会長と社長の役割の違いとは?



清水直樹
今日は、会長に勇退したい、勇退した人向けに「会長と社長の役割の違いと会長の働き方」という話をしたいと思います。

 

動画でも解説しています。

 

仕組み化すれば社長から会長への勇退も可能

日頃、会社の仕組み化をお手伝いしていますが、仕組み化の目標はいくつかあります。

例えば、会社を仕組み化して組織を整えてもっと成長させていくというのもありますし、仕組み化して自分ではなくても経営できるようにして、事業承継するということもあります。もしくはどこかの会社に売却するなど、いろんな目的があります。

そのうちの1つが、自分は社長を退いて会長になる、社長として誰かを新しく任命するという、いわゆる勇退があります。

会長への勇退を目指すというのも、仕組み化の目標になるわけです。

仕組み化すると、自分の仕事を他の社員の人に任せていくことができますので、最終的には自分が今やっている社長業、これすら他の人に任せられるということになります。

そして自分が会長となって、毎日会社に出社して働くというのではなく、例えば月に1回だけ行くとか週に1回だけ行くという感じで、勇退するということもできるようになります。

うちのお客様の中にはそんなに数は多くないですけれども、実際に会長に勇退した人もいれば、今まさに社長を育てていて、自分が会長に勇退する準備をしているという人もいらっしゃるので、今日はこのテーマを取り上げようと思ったのですが、会長になる時に悩むことがいくつかあるわけです。

 

社長から会長へ勇退した人の悩みとは?

それは何かというと、今まで自分が社長として毎日会社に行って社員のマネジメントをしたりとか、事業を自分で前に進めたりするという立場だったんですけれども、いざ会長に退くと何をしていいか分からないということです。会長として何をしていいのか分からなくて、困ってるという社長も意外といたりします。

会長というのは基本的には社長を退いた人がなる役職なので、会社の経営ということに関してはベテランなわけです。ただ、会長というポジションに関しては、まだ1年生です。なので、会長として何をすべきか分からない。社長とどう関わったらいいのか分からないという悩みがあったりするわけです。

そこで今日は、この役割の違いと会長はどういう働き方をしたらいいのかという話をしたいと思います。

 

会長と社長の違いとは?

まず、会長と社長の違いは何かという話です。会長とか社長という役職名があります。これは別に法律でこういう役職があるわけではなく、商習慣上、会長とか社長という言い方があるだけです。

なので、別にこれは正式な肩書ではないということです。本人や会社が勝手に決めたものということになります。

ただし、前に代表取締役と付けると話は変わってきます。代表取締約というのは、法律で決められた役職です。

代表取締役は、株主総会や取締役会の決議に基づき、単独で会社を代表して契約等の行為を行ることができる、日常業務について、取締役会からの決定権限が委譲されており、自ら決定も行い執行する。

ということです。

ちょっと分かりずらいかもしれませんけれども、株式会社というのは株主がいるわけです。その株主がオーナーで、その人達が集まる株主総会というのがあるわけです。その下に取締役会というのがあります。取締役会は株主達の意向に基づいて会社を運営していくという任務を任されています。

その取締役会の中で代表として会社を経営していく、執行していくのが代表取締役ということになっています。

ほとんどの日本の会社は株主と代表取締役が一緒なので、あまりこの辺は気にしないかもしれませんけれども、一応そういう形になっているということです。

一般には、会長・社長といっても、正式名は代表取締役会長、代表取締役社長というケースが多いのかなと思います。

ほとんどの場合には、会長は先代社長で、社長が現在の社長であるというケースが多いです。ですので普通は会長の方が権限、権力がある存在です。

最終決定権は会長が持っていて、社長はその下でやっているといった、実質社長がナンバー2のような感じでやっているというケースが多いのかなと思います。

 

会長と社長の二頭政治が起こす問題

会長がいる場合には、会長と社長というトップが2人いるということになるわけです。こうなるといろいろと問題が起こるケースが多いです。

これを二頭政治といいます。会長という頭と、社長という頭があるということです。

普通に考えると、社長は会長から任されてその会社を運営していますので、実質その組織のトップは社長であるわけです。

ただ、会長もその組織の中でやはり存在感があるということです。



そして会長についていきます、先代社長についていきますというベテラン社員がいたりとかするわけです。

ですので実質組織としてはこの図にあるような感じになっているということです。

 

