スモールジャイアンツ、小さな大企業

スモールジャイアンツ(小さな巨人)とは?事例と共に完全解説



スモールジャイアンツ(小さな巨人)とは、会社経営のひとつの在り方として、(日本では)最近、注目されているコンセプトです。

スモールジャイアンツというコンセプトが日本で知れ渡ったのは、フォーブス誌がその特集を組み始めてからと言えるでしょう。

ちなみにフォーブス誌では、”小さな巨人”ではなく、”小さな大企業”と訳してますが、元の言葉のまま”小さな巨人”と呼んだほうがわかりやすいので、そっちに統一してます。(巨人という言葉を使わなかったのは、球団とかへの配慮かも)

 

スモールジャイアンツの始まり

さて、このスモールジャイアンツというコンセプト、元々はこちらの洋書(日本語版)が発端となっています。


Small Giants [スモール・ジャイアンツ] 事業拡大以上の価値を見出した14の企業

著者は、ボー・バーリンガム氏。これまたアメリカで有名な起業家向け雑誌「INC」の編集者です。

海外ではそれなりにベストセラーになっていますが、日本では2008年に出版されているものの、たいして話題にならずに埋もれていた本であると言えるでしょう。

私は仕事柄、海外情報を日々チェックしているので、この本のことは前から知っていて、日本語版が出てすぐに購入しました。

内容はいい本だと思うのですが、正直、事例も海外だし、カタカナが多いので(決して翻訳が良くないということではない)ので、日本の経営者が最後まで読了するのは結構難しいかな、という感じです。

その後、アメリカではこのスモールジャイアンツという概念がちょとしたムーブメントになりました。そして、スモールジャイアンツを目指す経営者向けのコミュニティも誕生します。このコミュニティ、最初は独立運営でしたが、何年か前に米国のフォーブスが運営に関わるようになったのです。

そのため、日本のフォーブス誌でもスモールジャイアンツというコンセプトを打ち出し始めました。

そもそも日本はスモールジャイアンツ的な会社が多い国だと思うので、個人的には合っていると思います。本当は日本発で生み出してほしかったくらいです。

 

スモールジャイアンツとは?

日本のフォーブス誌では、スモールジャイアンツの要件を創業10年以上で売上高100億円未満の価値ある企業としているようです。

彼らのサイトではスモールジャイアンツの事例としていくつかの企業が掲載されています。

https://forbesjapan.com/small_giants/

ただ、、昔からオリジナルのスモールジャイアンツをベンチマークしてきた私からすると、ちょっと焦点がずれている気がしないでもないです。

(これは私の推測でしかないので、日本のフォーブス誌では米国版と全く違う基準や目的で運営されているのかも知れません。以下の解説ではあくまで米国版のスモールジャイアンツの話をします)

こちらに掲載されているのは、素晴らしい技術や商品を持っている企業なのですが、元々オリジナルのスモールジャイアンツは、自分たちの基本的価値観や文化を守り、独自の経営を保っている会社のことを指していると思います。

なので、焦点を当てるべきは、商品や技術ではなく、組織運営の方法なのです。その結果として、素晴らしい商品や技術が生まれるということだと思います。

実際、書籍の中では、以下のように定義づけがされています。

営利的な目的に加えて、別の非営利的な優先事項を持っている。彼らにとっては、投資に対して良好な利益が必ずしも最重要の目的でもない。その仕事で優れた存在になること。働きやすい環境を創ること。顧客にサービスを提供し、サプライヤーと優れた関係性を築くこと。生活とビジネスを置くちいs気に対して貢献をし、自分の生き方に結びつく優れた道を見つけること。(中略)私はこのような起業をスモールジャイアンツと呼ぶ。 – ボー・バーリンガム

また、書籍内では、14社のスモールジャイアンツの事例が掲載されていますが、その選出基準として次の3点が挙げられています。

  • 何らかの具体的な岐路に立たされ、選択を行った人々によって創業、あるいは所有されている企業に限定する。つまり、より迅速に、より大きく成長する機会があり、株式公開や大手企業の傘下となる機会がありながら、あえてその道を歩まない判断をした企業。
  • 業界内で称賛され、模倣されている企業に焦点を置く。最も厳しい批評家となりうる存在、すなわち同業他社やライバル会社からの尊敬を集めている企業。
  • 他の独立機関から、非凡な偉業をなしたと認めれた経緯のある企業。特別な評価に値するということが、第三者からの裏付けが得られるのは心強い。

さらに対象とする企業の大きさについても、年商ではなく、社員数が目安となっている。ボー・バーリンガムが言うには、「人間的な規模」。わかりやすく言えば、CEOが新入社員全員を面接出来るくらいの規模だそうです。

 

アメリカのスモールジャイアンツの事例

コミュニティも出来ていることから、アメリカではスモールジャイアンツに当てはまりそうな会社がたくさんあるわけですが、今日は書籍にも最初に載っている会社を事例としてご紹介したいと思います。



