同族経営はなぜ3代で潰れるのか?

同族経営はなぜ3代で潰れるのか?理由と回避策まとめ



同族経営はなぜ3代で潰れるのか?

「同族経営はなぜ3代で潰れるのか?」について紹介します。

最近、武井一喜氏の著作「同族経営はなぜ3代でつぶれるのか?」を読んだので、本から学んだ同族経営/ファミリービジネスに関する知識を共有したいと思います。

著者の武井氏は自身が寝具製造を行う同族企業を4代目として父から継ぎましたが、彼が会社を継承してから1年もせずに会社は潰れてしまいました。

彼はその経験から同族経営/ファミリービジネスについてアメリカで学び、ファミリービジネス専門のコンサルタントとして多くの同族企業にアドバイジングを行ってきました。

本記事では、本の内容を基に同族経営が3代で潰れる理由と、倒産を回避して同族企業を長続きさせるためにはどのようにすべきなのかを紹介していきます。

もちろん本にはより多くの情報が詳しく載っているため、読むことをおすすめしますが、今回はその中から一部を拾って解説することとします。

ぜひ最後までご覧ください!

同族経営が3代で潰れる理由

「売り家と唐様で書く3代目」と言うことわざがあるように3代目で同族経営は終わりやすいと言うのは昔から変わりません。

さらに、「3代経つと手元にはシャツ1枚」(アメリカ)、「3代目は祖先の田んぼに戻って野良仕事」(中国)といった言葉があるようにこの問題は世界共通なのです。

なぜ3代目で潰れやすいのか?

ロックフェラー家や多くの家族の資産管理に関わってきた弁護士のジェームズ・ヒューズ氏によると、3代と言うのはとても自然の理にかなっているそうです。

と言うのも、サイコロを何度も振っていくと出る目の平均値は1〜6の目の平均3.5に近づいていくように、平均値5を割った時に同族会社が潰れるとすると、創業者が才能と努力で6を出し、2代目が創業者ほど能力はないが5を出し、平均が5.5になるとします。しかし、3代目が人並みの結果の3.5を次に出してしまうとその時点で平均が5を下回り、会社は潰れることとなります。

つまり、単純に回数を増やせば平均値が下がっていき、潰れやすくなると言うことです。

では、同族企業を倒産に追いやる原因は一体どこにあるのでしょうか?

武井氏によると、同族経営においては非同族経営と違うマネジメントが必要になります。

単にビジネスを成長させるだけでなく、健全なファミリーを育てる」「ファミリービジネスのかかわりを管理することが大切だと言います。

そして倒産する同族企業ではこれらがうまくできず、”不健全”なファミリービジネスが築かれているため潰れてしまうのです。

本書の中では、”不健全”な同族企業として以下の11の特徴が挙げられていました。

  1. コミュニケーション能力が低くて摩擦を解消できない
  2. ファミリー間の信頼度が低い
  3. ファミリーの目標、価値観が不明確
  4. ファミリーメンバーの役割と責任が不明瞭
  5. ビジネスの方向性も不明瞭
  6. ビジネスに十分な経験がなく、ファミリーが全てを行おうとしている
  7. 事業承継について考えていない
  8. ファミリーメンバーと非ファミリーメンバー間の協力関係が弱い
  9. 機能的な取締役会がない
  10. アドバイスや重要な問題を解決する助けを求める相手がいない
  11. 仕事とファミリーの境界線が不明瞭

これらの特徴を見てもわかる通り、同族企業ではビジネスに関する問題だけでなく同族、ファミリーに関する問題を抱えている場合がとても多いのです。

では、ファミリーに関する問題がなぜビジネスに結びついてしまうのでしょうか?

