今回のテーマは賃金制度です。
人事制度のうちの一つである賃金制度。
社員の給与に関わる重要な制度であり、会社にとっては社員のモチベーション向上や採用にも関わってきます。
賃金制度をうまく活用することで、会社を大きく成長させることにも繋がるでしょう。
そんな賃金制度について、本記事では賃金制度とは何か、賃金制度の種類とそれぞれのメリット・デメリット、賃金手当の設計方法などをわかりやすく解説していきます。
賃金制度は他の人事制度(評価制度・等級制度)とも関わってくるので、以下記事も是非合わせてご覧ください↓
目次
賃金制度とは
賃金制度とは、人事制度の一つで、等級や評価に基づいて給与や賞与を決定する制度のことです。
賃金制度は、基本給・手当・賞与制度で構成され、社員の何を評価するのかによって賃金が上下します。
そのため、構成要素のどの部分が手厚いか、どのように賃金が上がる仕組みになっているのかを見てみると、会社全体の方針や人事戦略が明確になるのです。
例えば、基本給は平均的だが賞与が高く、賞与は前期の個人の成果によって大きく左右される場合は、成果主義的な人事戦略をとっているのだとわかりますよね。
また、手当の内容も会社の方針を明確に表しているので、賃金制度は給与のことだけでなく手当もセットで考えるようにしてみましょう。
賃金制度の種類とそれぞれのメリット・デメリット
賃金制度の種類は、賃金ポリシーによって分類されます。
賃金ポリシーとは、会社として何を評価し、賃金を上げるのかを明確にした基本的方針のことです。
賃金ポリシーは人事評価制度と紐づくもので、社員の身上に関するものと仕事に関するものをいくつか複合的に組み合わせるのが良いでしょう。
※人事評価制度の設計についてはこちらもご参考に→
「人事評価制度の種類と作り方 5ステップで会社成長の仕組み作り」
賃金ポリシー(身上に関するもの)
①年齢給
年齢級とは、加齢に応じて賃金が昇級していく制度です。
メリットは年長者を敬う風土が作られることです。
デメリットとしては、能力や勤続年数にかかわらず昇級をしていくため、優秀な若手・が不満を持つこと、中途採用時の柔軟な給与設定ができないことなどが挙げられます。
②勤続給
勤続給とは、勤続年数に応じて賃金が昇級していく制度です。
メリットは、長期勤務を奨励できるようになることです。
デメリットとしては、長期間在籍するだけで昇級が進むため、能力獲得の動機付けが起こりにくいことが挙げられます。
③家族給
家族給とは、家族構成に応じて賃金が昇級していく制度です。
メリットは、生活の保障の要素が強まるため、従業員が安心して仕事に専念できるようになることです。
デメリットとしては、同じ条件・能力であっても、世帯持ち・子持ちの人材の方が優遇されるため、仕事基準で見たときに不公平感が残ることが挙げられます。
④職能給
職能給とは、保有している職務を遂行していく能力に応じて、賃金が昇級していく制度です。
一見成果主義のように聞こえますが、職能給はどれだけ成果を出したか/能力を発揮したかの結果ではなく、業務を遂行できる能力を持っているかどうかで賃金が決まります。
そして能力は勤続年数と共に上昇していくと考えられるため、実は年功序列的な制度になってしまうことが多いのです。
職能給のメリットは、能力開発の動機付けがしやすいことです。
デメリットとしては、職務遂行能力を蓄積すれば昇級するため、能力を発揮していなくても賃金が上昇する年功的な制度になってしまう可能性があることです。
賃金ポリシー(仕事に関すること)
①職務給
職務給とは、「人事課長」や「営業部長」など担当するポジションに対して給与や手当が支払われる制度のことです。
採用の際もポジションに対して採用を行います。
メリットは、職務に対して賃金が決定しているため、総額人件費の把握がしやすいことです。
デメリットとしては、職務が変更されない限りは昇級がないこと、異動により職務が現状より低いものに変更されると減給になる可能性があることが挙げられます。
②職責給
職責給とは、「職務に紐づく責任」、つまりある職務についている者が決められた責任を果たしているかどうかに対して給与が支払われる制度のことです。
メリットは、同一の職務であっても、成果を出している者と職務にあぐらをかいて出していない者で賃金に差を着けられることです。
デメリットとしては、職責という概念がわかり辛く、公平な査定・評価を行いにくいことが挙げられます。
③役割給
役割給とは、「職務」と「職責」の両方の観点から賃金を決定する制度です。
最近では役割給をメインに制度設計を行う会社が増えてます。
メリットは、職務給・職責給の弱点をカバーしていることです。
デメリットとしては、2つの視点を持っているため、わかりやすさに難があり、最良の余地を発生させることです。
④業績給
業績給は、成果主義的な賃金制度のことで、生み出された成果に対して賃金が支払われる制度です。
いわゆるインセンティブのような考え方ですね。
メリットは、成果に対して給与を決定するため競争を促しやすいことです。
デメリットとしては、年度によって給与が大きく変動するため生活の安定を脅かしやすいことが挙げられます。
賃金制度の手当について
賃金制度は手当も含めて考える必要があります。
