ここでは、理念体系のひとつ、ミッションについて解説します。
「仕組み経営」では、ミッション、ビジョン、コアバリューの3つを総称して、その会社の”理念”とするようにお勧めしています。ちなみに私たち(一般財団法人日本アントレプレナー学会)自身は、実は「ミッション」の代わりに、「ドリーム」という言葉を使っています。

ドリームという言葉を使っている理由は、当会がスタートしたきっかけでもある、マイケルE.ガーバー氏との出会いによります。彼が提供していた「ドリーミングルーム」というプログラムの中で、最初に定義するのがビジネスの「ドリーム」だったのです。なので、それを残してミッションの代わりにドリームという言葉を使っています。
ただし、一般的にはドリームよりもミッションのほうが使われることが多く、わかりやすいという観点から”ミッション、ビジョン、コアバリュー”でまとめるようお勧めしています。ただ、これも自社での決め方の問題なので、ドリームが良ければドリームでいいと思います。
ちなみに一般的に言われるミッションと私たちの定義するドリームは、厳密に言うと若干意味合いが異なるものです。詳しくは説明はしませんが、もしご興味あれば、以下のページで”ドリーム”とはいったい何なのか?を解説していますのでご参照ください。
▶普通の人がすごい会社を創るには?マイケルE.ガーバー著「あなたの中の起業家を呼び起こせ!」の解説
▶チキンラーメンはどのようにして生まれたか? マイケルE.ガーバー著「あなたの中の起業家を呼び起こせ!普通の人がすごい会社を創る方法」翻訳者インタビュー
ミッションが会社を成長させる理由
さて、このミッションは自社の”存在意義”なので、そう簡単に思いつくようなものではありません。よっぽどビジョナリーな起業家でない限り、最初はミッションなど考えずに起業する人がほとんどでしょう。たとえ起業当初からミッションがあったとしても、”とりあえず作った”程度のものであり、ビジネスアイデアの実行のほうが優先事項であったはずです。
起業してから社員数が増えて行ったり、関わる人たちが増えてきたりするとミッションを作ることの重要性が増してきます。会社の規模が大きくなると、社長が意思決定することが増え、さらにその意思決定による影響力が大きくなってきます。社長の意思決定次第で社員の人生も左右することになります。
では、社長はどのように意思決定すればいいのか?その最高の意思決定基準となるのが、ミッション(を含めた理念)です。自社の存在理由が明確であることで、何をして何をしないか?という戦略も明確になります。
ミッションというのは、単に作ればいいものでもなく、毎朝唱和すればいいものでもなく、日々の意思決定や戦略を大きく左右するものなのです。
例を挙げましょう。いつも例に出している会社ですが、米アリゾナにInfusionsoft(現:Keap)という会社があります。
この会社は元々数人で始まったソフトウェア会社でした。徐々に会社が成長していき、創業者たちは、売上が10億円くらいになったら売却しよう、と考えていました。
しかしある時、彼らはマイケルE.ガーバー氏の講座を受けます。その時、ガーバー氏から、なぜ君たちはこのビジネスをやっているんだ?と何度も質問され、自分たちの会社の存在意義に気が付いていきます。
そして、”中小・スモールビジネスの成功を支援することが自分たちの存在意義である”と気が付きました。すると会社を売却することなど、大した目標ではないと思い始めたのです。そこから中小・スモールビジネスの成功を支援することにフォーカスを当て、一気に成長を遂げます。講座に参加してからわずか5年で年商12倍、業界でトップの地位に上
このように自社の存在意義は、自分たちの活動を絞り込む基準ともなります。中小企業、成長企業の場合、あれもこれもとやっていてはリソースが分散されて、いずれも中途半端になってしまいます。ミッションが明確であることで、戦略が明確になり、他との差別化も明確になり、会社が成長していきます。