理念唱和に目的と意味はあるのか?



清水直樹
今日は理念唱和は意味があるか?というお話をしたいと思います。

 

動画でも解説しています。

 

理念唱和は日本独特の習慣

もしかしたら皆さんの会社において、朝礼などで理念が書かれた冊子などをみんなで声に出して読むということをやっている会社もあるかもしれませんし、皆さんの周りにもそういった会社があるのではないかと思います。

この理念唱和という習慣。これは日本企業独特かなと思います。

私も海外の企業等調べたりするのですが、あまりこれをやっているというのを聞いたことがありません。

ですから個人的にはこれは意味があるのかな?というのを常々思っています。

もちろん私のお客様の中でもやっているところがあるので、必ずしもこれが意味がないとか批判しているというわけではないのですが、ちょっと1回そこに疑問符を持ってみてはどうかという話をさせていただきます。

実は私も何社か会社員としてやっていたのですが、そのうちの1社でこれをやっていました。ただ、正直その内容をほとんど覚えていません。確かにやっていたのですが、どんな理念だったかというのを正直覚えていません。

そういった意味で、これは本当にやっている意味があるのかなというのを常々感じているわけです。

 

理念唱和の目的は、理念の共有

結論としては、理念唱和というのは理念を共有したいからやるわけです。でも、そのためにはもっとうまい別の方法もあるのではないかという投げかけをしてみたいと思います。

ここで1回洗脳方法という話なのですが、理念唱和というのは昔は確かにある程度は意味はあったのかなと思います。

人を洗脳するには?

ちょっとここで話がそれますが、人を洗脳するにはこんな方法になります。

既存の人間関係と隔離させる

まず、「既存の人間関係と隔離させる」ということです。例えばカルト宗教とか、私も昔ちょっと関わっていましたけれどもネットワークビジネスとか、その人の考え方を変えないといけないビジネスというのがありますが、そういったビジネスはだいたい最初にこれをやります。「既存の人間関係と隔離させる」ということです。

特にカルト宗教などのやばい宗教などというのは家族や友達とかとまず隔離させます。そして山奥にある修行をする施設のようなところに入ってもらうわけです。そして外部との情報を遮断するというのがまず第1ステップになってきます。

精神的、肉体的疲労を与える

次が、「精神的、肉体的疲労を与える」ということで、例えば修行で精神的に疲れさせたりだとか、肉体的に疲労を与えて疲れさせるということです。これは何かというと、考える力をなくさせるということです。

昔、ヒットラーが演説するということをたくさんやっていたわけです。そしてナチスドイツの思想をどんどん広めていきましたが、彼は演説の時間を夕方とか夜に設定したと言われています。これはなぜかというと、夕方とか夜になるとみんなが疲れているからです。そのためヒットラーの言葉がそのままスッと入りやすいというように言われています。

それを知っていたかどうかは分かりませんけれども、とにかくヒットラーはそういうことを意識してやっていたと言われています。

また自己啓発セミナーなどもこれに近いです。同じ集団の中で朝から晩までずっと過ごさせるという事です。家族とか既存のビジネスの仲間と離してセミナー会場というところに隔離して、朝から晩まで行い、肉体的な疲労を与えるということです。

既存信者と長時間共にする

次が、「既存信者と長時間共にする」ということです。今までの人間関係と分かれさせれば、当然既に信者になっている人達と長時間過ごすことになります。

新しい価値観を植え付ける

このようなステップを経たうえで、自分たちが植え付けたい新しい価値観を植え付けていきます。

 

昔は理念唱和で理念が共有できた?

だいたい人の洗脳はこういった感じで行われていくのですが、昔のようにインターネットがない時代というのは、理念唱和によってこの洗脳のステップにうまく回っていたかなと思います。別に社長が社員を洗脳しようと思ってやっていたわけではないと思いますが、おそらくこのステップにそのまま沿っているわけです。

昔は今のようにインターネットがないので、自分の会社以外の人と付き合う機会はそんなになかったのかなと思います。昔の会社員の人達が所属しているコミュニティというのは会社と家庭です。とくにバブル時代というのはとにかく同僚と過ごす時間がとても長いわけです。あとは家庭に帰って来て奥さんとか子供といるという感じで、非常に限られたコミュニティの中で過ごしていたわけです。

つまり会社に行くということは家庭と離されることになるわけです。そして会社で働けば精神的にも肉体的にも疲れます。そこで理念唱和ということを行うことで、新しい価値観を植え付けていくという手法がうまく機能していたわけです。理念唱和をすることによって、会社の理念を社員の人達が共有していくということができていたのだろうと思います。