一応正式には、社長をトップとしたピラミッド構造、組織構造があるんだけれども、もう1個、会長をトップとした人脈というか派閥みたいなものがあって、この2つで会社が動いているみたいなことがあるわけです。

こういう組織体制だと社長としてはやりずらいです。会長の派閥に所属している社員がいます。この人に指示がしずらかったり、その人に強く言えなかったりするわけです。先代社長の息のかかったベテラン社員みたいな人がいると、なかなかその人を動かしずらいというのがあったりするわけです。

一方で、会長としてもこういう風に自分の権力を保ちたいというのは分かるんですけれども、このような組織構造だとやはり社長がやりずらくなって結果として会社がうまくいかないということがありますので、よろしくないということになるわけです。

このように二頭政治の罠に陥らないような会長と社長の関係づくりというのをしていかないというわけです。

 

会長、社長の二頭政治を引き起こす「会長のジレンマ」とは?

なぜこの二頭政治の罠に入ってしまうかというと、会長のジレンマというのがあります。

これは私が名付けた言葉なんですけれども、どういうことかというと、会長は本当は社長に経営を任せて、自分は悠々自適な勇退をしたいわけなんだけれども、一方、社長の働きぶりが気になるとか、自分の存在価値をまだまだ出していきたいという裏の欲求があったりするわけです。

本当は任せて自分は勇退すればいいんだけれども、裏の欲求としてやはりどうしても社長の働きぶりが気になったりとか、まだまだ自分の求められている感がほしいので、ついつい経営とか現場に口を出してしまうということがあるわけです。

これが会長のジレンマです。

本当は勇退すればいいんだけれども、心の中ではなかなかそうもいかない。

これがジレンマになっています。

これが強すぎると、二頭政治になってしまうというわけです。

 

会長と社長の役割の違いを明確にする

このジレンマを解決するためにやらないといけないことが、要は会長の仕事を明確化するということがあります。

会長の役割の明確化

まず1つ目が役割の明確化です。これは会長と社長の関係性であるとか、各社ごとに決めてもらえばいいかなと思うんですけれども、一般的にはこういう分け方があります。

まず会長の方は社外活動に力を注ぐということです。例えば、業界内でいろんな業界団体があると思いますが、そこに出入りして人脈をつなぐとか、もしくは業界外のところに出て行って他の業界の社長とつながりを持ってビジネスに活かしていくとかそういった活動です。

一方で社長は社内の活動としてマネージメントに専念するというやり方です。

あと会長は海外の事業展開に力を注ぐとか、社長は国内の活動に力を注ぐ。こういう役割分担もあるでしょう。

あと会長は新規事業をやる。社長は既存事業を伸ばしていくという、こういう役割分担もあるかなと思います。

これも新規事業で会長がはりきり過ぎて社員を掻き乱すとまた面倒なことになりますが、新規事業をやる場合には既存事業から人を引っ張るというよりも、新しく人をアサインした方がいいです。

とにかくこういう役割分担が必要になるかなと思います。

 

会長は社長の支援に徹する

次の仕事としては、社長の支援に徹するということです。

会長は、いわゆる社長のコーチ役とか、メンター役になるということです。



これをぜひやってほしいことかなと思います。

うちの宣伝になってしまいますけれども、仕組み経営コーチという養成講座があります。

仕組み経営という私が提供している仕組み化のメソッドを教えることができるコーチになるための養成のトレーニングがあるんですけれども、それを受けていただくと会社の仕組み化ということをマスターできます。

基本、社長の仕事というのは会社の仕組みづくりです。

会長は仕組み経営コーチになっていただいて、社長のコーチになっていただいて、社長が会社の仕組みづくりをするのをお手伝いする立場になっていただくと非常にいいのかなと思います。

ここでポイントは、あくまでコーチ、メンター役ということです。

コーチ、メンターという言葉は最近よく聞くと思うんですけれども、社長時代のように一方的にあれやれこれやれという風に指示し始めると社長は育たないので、あくまで社長がやりたいことを支援する、応援する、もしくは社長がやりたいことがあって、どう見てもこれはおかしいなという時だけそれを正してあげるという役割がいいのかなと思います。

 

会長は幹部育成を受け持つ

次3つ目です。幹部育成を受け持つということです。社長は部長や課長ぐらいは育てられるかもしれませんけれども、社長の次の社長を育てたことはないわけです。

でも会長は社長を育てた経験があるので、今の社長のさらに次の社長も育てることができるということです。

ですから、会長は幹部育成の講師として一番適任者なわけです。

ですので社内でそういった幹部育成を受け持つというのも1つあるのではないかなと思います。

 

