ブルーオーシャンとは、競争相手のいない未開拓の市場のことです。魚(顧客)を奪い合って血で赤く染まった海=レッドオーシャンに対して、誰も泳いでいない青い海。そこから生まれた比喩です。
ただ、意味を知っただけで自社が変わるわけではありません。この記事では言葉の意味を整理したうえで、自社のブルーオーシャンをどう見つけるのかという手順まで解説します。
この記事でわかることは次の通りです。
- ブルーオーシャン/レッドオーシャンの意味と違い
- ブルーオーシャン戦略の基本的な考え方
- 多くの会社が価格競争から抜け出せない構造的な理由
- 自社のブルーオーシャンを見つける4つのステップ
- スターバックス・ユニクロ・任天堂の事例と、それを自社に持ち込むときの注意点
ブルーオーシャンとは?意味をわかりやすく解説
ブルーオーシャンとは、まだ存在していない産業、つまり競争によって影響を受けていない未知の市場空間を指します。ブルーオーシャンでは、需要は奪い合うものではなく、創り出すものです。ここには収益性の高さと、急速な成長の可能性が豊富に存在します。
ブルーオーシャンでは、競争は無関係です。なぜなら競争のルールがまだ定まっておらず、自社がルールを決める余地があるからです。青い海という言葉は、未開拓の市場空間に存在する広がりと可能性を表現するための比喩です。
この状況下では、企業は競合他社との競争ではなく、新しい価値を生み出し、顧客のニーズを満たすことに焦点を当てることが重要になります。

レッドオーシャン(赤い海)とは?
レッドオーシャンとは、すでに存在するすべての産業、つまり既知の市場空間を指します。レッドオーシャンでは産業の境界が定義され、受け入れられ、競争のルールが確立されています。
企業は既存の需要のシェアを拡大するために、競合他社を上回るよう努力します。市場が混雑すると、利益と成長は減少します。製品はコモディティ化され、結果として「血みどろ」の競争が生まれます。この競争の激しい状況を指して、レッドオーシャン(赤い海)と呼びます。
市場が飽和状態になると利益率が低下し、企業の成長が限定される傾向があります。この状況下では他社との差別化が難しく、新たな市場を切り開くのも難しくなります。
ブルーオーシャンとレッドオーシャンの違い
両者の違いを整理すると、次のようになります。
レッドオーシャンの特徴
- 既存の市場で戦う
- 競合を打ち負かすことを目指す
- 既存の需要を奪い合う
- 「価格を下げるか、価値を上げるか」のどちらかを選ぶ
- 競争のルールは、すでに他社が決めている
ブルーオーシャンの特徴
- 競争のない市場を創り出す
- 競争そのものを無意味にする
- 新しい需要を掘り起こす
- 低コストと高付加価値を同時に実現する
- 競争のルールを、自社が決められる
最も大きな違いは最後の一点です。レッドオーシャンではルールを決めているのは他社であり、自社はそのルールの上で点数を競うことしかできません。ブルーオーシャンでは、ルールを決める側に回れます。
ブルーオーシャン戦略とは?提唱者と基本の考え方
ブルーオーシャン戦略とは、競争の激しい既存市場ではなく、競合のいない未開拓市場を切り拓くビジネス戦略です。W・チャン・キムとレネ・モボルニュによって提唱され、既存市場の競争を避け、新しい価値を生み出すことで市場そのものを創造することを目指します。
両氏は経営学者であり、『ブルーオーシャン戦略』というタイトルの本でこの理論を紹介しました。
バリューイノベーション:低コストと高付加価値の両立
ブルーオーシャン戦略の中核にあるのが、バリューイノベーションという考え方です。既存の機能を削減し、新たな機能を追加することで、顧客と企業の両方に価値を提供します。
普通、企業は商品を作るときに「高い品質だったら高い値段」「安い値段だったら普通の品質」という考え方をします。バリューイノベーションでは、高い品質と低い値段を同時に実現しようとするのです。
たとえばスマートフォンのカメラ機能を考えてみましょう。かつてはカメラを持ち歩くことが一般的でしたが、スマートフォンが普及するにつれ、多くの人がスマートフォンのカメラを使うようになりました。メーカーは高度な写真編集機能を提供するのではなく、シンプルで使いやすいカメラ機能を重視しました。これによってカメラ機能のバリューイノベーションが実現され、多くの人々に受け入れられたのです。
非顧客に注目する
