1on1ミーティングが流行ってます。もともとはシリコンバレーで実施されているという話から始まり、日本ではヤフーが実践し、効果を出したことで多くの企業が1on1ミーティングを知ることになりました。
このサイト「仕組み経営」では、海外のメソッドをもとに中小企業・成長企業の仕組み化を支援していますが、すでに30年間以上前から1on1ミーティング(Employee Development Meeting)を推奨しており、世界中で実績を出し続けています。そこでこの記事ではそのやり方を大公開していきます。
対象読者は中小企業・成長企業の経営陣です。以下からどうぞご覧ください。
ポッドキャストでも解説しています。
1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングとは、上司と部下が一対一で、定期的に行う面談のことです。特徴としては以下のことが挙げられます。
- 社長から一般社員まで全社員が定期的に行う。
- 社員の成長をメインの目的にしている。
- 給与は昇級のための面談(人事考課や評価)とは別に行われる。
- 上司はメンターやコーチとしての役割を担う。
- 心理的安全性を生み出し、お互いに開かれた会話を行う。
1on1ミーティングの頻度
1on1ミーティングの頻度は各社ごとに異なりますが、仕組み経営では週に一回を目安に導入してもらっています。職種によっては多すぎることもあるため、その場合には2週間に一回にします。逆に1か月に一回というのは少なすぎます。
1on1ミーティングの目的をはき違えるな
まず、1on1ミーティングの目的は確認しておきましょう。
1on1ミーティングの目的のはき違えで一番多いのがこれです。
1on1=人事評価や考課の面談でしょ?うちもやっているよ。
というものです。
普通の会社では人事評価のための面談が多い会社で四半期に一回、最低1年に一回は行われています。これをもって1on1ミーティングをやっている、というのは間違いです。評価や考課のための面談の目的は、社員の昇進や給与などを確定させるためのものです。しかし、1on1ミーティングの目的はそうではありません。
1on1ミーティングを行う目的はこれ
社員の成長
1on1ミーティングの最大の目的は、社員の成長を促すことです。ここで言う成長というのは、単に仕事が出来るようになる、ということだけではなく、彼らのキャリア面での成長、プライベート面での成長、さらに人間的な成長を促すことも含まれています。
仕事の円滑な遂行
現在の仕事について話し合い、やるべき仕事、優先順位、やり方、結果などを明確にし、上司と部下の間で合意します。また、現在抱えている課題について共有し、今後の仕事を円滑に進められるよう支援します。
キャリア面での成長
社員がキャリア上の目標に向かうためにサポートし、仕事に対してよりポジティブに取り組み、意義を感じられるようにします。そのため、彼らの将来のキャリア像も明確していきます。
エンゲージメントの向上
社員が会社の方針や目標に疑問を感じていないかを確認し、問題が深刻化する前に解決します。また、社員に“聞いてもらっている感”を与えることで、人に人として接していることを示します。
初めての1on1ミーティングのやり方と進め方
初めての1on1ミーティングを行う場合のやり方と進め方次のとおりです。
1.基本的なルールについて合意する。
1on1ミーティングを継続的に実施していくにあたって、基本的なルールについて確認します。これには3つあります。
ひとつめは、彼ら(部下)があなたに期待してもらって良いこと、言い換えれば、あなたが彼らに出来ることを伝えます。たとえば、あなたがコミットしたことを守ること、彼らの仕事に影響する変化や変更があった場合には、すぐに伝えること、仕事の成果について、すばやく、ストレートなフィードバックを与えることなどです。
ふたつめは、あなたが彼らに期待することを伝えます。たとえば、彼らがコミットしたことを守ること、仕事に影響しそうなことがあったらすぐにあなたに伝えてもらうこと、必要なときには助けを求めてもらうこと、などです。
みっつめは、彼らが効果的に働くために、あなたからどんな支援が必要かを話し合うことです。それを理解することによって、あなたはより優れた上司になることができ、信頼の上に築かれた、オープンなコミュニケーションをすることができるようになります。
2.1on1ミーティングの概要について伝える。
1on1ミーティングの概要について伝えます。伝えるべきは、1on1ミーティングの目的、方法、内容です。1on1ミーティングの一番の目的は、上記に述べた通り、上司と部下が一緒に働きながら、障害を乗り越えることによって、彼らのキャリア的な成長を促すことです。方法とは、頻度や時間、場所などです。内容は仕事や事務的なことについて議論すること、長期的なキャリア成長や短期的な仕事の成果を改善するためのコーチングなどです。
