以下、ガーバー氏の講演(日本語訳)から経営がうまく行かない理由をご紹介していきます。
編集注:この文章は、マイケルE.ガーバーが1980年代に行った講演「ターンキー革命」を文字にお越し、日本語化したものです。事例や数字などのデータが古いことがありますのでご了承ください。
経営は5年でうまくいかなくなる
今日皆さんに紹介したい最重要テーマは、「なぜ経営がうまくいかないのか?そして、それにどう対処したらよいのか?」ということです。このテーマは私の本、『The E-Myth(はじめの一歩を踏み出そう)』で取り上げています。
実際問題として、ほとんどのビジネスが成功していません。これは事実です。
アメリカの国税庁によると、1810万もの企業がアメリカにはあるそうです。その1810万の企業のうち、100人以上の従業員を抱える企業は10万しかありません。
ということは、1810万社のうち、1800万社は中小企業ということになります。
また、毎年100万人以上の人が新しいビジネスの世界に飛び込んでいます。
「独立すれば生活も良くなるし、財産も増える、そして、上司もいなくなるぞ!」と意気込んでいます。
しかし、残念なことに、結局彼らは仕事が上司になってしまっているだけなのです。
統計や確率の話で言えば、彼らは相当分が悪いということに気づいていない。
もし彼らが自分で経営することがどんなことなのかと理解していたら、独立のために資金を使うのではなく、将来のために貯金してしまう人がほとんどでしょう。
去年立ち上がった100万もの企業のうち、80万が5周年を迎えるまでになくなります。100万のうち80万社がすぐに廃業です。皆さんの中で5年以上ビジネスを続けている方がいても、決して安堵のため息をつかないでください。というのも、生き残った残りの20%、つまり、20万の企業のうち、さらに5年後までにはその80%がまた消えているからです。最初の5年で消えなくても、次の5年で消えるでしょう。
経営がうまくいかない理由は自分自身
では、みんなが経営で失敗する原因とは一体何なのか?
経済?利率?良い人材が確保できないから?義理の父親や母親、夫や妻、姉妹や兄弟といった家族なのか?いつも決まって聞く理由は資金不足。
はっきり言いましょう。
そのどれも原因じゃありません。そして、これから先もそれは変わりありません。
経済も関係ないです。利率も違う。父親、母親、夫や妻、それも問題ではありません。市場競争でもないです。
もっとはるかに深くて重要な原因があるんです。しかも、たいていの人がその原因を直視することをためらいます。
ビジネスにおける問題とは、ビジネスのオーナー、つまり、経営者自身なのです。
実のところ、会社を立ち上げるほとんどの人は、起業家ではありません。
「起業家」ではない経営者とは?
では、ビジネスを立ち上げる人が起業家じゃなかったら、一体彼らは誰なんでしょうか?誰がビジネスを始めるのでしょう?
私の答えは、起業熱に浮かされた「職人」です。
というのも、独立する時、大工は工務店として、会計士は会計士として独立します。プログラマーは、開発会社として、弁護士は自分の弁護士事務所を開き、医者も開業医になります。グラフィックデザイナーは自分のスタジオを持つようになる。
みんなそれぞれの専門分野の技術的なことをよく理解しているから、得意分野のビジネスで経営もちゃんとできるはずだと信じきっているんです。
しかし、これは全くの誤解です。
経営がうまくいかない決定的要因
専門分野の仕事の仕方を知っているということと、その分野で成功するビジネスを創り出すということは180度違うんです。
その思い込みは致命的なミスです。これこそが、失敗するビジネスのほとんど全てに共通している原因です。
そういうビジネスのオーナーは、起業家としてビジネスを始めていないのです。
そもそもビジネスを始める理由から完全に間違っているんです。なぜ始めるか?それは上司という存在をなくしたいからです。
来る日も来る日も、誰か他の人のために毎回仕事をやっていると、技術者やエンジニアやドッグトリマーはこう思うわけです。
「なんでこいつのために仕事をしてるんだ?自分のためにやったほうがいいんじゃないか?」
「どんなバカでも経営できるだろ!こいつにできるなら俺(私)にもできるはずだよ」
こうして、上司という存在を取っ払うために、ビジネスを始めるに至ってしまう。
そして、すぐに、絶対にすべきではないことをしてしまう。ビジネスではなく、単なる「仕事」を生み出してしまうんです。
うまくいかない経営者は「ビジネス」ではなく「仕事」を生む
多くの起業家がやっていることは、単なる「仕事」です。しかも、最悪の。週7日、毎日12時間働きっぱなし。
そんな彼らには1つの先入観があります。
経営者は目の前の仕事をこなすだけではダメ
「額に汗水流す労働こそが中小企業のあるべき姿」というね。誰がそんなことを思い付いたんでしょうか?