同族経営の三円モデル

上述した同族企業の問題は以下のような同族経営独特の基本的構造、三円モデルが原因となっています。

同族経営の三円モデル

同族経営は「ファミリー」「ビジネス」「オーナーシップ」の3つの要素で成り立ち、それぞれの円の重なりの部分で役割、利害関係や思惑が異なります。

非同族企業であれば円がオーナーシップとビジネスの2つですが、同族経営となると、そこにファミリーの円が加わるため、システムがより複雑となり、その複雑さは会社の強さとも弱さともなり得るのです。



例えば、2代目のオーナー社長の太郎がいたとすると彼はGの円に入ります。

一方太郎の弟・次郎はよその会社で働いているけれどその会社の株を持っているとしたら、彼はDの円にいることになります。

この時次郎の妻・マイコはBの位置にいることになり、もしマイコが株の配当増しを太郎に頼むよう、次郎にプレッシャーをかけた場合、間接的にマイコは会社全体の財務に影響を及ぼすこととなり、必然的にA・F・Cと言った関係者に何らかの利害を与えることとなります。

もしこれが非同族企業である場合はBの円自体が存在しないので、このような利害関係は生じませんが、同族経営の場合はそれぞれのメンバーがより影響を与えられ、与えやすいのです。

そのため、ファミリーの問題がビジネスにも株主にも結びついてしまうと言う訳です。

では、このような複雑な構造の中強みを活かし、同族経営を成功に導くにはどうしたらいいのでしょうか?

 

同族経営の成功の秘訣①

このような三円モデルの中で、成功の秘訣となるのが、それぞれの境界線のマネジメントです。

三円モデルのうち、ビジネスの円は成果、つまり利益が大切な世界です。

一方、ファミリーの円では平等愛情親孝行などが重要となります。

両者は相反する価値観で形成されていますが、互いに重なり合っています。

そのため、この重なりをどうコントロールするかによって同族経営全体の強みとも、弱みともなるのです。

これを本の中で武田氏は”境界線のマネジメント”と呼んでいます。

成功する同族企業の経営者や同族メンバーはこのファミリーとビジネスの境界線を上手に扱い、ファミリーの問題はファミリーの価値観で解決し、ビジネスの問題はビジネスの価値観で解決する。

と言う様に、ビジネスとファミリーの帽子をうまくかぶり分けているのです。

2つの帽子を同時にかぶったり、間違った方の帽子をかぶると同族企業の弱みが出やすくなってしまいます。

しかしここで注意しなくてはいけないのが、ファミリーとビジネスを全く別物と考えて、非同族企業と同じ経営スタイルを同族企業に持ち込んでしまうのも間違いであるということです。

米国の同族経営に関する研究でもこのことがしっかりと指摘されています。

強い同族経営は、社員を家族の様に扱い、育てるとい文化を持っていますし、それを支えるオーナーファミリーは、ビジネスを発展させ、継続させようと言う強い意思を持っています。

かといって、両者を完全に混同してしまうのではなく、両者の良い面をバランスよく取り入れながらファミリーとビジネスの境界線のマネジメントを行なっていくのが良いでしょう。

同族経営の成功の秘訣②

境界線のマネジメントの他に、同族経営の成功に欠かせないのが、冒頭にも述べた健全なファミリーを育てることです。

健全なファミリーの育成には多くの要素が関わってきますが、第一歩としてやるべきは、自分自身とファミリーメンバーのコミュニケーション能力を高めることです。

というのも、一般のビジネスに要求されるコミュニケーション能力よりも同族経営に要求されるコミュニケーション能力の方がレベルが高いからです。

同族経営においては非同族経営に比べて、コミュニケーションを取る相手の数、そして利害関係を調整する相手の数が増えます。また、世代を重ねるごとにその数はどんどん増えていきます。

故に、個人の意思を尊重しながら集団としての意思決定ができる様な能力を高める努力をする必要があるのです。

また、ファミリー内でのコミュニケーションとは色々な意味で外部とのコミュニケーションよりも難しくなります。



その理由は、ファミリー内では議論となっている直接の話題だけでなく、家族の一員として持っている前提や過去の経験、序列、満たされない期待感などが会話に付きまとい、問題解決の邪魔をするからです。

こういったファミリー内特有のコミュニケーション不全は、問題を解決から遠のき、いずれ蓄積された問題や争いが取り返しのつかない結果となって経営に露呈してきます。

これを防ぐには、コミュニケーション能力を向上させ、ファミリー内のコミュニケーションを健全に保つことがとても大切なのです。

コミュニケーション能力を高めるには?