3.現在の仕事内容を評価する。
初回の1on1ミーティングでは、ひとつひとつの仕事について細かく話す必要はないですが、10分程度時間をとって、過去にお願いした仕事やこれからお願いする仕事について話すと良いでしょう。
4.部下の仕事面での目標を引き出す
多くの社長は、社員のことを家族だと思っていますが、ことマネジメントの話になったときには、個人的なことと仕事上のことの境目を設けるべきです。たとえば、プロジェクトの遅延が生じているとき、その担当者には説明責任を求めなくてはいけません。
社長をはじめとする上司の役割を簡単に表すならば、部下の仕事面での発展を促すことです。社員は一生、あなたの元で働くわけではないかも知れませんが、彼らの仕事面での発展を促すことによって、全員にとって大きな実りが生まれます。仕事は、自分の目標や夢を達成するための乗り物だと考えてもらうようにしましょう。彼らがキャリア面で考えている目標や成長についても考えてもらいましょう。そして、いまの仕事や会社が、それにどう役に立つのかについても議論をしましょう。
5.継続的な1on1ミーティングを設定する
1on1ミーティングのスケジュールを決めましょう。少なくとも向こう1か月分くらいはスケジュールを押さえておくとよいでしょう。また、初回のミーティングで解決できなかったテーマがある場合には、ノートを取っておき、次回に持ち越しましょう。
継続的な1on1ミーティングのやり方と進め方
初回ミーティングででお互いの関係性についてしっかりと基盤を作ったら、今後の継続的な1on1ミーティングのは問題や課題について、解決策や戦略を考える有効な時間になるでしょう。ただし、1on1ミーティングがお互いにとって、単に“こなすもの“でしかなくなってしまえば、まったくの逆効果になってしまうことに気をつけましょう。
また、1on1ミーティングには紙に書かれたアジェンダが必須です。アジェンダがあることによって、無駄なく効果的なミーティングが可能になります。継続的な1on1ミーティングの流れは次のとおりです。
1.1on1ミーティングの目的を認識する。
最初に今回の1on1ミーティングの目的について部下に伝え、彼らの同意を取りましょう。そして、アジェンダを伝えたうえで、彼らから何か扱いたいテーマがないかどうかを聞いてみましょう。ただし、彼らが提案してきたテーマが取り扱うべき重要なものであるかどうかは、最終的にあなたが判断します。
2.現在の仕事を評価する。
彼らが現在取り組んでいる仕事の進捗状況などを確認します。締め切りに間に合いそうか?最高の結果を出すために、何か助けが必要だろうか?
3.仕事や自己成長における課題を認識し、解決する。
この部分が1on1ミーティングの鍵となるテーマです。社長や上司には、メンターとしての力が試されます。社員の仕事や自己成長における成功についても話します。たとえば、顧客からほめられたこと、新しいスキルを身につけたこと、プロジェクトが予定どおり終わったことなどなど。そうすることによって、更なる学習や生産性を促すことができます。
1on1ミーティングにおけるもうひとつの重要なテーマは、社員の成長の機会を探すことです。彼らはどの分野において、更なる成長、成果を出すことができるでしょうか?上司であるあなたはメンターとして、それを見極め、これまでの経験や客観性を持って、彼らのサポートをしてあげることが求められます。
4. ほかのテーマについて話し合う。
新しいルールや手続き、会社全体の進展、彼らにかかわってもらう新しいプロジェクト、彼らに影響する変化などについて伝えます。
5.次回に持ち越すテーマを決める。
今回、完了しなかったテーマや次回に持ち越したいテーマについてお互いが確認しあいます。
6.次回1on1について確認する。
次回のミーティングの場所と時間を確認します。ミーティング終了時には、“話を聞いてもらった”と感じてもらい、やるべきことに対して、ポジティブになり、具体的な手順を理解している状態になってもらうことが大切です。
1on1ミーティングのテーマのヒント
ミーティングのテーマを何にしようかと思うこともあるでしょう。以下に挙げるのは、一般的なミーティングのテーマです。ヒントにされてください。
- その期間中の仕事の優先順位について
- 依頼した仕事へのフィードバックや進捗確認
- チームや会社の目標を再確認
- 部下が抱えている課題や問題の解決
- 成功したことや上手く行ったことを評価する
- 最近の仕事で上手く行ったことや失敗したことの共有
- キャリア上での目標の確認
- 今後の成長分野、学習分野について
1on1ミーティングでの質問例
1on1ミーティングを行っている途中に、話すことが無くなり、時間を潰すのに困ってしまう人もいるのではないでしょうか?そこで、この記事では、ミーティング中に使える質問集をご紹介していきます。ぜひご活用ください。
この一週間はどうでしたか?