成功するビジネスを創り出す方法は、まるでわかっていない。
だから、結果として、単に仕事を生み出してしまうだけ。「もうしたくない!」と思うようになるまで、何度も何度も仕事をこなし続けるだけ。
起業した人のほとんどが、自分が創り出した仕事にがんじがらめにされます。そんな風になる必要はないと私は訴えたい。
中小企業のほとんどに見られる問題とは、ビジネスのオーナーが仕事をこなしているという点なんです。
オーナーが仕事をやっているんです。「もうどうでもいい・・」って思うようになるまでし続けるんです。息切れ状態になるまでね。
これはとんでもない状況ですよ、皆さん。そんな風になる必要はないんです。
ちょっと自分に問いかけてみてください、皆さん。毎日何をしていますか?
電話を取ったり、ドアを開け閉めしたり、床の掃き掃除をしたりなどなど。しなきゃいけないことならどんなことでも、毎日毎日していますよね?
なぜ?
それは、誰かがしなきゃいけないから。
皆さんより上手くできる人は誰でしょうか?皆さんほど一生懸命働く人は見つかりませんか?
出社は遅いのに、帰宅するのは早い奴。人材に問題ありですか?それとも、お金に問題が?あれやこれやと色々問題が?
手に職を付けて起業することが経営がうまくいかない大きな原因
本当に問題なのは、どの中小企業のオーナーも、
自分のスキルに頼るしかないことを知りつつ、ビジネスを立ち上げてしまうということなんですよ。
「私がビジネスそのものです」と、みんなは言います。
自分自身に起業家という肩書を付けるんです。今までにそんな風に自分を思ったこともないのに。
「私がビジネスそのものです。私がいなければ、ビジネスはなくなる」と、みんなは誇らしげに言います。
けど、もうそれ以上仕事を続けられなくなったら、どうなるんでしょう?倒産です。
IBMの創業者ワトソンが実践した3つのこと
さて、ここで、IBMの創業者、トーマス・ワトソンについて話したいと思います。
IBMは間違いなく世界中の企業の中で最も収益を上げている企業の1つです。
人類の歴史を振り返ってみても、これに匹敵する前例がありません。
ここで、自分自身に問わないとだめです。「トーマスは何を知っていたんだ?」とね。
誰かがトーマスにIBM成功の秘訣を質問した時に、彼はこう答えたと言われています。
「私はほとんどの人がしないことをしました」と。
それは、3つあります。
①経営の初期段階から完成形を描いていた
まず、彼にはビジョンがあり、そのビジネスが最終的にどのような形になるのか想像できていたんです。
ビジョナリーとは、自分の頭の中で未来が見える人のことです。
トーマスには、自分の頭の中で見えていたんです。ビジネスが完成した時に、どのようになっているかが。
今まさに創ろうとしているビジネスが、未来でとてつもなく巨大なサービス企業になっている姿が見えたんです。
②ビジョンが達成したときにどう振る舞うかを考えた
いったん未来の姿が見えたなら、2つ目にすることは、社員がどう行動するかを想像することです。
トーマスには、ビジョンを達成した会社で、ダークスーツとパリッとした白シャツに身を包み、ピカピカの黒い革靴を履いた人たちが働く姿が見えました。
彼らこそが、今までにないコミュニケーションスタイルで世界を渡り歩くIBMの伝道師たちです。IBMマンという人たちなんです。
③ビジョンが達成できたかのように振る舞う
そして、最後の3つ目です。
トーマスに言わせれば、大企業というのは正しい方向へ進んでいった小企業のことなんです。
もしビジネスを正しく始め、あたかも世界で一番の大企業のように振る舞えば、もし最初からもうビジネスが確立されているかのように行動すれば、ビジネスを成功へと導くことができると、トーマスは言いました。
そして、こうも言いました。
「IBMの中で働きに行くんじゃなくて、私の頭の中で思い描いたビジョンを再現するために、IBMを作りに行くんだ」
皆さん、これこそが、世界中のビジネスの99.9%に欠けている起業家の視点です。