ファミリーのコミュニケーション能力を高めるために、本の中では「ファミリー力アップの4段階法」が紹介されていました。

メンバー1人の能力だけでなく、ファミリー全体としての能力(ファミリー力)を高める方法です。

まず、ファミリー力は困難を乗り越え、チャンスを掴む集団としての技術「関係のスキル」と、家族が持つ文化やモラルといった共通の概念である「関係のモード」の2つの要素で成り立ちます。

この2つの要素は互いに関連し、スキルが高まるとモードも肯定的なものになり、モードが肯定的なものになるとスキルも高まります。

関係のスキルアップには、以下の5つの分野の能力を高めることが求められます。

  1. 相互理解能力:いかにうまく話し、聴き、理解できるか
  2. 受容力:意見や考えの違いを受け止める能力
  3. 対立解消力:対立を早いうちにん解決する能力
  4. 計画力:将来に対しての方針・計画を立て、実行する能力
  5. 組織力:ファミリーや他の人との関係に積極的に参加しながら、価値観や自信を肯定的に保つ能力/チームワーク力

これら5つの項目で高いか低いかを評価してみましょう。

一方関係のモードに関しては、家族に対して悲観的な先入観を持って、期待しない・信頼しないという関係を持っている場合はモードが否定的になってしまい、経営にいい結果も現れません。

成功している同族企業では、関係のモードが肯定的で相互の期待と信頼感が高く、生産的な関係が築かれています。

関係のモードは以下の5つの観点で計ることができます。

  1. 相互信頼度:ファミリーメンバー間の信頼度が高いか低いか
  2. 自信度:自分達に自信を持ち、ファミリーの関係に楽観的か悲観的か
  3. 敬意:互いに敬意を持っているのか、軽蔑し合っているのか
  4. 情報・心情の共有:情報や心情をオープンに共有しているか、それとも秘密が多いのか
  5. 幸福感:満足感や幸福感を持っているのか、それとも互いに奪い合い、不足感があるのか

これら5つの観点に置いて、肯定的/否定的で評価してみてください。

以上の2つの要素を組み合わせて表にすると、「ファミリー力アップの4段階法」でファミリーを評価することができるようになります。

4段階のファミリー力

第4段階にあるファミリーは幸福度が高く、多くの時間や労力を喜んでビジネスのために費やします。

このような同族企業では非同族社員の創業一家に対する信頼や尊敬も厚くなる傾向にあります。

逆に、第1段階にある同族企業ではファミリーへの満足度は薄く、関係維持のための時間・労力・経済的コストがかかり、ファミリー間の不信感が非ファミリー社員を混乱させます。

しかし、しっかりと意志を持って改善に取り組めば必ず上の段階へ上がり、より良い会社を作っていくことができるでしょう。

まずは関係のスキルと関係のモードを評価し、自分のファミリーがどの段階にいるのかを把握することから始めましょう。

本には、評価するためのより詳しい質問表などが掲載されていたので参考にすることをお勧めします。

まとめ

いかがだったでしょうか?

2記事に渡って、同族経営はなぜ3代で潰れるのか、そしてその回避法2つを紹介しました。

同族経営はその特異な構造からファミリーの問題が会社経営に影響を及ぼすこと、構造の強みを引き出すにはそれぞれの境界線のマネジメントが必要なこと、そして核となるファミリーを健全に保つにはコミュニケーション能力を高めることが大切であることがわかりました。

実際の書籍にはもっと多くの同族経営成功の方法が書かれています。



もっと知りたい方は是非読んでみてください。

なお、仕組み経営では、家族経営の事業承継を円滑に行い、会社の維持と成長を実現するための仕組みづくりをご支援しています。詳しくは以下からご覧ください。

>仕組み化ガイドブック:企業は人なりは嘘?

仕組み化ガイドブック:企業は人なりは嘘?

人依存の経営スタイルから脱却し、仕組みで成長する会社するための「仕組み化ガイドブック」をプレゼント中。

CTR IMG