ブルーオーシャン戦略では、競合他社の顧客ではなく、まだ製品やサービスに興味を持っていない非顧客に焦点を当てます。彼らのニーズや要求に応えることで新しい需要を創造し、競合の影響を受けずに市場を拡大します。
非顧客をどう見つけるかについては、後ほど「非顧客の3つの階層」で詳しく解説します。
なぜ多くの会社は価格競争から抜け出せないのか
ここで一度、自社に引き寄せて考えてみます。
商品やサービスがコモディティ化して競争が激しい。価格競争から抜け出せない。他社との付加価値合戦で差別化ができていない。こうした状態にある会社は少なくありません。
このとき原因を「うちには発想力のある人材がいないから」「社長である自分に先見の明がないから」と、人の能力の問題として捉えてしまいがちです。しかし、そうではありません。原因は会社の構造の側にあります。頑張っても儲からない原因が努力不足ではなくビジネスモデルの側にあるのと、同じ構造です。
日々の業務が特定の人の経験と勘に依存していると、仕事のやり方は「その人が過去にやってきたこと」の範囲から出られません。忙しさに追われながら回している仕事は、理想のやり方ではなくその場をしのぐやり方です。それを他の人にもできるようにするだけでは、平凡な仕事が複製されて平凡な会社ができあがります。特別な差別化は生まれません。拙著『仕組み化の経営術』でも、この点を指摘しました。
ブルーオーシャンが見つからないのは能力の問題ではありません。自社の独自性を意識して設計する工程が業務のなかに組み込まれていないという、構造の問題です。裏を返せば、その工程さえ手順として持てば資質にかかわらず取り組めます。
次章から、その手順を見ていきます。
ブルーオーシャンの見つけ方──4つのステップ
ブルーオーシャン戦略には、いくつかのフレームワークが用意されています。バラバラの道具として覚えるのではなく、順番に使う4つのステップと捉えると実践しやすくなります。
- 戦略キャンバスで、自社の現在地を描く
- 4つのアクションで、競争のルールを変える
- 非顧客の3つの階層から、新しい需要を探す
- 買い手の効用マップで、業界の抜けを見つける
順に解説します。
ステップ1:戦略キャンバスで自社の現在地を描く
戦略キャンバスは、ブルーオーシャン戦略の中心的なフレームワークです。自分たちの商品やサービスを競合他社と比べて見るためのツールで、まるで地図のように、企業の戦略や競争状況を一目でわかるように描かれています。

戦略キャンバスの見方
横軸:競争の要因
この線は、企業が競争している要因を表しています。たとえば商品の価格や品質、サービスの速さなどです。
縦軸:顧客が受け取る価値
この線は、顧客が商品やサービスを買ったときに受け取る価値を示しています。高い価値を提供すると、顧客は喜んで買ってくれます。
折れ線:競合他社との比較
グラフの形状は、自社と競合他社との違いを示しています。他社と比べてどの点で優れているのかが一目で分かります。
戦略キャンバスを描く手順
- 競争の要因を見つける……その業界で競合他社がどのような要因で競争しているかを洗い出します。価格や品質、速さなど、商品やサービスの特徴です。
- 要因のレベルを評価する……各要因の競争のレベルを5段階で評価します。たとえば価格が安ければ下の方に、高ければ上の方にプロットします。
- 点をつないでグラフを描く……それぞれの点をつないでグラフを描きます。このグラフが、自社や競合他社の戦略を表しています。
- 比較する……自社の商品と、業界のリーダーや競合相手を比較します。どの要因で優れているのか、どこが改善できるのかを考えると、新しいアイデアが生まれます。
このステップの目的はアイデアを出すことではありません。自社が今どこで戦っているのかを、事実として一枚の紙の上に出すことです。多くの場合、自社の折れ線は競合とほとんど同じ形をしています。それがレッドオーシャンで戦っている証拠です。
描いてみると、視野に入るものが変わります。競合他社だけでなく、顧客が選びうる他の選択肢や、競合他社の顧客までが見えてきます。競争から抜け出す糸口は、たいていそこにあります。
ステップ2:4つのアクションで競争のルールを変える
戦略キャンバスを描くと、多くの場合、自社の戦略が他社と似通っていることがわかります。ここから抜け出すには、戦略キャンバスを描きなおす必要があります。つまり、ゲームのルールを変えるのです。
