パーキンソンの法則

パーキンソンの法則とは?意味と具体例、会社での対策5つ



清水直樹
今日は、パーキンソンの法則の意味と具体例に加えて、仕事と組織が膨張していくのを止める方法についてご紹介していきます。

 

パーキンソンの法則とは、仕事の量は完成のために与えられた時間をすべて使い切るまで膨張する、という法則です。三日の余裕を与えれば三日かかり、一週間の余裕を与えれば一週間かかる。多くの職場で心当たりのある現象だと思います。

この法則を「社員がだらけているから」と読むと、対策は「気を引き締めさせる」しかなくなります。しかし実際に起きているのは別のことです。終わりの基準が決まっていない仕事は、締切まで膨らむしかありません。膨らませているのは本人の意識ではなく、仕事の与え方のほうです。

この記事では、パーキンソンの法則の意味と第一法則・第二法則、会社で実際に起きている具体例を整理します。そのうえで、中小企業で使える対策をお伝えします。

パーキンソンの法則とは?意味と提唱者

提唱したのは英国の歴史学者シリル・ノースコート・パーキンソンです。1955年に英国の経済誌エコノミストへ発表し、その後1958年に書籍としてまとめられました。

もともとは、英国の官僚組織を観察した研究から生まれています。植民地が減って業務量が縮小していたにもかかわらず、役人の数は年5.17〜6.56パーセントの割合で増え続けていた。仕事の量と人の数が連動していなかったわけです。ここから、組織には放っておくと膨張する性質がある、という指摘が導かれました。

第一法則|仕事は与えられた時間まで膨張する

第一法則は「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」というものです。もっとも広く知られている形です。

三十分で書ける報告書に一日を与えると、一日かかります。手を抜いているわけではありません。時間があると、人は確認を増やし、体裁を整え、念のための作業を足していきます。与えられた時間を余らせることに、居心地の悪さを感じるためです。

第二法則|支出は収入まで膨張する

第二法則は「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」というものです。会社にも個人にも当てはまります。

売上が伸びた年に、なぜか手元のお金が増えていない。この現象はよく起きます。増えた分だけ人を採り、席を広げ、経費の基準がゆるみます。利益は残そうと決めなければ残りません。入ってきた額に合わせて出ていくのが自然な流れだからです。

凡俗法則|自転車置き場の議論

パーキンソンはもうひとつ、凡俗法則と呼ばれる指摘も残しています。組織は、些細な物事に対して不釣り合いなほど時間をかけるという内容です。

たとえ話がよく知られています。ある委員会が原子力発電所の建設と自転車置き場の建設を審議しました。原子力発電所の話は複雑で、誰も十分に理解できないため、議論は短く終わります。ところが自転車置き場は誰にでも分かるので、屋根の材質をどうするかで延々と議論が続きます。

会議で「その話に一時間もかけるのか」と感じたことがあれば、それがこの現象です。人は、自分が意見を言える話題に時間を使います。重要かどうかで時間配分が決まるわけではありません。

組織が膨張する2つの理由

パーキンソンは、なぜ仕事量と関係なく人が増えるのかについても説明を残しています。挙げられているのは2つです。

1. 部下は増やしたいが、競争相手は増やしたくない

手が回らなくなったとき、人は同格の人間を一人入れるより、部下を二人入れることを選びます。同格の人が来れば自分の立場が脅かされますが、部下なら脅かされないためです。

これは意地の悪い話ではありません。誰の胸にも起こりうる自然な反応です。問題は、この反応を打ち消す仕組みが会社の側にないことのほうにあります。組織の形を誰が決めるのかが曖昧な会社では、必要な人数ではなく、当人にとって都合のよい人数で決まっていきます。

2. 増えた人どうしが、互いのために仕事を作り合う

人が増えると、確認する相手が増えます。承認の段階が増え、共有のための会議が増え、報告の書類が増えます。ひとつひとつは必要に見えますが、外から見ると増えた人が増えた人のぶんだけ仕事を生んでいる状態です。