たいていの人はビジネスを形作るのではなく、ビジネスの中で働こうとします。
自分のビジョンを再現するためにビジネスを形作るのではなく、ビジネスの中で働こうとします。
そういう人が持っているビジョンは、本当の起業家の持つビジョンとまったく別物です。それが理由となって、この世にはビジネスの中で仕事をしている人が大勢いるんです。
この趣旨が理解できますか?非常にシンプルな点なんですが、理解するのは相当困難です。
作業をするのではなく、ビジネスを創る
トーマス・ワトソンは彼のビジネスのビジョンを、まるで自分の手の中にあるように見ることができました。
他の人の場合、たいてい彼ら自身がビジネスなんです。
自分自身をビジネスと切り離せない。毎日起きて、仕事。起きて、仕事。起きて、仕事。彼らにとって、自分たちなしで仕事を終えることなんか想像の範疇を超えています。
彼らは仕事をこなすことにすごくフォーカスしています。
一方、本当の起業家は上手く経営できるビジネスを創り出すことにフォーカスしています。
レイクロックはなぜうまくいったのか?
もうひとつ、最も素晴らしい例の一つを教えましょう。
レイ・クロックについてです。彼の才能についてお話したい。
今この部屋にいる皆さんの誰もがどんなビジネスを選んでも、彼の才能を再現可能だということをお伝えしたい。
考えてみてください。
マクドナルド兄弟が創業したマクドナルドを見つけた時、レイ・クロックは52歳でした。
彼はミルクシェイク用の機械を売り込みにマクドナルドへ行ったんです。
そして、サンバーナーディーノへ行き、マクドナルド兄弟と出会います。
マクドナルド兄弟はそこで自分たちのシステムを築き上げていて、清潔感ある制服を着てハンバーガーを来る日も来る日も作っていました。
店内には子供も多く、あの有名な黄金色のアーチ看板もありました。
これを見たレイは非常に感銘を受け、自分にフランチャイズ権をくれないかとマクドナルド兄弟を説得しにかかります。
マクドナルド兄弟は実は過去にフランチャイズに失敗したため、マクドナルドをフランチャイズ展開するのは無理だろうと思っていました。
だから、「それじゃあ、あげるよ」とレイにあげたんですね。
レイクロックはマクドナルドの未来が見えていた
レイ・クロックはイリノイ州デスプレーンズに行き、お金を持っていなかったので、まずお金を借りて、彼のマクドナルド第1号店を開きました。
それが彼のプロトタイプでした。
最初から彼には想像できていたんです。無数のマクドナルド店舗が世界中に出店していく様が。
月へ行ったらそこにもマクドナルドがあるって、彼は思っていたくらいです。
そして、マクドナルド兄弟が実行していないあることを実行しないといけないとレイは知っていました。
かつてマクドナルドの客であったレイは、マクドナルドにとって一番のお得意様は誰であるかちゃんとわかっていました。
フランチャイジーです。
今後幾千幾万にもおよぶ店舗を展開する上で、お金を稼ぐ唯一の方法はフランチャイジーを確保することでしたからね。
レイ・クロックには何かが見えました。ほとんどの人には見えない何かが。
彼にとっての商品はハンバーガーでもなく、フレンチフライでもない。
彼にとっての商品とはビジネスそのものだということに気付きました。
ですから、お客様、つまりフランチャイジーに、「そのビジネスを俺に売ってくれ!」と言わせるために、彼は真の商品であるそのビジネスを形作っていったのです。
レイクロックはうまくいく経営のやり方を仕組み化した
なので、彼にとっての競合とは、この世に存在するありとあらゆるビジネスチャンスでした。
レイ・クロックは一度もマクドナルドの中で働いたことはありません。
一度もハンバーガーやフレンチフライを作ったこともないです。皆さんがやっているようなことは一切していません。
もしマクドナルドの中で実際に働いていたら、とっくに倒産していますよ。52歳ですよ、その時点で。どうやって働けるんですか?