そのために、次の4つの問いを考えます。この4つの問いを考えることで、差別化と低コストのトレードオフを打破し、新しい戦略を生み出すことができます。
例として、有名なハンバーガー店「シェイクシャック」を挙げてみます。
①取り除く
業界内で当たり前とされているけれども、実際は必要のない要素は何かを考えます。
シェイクシャックは、業界が当たり前としていた要素を排除しました。たとえば子供向けの遊び場やハッピーミールなど、子供たちを魅了する明るく派手なファストフードチェーンが一般的ですが、シェイクシャックは大人向けのモダンな雰囲気を提供しました。明るい赤と黄色の装飾ではなく落ち着いた緑と黒のカラースキーム、モダンで洗練されたロゴ、キッチンが前面に見えるオープンなレイアウトなど、大人がくつろぎながら食事を楽しむ場所として魅力を持たせています。
②減らす
どの要素を業界の標準を大幅に下回るレベルに削減すべきかを考えます。業界の標準より低いレベルで提供することで、コストを削減し、同時に顧客に新しい価値を提供します。
シェイクシャックは、サービスのスピードよりも顧客への感情的な体験を重視しました。通常ファストフードチェーンではスピードが重視されますが、シェイクシャックでは顧客が本当に気にかける要因が優先されました。また、伝統的な広告媒体に多額の費用をかけず、ソーシャルメディアを活用して若者層にアプローチし、マーケティング費用を削減しました。
③増やす
業界の標準を大幅に上回るレベルに引き上げるべき要素は何かを考えます。
シェイクシャックは、高品質な天然食材の提供と、優れたサービスを重視しています。100%全天然の肉、非遺伝子組み換えの野菜、人工添加物を一切使用しないこと、コーンシロップの代わりに本物の砂糖を使用することなど、品質にこだわっています。またフレンドリーさとホスピタリティにも力を入れ、顧客がリラックスして楽しめる雰囲気を提供しています。
④付け加える(創造する)
業界がこれまで提供していなかった新しい要素は何かを考えます。
シェイクシャックは、ガーメットファーストフードと呼ばれる高級ファーストフードを提供しています。通常のファストフードでは考えられない手作りのバーガーやフライ、ホットドッグ、フローズンカスタード、シェイクなど、高品質な食材と楽しい顧客体験に重点を置いています。また地域社会とのつながりを大切にし、各店舗が地域に根ざした雰囲気を持つことを重視しています。
この4つの問いに特別な発想力は必要ありません。ステップ1で洗い出した競争要因を、一つずつこの4つの箱に振り分けていくだけです。順番に埋めていけば、誰がやっても手が動きます。手が止まってしまう場合は、新規事業のアイデアの出し方もあわせてご覧ください。
ステップ3:非顧客の3つの階層から需要を探す
ブルーオーシャン戦略の特徴の一つは、既存の顧客を奪い合うのではなく、新しい需要を創造して業界全体を成長させることです。そのための最初のステップが、自分の業界の外に存在する需要を特定することです。それが非顧客、つまりあなたの業界や製品、サービスにまだ興味を持っていない購買者たちです。
非顧客が何のためにその商品を選ぶのかという観点では、ジョブ理論の考え方も参考になります。
非顧客を特定するために、以下の3つの階層を考えます。

第一階層の非顧客
第一階層の非顧客は、あなたの業界に最も近い位置にいます。彼らは市場の端に座り、業界の商品やサービスを最低限購入しますが、より優れた選択肢が見つかればすぐに切り替える用意があります。
たとえばクレジットカードや健康保険など、自由に選ぶのではなく必要に迫られて業界に参入している場合を考えてみてください。もっと良い選択肢があれば、すぐにでも切り替えるでしょう。
あなたの業界の第一階層の非顧客と、彼らを新しい市場に引き込む痛点を知っているでしょうか。知っていれば、彼らの利用頻度を増やし、新しい需要を創造することができます。
例として、ファーストフードチェーンのPret A Mangerが挙げられます。同社はファーストフード業界の第一階層の非顧客を特定しました。選択肢が限られているためにファーストフードを購入しているが、より健康的で新鮮な選択肢を求めている層です。彼らのニーズを理解し、新鮮な食材を使用した高品質なサンドイッチを手軽に提供することで、その心を掴みました。
第二階層の非顧客