人を増やしたのに現場の忙しさが変わらないとき、たいていここが起きています。

人を増やす前に確認する3つのこと

増員を検討する場面では、次の3つを先に確認してください。

  1. その業務の手順は書かれているか。書かれていない仕事に人を足すと、教える時間だけが増えます
  2. いま止まっているのは業務量か、それとも承認待ちか。承認待ちが原因なら、人を増やしても解消しません
  3. 増やしたあと、誰の判断が減るのか。判断の総量が減らない増員は、忙しさを分散させるだけです

3つ目が見落とされがちです。人を増やす目的は作業を分けることではありません。判断できる人を増やすことです。ここが変わらない限り、組織は膨らむ一方になります。

会社で起きる具体例

抽象的な法則ですが、現れ方は具体的です。よくある5つを挙げます。

1. 会議が予定時間いっぱいまで続く

一時間で設定した会議は、決めることが10分で終わっても一時間かかります。空いた時間に近況報告や雑談が入り、結局は定刻に終わります。定例会議が形骸化する原因のひとつです。

2. 資料が必要以上に厚くなる

締切まで日数があると、資料は増えます。補足の表を足し、注釈を付け、体裁を整える。読む側にとっては、むしろ要点が見えにくくなります。

3. 締切の前日に作業が集中する

これは膨張の裏返しです。時間があるうちは他の仕事に時間が流れ、締切が近づいて初めて着手する。結果として、締切のある仕事だけが進み、期限のない重要な仕事は永久に後回しになります。

4. 人を増やしても忙しさが変わらない

人員を増やすと、そのぶん報告と調整の仕事が生まれます。誰が何をやっているのかを揃える手間が増えるためです。忙しさの原因が業務量ではなく段取りにある場合、人を増やしても解消しません。

5. 経費が予算の枠まで使われる

年度末に予算を使い切る動きが出る組織があります。使い残すと翌年の予算が減る仕組みになっていると、必ずこうなります。第二法則が制度によって強化されている状態です。


なぜ仕事は膨張するのか

ここが本題です。原因を社員の気のゆるみに置くと、対策は精神論しか出てきません。実際には次の3つで説明がつきます。

1. 終わりの基準が決まっていない

「この資料はここまで書けたら完成」という線がないと、いつまでも直せます。完成の定義がない仕事に締切だけを与えれば、締切が完成の定義になります。当然の結果です。

先に決めるべきは期限ではなく、何が満たされたら終わりなのかのほうです。業務標準化で最初に手をつけるのも、たいていここです。

2. 空いた時間の使い道が決まっていない

早く終わらせても、次に何をするかが決まっていなければ、早く終わらせる理由がありません。空いた時間に別の仕事が降ってくるだけなら、むしろ損をします。

時間を空ける取り組みを始めるときは、空いた時間で何をするかを先に決めてください。ここが空欄のままだと、効率化は必ず途中で止まります。

3. 早く終えた人が損をする形になっている

手が早い人に仕事が集まり、遅い人と待遇が変わらない。この状態が続けば、誰も早く終えなくなります。本人の性格の問題ではありません。合理的な判断としてそうなります。

パーキンソンの法則への対策5つ

1. 見積もりの半分の時間を設定してみる

三日かかると見積もった仕事に、まず一日半を割り当ててみます。多くの場合、それで終わります。終わらなければ延ばせばよいだけです。短く区切ることの効果は、時間が減ることではありません。余計な作業を足す余地がなくなることです。

2. 会議は30分を基準にする

一時間を既定にしている会社は、まず30分に変えてください。それで足りない議題だけを一時間にします。あわせて、その会議で何を決めるのかを議題の横に書いておきます。会議体を設計するときの基本です。

3. 「完成の条件」を仕事の依頼時に書く

依頼するときに、期限だけでなく完成の条件を伝えます。「A4一枚で、数字は前年比だけ入れてください」。この一行があるだけで、かかる時間は目に見えて変わります。

4. 重要だが期限のない仕事に、先に予定を入れる

締切のある仕事は放っておいても進みます。問題は、期限のない重要な仕事です。仕組みづくり、人の育成、新しい取り組みの検討。これらは予定表に先に入れないと永久に始まりません。社長の仕事のうち、後回しになりがちなものはここに集中しています。

