清水直樹
今日は社員の意見を吸い上げ、耳を傾けることについての是非を考えたいと思います。

 

​​社員の意見を吸い上げ、耳を傾けるのが危険な理由

先日の自民党総裁選で、岸田氏が勝利しましたが、彼が「自分の特技は人の話をしっかり聞くこと」という話をして、ちょっとした話題になっていますね。人の話を聞くというのは、成熟した大人として当たり前のことですが、政治家としては、そのうえで自分で判断をしないといけませんね。​

政治家と同じく、社長の場合にも、​​どこまで社員の話を聞くべきか?​​という悩みがあったりします。

社員の意見を聞きすぎると文化を壊す

だいたいどこの会社でも、意思決定をする際には、社長が完全なるワンマンで決めるというよりも、社員の意見を吸い上げ、それを参考にして決めることがあると思います。

ここで問題は、どこまで社員の意見に耳を傾け、彼らの意見を取り入れるか?です。あまりにも社員の意見を通しすぎると会社にとっては危険になります。

最近は、社員の話を聞いて、彼らの自主性を引き出したほうが良い、と考える人が増えていますが、場合によっては、それが会社の規律や文化をを壊すきっかけにもなります。

実は私自身も過去、周りの意見をそのまま聞き入れすぎて、大きく間違いを犯したことがありました。

会社が本来向かうべき方向ではなく、”彼らが個人的にやりたいこと”を優先させることになってしまったのです。

 

視座、視野、視点の違いで社長と社員の意見は変わる

社長が社員の話を聞くのが危険な理由は、視座、視野、視点の違いによります。

視座とは、どれだけ物事を長期的に見ることができるか?

社長の場合、5年後、10年後を見据えて意思決定するわけですが、社員の場合には、普通は今日明日のこと、せいぜい四半期先くらいしか見ていません。

視野とは、どれだけ全体を見渡せているか?

社長の場合、会社全体、または業界の動きを見て意思決定しますが、社員の場合には、自分個人の仕事が第一で、せいぜい部門くらいしか見ていません。

視点とは、どこに焦点を当てるか?

社長の場合には、視座が高く、視野が広いので、様々な選択肢の中から、注力すべき点を選べます。

社員の場合には、視座が低く、視野が狭いので、必然的にいかに自分のメリット、部門のメリットになるか?という軸で判断します。

アイデアや意見を出す社員に悪気はなくても、視座、視野、視点の違いによって、彼らの話を聞き入れることが、会社を良くない方向に向かわせることになりかねません。

 

※視座、視野、視点については、こちらの記事もご覧ください。
​https://www.shikumikeiei.com/improve-your-perspective/​

​​社員の意見を吸い上げる際の注意点

というわけで、社員の意見を聞くことには危険性もあるわけですが、一方、まったく人の意見を聞かないのも困りものです。

そこで、どこまで社員の意見を吸い上げ、取り入れるか?という悩みが出てきます。

これを判断するのに3つほど考えることがあると思います。

 

1.社員の意見やアイデアの背景を知る

第一に、彼らがどの立ち位置から話をしているのか?

会社全体の利益、または顧客の利益のためにモノを言っているのか?

または、自分に有利になるようにモノを言っているのか?

自分の利益にならないけど、会社のためになる、顧客のためになる意見を言う人の話は信頼できる可能性が高まります。

2.社長は謙虚さの中に、強さを持つこと

社長の中には、いい社長だと思われたい、社員から嫌われたくない、謙虚な人だと思われたい、

という理由で、社員の話をハイハイと聞いてしまう人もいます。

これは危険です。

人の良さ、謙虚さというのは、その内に強さを秘めているからこそ役に立ちます。

いざとなれば、相手と刺し違えても自分の意志を貫き通す、というような強さを持っている人が、普段は人が良い、謙虚であるからこそ意味を成すのです。

そのような強さがなく、単に良い人、謙虚な人では軸がないと思われてしまい、社長としての面目を保つためには逆効果です。

ですから、まずは自分の志や意志、ビジョン、価値観を明確に持つこと。

そのうえで、社員の話を聞いて自分で判断することが大切になるでしょう。

 

