星野リゾートのビジネスモデルを完全解説。経営理念や組織文化も

星野リゾートのビジネスモデルと経営戦略。経営理念や経営戦略も


日本全国の泊まってみたいホテルランキングで常に上位に位置する星野リゾート

人気の秘訣は何なのか、競争が激化する旅行・ホテル業界において圧倒的地位を崩さない理由は何か。

本記事は、そんな星野リゾートのユニークなビジネスモデル・経営戦略や経営理念、カリスマ社長と言われる星野佳路氏の経営観等について詳しく解説していきます。

是非最後までご覧ください。

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現在の星野リゾートの誕生秘話

星野リゾートは、長野県に本社を置くリゾートホテル運営会社です。

現在、星のや・界・リゾナーレ等ラグジュアリーや最高おもてなしをコンセプトにした宿泊施設を全国に50以上展開しています。

そんな株式会社星野リゾートは、実は同族経営の企業であり、開業してから106年間代々家族で経営を引き継いできました。

星野リゾートは、初めからリゾートを経営していた訳ではなく、ごく最近まで長野県内だけで旅館を営む中小企業、「星野温泉旅館」でした。

現社長である4代目・星野佳路氏が1991年に家業を継いでから、現在の「星野リゾート」が誕生し、規模は当初の2倍以上に成長したのです。

波乱万丈の事業継承

4代目・星野佳路氏が会社を承継した時、そのやり方はなかなか乱暴なものでした。

というのも、彼は元々ファミリー従業員の間で横行する公私混同や遵法意識の低さに不満を持ち、父親と衝突することも多かったのです。

そして何度言ってもやり方を変えない父にとうとう嫌気が差し、1991年取締役会で父を追い出し、経営権を握ったのです。

平和な方法ではありませんが、彼には新しい時代にあったより会社を作りのため、変革を起こす必要性を強く感じていたと言います。

佳路氏による星野リゾートの経営改革

佳路氏は、事業継承後社名を「星野リゾート」に改名し、組織内の一族による公私混同といった同族経営の悪い部分を正すだけでなく、経営方針や事業内容も大きく変革しました。

当時、丁度1987年施行のリゾート法を機に旅館や観光業界における新規参入が激化したこともあり、他社と差別化を図るために星野リゾートは顧客満足度向上と収益力向上をスローガンとして経営方針を全国的なリゾート施設運営に移行しました。

これが現在の星野リゾートのビジネスモデルの基となっています。

星野リゾートのビジネスモデル:3つの事業

星野リゾートのビジネスモデルは、リゾート施設の運営・再生・投資事業を主な収益源としています。

リゾートの運営事業

通常のホテル企業のビジネスモデルでは新規ホテルを建設し、所有し、運営をして収益を上げていきます。

しかし、星野リゾートはリゾートの運営のみに特化しています。

現社長である星野佳路氏によると、ホテル業界において運営とは食事や接客、掃除というサービスを提供することであり、所有とは投資することを指します。

世界には、ホテルの所有や投資はしたいが、運営はしたくない人々が多く、彼らはホテルの運営をサービス提供が専門である運営会社に任せる仕組みを取っています。

星野リゾートは初期から旅館・ホテルの運営会社を目指して会社の規模を拡大してきました。なぜならホテルを所有しなければ、建設費や維持費がかからず、収益力が向上するためです。

その例として、同社は、2001年に軽井沢の「リゾナーレ小淵沢」の運営を受託してから15年で運営施設数を35軒に伸ばしています。この展開の速さは不動産を所有しないからこそ実現したのです。

リゾート再生事業

そんな星野リゾート運営事業は、独自の顧客満足度の向上から収益を確保する独自モデルを活用して、2004年に北海道のトマムリゾートの再生に成功したことを皮切りにリゾートの再生事業にも進出しました。



再生事業は星野リゾートに大きな収益の向上をもたらし、新たな事業投資資金の調達を可能にさせました。

再生事業から得た莫大な資金を使って、近年は地方のリゾート運営のみでなく、都市部における宿泊特化型の施設の運営にも事業を拡大しています。

そしてこの資金調達に欠かせないのが、投資法人です。

星野リゾート・リート投資法人

星野リゾートは、2013年に旅館・ホテルなどの宿泊施設に特化した不動産投資信託(REIT)「星野リゾート・リート投資法人」を創立しました。

星野リゾート・リート投資法人は、リート上での再建したリゾートの売却による資金調達を可能にしただけでなく、一般の投資家が自由に投資できる環境を構築しました。

同投資法人は星野リゾートグループが運営する施設の中で、中長期にわたって安定的な利用が見込まれる旅館・ホテルに対して投資を行い、その中でも特に安定的かつ長期的なキャッシュ・フローの確保が可能であると見込まれる施設に重点的に継続投資を行います。

