ヒーローズジャーニーのテンプレートと経営に役立てる書き方。



清水直樹
ヒーローズジャーニーとは、人を魅了する物語を創るためのテンプレートです。ここではヒーローズジャーニーのテンプレートや経営に活かすための書き方、事例をご紹介していきます。

 

ヒーローズジャーニー(英雄の旅)とは?

ヒーローズジャーニー
ヒーローズジャーニーとは、英雄が平凡な世界から冒険の旅に出て、戻ってくるまでを描いた物語のパターンです。ジョセフ・キャンベルの著書『千の顔を持つ英雄』で初めて一般化されました。ヒーローズジャーニーは、世界中の様々な文化圏の神話、伝説、物語に見ることができます。ヒーローズジャーニーはいくつかの段階から成り、それぞれが英雄の変容のステップを表しています。

ヒーローズジャーニーの概要

旅は、主人公の平凡な世界から始まり、そこで普通の生活を送っているうちに、冒険への呼びかけが提示されます。この冒険への呼びかけは、主人公が旅に出るきっかけとなるもので、最初はそれを拒否することもあります。しかし、やがて自分を導いてくれる師匠に出会い、未知の世界への入り口を越えていきます。
旅の途中、主人公は困難に直面し、味方を得て、敵に遭遇します。やがて核となる葛藤や問題に直面し、最高の試練を迎えます。これが物語のクライマックスであり、主人公は最大の試練に直面し、その行動が旅の結末を決定します。この後、主人公は報酬を受け取りますが、それは価値のある物であったり、愛する人への新たな感謝であったり、性格の変化であったりします。
しかし旅はまだ終わりではなく、主人公は普通の世界に戻らなければなりません。帰路、彼らは変化し、知識、経験、または偉大な価値のある何かであるエリクサー(武器)を持ちかえります。旅は、主人公が普通の世界に戻ることで終わりますが、彼らはもはや以前と同じではありません。彼らは変身を遂げ、新たな方法で困難に立ち向かうことができるようになります。
ヒーローズ・ジャーニーは、主人公の変身と成長の本質を捉えた普遍的なパターンです。人間の経験を物語る不朽の物語であり、さまざまな文化圏の無数の物語に見ることができます。

ヒーローズジャーニーのテンプレートと例

ではより具体的にヒーローズジャーニーのテンプレートを見ていきましょう。以下がヒーローズジャーニーのステップと、ターミネーター2での例です。
​※物語によっては、すべてのステップが含まれていなかったり、順序が異なる場合があります。なので、厳密に従う必要はありません。
ステップ 概要 ターミネーター2の例
1.普通の世界 冒険が始まる前の主人公の通常の生活 ジョンはロサンゼルスに住む問題を抱えた若者です。
2.冒険への呼びかけ 主人公にチャレンジまたはクエストが提示されます ジョンを殺すためのT-1000ターミネーターが到着します。
3. 呼びかけの拒否 主人公は最初は冒険への呼びかけに抵抗します ジョンは当初、将来についてのT-800の主張に抵抗します。
4.メンターとの出会い 主人公は賢明で経験豊富なガイドに会います T-800はジョンのメンター兼プロテクターになります。
5.境界を越える 主人公は旅にコミットし、おなじみの世界を去ります ジョン、サラ、T-800は精神病院から脱出し、審判の日を止める任務に乗り出します。
6.試練、味方、敵 主人公は挑戦に直面し、味方と敵に会います ジョンは様々な課題に直面し、サラとT-800と同盟を結ぶと同時に、T-1000に立ち向かいます。
7. 最奥の洞窟へのアプローチ 主人公は中心的な対立や問題に近づきます ジョン、サラ、T-800はサイバーダインシステムを破壊し、審判の日を防ぐ準備をします。
8.最高の試練 主人公は危機や闘争の重要な瞬間に直面しています ジョンはT-1000との最終決戦に直面し、サイバーダインシステムの破壊に重要な役割を果たします。
9. 報酬 主人公は旅から大きな価値のあるものを手に入れます ジョンは審判の日をうまく防ぎ、サラとT-800との関係を新たなに、感謝の気持ちを獲得します。
10.帰り道 主人公は帰りの旅を始めます ジョン、サラ、T-800が故郷への旅を始めます。
11.復活 主人公は旅によって変身します ジョンは変容を遂げ、より強く、より自信のあるリーダーになります。
12.帰還 主人公は普通の世界に価値のあるものを取り戻します ジョンは、新たな目的意識を持って人生に戻ります。

ヒーローズジャーニーとアーキタイプ(元型)

アーキタイプとヒーローズ・ジャーニーは、相互依存の関係にあります。ヒーローズ・ジャーニーは、賢者の老人、師匠、悩める乙女など、アーキタイプの経験するための構造を提供しています。
アーキタイプ(元型)は、スイスの心理学者カール・ユングの用いた心理学用語です。人間の心の深層にあって遺伝的に伝わり、集合的無意識を作り上げている心像の基本的な型で、普遍的な元型には「母」「再生」「精神」「トリックスター」の四つがあるとされています。
アーキタイプとヒーローズ・ジャーニーを理解することで、私たちの人生や他の人々の人生を形成する物語、経験、動機についてより深く理解することができるようになります。
キャロル・S・ピアソン著「英雄の旅」には、12種類のアーキタイプが紹介され、いまの自身のアーキタイプを知ることで、自分自身の内面にある英雄を目覚めさせ、旅に乗り出す方法が書かれています。よろしければそちらもご参照ください。