第二階層の非顧客は、商品の提供を意識的に拒否している人々です。他の代替品を買うことでニーズを満たしているか、もしくはその種の商品を買う余裕がないためです。
第二階層の非顧客は、代替品と比較し、それぞれの利点と欠点を考慮します。費用が主な要因であれば、よりリーズナブルな代替品を選ぶでしょう。一方、それ以外の理由で代替品を選ぶ人もいます。たとえばワインの選択肢があまりにも膨大であるために選ぶのが面倒だと感じ、ビールに固執する人もいます。
第二階層の非顧客が、自社の業界の商品やサービスを拒否する理由を知る必要があります。彼らの共通点を探し、それに対処することで、第二階層の非顧客を取り込むことができます。
第三階層の非顧客
第三階層の非顧客は、あなたの業界から最も遠い位置にいます。商品の購入をまったく考えたことがない人々で、これまで彼らのニーズは他の業界のものと仮定されていました。第三階層は最大の非顧客であり、大きな市場が存在する可能性があります。
ただし、第三階層の非顧客を単に「他のすべての人々」と考えてはいけません。彼らはあなたのサービスや製品から利益を得ることができる非顧客ですが、その選択肢を考えたことがないだけです。
たとえばマイクロファイナンスは、以前は金融サービスにアクセスできなかった第三階層の非顧客を取り込みました。銀行や投資家にアクセスできない起業家や小規模事業主にマイクロローンを提供することで、貧困層を救う新しい産業を開拓したのです。
化粧品業界では、前向きな企業が男性を大きな市場として見ています。彼らを第三階層の非顧客として特定し、伝統的な女性向け化粧品の技術を使った男性向けの製品を増やしました。
ステップ4:買い手の効用マップで抜けを見つける
買い手の効用マップは、商品やサービスを買う人がどのような体験を求めるのかを理解するためのツールです。購入するところから、使っている最中、そして最終的に使い終わって廃棄するまでの過程を考えることで、顧客の期待や欲しいものを把握する手助けをしてくれます。

買い手の効用マップは、縦軸と横軸の二つの方向から成り立っています。
縦軸:効用を生む6つの要素
- 生産性……商品やサービスが顧客の役に立って生産的になること
- シンプルさ……商品やサービスが使いやすく、難しいことなく利用できること
- 利便性……商品やサービスの使い方が便利で手間がかからないこと
- リスク低減……商品やサービスの使用で起こるリスクが少ないこと
- 楽しさや好ましさのイメージ……商品やサービスを使って楽しんだり、良い気分になれること
- 環境へのやさしさ……商品やサービスの使用が環境に優しく持続可能なこと
横軸:6つの経験サイクル
- 購入……商品やサービスを買う時のプロセスがスムーズで分かりやすいこと
- 納品……商品やサービスが顧客の手元に届けられること
- 使用……商品やサービスを実際に使ってみた時の体験が良いこと
- 併用……他の商品やサービスと一緒に使う時に相性が良く、便利であること
- 保守管理……商品やサービスの保守や修理が適切に行われ、長持ちすること
- 廃棄……商品やサービスの使い終わった後の廃棄やリサイクルが環境に配慮されていること
縦6×横6で36のマスができます。このマスのうち業界の誰も埋めていないところが、自社のブルーオーシャンの候補です。使いやすさを向上させたり、環境への配慮を強化したりすることで、顧客がより満足する商品やサービスを提供できるようになります。
ブルーオーシャン戦略の事例
ブルーオーシャン戦略には多くの事例があります。代表的なものを挙げてみましょう。
スターバックスのブルーオーシャン戦略事例
1990年代半ばにスターバックスが急成長を始める前、アメリカのコーヒーは非常に単純でした。コーヒーはしっかりとした朝食のソーセージ、卵、ベーコンと一緒に提供されていました。たいてい、1杯1.95ドル程度の安価な商品でした。
しかしスターバックスは、コーヒーに対する印象を永遠に変えることになりました。
当時、同社のマーケティングディレクターであったハワード・シュルツ氏は、1980年代中盤にミラノへの買い付け旅行に行きました。その際、イタリア人がコーヒーを楽しむ姿を見て感銘を受けます。彼らにとって早朝のエスプレッソは、ニュースを話し合ったり、友達に会ったり、親しく交流する時間を意味しており、単なるカフェインを摂取する目覚めの一杯ではありませんでした。