この一週間は何をしていましたか?
●●の件はどうでしたか?(いきなり細かく問い詰めないよう注意)
いま取り組んでいることは何ですか?
●●(会社の発表やルールの変更等)に関して質問はありますか?
会社やチームの目標は把握できていますか?
会社の方向性と自分の目指すことは一致していますか?
最近上手く行ったことと上手く行かなかったことは何ですか?
(前の質問から続いて)そこから学んだことは何ですか?
チーム内や会社内での人間関係について話し合いたいことはありますか?
3年後の目標は何ですか?
新しく身に付けたいスキルや知識は何ですか?
次回のミーティングまでに何が出来ますか?
今回カバーできなかったことで、次回話し合いたいことはありますか?
1on1ミーティングが失敗する理由
最後に1on1ミーティングが失敗する理由をご紹介していきます。
上司がしゃべりすぎる
これは非常によくありがちな失敗例です。冒頭でもいった通り、1on1ミーティングにおける上司の役割はメンターやコーチです。1on1ミーティングは上司の主張や意見を伝えるために開催されるものではありません。部下が成長することが最大の目的です。そのため、上司は話すのではなく、聞くことに徹することが大切です。目安としては「話す:聞く=1:9」の割合です。「え?そんなに聞くの?」と思われるかもしれませんが、このくらいの意識で臨んだとしても、実際には「話す:聞く=3:7」くらいにはなります。話しすぎた、と思ったら上記の質問例を参考に聞き役に回りましょう。
頻繁に時間を変更する
上司がミーティングの時間を頻繁に変更したり、リスケしたりすると1on1ミーティングの目的は達成されません。時間の変更やリスケは、”あなたとのミーティングは最優先ではない”というメッセージを暗に送ってしまいます。もしかしたらあなたは、1on1ミーティングをやっている時間はない、と思っているかも知れません。
しかし、実際のところ、1on1ミーティングを実施することは、あなたにとっても、その後の無駄な時間を削減する効果的な手段になるのです。毎週(または隔週)、決められた時間に部下との面談を行うことによって、日々の余計な問い合わせや質問、トラブルを避けることができます。部下が間違った方法で仕事を行い、それを修正する時間も避けることができます。1on1ミーティングを継続的に行うことで、問題に対処するという仕事がどんどん減り、問題が起こらないようになっていくのです。
仕事の進捗を詰める
1on1ミーティングで大事なのは、”このミーティングは、あなたをサポートするために用意されている”ということが暗に伝わるような態度で臨むことです。何度も言いますが、このミーティングは社員の成長を目的としているのであって、仕事の進捗を詰めるために行うものではありません。
会社は仕組みで運営しよう
以上、仕組み経営で推奨している1on1ミーティングの進め方ややり方についてご紹介してきました。1on1に限らず、会社で行われる仕事はすべて仕組み化できます。仕組み化することで、属人性を排除し、社長があれこれ指示しなくても成長する会社が出来ます。仕組み経営では”社長不在で成長する会社作り”を支援していますので、ぜひ以下から詳細をご覧ください。