ヒーローズジャーニーで社員を魅了する方法

ヒーローズジャーニーは物語を書くためのテンプレートですが、ビジネスにも活用できます。特に、経営者等組織リーダーの方は、社員や顧客に何かを伝える際、ヒーローズジャーニーを知っておくと非常に役立ちます。
​私の師匠であり、「はじめの一歩を踏み出そう」著者マイケルE.ガーバー氏は、「起業家」の人格の役割を4つに定義しました。
  • ドリーマー
  • シンカー
  • ストーリーテラー
  • リーダー

このうち、ストーリーテラーはその名のとおり、物語を語る役割です。なんの物語かと言いますと、自分の夢やビジョンについての物語です。

通常、夢やビジョンは、経営者の頭の中に、非論理的なものとして存在します。論理的でないがために、その内容や大切さを社員に伝えようとしても、なかなか伝わらない。

そこで登場するのがストーリーです。ガーバー氏は、ストーリーテラーの役割とは、自分の想いを、子供にもわかるように伝えることだ、と言っています。

自分がどのようにして夢やビジョンを発見したのか?なぜそれが大切なのか?を物語として伝える、ということです。

物語には、事実をエンターテインメントにする力があります。エンターテインメントにすることで、人が興味を持ってくれ、記憶に残りやすくなります。

あらゆる宗教の聖典が物語で創られているのは偶然ではありませんし、我が国の歴史書である古事記も物語になっていますね。

あれが年号と出来事の箇条書きだったら、誰も覚えられません。

まず天之御中主神が成り、伊耶那岐神&伊耶那美神から天照大御神が生まれ・・・

というように物語で書かれているので、まだ覚えられるわけです(古事記の場合、神様が多くてそれでも覚えにくいというのもありますが)。

創業者を主人公に、ヒーローズジャーニーを書く

何代と続く老舗企業では、それが創業ストーリーとして語られ続け、会社のDNAとして今に生き続けています。

なぜその事業が生まれたのか?なぜその商品が生まれたのか?どのような想いを大切にしてきたのか?

それらを物語として語り継ぐことで、価値観が醸成され、会社の文化が出来上がっていきます。

人間だれしも、その人の生い立ちからの物語を全て知れば、その人に対して親近感や好意を抱くものです。

同じように、社員の方々が会社の生い立ちを知ることで、会社を好きになっていきます。

ガーバー氏自身、創業時の物語を40年間、ずっと語り続けてきました。

私も何度も聞かされました。もう忘れられないほど頭に残っています。

なので、あなたの夢やビジョンを物語として残していくことに挑戦していただくと良いと思います。

もしあなたが二代目、三代目などの後継社長で、創業者の創業ストーリーが存在していない場合は、あなたの代でそれを創り上げ、後の代まで語り継いでいくことをお勧めします。

特に、創業者がカリスマであればあるほど、自身の物語や考えを文書に残していない傾向にあるようです。

であれば、あなたの代で、会社の歴史を紐解き、文書として残していくというプロジェクトを完成させれば、後の代で感謝されるはずです。

実際、聖書や論語などもキリスト、孔子自身が書いたものではなく、後進の人たちが編纂してきたものなのです。

ヒーローズジャーニーを使った創業物語の例

ちなみにガーバー氏の創業物語は以下のようになります。

  1. 平凡な世界:普通の営業マンとして働いており、40歳くらいになって田舎で牧歌的な生活をしようと計画していた
  2. 冒険への呼びかけ:親戚からシリコンバレーのIT企業の社長の手助けをしてほしいと頼まれる。
  3. 呼びかけを拒否する:ITや経営なんて知らないので、手助けなんて出来ない、と躊躇する。
  4. 境界を越える:IT企業の社長と話してみると、”営業が仕組みである”ことを知らない、ということに気が付く。
  5. 試練、味方、敵:IT企業の社長から営業のコンサルティングを依頼されるが、紹介してくれた親戚から猛反対され、その親戚とは二度と会うことが無くなる。
  6. メンターとの出会い:ガーバー氏の夢に賛同してくれる共同創業者トーマス氏との出会い
  7. 最奥の洞窟へのアプローチ:会社経営を仕組み化をしていく方法の体系化に取り組む。
  8. 修練:共同創業者であったトーマス氏と方向性が合わず、永遠の別れになる。
  9. 報酬(剣を手に入れる):成果を出し、多くのクライアントを獲得し出す。
  10. 帰り道:世界的に有名になり、成功を収め、創業した会社を引退する。
  11. 復活:まだやり残したことがあると気が付く。
  12. 帰還:起業家の役割を世の中に伝えるため新たな冒険を始める。

ヒーローズジャーニーを様々なシーンで活用する

創業物語の他、ビジネスの他のシーンでもヒーローズジャーニーを活用できます。

製品開発物語を語る

製品を開発した際の物語をヒーローズジャーニーのテンプレートで語ることによって、顧客を魅了することが出来ます。

リーダーの育成

リーダーとして育てたい人に、ヒーローズジャーニーのステップを踏ませることで、リーダーとして成長していきます。

日々のスピーチで活用する

社長は人前でスピーチ機会が多いと思いますが、その際にもヒーローズジャーニーを活用することで、聴衆を退屈させないスピーチが出来るはずです。
以上、ヒーローズジャーニーをビジネスで活用する例をいくつかご紹介しました。ヒーローズジャーニーは、さまざまな文脈で適用できます。
ぜひお役立てください。

 



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