未来をつくる仕事」に時間を使えるようになります。会社を継続的に成長させられる社長は、成長ステージに合わせて自分の役割を変えていける社長なのです。

「社長がいないと回らない」状態は成長のブレーキになる

売上や社員数が増えても、意思決定や重要な業務が社長に集中していると、会社が大きくなるほど社長がボトルネックになります。会社を本当に成長させたいなら、規模を追う前に「社長依存から抜け出す」ことが土台になる、という視点を持っておいてください。

会社(の規模)を成長させるアンゾフの成長マトリクス

というわけで、成長に関する注意点をお伝えしたうえで、メインテーマの会社(の規模)を成長させる4つの方法をお伝えしていきます。

会社の規模を成長させるために、最初に考えるべきことは、対象市場です。

対象市場の選び方が間違っていると、どんなにいい商品やサービス、または良い組織を作っても大して儲からないのです。


市場というのは大体規模が決まっています。たとえば、私たちに関連する話でいうと、中小企業向けの経営者向けのコンサルティングの市場というのは、社員研修の市場よりも少なくとも桁が一つくらい小さいです。

その市場規模の大きさが、会社がどこまで成長できるか?という限界に直結してきます。

当たり前ですが、市場規模が100億円のところで年商300億円の会社を創るのは無理な話です。

対象市場を見直すために有効なのが、今日のテーマである会社を成長させる4つの方法です。

この方法はアンゾフという経営学者によって提唱され、アンゾフの成長マトリクスと呼ばれています。

実はこれは良く知られた方法ではありますが、会社を成長させるには次の4つの軸しかありません。「商品(既存/新規)」と「市場(既存/新規)」の掛け合わせで、成長の方向性を整理するフレームワークです。

アンゾフの成長マトリックする

1.既存商品を既存市場に売る(市場浸透)
⇒シェア向上を目指す
⇒最もリスクが低い

2.新規商品を既存市場に売る(新商品開発)
⇒顧客の生涯価値を高める
⇒次にリスクが低い

3.既存商品を新市場に売る(新市場開拓)
⇒新規顧客開拓
⇒次にリスクが低い

4.新商品を新市場に売る(多角化)
⇒完全なる新規事業
⇒最もリスクが高い

中小企業の社長が特に考えたいのが、2と3です。以下、それぞれの方法を順番に見ていきましょう。

1.既存商品を既存市場に売る(市場浸透)

いま売れている商品・サービスを、いまのお客様がいる市場でさらに売っていく方法です。4つの中で最もリスクが低く、すでに市場で一定の成功を収めている会社であれば、まずはこの道を突き詰めるのが王道です。

具体的には、既存顧客の購入頻度や単価を上げる、リピート率を高める、営業・マーケティングの精度を上げてシェアを伸ばす、といった打ち手が該当します。新しいことに手を出す前に、「いまの商品を、いまの市場で、まだ伸ばせる余地はないか?」を問い直すことが、地に足のついた会社の成長につながります。

2.新規商品を既存市場に売る(新商品開発)

これは新しい商品やサービスを開発して既存のお客様に販売するということです。

よっぽど開発コストが必要にならない限り、低リスクで成長できます。すでに信頼関係のあるお客様に売るため、ゼロから新規顧客を開拓するよりもはるかに販売しやすいのが利点です。

職人型ビジネスモデルになっている場合、いま販売している商品やサービスを企画した段階で、自分がその商品やサービスを提供することが前提になっています。

※職人型ビジネスとは?・・・仕組み経営の中で定義している独自の言葉。経営が社長やベテラン社員の個人的な能力やセンスに依存しているビジネスのこと。

だから当然、その商品を売れるのが社長だけとか、作れるのが社長だけ、サービスを提供できるのが社長だけ、という状態になっています。

そこで今度は発想を変えて、そもそも自分でなくても提供できる商品やサービスを開発するわけです。

つまり、これまで売ってきた商品・サービスとは出発地点を変えるということです。「自分が提供する前提」で商品を設計するのではなく、「自分がいなくても提供できる」ことを前提に設計する。この発想の転換が、会社の質的成長(脱・社長依存)と規模の成長を同時に進める鍵になります。

この発想の転換をしたおかげで、脱職人型を実現した会社はたくさんあります。

 

3.既存商品を新市場に売る(新市場開拓)

このやり方で成功した有名な例は、「バーミキュラ」という鍋でしょう。

この鍋、非常に密閉率が高く、水無しでおいしい鍋料理が出来るということで話題になり、一時は品薄状態が続いた大ヒット商品です。

売っているのは、愛知ドビーという鋳造メーカーです。もともと下請けのメーカーでしたが、それでは未来がないということで、自分たちの技術を使ってこのバーミキュラという鍋を作り、大ヒットしました。


正確に言うと、「4.新商品を新市場に売る」に近いかも知れませんが、自分たちの既存技術を活用したという意味で、3にも当てはまると思います。

既存商品を新市場に売る場合、少しカスタマイズすれば販売価格も変更しやすくなり、利益率も高くすることが出来ます。

たとえば、私の知り合いのシステム会社は、それまで個人がコンテンツをオンラインで販売できるツールを提供していましたが、そのツールを少しカスタマイズして、法人向けに販売したところ、爆発的に成長しました。

販売価格も個人向けとは比較にならない額なので、エンジニアを雇う余裕が出来、社長の仕事も現場で働くことから社外向けの広告塔へと移行していきました。

こんな感じで、対象市場を見直すと、新しい成長軌道が見えてきます。この会社のケースが示しているのは、「同じ商品でも、誰に売るか(市場)を変えるだけで、成長の桁が変わることがある」ということです。

