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「優しい社長、厳しい社長のどちらを目指すか?」2024年2月5日号



一般財団法人日本アントレプレナー学会の清水です。

さて、最近よく受けるご相談として、

社員に対して優しさを持つ(許容する)べきか?

または

厳しく注意する(叱る)べきか?

というものがあります。

たとえば、部下がやると言ったことをやっていない事態が起こった時、それをしょうがない、次回までにやってくるように、と言うのか、なぜやっていないのかを厳しく問いただしたほうが良いのか、という問題です。

かつては出来る社長ほど厳しいというイメージがあり、稲盛和夫さんや松下幸之助さんに厳しく叱られたというエピソードも残っていますね。

一方、最近ではほめて伸ばすのが良い、という風潮になってきたためか、ある程度許容して自由にやらせる、という上司やリーダーが増えてきたように思えます。

厳しくしすぎればすぐに辞めてしまうし、場合によってはパワハラ扱いされてしまうということもあり、優しい社長になっている人も多いでしょう。

でも優しすぎれば社員は堕落し、会社の文化は崩壊してしまいます。

ではどうすればいいのか?ということになってきます。


■この問題は、昔からある一つの言葉で解決できます。

それが、”仁義”です。

一つの言葉と言いましたが、正確には、”仁”と”義”の二つです。

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仁義礼智信


”仁”とは、無条件の思いやりや愛情のことです。

天が何の見返りも求めずに、すべてのものを生かしているように愛情を注ぐのが仁です。

言い変えると、我が子に対する母性愛と言えます。

仁は優しさにつながりますが、組織を仁だけで運営していては、規律がなくなり、文化が崩壊し、会社は成り立たなくなります。

そこで必要なのが”義”になります。

”義”は正義の”義”ですが、”責任”とも言えます。

リーダーにはいくつかの重要な責任があります。

顧客に対する責任、会社を存続させていく責任、そして、社員を成長させる責任です。

この責任を果たすために、厳しく規律を正すのが”義”ということになります。

このように考えれば、厳しさと優しさは二項対立するものではなく、同一のものなのです。

部下に対して本当に”仁(愛情)”を持っているならば、彼らが素晴らしい仕事が出来るようにするために、厳しくするという義(責任)も果たさなくてはなりません。

つまり、自分自身の中に、優しさと厳しさの両方を持つということです。


厳しさの中に優しさがあるから効果があり、優しさの中に厳しさがあるから効果があります。



■私の師匠のガーバー氏は、クライアントや周りのメンバーに厳しく接し、”苛立たせること”で有名でした(自分で言っていました)。

ですがそれは、相手の内に、眠っている起業家精神があると知っているからなのです。それを引き出すことが自分の責任だと考えていました。

厳しく指摘し、起業家精神を眠りから覚まさせることで、相手が本当の人生を生きることが出来る、という愛情があったから厳しさが出るのです。

ちなみに稲盛さんも両極端を合わせ持つ、という言葉を残していらっしゃいますが、これも仁と義の事だろうと思います。



■同じようなことを言い表した言葉に、「小善は大悪に似たり。大善は非情に似たり」があります。

自己満足のために行う善行(小善)が、それが善意から発したものであったとしても結果的に人をひどく傷つける大悪を生み出すことがある。

また、それに対して、本気で相手のことを考えて行う善行(大善)は、時として厳しく、情け容赦のない態度(非情)と誤解されることがあるが、努力すれば次元の異なる良い結果を生むという意味になります。

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■私が子育て中に学んだ言葉に、

「しっかり抱いて、下におろして、歩かせる」

というものがあります。

「しっかり抱いて」

赤ちゃんや幼児期の子どもは、安定した感覚的・心理的な結びつきが求められます。親がしっかりと抱くことは、子どもにとって安心感や信頼を築く一環であり、「愛着」の形成に重要です。

「下におろして、歩かせる」

成長するにつれて、子どもは独自の個性や能力を発展させていく必要があります。親が「下におろして、歩かせる」とは、愛着からの分離を促し、子どもが自らの力で歩んでいくことを支援する意味です。

これをリーダーと部下との関係性に置き換えることが出来ます。

まずは愛情を示すこと(優しさ)。つまり、あなたはこの組織に受け入れられている、気にかけられているという感情を持たせることです。

次に、彼らが自立してやっていけるために厳しさを持つこと。自律してやっていけるという意味は、仕事が一人前に出来るということはもちろん、人として正しくやっていけるということも含みます。

理想としては、この両方を会社として仕組みにすることです。受け入れられていると感じられる仕組み、自立してやっていける仕組みを作ることです。


まとめますと、優しさと厳しさ、仁と義、愛情と責任。これらは対立するものではなく、同一のものです。


それを踏まえて、それぞれの状況において対応すれば冒頭の悩みは無くなると思います。



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