各種どんな手当があるのかを紹介します。
どの手当を適用するのかは、会社の方針や他の制度との兼ね合いも見ながら決めていきましょう。
主要な各種手当
生活面
- 住宅:転勤時など
- 家族:共働き増加により配偶者よりも子供に対する手当は増加傾向
- 地域:物価が高い地域や寒冷地域につけるなど
- 食事:昼食を補助
仕事面
- 役職:役職ごとで設定
- 営業:外回りの営業に対する手当
- 業績:業績に応じた歩合など
- 勤務:特殊作業手当など
その他
- 通勤
賃金制度の設計 – 6ステップ-
賃金制度の設計の仕方を6ステップで紹介します。
ステップ1:概要設計
まず、制度の大きな枠組みを決めるため、概要設計を行います。
概要設計で考えておくべき項目は以下の4点です。
- 各役職に応じた賃金の幅を設定
→現状分析を踏まえてどれくらいの幅を見ておくのか - 役職の中の等級に合わせた賃金の幅を設定
- 「基本給」「手当」「賞与」をどう組み合わせるのか
- 全体を合わせた年収をイメージ
- 手当は業務に関連する手当をイメージ(役職手当・営業手当など)
- その他の手当の検討
- 業務とは別の手当の検討。(家族手当など)
- 採用戦略の一つとしても良い
賃金の幅決めでは、詳細な金額などを決めるのではなく、等級制度の中でざっくりとした理想をイメージしてください。
例)役員の1等級だったら年収〇〇〜〇〇円くらいで役員手当と家族手当を用意
ステップ2:現状分析
次は現状の賃金制度を分析します。
どの役職でどのくらいの賃金なのか、どのようにして賃金が上がる仕組みになっているのか、、、
現状を分析し、理想とのギャップを把握し、課題や傾向を見ておきましょう
ステップ3:賃金ポリシーの検討
次に賃金ポリシーについて検討します。
限りある人件費をどう分配し、何に対して賃金を支払うのかを明確にした上で、
上記で紹介した賃金ポリシーの中でどのポリシーを採用し、どのように組み合わせるのかを考えます。
この時、人事評価制度とも必ず連動させるようにしてください。
人事評価制度で何を重視しているのかを起点に、賃金ポリシーも決めていきましょう。
ステップ4:基本給を考える
ポリシーが決まったら、それに応じた基本給を決めていきましょう。
概要設計でイメージしていた幅や手当・賞与との兼ね合いの中で、具体的に基本給をいくらにするのかを考えます。
この時に重要なのが賃金テーブルの作成です。
賃金テーブルとは、賃金表とも言われ、役職や等級によってどのくらいの基本給を設定するのかを表に表したものです。
賃金テーブルには大きく4種類の型があります。
補足:重複型の場合、抜擢登用がしやすい。
→抜擢登用時の給与を下級の年長者より低く設定することができるため
どの賃金テーブルを活用するかは、賃金ポリシーとも合わせて検討してみましょう。
ステップ5:諸手当を考える
基本給が決まったら、各種手当について考えましょう。
年次や役職に応じて、どのような手当が必要なのか、また会社として社員の何を支援したいのかをベースに考えてみましょう。
また、基本給と手当を合わせて概要設計でイメージした理想の年収に見合っているかも確認しましょう。
ステップ6:シュミレーション
賃金制度の詳細が設計できたら、最後に実際の社員を当てはめてシュミレーションを行います。
シュミレーションを行うことによって、制度の妥当性を確認することができます。
一覧表を作って、実際の社員を当てはめ、評価制度との兼ね合いも確認しながら、ズレや違和感を感じたら修正していきます。
賃金制度の注意事項
設計時に意識してほしい賃金制度の注意事項を紹介します。
以下7つのポイントに注意しておきましょう。
- 法に触れるものでないか(最低賃金)
- 就業規則、賃金規定に明記されているか
- 中長期(5年くらい)も視野に入れた賃金制度になっているか
- 現状と新しい賃金制度の比較は慎重に行う(給与下がる人に特に注意)
- 雇用契約書、労働条件通知書のアップデート
- 予告期間(最低3ヶ月)と移行期間(減給になる方には特に遅めに設定)を検討。テスト運用なども良いでしょう
- 基本給と手当の合計でいくらになるか考えておく
賞与制度について
最後に、簡単に賞与制度について説明します。
賞与制度設計は以下のような流れで決定します。
- 賞与原資の決定
- 原資の配分方法の決定
- 評価方法
- 一定方法
- 部門配分方法
- 全体のバランスも確認して最終決定
賞与原資は、最近では業績連動型(経常利益や営業利益で決定)を志向する会社が増えています。
利益が多い年は賞与も手厚く、利益が少ない年は賞与も減らすという考え方は、経営の観点からも納得が得やすく、社員からの不満も出にくくなります。
また、原資の配分方法に関しても、一律一定額よりも個人の業績を加味する方がオススメです。
社員のモチベーション向上にもつながる上に、基本給よりも賞与の方が社員間の給与に差がつけやすいといったメリットもあります。
いかがだったでしょうか?
賃金制度は会社の大切な仕組みの一つです。
ぜひ本記事を賃金制度の見直しの参考にしてみてください。
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