会長は会社のフロントマン

4つ目です。フロントマンになるということです。

フロントマンとは何かといいますと、要はその会社の看板というか象徴的な存在になるということです。

私も師匠のマイケル・E・ガーバーさんも自分で創った会社があるんですけれども、そこを早々にリタイヤして会長になったんです。

会長になった時の役割は、フロントマンです。その会社の象徴としていろんなところでセミナーをやったりとか、講演活動をして、会社を売るということ。

実務は社長以下、他の人達がやるという役割分担をしていました。

なので会長としてはフロントマンというのは1つあるのかなと思います。

最近だとヴァージングループのリチャード・ブランソン。私の好きな起業家なんですけれども、彼も会長です。

ヴァージングループの会長なんですけれども、彼はまさにフロントマンという役割です。

最近、宇宙旅行に行って、自ら自分が作った宇宙船の最初の乗客として宇宙に行ってしまうという、非常に冒険家的な気質を持った起業家です。

こういう人はまさにフロントマンとして適任ということです。

彼の名前が売れれば売れるほど、そのヴァージングループという会社が売れるわけですから、まさに会社の顔と言えるわけです。

ですので自分自身がある程度、業界内や世間的にも知られていて存在感のある人の場合には、このフロントマンという役割は非常にいいのかなと思います。

 

会長は特定事項に対する拒否権を持て

5つ目の仕事。特定事項に関する拒否権を持つということです。

これはどういうことかと言いますと、要は会長としてどこまで意思決定に関与するのかというのが悩むところなわけです。



そこで特定事項に関する拒否権だけを持つということです。

これはフェリックス・デニスというイギリスのメディア王と言われている起業家の話なんですけれども、彼も会長に勇退しました。

ただ、勇退したといっても全ての事柄、全ての決定事項を全部任せるよということではなくて、この件を決める時には自分にも拒否権があるということをちゃんと社内に知らしめていたということです。

それがこの5つです。

  1. 取締役の就任や退任
  2. 本社の移動
  3. 大きな資産の処分
  4. 大きな製品や事業のスタート
  5. ボーナスを自分たち自身に与える

この5つに関しては会長である自分に拒否権があるということを言っていました。

ですので、社長とか他の取締役の人たちは、こういう5つのことを決める時には会長にも相談しないとダメだという話です。

このような感じで業務を丸ごと全部委任するのではなくて、一部だけ委任して一部は自分でちゃんと権限を持っておくというやり方です。

これは非常に賢いやり方でなと思いました。このような感じで、全てを社長に任せるのが不安な人は、この件に関しては自分にも決定権がある、拒否権がある、という風に決めておくのもいいかなと思います。

 

会長は重要人事、重要投資にかかわる

6つ目。重要人事、重要投資のみに関わるということです。

これもさっきの話と少し少し近いんですけれども、例えばこの役職以上の人を採用する時には自分にも決める権利があるという風にして関わるということです。

あと重要投資。いくらいくら以上の投資をする時には自分にも相談してくれという風にしておくということです。

こうすると社長としても安心です。社長としても全部任せるよといっても、やった後にあれこれ言われたら堪らないわけです。

でもこういうハードルというか基準を決めておけば、これ以外のことを自分で自由にできるということになりますし、それ以外のことに関しては相談すればいいという話になるわけです。

このように役割とちゃんと決めておくというのが非常にお互いの関係性にとっていいわけです。

これは社長と会長だけの関係だけではなく、一般の部下と上司の関係にも同じことがあてはまります。

ここまでは勝手に決めていいよ、これ以上のことに関しては言ってねと決めておくということです。

 

会長へ勇退する仕組みづくりなら

というわけで、会長の仕事を6つほどご紹介しました。

もちろんこれ以外にもあるかもしれませんし、これは自分には合わないかなというのもあると思うんですけれども、1つのヒントとして今申し上げたことをご自身の仕事として定義してやっていけばいいんじゃないかなと思います。というわけで今日は会長の仕事についてご紹介しました。

なお、仕組み経営では、会長へ勇退するための会社の仕組みづくりから、会長、社長の体制づくりまで一貫したご支援をしています。詳しくは以下からご覧ください。

 

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