今日は、起業家・経営者のバイブル「はじめの一歩を踏み出そう」の著者マイケルE.ガーバーの他の作品「あなたの中の起業家を呼び起こせ!普通の人がすごい会社を創る方法(原題:Awakening the Entrepreneur within)」を解説したいと思います。
内容が難しいので、文章でどれだけお伝えできるわかりませんが、以下からどうぞご覧ください。
本の中で、そして、ドリーミングルームの中で最も重要なのが、以下、起業家が持つ4つの役割です。
「はじめの一歩を踏み出そう」の中では、職人、マネージャー、起業家という3つの人格のバランスを取るという教えが書いてあります。
職人は手を動かす人、マネージャーは仕組みを創る人、起業家は未来を創る人です。
このうち、起業家の役割について、さらに分解したのが以下の4つの人格だと捉えていいでしょう。
・ドリーマー
・シンカー
・ストーリーテラー
・リーダー
次から詳しく解説します。
ドリーマー(WHAT:何を?)
ドリーマーが行うことは、その名の通り、ドリーム(夢)を生み出すことです。ただし、ここでいう夢とは、一般的な願望や欲望ではなく、顧客のための夢(インパーソナルドリーム)のことを指しています。
4つの人格のうち、このドリーマーが一番重要で、これが無いと始まりません。
マイケルE.ガーバー氏によれば、「顧客のための夢」を追求することに喜びを見出せることこそが、普通の人と偉大なビジネスを創る人の違いだということです。
普通の人は、ビジネスをスタートさせて、そこそこ成功すると「自分のための夢」は満たすことが出来ます。だからそこでビジネスの成長も止まります。
一方、「顧客のための夢」を追求する人は、バカでかい夢を持つので、成長することに限りがありません。
たとえば、本書の中で、夢の例として、キング牧師の話を挙げています。
皆さんご存知だと思いますが、彼の有名な演説でこんな言葉があります。
”私には夢がある。いつの日かジョージアの赤土の丘の上で、かつての奴隷の子孫達とかつての奴隷主の子孫達とが、共に兄弟としてテーブルに向かい腰掛ける時がくるという夢を。”
この夢は他の人のための夢であることがわかります。もしこれが起業家としての夢であったなら、自分が生きている間には実現できるかどうかもわからない壮大な夢であることがわかります。
また、これもガーバー氏が良く例に挙げていますが、グラミン銀行の創設者モハマドユヌス氏は、世界中から貧困を根絶するという夢を掲げてこのビジネスをスタートさせました。これもほかの人の夢であり、壮大な夢です。
ガーバー氏によれば、このような夢がなければ、ビジネスは決して偉大なものにはならないということです。
では、どうやってその夢を発見するのか?
本書では、そのプロセスを「内なる起業家のAwakening(目覚め、気づき)」としています。
ガーバー氏自身の例を挙げて説明しています。
話はガーバー氏が最初の起業をする前にさかのぼります。
当時、百科事典や保険のセールスマンをしていた彼は、引退して田舎暮らしをする予定でした。しかし、道中、広告代理店を経営する知り合いに頼まれて、シリコンバレーのIT企業の社長の相談に乗ることになるのです。
IT企業の社長は販売に困っており、広告代理店の知り合いは、販売の経験があるガーバー氏を引き合わせたのです。
その話し合いの中で、ガーバー氏は、IT企業の社長が販売の仕組みを全く持っていなかったことに驚きます。その瞬間に「内なる起業家のAwakening(目覚め、気づき)」が起こりました。
田舎暮らしの予定を止め、知り合いの広告代理店と一緒に、企業の販売の仕組みづくりというサービスをスタートさせるのです。
その後、ガーバー氏がマクドナルドを訪問した時、さらに目覚めの瞬間が訪れます。
中小企業に欠けているのは、販売の仕組みだけではなく、マクドナルドのように科学的に経営する仕組みであることに気が付いたのです。
そして、1977年に最初の起業をして今に至ります。
このような目覚めの瞬間、気づきの瞬間は、ほかの偉大なビジネスでも同じように存在します。
先ほどにも例を出したグラミン銀行のモハマドユヌス氏は、アメリカから地元のバングラデシュに帰ってきたときにその瞬間を体験しています。女性が活躍していたアメリカと比べてバングラデシュでは、女性が貧困から抜け出せずにいることに気が付きました。その問題を解決するために、少額融資の銀行を始めたのです。
また、マクドナルドの実質的創業者であるレイクロック氏も、ミルクシェーク製造機を販売するためにマクドナルドの第一号店を訪問した時、そのシステマチックな経営に驚き、これは世界中に広めたら凄いことになる、と起業家精神が目覚めました。そしてそれまでは平凡なセールスマンだったにも関わらず、世界で最も成功した起業家の一人になりました。
アップル創業者のスティーブジョブズ氏もそうです。ゼロックスの研究所でマウスとGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を見た時、これを搭載したパソコンが出来たら凄いことになる、と目覚めの瞬間がありました。
ビルゲイツは、大学時代、コンピューター雑誌にパソコンの原型となる製品が掲載されていたのを見て、これからはパソコンが世界中に広がると創造し、その道を進むことになりました。
このようなエピソードは枚挙にいとまがありません。
こういった瞬間には、理屈や分析はありません。これだ、という衝動があるだけです。
このような瞬間無しで、偉大なビジネスは生まれないとガーバー氏は言います。だから、ドリーマーの人格が最初に紹介されているのです。
世の中には、いつでも不満を抱いている顧客がいます。
本書では、
彼らのために何が出来るのか?彼らに何が欠けているのか?この絵に何が欠けているんだろう?と自問しよう、そこから夢が生まれる
と書いてあります。
このドリーマーの人格が、ビジネスのWHAT:何をするのか?を生み出します。
では次に、このWHATをどうビジネスにするのか?という方法論を生み出すのが、2番目のシンカーという人格になります。
※シンカーというのは、Thinkerなので、考える人、といったような意味ですね。
シンカー(HOW:どうやって?)
