今回のテーマは、価格競争です。
会社を経営していると、競合にどうやって打ち勝つかが常に課題となります。
そんな中で、商品/サービスで差別化の付けづらいビジネスの場合には価格競争に巻き込まれることが珍しくありません。
競合商品/サービスより安く売ろうとして、結局利益が出ていないなんてことはありませんか?
本記事ではそんな価格競争について、価格競争とは何かを説明した後、価格競争に巻き込まれた時の対策について、アメリカの結婚式用品会社の例を使って解説します。
ぜひ最後までご覧ください!
価格競争とは?
価格競争とは、辞書によると以下のように定義されています。
商品やサービスの販売にあたり,市場において,価格を主たる手段として各企業が相互に競争すること。
(ブリタニカ大国際百科事典より)
つまり、格企業が製品の質や顧客サービスではなく、価格の安さで競合に勝とうとする時に起こる値下げ戦争のことです。
価格競争が起こると、企業は必死にコストダウンに励み、最終的には利益を犠牲にする結果を招くこともあり、会社の体力を奪っていきます。
では、価格競争に巻き込まれないためにはどうしたらいいのでしょうか?
価格競争に巻き込まれないための対策
価格競争に巻き込まれないためには、結論からいうと、価格以外で競争することが最適です。
しかし、同じような製品/サービスを扱っている場合は差別化が難しいですよね?
アメリカで結婚式用品会社Original Runner (http://www.originalrunners.com/)を営むジュリー・ゴールドマンも価格競争に苦しんでいました。
そこで彼女は中小企業向けの伝説的コンサルタント、経営者のバイブルと言われる「はじめの一歩を踏み出そう」の著者マイケル・E・ガーバーに、
価格競争に巻き込まれた際の対策を相談することにしました。
以下、二人のインタビューをまとめました。
ガーバー:
あなたのビジネスについて詳しく教えてください。
ジュリー:
はい、私たちはおそらく世界で初めて布製のオリジナルウェディングアイルランナーを開発し、販売しました。
それが出来る前は、紙製で見た目もチープなものでした。ビジネスは成功し、有名人の結婚式にも利用されるようになったのです。
一方、私たちのデザインを真似て、紙製の安い商品を売る会社がたくさん出てきたのです。
私たちも彼らもインターネット通販が中心であり、ウェブサイトで見ただけでは、質の違いがわからないのです。布製と紙製では大きな価格差があり、新規顧客をかなり取られています。
ガーバー:
他の会社と差別化するためにやっていることはありますか?
ジュリー:
ひとつは商品の改善を進め、新商品を創り続けることです。
もちろん、ライバルも追いついてきますが、それに加えて、高いレベルの顧客サービスを提供しています。それによって、競合から一歩先を行ってると思います。
私たちは年間1万件の結婚式に対応しています。他社は数百程度です。ただし、競合は25社ほどあるので、合計すると年間数千の顧客が他社に流れていることになります。難しいのは、私たちの商品は言ってみれば贅沢品なので、そこにお金を使ってもらうようにすることなのです。
ガーバー:
他社との価格差はどれくらいあるのですか?
ジュリー:
大体数百ドルです。
ガーバー:
では、それほど大きな違いとは言えないですね。
一生に一度のイベントで利用する商品だということを考えれば、価格差以外の部分に問題がある可能性がありそうです。
ジュリー:
そうかもしれません。顧客には、もしうちの商品を買わなかったとしても、安物は買わないほうがいいですよ、と伝えています。
ガーバー:
顧客にはどうアプローチしていますか?
ジュリー:
インターネット通販が主体ですので、広告やソーシャルメディア、またときに結婚関連の雑誌に広告を出します。
また、PRも積極的にやっており、セレブリティなどにも商品を提供しています。
それが良いアピールになっています。実際のところ、顧客となるのは、結婚式場やウェディングプランナーです。
ガーバー:
直接エンドユーザーに販売しているわけではないのですね。
では第一に、これはいつも卸売りやインターネット販売をしている人たちに伝えていることですが、直接ユーザーと繋がれるチャネルを探してください。
直接見ればわかる違い、直接話せばわかる違いを伝えられていないことが問題なのです。
もう一つ聞きたいのですが、使い終わった商品はどうしていますか?
ジュリー:
私たちの商品はオリジナルなので、多くの顧客は、一部を切り取って服や寝具などにしています。家族代々使う人もいます。
ガーバー:
わかりました。そこにはいろいろと余地がありますね。
あなたの問題は、商品を販売していくチャネルが不足していること、そしてもうひとつは、商品ラインナップが不足していることでしょう。
ジュリー:
そうですね。ウェディングは季節要因が大きいビジネスなので、それを安定したビジネスにしていく必要があると思っています。
そのために、子供用品や家族用の寝具の商品をそろえようとしています。
そこでちょうど質問があるのですが、それらの商品を今のブランドやウェブサイトで販売することは賢い選択肢でしょうか?
