仕組み経営の導入はこちら

多角経営の事例から学ぶ、失敗と成功はどこで差が付くか?

本日のテーマは、「多角経営の事例から学ぶ、失敗と成功はどこで差が付くか?」です。対象読者は中小企業・成長企業の経営者、リーダー層です。

多角(化)経営とは?

多角経営とは、ひとつの企業が複数の業態・業種を経営することです。主な目的は、経営の安定性を確保するためであると言えます。既存の業態が落ち込んできたときに、他の業態の調子が良ければ、プラスマイナスを相殺することが出来、全体として経営が安定します。

日本ではバブル時代に、多くの企業が多角経営に乗り出しました。本業に全く関係のない不動産投資やテーマパーク経営、ホテル経営、飲食店経営、ゴルフ場経営というように景気の良さに乗って、経営者の思うがまま、気の赴くままに手を広げていった企業がたくさんあります。

しかし、バブルがはじけると、そのほとんどは廃業に追い込まれます。プラスマイナスを相殺するどころか、多角化した事業が軒並みマイナスになってしまったために、本業をつぶすほどダメージを食らってしまったのです。

バブル時代は例外としても、多角化してリソースが分散し、本業がままならなくなる会社はいまでもあります。一方、多角化で成功している会社もありますので、多角化を目指す会社は、何が成功と失敗を分けるのか?を理解しておく必要があるでしょう。

多角経営の失敗例

ユニクロ(ファーストリテイリング)

ユニクロを運営するファーストリテイリングは、2002年に生鮮野菜の生産・販売事業を「SKIP」というブランドでスタートさせました。当時、ユニクロはフリースなどのヒットをきっかけに日本では誰もが知るブランドになっていました。今と比べるとまだまだ規模は小さいですが、それでも成長真っ盛りだったのです。

そんな時に、出てきた野菜販売の新事業。誰もが”え?なんでユニクロが野菜を?”と思ったことでしょう。私も思いました。でもユニクロのことだから、何か勝算や計算があるのだろう、と思っていたのです。

結果はどうなったかというと、ご存じの通り、1年半で多額の赤字を垂れ流し、早々に撤退することになりました。結局机上の空論での勝算しかなかった、というわけです。その後、ユニクロは一切多角化に手を出さず、”ライフウェア”ブランドとして一直線に走っています。

ライザップグループ

もう少し直近の例で言うと、ライザップグループが挙げられるでしょう。同社はもともと、健康食品の通販事業で基盤を作り、その後、パーソナルトレーニングジムの展開で一気に名を馳せました。そして株式上場も果たします。

ユニクロと異なり、同社の多角化は、M&Aを通じて行われました。つまり、割安な会社の株式を買い、グループの傘下に収めるというわけです。目論見としては買収した企業価値を高め、売却益を得ようとしたのでしょう。一時は、同社のHPに全く本業とは関係のない会社がずらっと並び、私もちょっとした違和感を感じていました。

その後、案の定、傘下に収めた会社の経営も上手く行かず、M&Aでの多角化路線をストップさせます。

多角経営の成功例

ヴァージングループ

多角化の成功例としては、英ヴァージングループが代表的でしょう。ヴァージングループは、カリスマ創業者のリチャードブランソン氏が立ち上げた企業グループです。もともとレコードの販売から始まりましたが、その後、様々な事業に手を出し、航空会社やシネマ、宇宙事業など、数百の事業を展開しているとされています。

ヴァージングループの多角化経営がユニークなのは、すべての事業に、”ヴァージン”というブランドを付けていることです。本来、これはブランドマネジメントのセオリーからするとNGなのです。しかし彼らはその常識を打ち破り、あらゆる事業に手を出しながらも、ヴァージンというブランド価値を維持することに成功しています。

イーロンマスク

もうひとつ多角化の成功例を見てみると、イーロンマスク氏が挙げられます。彼の場合、ひとつの会社で多角化しているわけではないので、正確には多角経営とは言えないかも知れません。しかし、様々な事業を展開しているという意味では同じです。

イーロンマスク氏はもともとオンライン決済の会社を創業した人物で、その後PayPalと合併、EBayに15億ドルというとんでもない巨額で売却しました。当時Paypalの株を持っていたメンバーは、Paypalマフィアと呼ばれ、いまのスタートアップ界隈で活躍しています。中でも知名度抜群なのが、イーロンマスク氏です。

イーロンマスク氏はテスラで電気自動車、スペースXで宇宙開発、SolarCityでソーラー発電など非常に多角化した事業を展開し、それぞれを成功させています。

多角化している弁護士が受けたアドバイス

では多角経営の失敗と成功はどこで差が付くのでしょうか?