彼は産業革命の原則を事業開発のプロセスに応用したんです。
彼はマクドナルドの店舗が工場で何千も何万も生産されるかのように、マクドナルドのビジネスを見据えていました。
そして、彼は自分自身に問うのです。
「最初のフランチャイズ店が何度も何度も忠実にシステムを再現できるようにするためには、どうしたらいいんだろう?」と。
彼はどんな人でもフランチャイズ店を経営できるようにしたかったんです。
“誰”でも簡単に経営できるフランチャイズ店
誰でもすぐにお金を稼げるターンキーオペレーションを可能にするためには、何をすればいいのかレイは模索します。
なぜなら、フランチャイジーが求めるものとはまさにそれだからです。フランチャイジーはハンバーガービジネスを求めているんじゃありません。
フランチャイジーは、レイがまさに売ろうとしていた真の商品である「独立性」と「安定性」が得られて、成功が見込めるかぎり、どんなビジネスだろうと構いません。
レイは最大のお得意様であるフランチャイジーに、独立性と安定性という2つの商品を売っていたんです。
「私のビジネスなら、あなたたちが求めている独立と安定を提供できますよ。ただ、キーを回すだけです。見ててください。上手くいきますから」と売り込んでいたんですね。
フランチャイジーが、「じゃあ、買いましょう」と言うと、レイはこう続けるんです。
「まだ早いです。まずは学校に通わなくちゃいけません」とね。「学校??何の学校に?」とフランチャイジーが聞くと、 「ハンバーガー大学です」とレイは答えます。
「ハンバーガー学」の大学ですよ、皆さん。世界でも類を見ないビジネススクールですね。
じゃあ、ハンバーガー大学で何を学ぶんでしょうか?マクドナルドで使う機械の動かし方です。
フランチャイジーが大学に通い、機械の動かし方などを学び、卒業します。
卒業式ではレイがフランチャイジーに角帽をかぶせ、「これで秘訣がわかったね」と言うんです。
しかし、ここで彼は卒業生に対しある警告をします。「絶対にやり方を変えてはダメですよ。もし変えたら、ビジネスを取り上げますからね」 そのやり方こそが金の卵を生むガチョウなんです。そのやり方で上手くいくんだから、変える必要はないわけです。
フランチャイジーは誓いを立て、その場を歩き去ります。経営のやり方は変えません。
もし変えたフランチャイジーがいたら、レイはすぐにクビにしました。
AT&Tが「システムこそがソリューション」と言っていますが、レイ・クロックはそれよりもだいぶ前から同じことを言っているんです。「システムこそがソリューション」 人でもないですし、商品でもありません。
仕組み化こそが経営がうまくいく秘訣
レイ・クロック、トーマス・ワトソン、ウォルト・ディズニー、スーパーカッツ(格安美容室)の創業者。
彼らはみんな共通のことを知っていました。
消費者が他の何よりも求めていることです。世の中の素晴らしいビジネスに欠かせない、世の中の素晴らしい起業家が重視する要素。
これを一言で表すと、「コントロール」です。
皆さんから何かを買おうとやって来るお客様が求めているのは、自分自身が購買体験に対するコントロールを持っているということなんです。
もしお客様が求めているものを一番に提供し、それをその後も毎回忠実に再現できれば、お客様は皆さんの店に来店し続けます。レイ・クロックはそういうビジネスに身をおいていました。
そして、レイは自分が倒産するかどうかはフランチャイジーの出来次第ということに気づくのです。
もしフランチャイジーが職人の気質で、とにかく仕事自体にフォーカスしていたら、すぐにマクドナルドのビジネスは崩壊するだろうと彼は思っていました。