いまのビジネスは名前がオリジナルランナーですし、ウェディングアイルランナーの会社として知れ渡っているので、分けたほうが良いのかと思っています。
ガーバー:
ブランドを分けるのは良いアイデアかもしれませんが、最も高くつく方法でもあります。
新しい会社を創るようなものです。まず、オリジナルランナーという社名にしたのがひとつ問題でしたね。
ジュリー:
そうです。最初は、ここまでの見通しを立てることができなかったのです。社名は知れ渡っていて、変えるのは難しいと思います。
ガーバー:
私は変えるのに遅すぎることはないと思います。
それより大事なのは、変えることで、あなたが望むようなことが得られるかどうかです。おそらくそうはならないでしょう。
これはビジネスのポジショニングの話であると同時に、あなたがこれからどういうビジョンを持っているかが大切です。
結婚式以外でもあなたの商品は使われていますか?
ジュリー:
はい、ファッションショーなど、エレガントな入場シーンが求められるイベントで使われます。
ガーバー:
わかりました。ではあなたにやってほしいのは、まずビジョンを明確にすることです。
そこが曖昧だからネーミングやブランドの問題が発生してくるのです。
次に組織図を創ってください。
あなたの会社はいくつかの事業に分けられると思います。その一つがウェディング事業です。その事業の名前が、いまはオリジナルランナーになっていますね。
いま聞いたように他にも事業がありますね。
それらは別の事業と捉えてください。なぜなら、市場が異なるからです。
そのようにいくつかの事業が合わさって、会社全体が成り立っています。そうなると会社名はオリジナルランナーである必要はありませんね。
ジュリー:
なるほど。
ガーバー:
商品からビジネスを捉えるのではなく、市場からビジネスを捉えてください。
そうなると、それぞれの事業は、それぞれ異なる市場を持っています。
そして、異なる販売チャネル、異なるアプローチなどが必要になります。
そして、市場により深く入り込むことができ、安物の類似品に惑わされることがなくなります。
ジュリー:
まさにそれがやりたいです。
さっき言ったように結婚式が終わった後、子供が生まれて、その子供用の商品や、その後の彼らの人生にとっての大事なイベントごとにかかわっていきたいのです。
既にたくさんの顧客データベースがあり、彼らは家庭を持っていることを知っているわけですから。
それは別の事業としてアプローチが必要だということですね。
ガーバー:
そうですね。
そこで考えないといけないのは、あなたは顧客についてどれだけ知っているか?です。
彼らは誰か?何をいしているのか?彼らにとって大事なこととは何か?そして、彼らはあなたの会社のことをどれくらい意識しているのか?
あなたにとっては大切な顧客だと思いますが、彼らからあなたの会社を見たときには、単にランナーを販売している業者に過ぎないですね。
これはコモディティ商品を売っている会社すべてに共通する問題です。
そこから抜け出すには、先ほど言ったように直接顧客と繋がる必要があります。
顧客と直接つながるとは、購買の意思決定者、または影響者と直接話すということです。それは顧客の地元地域に入り込むということです。
あなたはグローバルにビジネスをしているかもしれませんが、顧客はいつもローカルな存在です。
そのローカルな地域に入り込む方法を見つけてください。グローバルにビジネスを展開しながら、どうやってローカルに入り込むか?これは非常に大切な質問です。真剣に答えを考えてみてください。
真剣に考えれば、数十の方法が見つかるはずです。これは競合他社が考え付かない方法でしょう。あなたの競合はすぐに手に入る利益をかすめ取っているだけに過ぎません。
ジュリー:
わかりました。
ガーバー:
問題は、その利益がもともとはあなたのものだったということです。
あなたは彼らがやっていることの常に上を行く必要があります。より良い商品であることはもちろんですが、そのほかのことでも上回る必要があります。
ジュリー:
ありがとうございます。やってみます。
いかがだったでしょうか?
本インタビューのキーポイントは、
・他社と異なる販売チャネルを持つことで差別化につながる
・グローバルな視点を持ちながらも、ローカルで活動する方法を見つける
・同じ商品であっても、対象市場(対象顧客)が異なれば、異なるアプローチが必要
です。
一番大切なことは顧客と繋がりを持つこと、そして顧客を知り尽くすことです。
そうすれば新たな可能性が開け、事業を多角化することも可能になるかもしれません。
ぜひこういった視点から自社の強みを見つけ、開拓してみてください。