3.組織の発達段階を一歩ずつ登る

3つ目は、少し込み入った内容になりますが、大事な話です。

組織には発達段階があります。

これは「ティール組織」の中で紹介され、一般にも広く知れ渡った理論です。

詳細説明は省きますが、あらゆる組織は以下のような順序を辿って発達していきます。

1.レッド(衝動型)組織

「力」が支配する組織であり、短絡的思考。比喩としては、「オカミの群れ」であり、現代で見られるレッド組織としては、マフィア、ギャング、犯罪組織等が挙げられます。

2.アンバー(順応型)組織

上意下達で厳格な社会的な階級に基づくヒエラルキーによって成り立つ組織です。比喩としては、「軍隊」であり、現代でも多く見られる組織です。

3.オレンジ(達成型)組織

アンバー組織と同じく階層構造で成り立っていますが、成果を上げたメンバーが上位層に出世できる点が異なります。オレンジ組織の比喩としては、「機械」です。

4.グリーン(多元型)組織

オレンジ組織と似たような組織構造を持ちますが、より個人個人の価値観と多様性、人間らしさが重視されています。比喩としては、「家族」です。メンバーの意見は尊重され、合意形成が重視される傾向にあります。

5.ティール(進化型)組織

存在目的、自主経営、全体性という特徴がみられる組織。

 

※より詳しくはこちらの記事をご参照ください。

https://www.shikumikeiei.com/teal-definitive-guide/

 

ワンマン社長は急に社員の意見を聞き入れてはいけない​

1.レッド組織の意思決定は独断的であり、構成員の意見を聞くことなどありません。

5.ティール組織に近づくほど、意思決定は民主的であり、誰もが意見を言うことができます。

この話をすると、多くの社長は、うちも5.ティール組織に近づきたいね、と思うわけなのですが、ここで大事なのは、段階を一足飛びには出来ないということなのです。

つまり、現時点で「2.アンバー(順応型)組織」の会社が、いきなり「5.ティール(進化型)組織」にはなれないのです。

より具体的に言うと、いままで独裁的なリーダーシップでやってきた社長が、いきなり、

”みんなの意見を聞くから何でも言ってよ。自由にやってよ”

という民主的リーダーシップに移行しようとすると、組織は崩壊するということです。

たいていの場合、何も意見が出てこなかったり、自分から行動できずに生産性が大きく下がるか、みんなが言いたいこと、やりたいことをやりだし、会社としての方向性がバラバラになります。

現時点で「2.アンバー(順応型)組織」の会社は、まずは、「3.オレンジ(達成型)組織」を目指し、そこで組織能力を高める必要があります。

 

たしかにティール組織に移行した会社では、リーダーがメンバーの話をよく聞き、それを経営に反映させています。

しかし、それが出来るのは、彼らが組織発達を経る過程において、各メンバーが十分に視座を高め、視野を広げ、正しい視点を持つことを訓練してきたからなのです。


※ちなみに、最近、私は子育て真っ最中なのですが、有名な「モンテッソーリ教育」の中にも似たような話が出てきて驚きました。モンテッソーリ教育では、ひとつひとつスモールステップを成功させることで育てていきます。

たとえば、早く歩けるようにと、ハイハイしはじめたばかりの赤ん坊を歩行器に入れて歩かせるようなことはNGとされています。親としては早く成長すると嬉しいものなので、一足飛びに歩かせようとしてしまうものです。

でも、ハイハイをし始めたら、まずはハイハイが十分にできるまで待つこと、その次はつかまり立ちがしっかりできるようにすること、

というように各段階をしっかり踏ませることが大切だということです。

社員の意見を吸い上げても何もしないのは悪手

というわけで、どこまで社員の話を聞くべきか?という話をさせていただきました。最後に大事な注意点をお伝えしておきましょう。

それは、社員の意見を吸い上げても何もしないのは悪手だということです。

社員が会社や社長に意見を言えるようにするのは大事ですが、会社は吸い上げた意見に対して何かしらのアクションを起こさなくてはいけません。

これは必ずしも、彼らのすべての意見を意思決定に取り入れる、ということではありません。なんでもかんでも取り入れると良くないというのは上記でご紹介した通りです。あくまで社長が選別して取り入れるべきです。

しかし、吸い上げた意見を取り入れないのであれば、その理由を説明したほうが良いということです。

つまり、

こういう意見が上がってきたけれど、今回はこういう理由で違う判断を行った

と言うことです。そうすれば、社員は意見を検討はしてくれたんだな、ということで次回も意見を言ってくれるようになります。

大切なのは意思決定の透明性を保つということです。これにより、良い文化が生まれ、社員も自分で考え行動する習慣が身についていくはずです。

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