社名は、アンカーブリューイング。

公式HP:https://www.anchorbrewing.com/

以下、Wikipediaより:

カリフォルニア・ゴールドラッシュの最中の1854年に、ドイツ人の醸造技術者ゴットリーブ・ブレクル (Gottlieb Brekle) が、アメリカ市民権を取得するとともに、ビール醸造所を開業した。1896年に Ernst Baruth と Otto Schinkel Jr. が買収し、「アンカー」の社名を付けた。

1965年、廃業寸前のアンカー・ブルーイング・カンパニーをフリッツ・メイタッグ(英語版)が買収[2]。1975年には黒字経営に転じる[2]。

1993年、アンカー蒸留所を設立。1997年、シングルモルト・ライウイスキー「Old Potrero」発売。1998年にはクラフトジン「Junípero」を発売。

2010年4月、オーナーのフリッツ・メイタッグは、アンカー・ブルーイング・カンパニーの経営権をキース・グレッガー(Keith Greggor)とトニー・フォリオ(Tony Foglio)に譲渡したと発表した[3]。

2017年8月、サッポロホールディングス傘下となる。アンカー蒸留所は独立し「Hotaling&Co.」に社名変更した。

 

歴史を見ればわかる通り、この会社は世界的に知られたクラフトビールメーカーです。

一時期、主力商品である”アンカースチームビール”が大ヒットし、自社の製造許容量を超えてしまった時がありました。このとき、普通なら投資をして規模拡大を目指すところでしたが、彼らはそれはせず、”自分たちのやり方”にこだわりました。

その後も、他社の資本を受け入れる機会がありましたが、経営のコントロールを失うことを恐れ、その機会をパスしました。

このようにして、経営の独立性と独自性を保ってきたのです。

ただし、その後、経営をしてきたメイタッグ氏が引退後、別のオーナーになり、さらにその後、日本のサッポロビールが同社の全株式を買い取りました。そういう意味で同社は、すでに本来の意味のスモールジャイアンツではなくなってしまったと言えるでしょう。

 

スモールジャイアンツになるには?

さて、ではいったいどうしたら自社もスモールジャイアンツになれるのか?と思われる方もいるでしょう。

スモールジャイアンツ企業の根本にあるのは、自分たちが大切にしている基本的価値観です。これをコアバリューと呼んでいます。会社のあらゆる仕組みをこのコアバリューをベースにして創り上げます。

そして、あらゆる意思決定において、コアバリューを軸にします。私たちの提唱する「仕組み経営」でも、このコアバリューを最初の軸にしています。

以下、「仕組み経営」のテキストからの引用です。

強力な会社の価値観(コアバリュー)は、創業者の心から生まれ、組織へと浸透していく。コア・バリュー(中心的な価値観)とは、組織の本質を突き、決して変わることのない信条や価値観を指す。組織の「魂」とでもいうべきものであり、市場の状況や、競争要因や、流行りの経営手法などに関係なく、自らが「これ」と信じるものを定義し、会社の全員で共有し、それに徹底的にこだわる必要がある。

コアバリューを定義している会社は日本でも増えていますが、本当の意味でコアバリューを軸にした経営を行うにはかなりの覚悟が必要です。

たとえば、

  • コアバリューに沿わないことであれば、どんなビジネスチャンスにもNOと言う覚悟。
  • コアバリューに合わない人であれば、どんなにスキルや能力が高い採用候補者でもNOと言う覚悟。

が必要です。

これらコアバリューをベースにした意思決定が、最終的に独自、かつ強い企業文化の構築に繋がります。

 

まとめ

最後にも少し書きましたが、コアバリューを軸にした経営という意味では、スモールジャイアンツと私たちの提唱する仕組み経営は一致しています。

ただ違うのは、私たちがコアバリューを軸にした経営で突き抜けた会社を”ワールドクラスカンパニー®”と定義している点です。かなり目指すところは近いですが、ワールドクラスカンパニー®では、スモールジャイアンツよりも”成長すること”に重きを置いているということが少し違うかなと思います。



いまの時代、社員数が多いことが必ずしも良い企業の条件でもありませんので、ここでいう成長は必ずしも社員を増やすということではありません。自社の優れた商品やサービス、それを世界中の人々に届けるために成長する力を持っている、という意味合いです。

さて、今日はスモールジャイアンツ(小さな巨人)の概要をご紹介してきました。もっと書きたいことはたくさんありますが、ひとまず今日はこれくらいにしておきます。ぜひご参考にしていただければ幸いです。

 

仕組み経営の導入はこちらから:http://entre-s.com/7install

>仕組み化ガイドブック:企業は人なりは嘘?

仕組み化ガイドブック:企業は人なりは嘘?

人依存の経営スタイルから脱却し、仕組みで成長する会社するための「仕組み化ガイドブック」をプレゼント中。

CTR IMG