このテーマを考えるために、あるストーリーをご紹介したいと思います。これは私が「はじめの一歩を踏み出そう」著者のマイケルE.ガーバー氏の講座に参加した時の話です。

※「はじめの一歩を踏み出そう」は世界700万部のベストセラーで、中小企業・成長企業のCEOが選んだベストビジネス書(米INC誌による)になっています。本サイト「仕組み経営」の推薦図書でもあります。

私が講座に参加したのは、2012年。結構前ですが、その時のエピソードが印象深くて、いまでも教訓として覚えています。その講座は、参加人数がそれほど多くなく、10数名程度でした。ガーバー氏の講義が始まり、受講生に対して、”あなた方の起業家としての夢やビジョンとは何か?”を問い始めました。そこで一人の男性が発言をしました。

「私は弁護士の資格を持っていて、会社を5社やっています。どの会社のビジョンを言えばいいでしょうか?」

※ちなみに米国では弁護士資格は日本ほど希少性が無く、弁護士を本業にしていなくても資格を持っている人が結構いる。

この質問からガーバー氏とのやり取りが始まりました。以下にそのやり取りの抜粋を紹介させていただきます。


ガーバー氏:なぜ5社もやっているのですか?1つにしてください。

男性:全部そこそこ順調なのです。サプリメント販売は昨年と比べて5%伸びました。そのビジネスはあまり時間を使っていないので、続けても大丈夫だと思います。

ガーバー氏:サプリメント販売の業界全体の成長率はどれくらいですか?

男性:10%くらいだと思います。

ガーバー氏:ということは、あなたのビジネスは成長しているのではなく、相対的に衰退していますね。そして、時間は使っていなくても、頭のどこかでは無意識にそのビジネスのことが気になっているはずです。

そのせいであなたは、ひとつのことに集中できていません。起業家はひとつの夢だけを追求しなくてはいけません。あなたは5社もやっていて、それが出来ていません。集中できていないために、本来、あなたが成し遂げられるかも知れなかったことを成し遂げられていないのです。だから一つ選んでください。


というやり取りでした。だいぶ強引ではありましたが、結局その男性は講座中に、会社をひとつに絞り、他のビジネスは辞めることにしたのです。この話から多角経営が失敗する例と成功する例の違いが見えてきます。

多角経営の失敗と成功はどこで差が付くか?

多角経営の失敗、成功を分けるのは、それらがひとつの夢やビジョンに向かっているかどうか?です。

先ほどの弁護士のように、自分は人生でこれをやり遂げるんだ、というひとつの夢がないまま様々な事業に手を出すと失敗するのです。実際のところ、本気で追及すべき夢やビジョンを持っている人は、他のことをやっている暇がありません。

ユニクロやライザップの事例を振り返ってみましょう。ユニクロの現在の理念は、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というものです。(同社HPによる)おそらく、野菜の販売を始めた当時は、ここまで理念を明確に絞っていなかったのではないでしょうか?当時、この理念があったら、野菜の販売など入り込む余地がなかったはずです。

また、ライザップの現在のビジョンは、「自己投資産業でグローバルNo.1」となっています。同社はいまでも多角経営をしていますが、いまはこのビジョンに近づく事業だけに絞り込んでいるように見えます。

ヴァージングループやイーロンマスクの場合はどうか?

では先ほど成功例で出したヴァージングループやイーロンマスク氏はどうでしょうか?