レイ・クロックにとって、マクドナルドはレストランビジネスではなかったんです。
ある意味、燃料ビジネスでした。
「おーい、満タンにしてくれ!」 「かしこまりました」「おーい、満タンにしてくれ!」 「かしこまりました」 毎回全く同じやり方でお客様の要求を満たします。
綺麗で整った、光り輝くカラフルな環境で、毎回全く同じ方法で店舗を運営できるのは彼の能力でした。
これが、他のどのレストランにもない、マクドナルドの大きな独自性を生み出すきっかけになるんです。
では、この方法で上手くいったんでしょうか?答えは一目瞭然ですよね。
今日、マクドナルドは同業ビジネスの中で最大の企業であり、世界で最大のレストランです。
今日、マクドナルドは世界で最大の食料供給会社です。
今日、マクドナルドはアメリカだけで毎日2200万人もの人の胃袋を満たしています。
そして、今日、マクドナルドはアメリカでナンバーワンの成長株です。ナンバーワンです。
会社が立ち上がったのは1952年です。今では来る日も来る日も何百万、何千万という人がマクドナルドで食事をしているんです。店舗1つにつき160万ドルもの収益を上げ、全米で1万店もあるんです。
その店舗の一つひとつが全く同じ方法で全く同じ商品を提供し、全く同じ成果を上げています。
マクドナルドに一番近いとされる競合相手でさえ、マクドナルドの事業規模の半分しかありません。
17時間ごとに1店、新たな店舗がオープンしています。考えてみてください、
皆さん。ほとんどの人が、成功を次々に生み出すこのとてつもないマシーンに気付いていないんです。
最低賃金で働く若者の手で、年間売上高が毎年300%成長しているんですよ。店を仕切っているのは、会社で管理職についているプロじゃないんです。
レイ・クロックは仕組みこそがソリューションだと悟りました。
中小企業のオーナーの大半は、自分自身のスキルに基づいてビジネスを創らないといけない、という間違った思い込みをしています。
もしその方法でビジネスを立ち上げたら、自分が仕事ができなくなった瞬間にビジネスは終焉を迎えます。
システムこそがソリューションです。レイ・クロックが何十年も前に理解していたことです。
自分のビジネスをシステムとして認識し始めると、すぐに他とは一線を画す方法でそのビジネスを成長させることができます。
(編集注)レイクロックの成功の秘訣についてはコチラに詳しく解説:
”うまくいく経営の型”を作る
レイクロックのエピソードで、私が皆さんに伝えたいメッセージは何でしょうか?
非常にシンプルです。
まるで自分のビジネスをこれから5000回複製するかのように、自分のビジネスを形作りに職場へ行くことを提案します。
もう一度言いましょう、私の提案はこうです。
まるで自分のビジネスをこれから5000回複製するかのように、自分のビジネスを形作りに職場へ行くことです。
自分のビジネスの中で毎日ただ仕事をこなしに行くのではなく、あたかも完璧なビジネスのプロトタイプを何度も何度も作るかのように職場へ行くんです。
どんな人の手に渡しても大丈夫なプロトタイプを作り上げるんです。
普通の人でもうまくいく仕組みを創る
「ということは、バカを雇えってことですか?」と思っているかもしれませんが、違います。
私が言いたいのは、普通の人を活用して、素晴らしい成果を生み出すようなシステムを作り上げれば、専門技術者を雇う必要はないということなんです。これがまさに成功しているビジネス全てに共通する秘訣です、
もし自分のビジネスを5000回複製されるプロトタイプとして見始めたら、どうなるかわかりますか?
今現在、皆さんは問題に直面すると、自分でそれを解決しなければなりませんよね?