シンカーは、ドリーマーが気付いた”目覚め”を基に、ビジョン(ビジネスモデル)を組み立てます。
どんな顧客に、どんなサービスを、どんな利益モデルで提供するのか?
ということです。
このシンカーも絶対的に重要な人格なのですが、本書によればここで注意が必要になります。
ドリーマーの人格は、アイデアをどんどん膨らませますが、ここでシンカーの人格が強く出てしまうと、アイデアをしぼめてしまいます。
これは、すごいアイデアだ、と思ったものの、、、
よく考えてみたらどうもやる方法が見つからなくてあきらめてしまったという経験があなたにもあるかも知れません。
それがシンカーの人格が強く出てしまった状態です。
逆に偉大な起業家たちは、そのような内なる反対を押しのけて、夢を膨らませ、追求してきました。
ドリーマーとシンカー、この両方の人格を上手くコントロールできる人もいます。
ただ、本書にも書いてありますが、会社の中で、別の人が各人格を担うこともあります。
ガーバー氏の場合、ドリーマーの人格はガーバー氏自身が、シンカーの人格はトーマスという共同創業者が担いました。トーマスが実際のコーチングプログラムのほとんどを形作ったとも言われていますが、創業から7年後、方向性の違いで退社します。
こういった話は皆さんご存知のコンビ、本田宗一郎氏と藤沢武夫氏やスティーブ・ジョブズとウォズニアックなどと共通しますね。
一般に、一人で起業するより共同創業のほうが成功率が高いと言われています。あなたの自社内でもドリーマーとシンカーのバランスが取れているかチェックしてみるといいかも知れません。
ストーリーテラー(WHY:なぜ?)
3つ目の人格は、ストーリーテラーです。
この人格は、夢とビジネスモデルを他の人にもわかりやすいよう、ストーリーで伝える役目を果たします。
ドリーマーが発見したアイデアは、他の人にはなぜそれがいいのか理解できません。
たまに社長の言っていることはよくわからない、という社員の方がいますが、そもそもドリーマーのアイデアは他の人には理解できないのです。
そこで、なぜそれが必要なのか?をストーリーで語る必要があります。
先に例を出したキング牧師の「夢」は、演説全文を読めばストーリーと共に語られているのがわかります。
ちなみに、サイモンシネックの「WHYからはじめよ」というこれまた有名な本があります。
この本にも、起業家にとってのストーリーテラーの重要性が書かれています。もし読んでいなければ、著者が語っている動画がありますので、グーグルで「ゴールデンサークル」と動画検索してみてください。
リーダー(DO:実行)
リーダーはその名の通り、リーダーシップを発揮して、ビジネスを前に進めていく人格です。この人格が弱いと、すべては絵に描いた餅になってしまって、何も実現できません。
このリーダーの人格は、何も起業家自身が担う必要はありません。本書の中では、ガーバー氏がブラックウェルという実行責任者(実質上の社長)を雇い、ビジネスを進めていくという仮想の話が紹介されています。
以上、4つの人格についてご紹介しました。
もちろん、本書の中ではもっと詳しく紹介されていますが、エッセンスはお伝えできたかなと思います。
4つの人格のうち、鍵となるのはやはりドリーマーです。
私たちは起業して時間が経つと、いつの間にかこのドリーマーの人格が身をひそめてしまいます。目の前の仕事や現実的な話に心が奪われてしまうからです。
本書の中で、ガーバー氏も最初に起業してから数十年間、いつのまにか自分の中のドリーマーが抑え込まれてしまっていたという話を書いています。
あなたも起業したての頃には存在していた、夢や創造力、起業家精神の目覚めを忘れてませんでしょうか?
ビジネスはいつでも再創造できます。自分を突き動かしたものは何だったのか?ぜひ思い出してみてください。
さて、次回は、本書の翻訳者インタビューをご紹介しますので、こちらも楽しみにしていてください。
では本日は以上となります。