「出藍の誉れ」の意味と使い方



清水直樹
「出藍の誉れ」という言葉があります。これは人を育成するうえで非常に参考になる考え方です。そこで本記事では、「出藍の誉れ」の意味と使い方を解説していきます。主な対象者は会社経営者の方です。

出藍の誉れの意味と由来とは?

「出藍の誉れ」の意味とは、弟子が、その技術や能力において、師匠を超えることです。

藍草からとった青い染料の青さは、もとの藍草の色より美しいという話からきています。また、その由来は、荀子が、勉学に励めばより高いところへ達することができるという学問の必要性を説いた言葉とされています。

出藍の誉れの現代事例

2015年のワールドカップで南アフリカ戦をご覧になった方もいると思います。見てない方にご説明しておくと、最後のシーンで日本は3点差で負けていました。

その場面で、日本はペナルティキックのチャンスを得ました。ラグビーの場合、ペナルティキックでゴールすると3点入るので、同点になります。

当時の日本監督、エディ・ジョーンズ氏が思い描いていたシナリオは、キックを決めて、同点でゲームを終える、というものでした。強豪の南アフリカ相手に同点で終えられるだけでも日本にとっては非常に大きな成果だったからです。

しかし、選手たちは監督の指示とは反して、キックではなく、トライで5点を決め、逆転勝利するという判断をしました。

そして、実際にぎりぎりのところでトライを決め、逆転勝利をします。

結果としては勝利したものの、監督からすれば選手たちが指示に従わず、勝手に判断した、ということになります。

この件について、エディ・ジョーンズさんは自身の本の中でこう振り返っています。

”本当の成功とは、部下がリーダーを超えた時に起こる”

つまり選手たちは自分の指示に従わなかったが、実はそれこそが成功だった、というわけです。

まさに出藍の誉れだったのです。

実はエディ・ジョーンズさんが日本の監督になった時、困っていたことがありました。それは選手たちの自主性が無いことでした。日本の教育では、生徒は先生の指示に従順になる、というのが優等生とされます。それを大人になるまで引きずっていて、ラグビーの試合でも同じだったのです。

これはラグビーに限らず、社員に自主性が無いことを嘆く経営者の方は多いと思います。

そのため、エディ・ジョーンズさんは、練習の中で、監督が答えを出すのではなく、問題に自分で気づかせるということを徹底して行っていきました。

その結果、南アフリカ戦のゲームの最後の最後で、選手たちが自主的に判断し、リーダーである監督を超えたのです。

 

出藍の誉れを会社経営に活かすには?

では次に、この出藍の誉れを会社経営にどう活かすか?をご紹介していきます。

出藍の誉れを評価基準で活かす

多くの社長が悩むのが評価基準ですが、ここでも出藍の誉れの考え方を活かすことができます。特に、管理職やリーダークラスには、出藍の誉れの概念を理解してもらうことが大切です。通常、一般社員から入社すれば、プレイヤーとして成果を上げることが求められますね。営業であれば、自分が営業をして売上を上げる、技術者であれば自分が技術を身に付けて、より高度な開発を出来るようにすることが第一です。したがって、一般社員の場合、彼ら自身の成果が評価基準になります。

一般社員が成果を出し続けると、管理職に昇格していくわけですが、ここで彼らには、プレイヤーとしての考え方から抜け出してもらう必要があります。管理職の仕事は、仕組みを創って、チームメンバーがより効果的に働けるようにすることです。プレイヤー時代は自分が動いて成果を出していたのに対して、管理職になれば、いかにメンバーを動かして成果を出すか?ということに評価基準が変わるわけです。

本来、管理職としては、出藍の誉れの考え方にのっとり、いかに自分よりも優秀なプレイヤーを生み出していくか?ということに焦点を当てなくてはなりません。この点を管理職が理解していないと面倒なことになります。彼らは元々プレイヤーとして優秀だったため、プレイヤーとして優秀であることに誇りを持っています。したがって、自分のチームメンバーが自分よりも成果を出すことに無意識のうちに抵抗してしまうこともあるのです。

そうならないためにも、管理職としての評価がどのようになされるのかをしっかり伝えておくことが大切でしょう。

 

出藍の誉れを採用基準で活かす

古くからの格言では、「自分の周りに自分より優秀な人を置きなさい」というものがあります。これは、採用の時にも当てはまります。人を採用する動機は色々あると思いますが、一つには、自分がやっている多数の業務を、より専門知識や経験を持った人に任せることで、より大きな成果を生み出すことにあります。

したがって、採用時には、採用しようとしている人物が、将来的に自分よりもうまく業務をこなせるようになるか?という視点で評価することが大切です。

 

出藍の誉れを教え方で活かす

人材育成でも出藍の誉れを活かすことができます。弟子が師匠を超えるのが出藍の誉れですので、人材育成は、いかに自分を超えてもらうか?ということを考えなくてはいけません。これは従来の教育や研修とは大きく異なる考え方でしょう。従来の人材教育や研修は、答えを知っている講師が、未熟な社員に答えを教えるというものが多かったです。

しかし、いまのように答えがない時代は、自分で考えられる人材を育てることの重要性がますます増しています。



そこで、仕事を教える側は、次の教え方の3つの段階を理解しておくことが必要です。

1段階目:知識やノウハウを教える

業務の基本的な知識やノウハウを教える段階です。従来型の研修はこの段階と言えるでしょう。

2段階目:目標に到達する方法を教える

仕事に必要な基本知識を身に付けさせたら、次は、彼らが仕事で目標を達成することを支援してあげることが大切です。この段階では、社長や上司はどちらかというとコーチやメンターとしての立場で育ててあげることが大切です。

3段階目:自分を超えさせる

3段階目は、自分を超えさせる、つまり出藍の誉れです。この段階の教え方を出来るのは、一流の社長やコーチだけです。この段階の教え方は、知識やノウハウを与えることではなく、インスピレーションを与えることです。インスピレーションとは刺激や気づき、という意味ですが、インスピレーションを与えることによって、彼らは自分で目標を見つけ、それに向けて自主的に努力をすることができるようになります。こうなると師が行うことは見守ることだけになります。

※ちなみにこの3段階については動画でも解説しています。

 

出藍の誉れの考え方で会社を成長させよう

会社経営は、師匠である社長を超える社員が出てこなければ永続的な発展がありません。

もちろん、すべての面において超えるのは難しいかも知れませんが、ある面においては社長より優れた人を採用し、または育成していくことが大切だと思います。人間社会はその繰り返しで発展してきたのです。

そして、社長としては、そのような人材が育っていくことを許容する器がなくてはいけないのは当然です。

以上、出藍の誉れの意味や活用法についてご紹介しました。

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