最終的な成果がどうなるのか自分で考えなければならない。
ここで問題なのは、たいていの人は考えていないということです。ただ仕事に行くだけなんです。じゃあ、どうすればいいのか?今日が皆さんの立ち上げたビジネスの最初の日だとちょっと想像してみましょう。
皆さんは上手くいくシステムを作り上げます。働く人じゃなくてシステムです。
皆さんが最終的に創り出すものは、私が「ターンキーオペレーション(うまくいく経営の型)」と呼んでいるものです。
ターンキーオペレーション(うまくいく経営の型)の4つの構成レベル
ターンキーオペレーションとは何なのか?ターンキーオペレーションは、完全に予測可能な方法で機能するシステムのことです。
そのシステムの構成要素は、4つのレベルに分かれています。それについて説明いたしましょう。
1つ目のレベル、基礎レベルですが、これは「独自のやり方」です。
成功している企業には独自のビジネス手法があるものです。
フェデックスにはフェデックスの。マクドナルドにはマクドナルドの。IBMにはIBMの。ディズニーにはディズニーの独自のやり方があります。
だから、競合他社との差別化が可能なんです。他には独自の方法がないんですから。
2つ目の要素は、最初の要素である独自のビジネス手法を遂行する人材の確保です。
有益な人を募集し、採用し、訓練することです。成功している企業は全てこのような人材確保のシステムを確立しています。
そして、3番目の要素は、最初の2つの要素、つまり、独自のビジネス手法と人材の管理です。
管理システムの構築です。
働く人がちゃんとその会社に適したビジネス手法を遂行しているかどうか、穴を見つけるためのシステムです。
世界で最も成功している企業はより良い方法を見つけることに常にフォーカスしていますからね。
私はこういった企業を「ベスト・ウェイ・カンパニー」と呼びます。他にさらに良い方法がないかどうか絶えず探しています。
何のために?
ビジネスを遂行するために。
なぜ?
他と差別化を図りたいから。
どうやって?
他では得ることのできない体験をお客様に与えることによってです。
例えば、「ディズニーランドについて何を思い出しますか?」と人に聞いたら、その清潔さについて言うんじゃないでしょうか?
ミッキーとかのことを話すんじゃなくて、どれだけ綺麗だったかについて話すんですよ。でも、一体なぜそこに着目するんでしょうか?
なぜなら、他の場所はとても汚いからです。
じゃあ、ディズニーはどうやってその清潔さを保っているのか?
なんと、ディズニーランドでは毎晩、全体をスチームクリーナーで掃除しています。しかも、35年以上にわたってそれを続けています。
だから、いつ行ってもあんなに綺麗なんですよ。
でも、なぜそこまでするんでしょう?
それは、ディズニーランドはいつも綺麗に整っているというイメージを消費者の心に植え付けたいからなんです。
だから、一瞬にして差別化が実行されます。うちらのところは綺麗だけど、他はみんな汚い、と。
そして、最後となる4番目の要素についてお話したいと思います。
私はそれを「事業開発システム」と呼んでいます。
絶えず革新をし続け、成果などを数量化し、ビジネスの組織化を図るプロセスです。
より良い方法を見つけるのが革新。
どれほどの成功が見込めるか見極めるための数量化。
そして、毎回確実に同じ方法で上手くいくようにするための組織化。
偉大なビジネスというのは偶然には起こりません。
偉大な起業家は素晴らしい人材のスキルに頼ってビジネスを立ち上げると、いつか困ったことになるってわかっています。
なぜなら、自力でビジネスを行わなければならなくなるからです。
求めるべきは世の中にいる普通の人々です。素晴らしい企業で成長できるチャンスを求めている人たち。
そこで、そういった人たちがシステムを活用して自分自身のキャリアを築けるよう、私たちが場所を提供するんです。
誰のためか?それは、株主のためであり、起業家のためであり、会社の経営陣のためであり、社員のためであり、お客様のためであり、そして、世界のためにです。
うまくいく経営の型が出来れば、選択肢ができる
今皆さんがフォーカスすべきことはターンキーオペレーションを確立することです。これが完了したら、皆さんには選択肢があります。
1つは、フランチャイズにすることです。
そうすれば、ビジネスに関わる問題を全て解決でき、瞬時に世間での注目も高まるでしょう。