星野リゾートの経営戦略

さて、上記で星野リゾートのビジネスモデルの要である3つの事業について説明しましたが、全体像を見てみると3つの事業はそれぞれが繋がりあい、そこから星野リゾートの経営戦略が見えてきます。

リゾートの運営のプロフェッショナルとして、顧客に最高の体験を提供する仕組みを武器に、経営難のリゾートを格安で買い取り、再生させ、投資法人を通じて売却する、もしくはリゾートに投資させ、そこから得た資金を使って新しいリゾートの買収や運営に再投資する。

このような仕組みがあるからこそ、資金が循環し、次々と新しいリゾートの運営にフォーカスできるのです。

そしてこのビジネスモデルを支えているのが、顧客満足度を高め、「また来たい」と思わせる最高のサービスの提供と、その裏に隠された徹底的なコスト削減という経営戦略です。

星野リゾートでは、最高の体験を提供するために以下のような仕組みを持っています。

顧客満足度を高める戦略

  1. リゾートの再生において調査会社を通して詳細なデータ収集を行う
  2. そのデータをもとに「コンセプトづくり」を進め、再生/運営する施設のメインターゲットとなる客層を絞り、どうアプローチするか考える
  3. コンセプトを明確化した上で、それに対応した詳細なサービスメニューを組み立て、顧客満足度を高める。サービスの評価を高めることでリピーターを増やし、稼働率を上昇させる。

星野リゾートの成功は、巧妙な投資と資金循環の仕組みと、徹底したサービス向上の姿勢が支えていることがよくわかります。

星野リゾートの企業理念

星野リゾートの企業理念(ビジョン)は「リゾート運営の達人」です。

これは4代目社長の佳路氏が経営の舵をリゾート運営に大きくきった際に定めた理念です。

星野リゾートの現ビジネスモデルは本理念を非常によく体現していますね。

私たち仕組み経営でもいつも強調していますが、企業のビジョンやミッションは経営の要です。星野リゾートもビジョンを思い切って変えたからこそ、ゴールが明確になり、リゾート運営事業に全力で方向転換できたのでしょう。

参考記事:ミッション・ビジョン・バリューとは?作り方や違いを完全解説

星野リゾートの組織文化

星野リゾートでは、従業員が自由に発信できるような組織文化を持っています。

かつて現社長が経営改革を推し進めた際には、トップダウン式の急激な改革に対し従業員からの反発も多くあったそうですが、その反省を活かし、フラットな組織作りに取り組んできたそうです。

特に人事制度には力を入れ、人事ではマネージャー職を立候補制にし、チームメンバーから共感を得た者がなれるような人事制度を導入しています。

余談ですが、人事制度は組織文化を形成・改革するのに非常に有効な手段です。特に人事評価の仕方次第で企業内の上下意識の厳しさや社員のモチベーションが180度変わってきます。

詳しくは下記記事をご覧ください。

参考記事:

人事制度とは?目的や種類、失敗しない設計手順を詳しく解説



人事評価制度の種類と作り方 5ステップで会社成長の仕組み作り

星野リゾート社長 星野佳路の経営観

では、最後に星野リゾートをここまで導いてきた4代目社長・星野佳路氏の大切にしている経営観を3つ紹介します。

①ビジネス理論に基づいて判断する

よく理論と実践は違うなどと言われますが、佳路氏はビジネス理論は効果が証明されたやり方であり、一定の効果が見込めると言います。

そのため、何か問題が起きたらまずは理論通りに試してみることを大切にしているそうです。

この時に大切なのが、自分の都合のいいところだけ掻い摘んでやるのではなく、全てのやり方を試し、実験することです。

②長期的な視点に立ってしつこくやる

通常、経営においては期間を設定してプロジェクトを行い、期間内に効果が出なければ失敗になります。

しかし、佳路氏はもっと長期的な視点で見て、効果が出るまでしつこくやることを大切にしています。

施策の効果が出るタイミングというのは計画段階ではわからないので、期間を設定することもあまり好きではないそうです。

もっと長い目で見て効果が出るまで微調整しながら根気強くやり続けることで彼はこれまで成功してきました。

また、長期的な視点に立つというのは、短期的な利益を望む事ではなく、会社を長続きさせることにも繋がります。

③承継問題に取り組むこと

同族経営である星野リゾートにおいて、承継は重大な課題の一つです。

佳路氏はよく「ファミリービジネス は駅伝である」と語っています。同族経営では駅伝のようにタスキを次の代へ円滑に繋ぐことがとても大切です。

そしてそのためには、適切な後継者を選び、育てる仕組みが必要です。最適な事業承継計画を練ることは、親世代の重大な責任なのです。

同族経営の承継問題について詳しくは下記記事をご覧ください。

参考記事:家族経営の後継者問題とは?正しい事業継承計画まとめ

 

いかがだったでしょうか?

星野リゾートのビジネスモデルや経営、ぜひ参考にしてみてください。

 

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