5. 早く終えた人が得をする形にする

早く終わった人に別の仕事を足すだけの運用をやめます。空いた時間を本人が選べる仕事に使えるようにするか、成果として評価に反映します。ここを変えないまま時短だけを求めても、表面上の帳尻が合うだけです。

第二法則への対策|会社のお金が膨らまないようにする

支出の膨張は、意識では止まりません。順番を変えることで止めます。

  • 先に残す額を決める……売上から経費を引いた残りを利益とするのではなく、確保する利益を先に決めて、残りで経費を組みます
  • 増やした費用に見直しの期限をつける……新しく始めた支出には、半年後に続けるかどうかを判断する日を決めておきます
  • 使い切ると得をする仕組みをなくす……余らせた部門が翌年に不利にならない形へ変えます

数字が見えていなければ、この判断はできません。見える化を進めるときは、売上より先に経費の内訳から手をつけるほうが効果が出やすいものです。

使い方を間違えないための注意点

時間を削るだけでは品質が落ちる

この法則を根拠に、単純に締切を短くする会社があります。完成の条件を決めないまま時間だけを削れば、当然ながら質が落ちます。削るのは時間ではなく、余計な作業のほうです。順番を間違えないでください。

社員を追い込む道具に使わない

「パーキンソンの法則があるのだから、もっと早くできるはずだ」という使い方は逆効果です。言われた側は、早く終わったことを隠すようになります。報告される所要時間だけが短くなり、実態は変わりません。

他の法則と混同しない

似た文脈で語られる法則がいくつかあります。パレートの法則は成果の偏りを示すもので、時間の膨張を扱うパーキンソンの法則とは別の話です。組み合わせて使うことはできますが、同じものではありません。

パーキンソンの法則に関するよくある質問

パーキンソンの法則は科学的に証明されていますか

もともとは英国官僚制を観察した指摘であり、厳密な理論として提示されたものではありません。風刺の色も含んだ議論です。ただし現場で観察される現象としては広く支持されています。法則として厳密に扱うより、注意すべき傾向として使うのが実務的です。

第一法則と第二法則はどちらが重要ですか

会社の規模によって変わります。人が少ないうちは第一法則、売上が伸びてきた段階では第二法則の影響が大きくなります。伸びている時期ほど、支出の膨張に気づきにくくなるためです。

締切を短くすると社員から反発が出ます

短くする理由と、代わりに減らす作業を同時に示してください。時間だけを削られると受け取られると、反発は当然です。「この確認はやめます。そのぶん締切を早めます」という組み合わせで伝えます。

会議が長い原因は本当に時間設定ですか

時間設定だけではありません。決める人が同席していない会議は、必ず長引きます。仕事の任せ方と同じで、その場で誰が決めてよいのかが決まっていないと、話が周回します。

自転車置き場の議論を止めるにはどうすればよいですか

議題ごとに使う時間を先に配分し、議題の横に書いておきます。「屋根の材質は5分」と書いてあれば、超えたときに全員が気づきます。止めるのは進行役の力量ではなく、書いてあるかどうかです。

個人の仕事にも使えますか

使えます。もっとも簡単なのは、その日の終業時刻を先に決めることです。終わりを決めない一日は、必ず膨張します。

まとめ

パーキンソンの法則は、シリル・ノースコート・パーキンソンが1955年に示した指摘です。仕事は与えられた時間まで膨張し、支出は収入まで膨張します。同じ流れで、組織は些細な議題に不釣り合いな時間をかけます。

そして、膨張の原因は社員の怠慢ではありません。終わりの基準が決まっておらず、空いた時間の使い道が決まっておらず、早く終えた人が損をする。この3つが揃っていれば、誰がやっても仕事は膨らみます。

逆に言えば、3つとも会社の側で変えられます。仕組み化で最初に手をつけると効果が出やすいのは、まさにこの領域です。


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