帰国後、彼は創業者たちに考え方を変えるよう必死に懇願しました。しかし創業者たちは納得せず、スターバックスは引き続き古典的なコーヒーを提供し続けました。その3年後、スターバックスは突然売りに出されることになります。シュルツはこの機会を逃すまいとスターバックスを買収し、自らの構想を実現し始めました。
スターバックスのブルーオーシャン戦略の要点
- 新しい市場を開拓……単なるコーヒーを提供するカフェの枠を超え、多様な商品とリラックスした雰囲気で新しい顧客層を引き寄せました。
- 感情的な体験を提供……顧客が単にコーヒーを飲むだけでなく、その場で楽しむという体験を重視しました。
- 従業員の満足度の向上……従業員の報酬と福祉に重点を置き、共有の成功を大切にする企業文化を構築しました。
- デジタル革新の活用……オンライン注文や決済、リワードプログラムなどの仕組みを提供しています。
- 製品の質とブランド価値の向上……品質とブランド価値を重視し、顧客との関係を強化することで他社と差別化しています。
これらの要素が組み合わさり、スターバックスは競争を超えた独自の市場を築き上げました。同社についてはスターバックスの経営戦略でも詳しく解説しています。
ユニクロのブルーオーシャン戦略事例
ユニクロは日本を代表する会社の一つです。成功の鍵は、製造から販売までの一貫性、新しい機能性価値の提供、市場のニーズへの適応などにあります。
製造から販売までのプロセスを一貫して行う(低コスト化)
ユニクロのブルーオーシャン戦略の基盤は、SPA(製造小売業)というビジネスモデルにあります。企画、製造、販売までを一貫して行うことで余分なコストを削減し、製品価格を抑えつつも高品質の製品を提供できます。この一貫性により、他社に比べてコスト優位性を確立しています。
「衣類に機能をもたせる」という新しい価値(差別化)
ユニクロは、衣類に機能性を持たせるという新しい発想を取り入れました。従来、衣類は単なるファッションアイテムでしたが、ユニクロは快適性や機能性に焦点を当てました。「ヒートテック」「シルキードライ」「エアリズム」などの機能性衣類は、顧客にとって新しい価値を提供し、他社との違いを生み出しました。
ニーズや時代の流れをとらえた新規商品の展開(優位性の維持)
ユニクロは常に市場のニーズや時代の流れを的確に捉え、新しい商品を展開しています。環境への配慮が求められる現代において、エコ素材を使用した衣類や再生ポリエステルを活用した商品を提供しています。こうしたアプローチにより、ブルーオーシャンを維持し続けています。
革新性の維持
ユニクロは革新性のある企業として、常に新しい製品を開発し、機能性を向上させながら新たな需要を引き寄せています。この革新性は従来の製品にはない付加価値を顧客に提供し、ユニクロのブランド価値を高める役割を果たしています。柔軟で大胆な発想を持ち、固定概念に縛られずに市場の変化へ適応することで、ブルーオーシャンを見つけ出し続けているのです。
任天堂のブルーオーシャン戦略事例
任天堂はブルーオーシャン戦略を通じて、伝統的なゲーム市場の枠を超え、新しい市場を開拓しました。
非ゲーマー層にフォーカス
2006年、任天堂は革新的なアプローチを採用しました。競合他社であるソニーとマイクロソフトが高価なゲームコンソールに焦点を当てる中、任天堂はゲーム業界の非顧客層、つまり普段あまりゲームをしない人々に焦点を当てました。彼らのニーズを理解し、シンプルで機能的、かつインタラクティブな要素を持ったWiiを開発したのです。
市場の基準を再構築
他社が重視していた要素(高解像度グラフィック、高性能チップ、多数のボタンを持つコントローラー、暴力的でリアルなゲームなど)を排除または削減する一方で、非ゲーマーに魅力的な要素を高めました。取り組みやすいゲーム、処理性能ではなく楽しさに焦点を当てたゲーム、直感的な操作性などを提供しました。
Nintendo Switchでの再挑戦
2017年、任天堂は新たなブルーオーシャンを提供するため、Nintendo Switchを発売しました。高価で高性能なPlayStation 4やXbox Oneと競争するのではなく、テレビと持ち運びの両方でゲームをプレイできる小型デバイスとして展開し、家庭用ゲームコンソールとスマートフォンゲームの良さを組み合わせ、市場の境界線を再構築しました。
事例をそのまま真似てはいけない