例えば、他とは全く違うビデオ制作会社を創ることができるでしょう。他とは全く違う小さなコンサルティング会社だとか。他とは全く違う証券会社や、他とは全く違う請負会社でもいいです。
どんなビジネスでもOKです。
自動車修理会社だったら、唯一無二の自動車修理会社になれます。
こういったことが可能なのは、皆さんがビジネスを形作る過程を経ているからです。
ビジネスをより良くすることができるんです。「より良い」とは誰によって定義されているか?お客様です。お客様が、「これあなたが全部やっているんですか?」と、驚きの眼差しで聞いてくるに違いないでしょう。そして、最終的にはフランチャイズにすればいいんです。
もしフランチャイズにしたくなければ、誰か経営者を雇うことです。
経営者から毎週日曜に電話で報告を受ければいいんです。
経営者があなたに代わってシステムを動かしていきますから。
そして、もし皆さんが我慢強い人だったら、システムを築き上げた後、自分もそこで働きに行けばいいでしょう。
以前と違うのは、1/3の労力で10倍の成果を出せるという点です。
なぜそれが可能なのか?システムを築き上げ、その中で働いているからです。
それこそが皆さん一人ひとりに必要な手段なんです。こういったシステムを持っている人は実に少ない。
うまくいく経営の型を作るステップ
さて、成功するビジネスを創り上げるプロセスに必要な7つのステップを紹介します。
①人生で何を成し遂げたいのかを明確化する
何を求めているのか?何がほしいのか?自分のビジネスためじゃないです。
私は「主要な目的」と呼んでいますが、人生で何を成し遂げたいのかということです。
人生での目標を描けなかったら、達成できません。
②ビジネスのビジョンを描く
その目標が描けたら、第2のステップに来るのがビジネスなんです。
ビジネスとは目標達成の手段であり、それ自体が目標ではありません。
ビジネスとはそのオーナーや社員など関わる人々にもっと活力を与えてくれるような存在であるべきです。
そうじゃなかったら、誰がビジネスなんて始めるもんですか。時間の無駄ですし、バカげていますよ。
考えてみてください。
あるアイデアを基に独立し、とても興奮していて、「週に462時間働けるぞ!もう待てない!」って喜んで叫ぶ人がいますか?
頭からビジネスのことが離れなくて、寝ても覚めてもビジネスの事ばかり話しているんですよ?ビジネスが全て。
でも、結局、何も上手くいかないというオチになる。賢い戦略とは、上手くいくビジネスをイメージし、自分にもっと活力を与えることです。
総収益、売上総利益、税引前当期純利益などはどの程度なのか?
お客様はどういった人たちなのか?
ビジネスの規模はどうなるのか?
地元でやるのか、全国に広げるのか、それとも、海外にも展開するのか?
ビジネスを創り上げた時、そのビジネスがどんな感じになっているかイメージするんです。
ちょうど、先ほどお話したトーマス・ワトソンやレイ・クロックが持っていたビジョンのように。
優秀な起業家は皆ビジネスを創り上げた時の絵が見えています。言わば、これから皆さんが建てようとしている家の設計図です。どんな風になるのかさえもわからなかったら、どうやって始めるんですか?
③組織図を描く
3番目のステップ。
組織図です。どの中小企業にも組織図が必要です。
「組織図なんてなんで必要なんだ?みんなやることはわかってる」って言われそうですが、中小企業における問題は「機能」ではなく、「人」に基づいてビジネスを創り上げている点です。
機能ではなく、人に基づいてビジネスを立ち上げるとどうなるでしょうか?その人が去ったら、ビジネスが崩壊するんです。
「なんてこった!メアリーが去ってしまった。これからどうしよう?メアリーに代わる人を見つけなくちゃ。でも、メアリーは何をしていたんだっけ・・?全部の仕事だったー!」 こんなことになりかねませんよ。
そうなったら、こういう広告を出すんです。
「なんでもこなせる人募集!マーケティングと事務のエキスパート。それと、私のシャツを洗濯してくれるエキスパート」ってね。
こんな広告には誰も応募しないですよね。
そして、メアリーに代わって業務する人を雇うとなると、17人も必要だってことに気づくんです。
組織図を用いて、ビジネスの機能の観点から考えなければなりません。
皆さんのビジネスの中にはどういった職種があるのかしっかりと把握しなければなりません。
マーケティングもあれば営業もありますし、経理だってあります。そういった職種に就く人のパフォーマンスを測る基準は何でしょうか?