一方で最近はどうかというと、なかなか家庭と会社だけのコミュニティに所属している人が少なくなってきていると思います。私なんかもそうですけれども、例えば地元の友人がいたりだとか、ネット上だけでつながっているSNSの友達がいたり知り合いがいたりします。そこからいろいろな情報が入ってきたりします。あとは地域社会の情報があったりします。

また昔と違うのは他社人脈が結構あるということです。同業他社の知り合いや、異業種交流会へ行けば他の会社の人達がたくさんいるわけです。そのような感じで1人の人が様々なコミュニティに所属しているというのが今の時代です。

 

現在は理念共有が難しい時代

そうすると、先ほどの洗脳ステップがうまく機能しなくなるわけです。



まず、「既存の人間関係と隔離させる」ということ自体が難しくなります。会社に行ってもネットでつながっていますので、SNSで他の会社の人と話したりできます。自分の会社はこうやっているけれど、あの会社はこうやっているんだなという風にいろいろな情報が入ってくるわけです。

するとまずこの最初のステップが難しくなり、その次のステップもうまく機能しなくなるため、今は唱和することで理念を共有していくということが難しくなってきているのかなと思います。

 

理念唱和しても、理念に触れる時間は3.125%しかない

計算してみますと、例えば朝礼で理念唱和をしている会社があったとします。朝礼はだいたい15分くらいだと思います。その時に理念唱和をやっているわけですが、これだけの場合には会社の理念に社員の人が触れる時間というのは、全部の就労時間のわずか3.125%でしかないということになります。

他の時間は他の事を考えているわけです。これでは理念の共有というのは難しいというわけです。

効果がないとは言いませんけれども、理念唱和をして理念共有をしようというのは、なかなか今の時代では難しくなっているなという感じです。

 

リッツカールトンホテルは理念唱和をしているわけではない

理念唱和を朝礼でやっている会社が参考にしている、あるいは刺激されてやっているというのがリッツカールトンのラインナップという仕組みですが、これはリッツカールトンのいわゆる朝礼です。毎日同じグループの人達が集まって10分か15分ぐらい話し合うというのがラインナップというミーティングの仕組みなのですが、これをうちも取り入れようということで理念を朝礼で唱和するということをやっている会社が多いわけです。

このリッツカールトンのナインナップの様子がいくつかYouTubeにアップされているので、ぜひ見てほしいのですが、ここでは別に理念を唱和しているわけではないのです。リッツカールトンのゴールドスタンダードと言われている、いわゆる会社の理念なのですが、それに関して社員のメンバーが何人かそれについて最近あった出来事や考えていることをシェアするという時間が5分くらいあるというのがラインナップの仕組みです。

他の時間は今日の出来事や予定、また共有しておくべき業務的な連絡をして、だいたい15分くらいで収まるというのがラインナップです。日本の会社はこれに刺激を受けて、朝礼で理念唱和をやっているわけですが、実はリッツカールトンでは理念の唱和はやっていないというのが実態です。

理念を唱和させるのではなく、考えさせる

ただここでやっていることで1つ参考になることがあります。単に言葉として理念を読み上げても頭に入ってこないですし、私がさっき言ったようにすぐ忘れてしまうわけです。そうではなくて、このリッツカールトンでやっているように、考えさせるということが大事かなと思います。

理念に基づいてこういうイベントがあったとか、こういう行動をしたとか、こういうお客様がいてこういう対応をしたとか、社員の人達が自分達で考えて発言するという機会を与えないとただ唱和しても意味がないというわけです。ぜひそれを取り入れてみるといいのではないかと思います。

 

理念唱和ではなく、理念が自然と共有される仕組みを創る

理念を共有したいと思ったら大切なことがあります。

こちらはよく見る図ですけれども、理念があってそれが方針とか戦略に落とし込まれて、そして日々の活動があるということなのですが、この一貫性を保っていくことが大切です。

理念と戦略が結び付いていないとか、理念と実際の日々の仕事が結び付いていないということではさっき言った通り、理念は全く共有できないわけです。

理念唱和などしなくても、会社が決めた戦略とか方針とか活動の仕組みに沿って社員の人達が仕事をするだけで、自然と理念というのが共有されていくというモデルを作るのが理想です。

私達も仕組み経営で会社の仕組みづくりをお手伝いする時には必ずそれを意識しながらお手伝いをしているという感じです。理念と戦略の一貫性がどうかというところと、理念と社員の人達の日々の活動に一貫性があるかどうかということ。これをぜひチェックしてみるといいのではないかと思います。

 

理念が共有される仕組みづくりなら

というわけで今日は理念唱和に意味はあるか?ということで、私が日頃から疑問に思っていることをご紹介させていただきました。

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