まずヴァージングループ。彼らは数百の事業を展開していますが、それらすべては人々の人生に冒険心や楽しさを提供する、という活動につながっています。これは彼らのブランドを表す言葉でもあります。冒険心や楽しさが無い業界を変えるためにビジネスをしている、と言っても良いかも知れません。

一方のイーロンマスク氏の場合には、どうでしょうか。彼はインタビューで以下のように答えています。

21世紀に地球が直面する最も大きな問題は、持続可能な方法でエネルギーを生産し、消費しなければならないということだ。もっと長期的に見れば、今後1000年の間に人類は宇宙を行き来するようになる。ただ、歴史を振り返れば、技術の水準はつねに向上し続けているわけではなく、時として落ちることもある。技術レベルが落ちないうちに能力を高め、火星や月に自給自足できる拠点を作る必要がある。確かに困難も多いし、仕事も山積みだ。だが、EVの普及を促すこと、人類が複数の惑星に暮らし、宇宙を行き来する文明を築くことは極めて重要だ。(東洋経済オンラインより)

このインタビューを見ると、テスラもSpaceXもSolarcityも彼の一つの夢、人類の発展に貢献するという夢に向かっていることがわかります。

多角経営を目指す中小・成長企業の経営者が考えるべきこと

世の中には、いろんな社長がいて、小さなビジネスをいくつもやっている人がいたりします。かくいう私も、20代前半の頃は、いろいろな交流会に出入りし、そういう人たちに会ってきました。

「僕はいろんな事業やっているんだよね」とか「この人はいくつも会社持っているんだよ」とか聞くと、すごいな~と思ってました。世間一般的にも、会社をいくつもやっていると言うとスゴイ人だと思われますね。

しかし、今回紹介したONE DREAM(一つの夢を目指すこと)の法則を知ってからは、そういう人は自分の興味や気の赴くまま、全部中途半端にやっているに過ぎないことがわかってきました。

特に中小企業や成長企業が多角経営を目指すならば慎重に考えないといけないと思います。

多角経営をしたいと思ったら、まずは、それは自社のひとつの夢やビジョンに向かうことになるのか?と自問することが大切です。そのためにもまずは、自分たちの会社って何を目指しているんだっけ?さらには、自分が本当に成し遂げたいことは何なのだろうか?を知ることが大切です。

そして、いまの本業を損ねることなく、シナジーを生み出すことができるか?現在のリソースで運営できるか?自分の働く時間を増やさずに実現可能か?という現実的な検証も必要でしょう。

多角経営を成功させるには、既存事業を仕組み化すること

最後にもうひとつ、大事なことをお伝えしておきます。それは、多角経営するには、既存事業を仕組み化することが必要、ということです。

これはどういうことでしょうか?ほとんどの社長は既存事業の運営で忙しくしているはずです。そのうえで、多角化しようということで新規事業に取り組んだらどうなるでしょうか?さらに忙しくなるばかりです。結果、例に出した弁護士のように、すべてが中途半端になってしまいます。

一方、私たちのお客様の中にも、多角経営で成功している人がいます。それらの会社の特徴は、いま述べたひとつの夢に向かっているということ。そしてもうひとつは、既存事業が社長の介在なくして運営されている、ということです。

既存事業の運営を仕組み化し、社長はほとんど会社に行かずにOK、という状態を作り出しているのです。そのうえで、社長の空いた時間で、新規事業を立ち上げます。そして、その新規事業も同じように仕組み化します。これを繰り返すことで、社長が働く時間を増やすことなく、多角経営を成功させることが出来るのです。

たとえばこちらの事例でご紹介している方々は、仕組み化をして、社長不在で経営できる事業を作ったのち、新しい事業を立ち上げています。

「年に36時間働くだけで年商5倍に」株式会社CODE7 代表取締役 桑原 匠司様 インタビューレポート2018年7月

【マニュアル化事例】介護事業のマニュアル化で得られたメリットとは- 2018年12月インタビューレポート 有限会社ファイブアローズ 岩下由加里様

このように、将来、多角経営をしようと思ったら、いたずらに新しいことを追い求めるのではなく、まずは足元の事業を”自分不在”で回るようにし、空いた時間で新規事業に取り組む、というステップが最も確実です。

「仕組み経営」では、自分不在で会社が回るようにするお手伝いをしていますので、ご興味ある方は以下からEブックをダウンロードしてみてください。

 

▶仕組み経営Eブックのダウンロード

▶仕組み経営のプログラム一覧