④ビジネスの仕組みを思い描く
第4のステップは管理システムです。ビジネスを運営するために必須の仕組みを考えます。
どのようにビジネスを管理していくかイメージしてください。
そして、マネージャーにその管理方法を教える必要があります。
⑤人材育成の仕組み
第5のステップ。
これは、人材育成です。「良い人が見つからないよ。良い人を雇う余裕なんかないよ」と言う人をよく見かけます。
しかし、それは彼らの問題ではありません。
ちょうど資本金の問題と同じですよ。お金はお金を生み出しません。頭がお金を生み出すんです。
間違ったビジネスで、しかも間違った方法で頭を使っている人が多い。
さらに、頭が生み出すものはお金だけじゃありません。
働く人の所属意識を高める環境を作るのも頭なんです。
ですから、皆さんに必要なのはとてつもなく優秀な人材を見つけることではなく、普通の人を魅了する素晴らしいビジネスを創り上げ、その普通の人が優秀な人材に育つようにすることなんです。
皆さんが築くシステムにおいて、人材育成は非常に大切です。
⑥集客の仕組み
6番目のステップはマーケティング(集客の仕組み)。
お客様は誰なのか?デモグラフィックデータとサイコグラフィックデータがあります。
デモグラフィックとは、誰がその商品を買うのかという市場の現実を見極めるための科学です。
一方、サイコグラフィックは市場で認識されている現実を把握するための科学です。
なぜ人々はその商品を買うのかということについてです。
誰が皆さんの商品を買うのか?なぜその商品を買うのか?皆さんは消費者の立場に立って、この2点に気を配らなければいけません。
⑦仕組みの構築
そして、最後に来るのがシステムの構築です。
ハードシステム、ソフトシステム、情報システムの3つがあります。
ハードシステムは私たちの周りにある物全てです。
例えば、床や壁の色、マクドナルドの黄金色のアーチ、フェデックスのトラックの色がそうです。
デザイン全体についてです。
自分のビジネスにおける視覚的なデザインを隅々まで理解し、お客様が一発で認識できるようにそれを統一しなければなりません。
次にソフトシステム。何かというと、私たちが使う言葉です。
お客様が電話してきた時、何と言って答えますか?
セールスマンが何か商品を売り込む時、どういう言葉を使いますか?
ソフトシステムは全て音に関係しているんです。言葉という音に。そして、コミュニケーションの中身にも。
最後に、情報システムについてですが、平たく言えば、これはどうやって数えるかということです。
株式資本利益率や投資利益率はいくらだ?これやあれは何だ、いくらだ?
つまり、数字について知るということですね。
なぜこれが必要かと言うと、さらなる革新を起こすために、数量化によって自分のビジネスの影響力を測るためです。
経営がうまくいかない理由は、経営者が間違った仕事をしているから
さて、私が皆さんに本当にお伝えしたい法則はとてもシンプルです。
中小企業経営の大部分が失敗する理由は、オーナー自らがすべきでない仕事をするからなんです。
オーナーが身を引いても上手く運営可能なビジネスを思い描き、そのビジネスを形作るために仕事へ向かい、自分なりのシステムを築いたなら、自分の手の中に全体像が収まり、クリアに見えます。
自分自身とビジネスを切り離して見ることができるんです。
皆さんがビジネスの一部になるんじゃなくて。
それができたら、皆さんの人生は一変します。それができたら、皆さんは保険の販売員になる必要はなくなります。
保険がひとりでに売れて、皆さんはそれを管理するだけでいいのですから。
「じゃあ、何のビジネスを始めればいいの?」と思っているかもしれませんが、それは皆さんが決めることです。
そして、お客様が何を求めているかを見極めてください。それが起業家の仕事です。
皆さんが真実だと思っていることじゃなくて、お客様が必要だと認識していることを把握してください。理解し、求め、実行したら、全てが変わるでしょう。
そして、未来は皆さんのものになります。
以上です。ありがとうございました。
編集注:この文章は、マイケルE.ガーバーが1980年代に行った講演「ターンキー革命」を文字にお越し、日本語化したものです。事例や数字などのデータが古いことがありますのでご了承ください。
うまくいく経営の型を作るなら、仕組み経営
以上、マイケルガーバー氏の講演内容をご紹介しました。仕組み経営では、彼の教えを基に、うまくいく経営の型作りをご支援しています。詳しくは以下からご覧ください。