4.新商品を新市場に売る(多角化)

新しい商品・サービスを、これまで接点のなかった新しい市場に売る方法です。当たれば大きいものの、商品開発と市場開拓を同時に行うため、4つの中で最もリスクが高い道です。

既存事業が頭打ちで、どうしても次の柱が必要な場合や、明確な勝算のあるアイデアがある場合に取る戦略です。ただし中小企業の場合、いきなり多角化に飛びつくと、既存事業の足元が崩れるリスクがあります。まずは2や3で足場を固め、その延長線上で4に挑戦するのが現実的でしょう。

もちろん、既存市場で成功している場合は、そのままその道を進む「1.既存商品を既存市場に売る」という道が有効でしょうし、何かアイデアがある場合には思い切って、この「4.新商品を新市場に売る」という道を取る方法もあります。

ぜひこの4つの道の可能性を探ってみてください。

会社を成長させるために社長が最初にやるべきこと

4つの方法を知っても、「じゃあ明日から何をすればいいのか」で止まってしまっては意味がありません。会社の成長を実際に前に進めるために、社長が最初に着手すべきことを3つの視点で整理します。

①いまの市場でまだ伸ばせる余地がないかを見直す

新しいことに手を出す前に、「1.既存商品を既存市場に売る」でまだ伸ばせる余地がないかを確認します。多くの会社は、既存市場・既存顧客の中に、取りこぼしている成長の余地を残しています。ここが埋まっていないまま新市場・新商品に手を広げると、労力の割に成果が出にくくなります。

②「自分がいなくても回る商品・仕組み」に発想を変える

成長のボトルネックが社長自身になっている場合、いくら市場戦略を練っても頭打ちになります。商品・サービスを「自分が提供する前提」から「自分がいなくても提供できる前提」に切り替えることが、規模と質を同時に伸ばす起点になります。

③規模の成長と質の成長を、必ずセットで設計する

記事の冒頭でお伝えした通り、規模だけを追うと衰退の入り口に立つことがあります。店舗を増やすなら人を育てる仕組みを、顧客を増やすなら品質を担保する仕組みを、必ずセットで用意する。この「両輪で設計する」意識が、継続的に成長し続ける会社をつくります。

質的成長を実現する「組織の仕組み化」

ここまでは主に規模の成長(アンゾフの4つの方法)を見てきましたが、冒頭でお伝えした通り、それを支えるのが質的成長です。では、会社の質はどうすれば成長させられるのでしょうか。

私たちの考える質的成長の中核は、組織の仕組み化です。仕組み化と聞くと「業務のマニュアル化」を思い浮かべる方が多いのですが、私たちが定義する仕組み化とは、自社独自の再現性のある仕事のやり方を構築することを指します。

たとえば、誰がやっても一定の品質でサービスが提供できる、社員が指示待ちにならず自律的に動ける、採用した人が同じ基準で育っていく——こうした状態をつくることが、会社の質を成長させるということです。質が高まれば、規模を拡大しても崩れにくい会社になります。逆に言えば、質という根っこがないまま規模という枝葉だけを伸ばすと、いずれ木は倒れてしまうのです。

三位一体の仕組み化で会社の成長を目指す

私たちの提唱している「仕組み経営」は、三位一体の仕組み化というコンセプトをお伝えしています。三位一体というのは、「理念体系」「事業モデル」「組織」の3つです。

このうち、事業モデルは会社の規模の成長を目指すために必要なものであり、組織は質的成長を目指すために必要なものです。ここに正しい理念が合わさることで規模を成長させながらも質も高めていくことが出来ます。

つまり、この記事でお伝えした「規模の成長」と「質の成長」の両輪を、バラバラにではなく一つの体系として設計するのが三位一体の仕組み化です。

 

会社の成長に関するよくある質問(FAQ)

Q. 会社を成長させるには、まず何から手をつければいいですか?

まずは「1.既存商品を既存市場に売る」で、いまの市場・いまの顧客の中にまだ伸ばせる余地がないかを見直すことをおすすめします。新市場・新商品はリスクが高いため、足元の市場浸透を固めたうえで、次の一手として2や3を検討するのが中小企業には現実的です。

Q. 会社の「規模の成長」と「質の成長」は、どちらを優先すべきですか?

どちらか一方ではなく、両輪で進めるのが理想です。ただし、規模を追う前提として「社長がいなくても回る質」が最低限整っていないと、規模を拡大した瞬間に組織が崩れます。順番としては、質という土台を固めながら規模を伸ばしていくイメージが安全です。

Q. 社長が現場から離れられず、会社が成長しません。どうすればいいですか?

これは多くの中小企業が直面する「職人型ビジネス」の典型的な課題です。解決の方向性は、商品・サービスを「社長が提供する前提」から「社長がいなくても提供できる前提」に設計し直し、業務を再現性のある仕組みに落とし込むことです。社長依存から抜け出すことが、次の成長ステージへの分かれ道になります。

Q. アンゾフの成長マトリクスの中で、最もリスクが低いのはどれですか?

「1.既存商品を既存市場に売る(市場浸透)」が最もリスクが低い方法です。次いで「2.新規商品を既存市場に売る」「3.既存商品を新市場に売る」の順にリスクが上がり、「4.新商品を新市場に売る(多角化)」が最もリスクの高い戦略になります。


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