ここまで三社の事例を見てきましたが、注意点があります。これらの事例をそのまま自社に持ち込んでも、うまくいきません。
他社を見学したり、ほかの社長から話を聞いたりして、良さそうだと感じたものをそのまま自社に導入してしまうケースはよくあります。最初は良さそうに思えても、実際に入れてみると社員が使わない、あるいは反発してしまうという問題が生じます。
拙著『仕組み化の経営術』では、これを臓器移植にたとえました。会社は一つの生命体のようなもので、複数の仕組みがその体をつくっています。そこへ他人の臓器を突然入れれば拒絶反応が起こります。他社でうまくいっている仕組みも同じです。持ち込んだだけで機能するとは限りません。
部分的に良さそうな仕組みを取り入れても、それが会社全体として最適に働くかどうかは別の問題です。事例は「こういう考え方があるのか」と視野を広げるために使うものであって、答えとして写し取るものではありません。
では、自社の答えはどこから出てくるのでしょうか。
ブルーオーシャンは分析ではなく、あなたの価値観から生まれる
ここが、この記事で最もお伝えしたい点です。
ブルーオーシャンは、市場を隅々まで分析すれば自動的に出てくるものではありません。もしそうなら、同じデータを見ている競合他社も、同じ場所にたどり着いてしまいます。
マクドナルドがまだ一店舗だったころ、その店に足を踏み入れた人はたくさんいました。しかし、そこにチャンスを見出したのはレイ・クロック(現マクドナルドの実質的創業者)だけでした。バングラデシュが大洪水に見舞われたとき、被害を受けた人々を見た人はたくさんいました。しかし、貧困層の女性に正当な利子で融資することが大事だという考えに至ったのは、ムハマド・ユヌス(グラミン銀行創設者)だけでした。
同じ光景を見ていたのに、なぜ一人だけが違うものを見たのか。拙著『仕組み化の経営術』では、こう書きました。
顧客が欲しがるものは明白であり、差別化になりません。しかし、何が顧客のためになるのかは、その人独自の価値観や使命感によって決まります。したがって、そこから独自の事業が生まれます。
顧客が「欲しい」と口に出すものは、競合にも同じように見えています。そこを狙う限り、レッドオーシャンからは出られません。一方、何がその人のためになるのかという判断は、経営リーダーの価値観を通してしか出てこないため、他社には模倣できないのです。
これは才能や先見の明の話ではありません。自社が何を大切にしているのかを言葉にしているかどうかという話です。この言語化の手順はコアバリューの記事で解説しています。言葉になっていれば判断の基準として使えます。なっていなければ、その都度ほかの会社と同じデータを見て、同じ結論を出すことになります。
戦略キャンバスも、4つのアクションも、非顧客の3階層も、この判断を助ける道具にすぎません。道具だけあっても、何を大切にするかが決まっていなければどのマスを埋めるべきか選べません。
まとめ:ポジショニングマップに落とし込む
ブルーオーシャンとは、競争相手のいない未開拓の市場のことです。ブルーオーシャン戦略とは、競争の激しい既存市場を避け、新しい価値を生み出す未開拓の市場に挑む戦略です。これは中小・成長企業が大きな飛躍を遂げるために、非常に大切な考え方です。特に価格競争に陥っている会社、他社との付加価値合戦で差別化ができていない会社にとっては、現状を打破する可能性を秘めています。
最後に、この記事の内容を自社で実行に移すための道筋を整理しておきます。
- 戦略キャンバスを描き、自社が今どこで戦っているかを一枚の紙の上に出す
- 4つのアクション(取り除く・減らす・増やす・付け加える)で、競争要因を組み替える
- 非顧客の3階層と買い手の効用マップで、業界が埋めていないマスを探す
- そこに自社の価値観を重ね、ポジショニングマップとして一枚にまとめる
最後の一枚が成果物です。ポジショニングマップとは、他社比較によって自社の強みと弱みを理解したうえで、顧客から選ばれる理由を言葉にした一枚です。ここまで落とせば、市場において特別な存在となり価格決定権を持つことに近づきます。
ただし、ここで決めた「顧客から選ばれる理由」は決めただけでは実現しません。日々の業務のやり方に落とし込み、誰がやっても同じ価値が届く状態にして、はじめて顧客に伝わります。当社ではこれを仕組み化と呼んでいます。自社独自の再現性のある仕事のやり方をつくることです。


