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禅と中小企業経営



清水直樹

私の師匠であるマイケルE.ガーバー氏は若い頃、精神世界に深く没頭していました。ユダヤ人の出自を持つ彼は、さまざまな宗教思想に造詣が深く、例えばグルジエフの神秘思想にも傾倒していました。この時期を通じて、彼は「人間とは何か?」という根本的な問いに対する深い理解を追求し、その結果として経営の原理原則を発見してきました。

さらに、東洋思想である禅にも興味を抱き、彼の経営プログラムにはその思想が取り入れられています。これらの精神的な探求が、彼の経営理論に独自の視点と深みをもたらし、多くの起業家やビジネスリーダーに影響を与えています。

マイケルE.ガーバー氏・・・世界700万部のベストセラー「はじめの一歩を踏み出そう」の著者であり、世界No.1の中小企業アドバイザー(米INC誌による)に選ばれた。当サイト「仕組み経営」のもとになっている思想を提供してくれた人物。詳細はこちら>>

本記事では、2015年マイケルE.ガーバー氏の自宅にて収録した映像の書き起こしをお届けさせていただきます。

禅と経営

禅と経営

これまで私が書いてきた本はすべて、ビジネス、アントレプレナーシップ、なぜ大半のビジネスがうまくいかないのか?そういったことについての内容です。

また、まだビジネスを始めていない人、ビジネスをこれからスタートしようとしている人、いまの仕事に不満を抱いている人、または仕事を定年退職して、残りの人生をどうすればよいかわからない人、そういった人にも向けて書きました。

私は中小企業経営とは奇跡的なものだと思っています。それは人々の想像力、創造力、自己を呼び起こす可能性を持っています。

心の状態が大事

これまで過去40年間、世界中の何万ものビジネスとかかわってきました。彼らのビジネスを治してきた中で発見したことがあります。ビジネスオーナーや、これからビジネスをスタートする人たちにとって、心の状態が極めて大事だということです。

どういうことかというと、それは注意を集中する能力、邪魔されることなく、混乱させられることなく、あっちこっちと彷徨うことなく、現在、この場所、自分自身に集中することです。

私が「禅」について学んだことからすると、人によって禅に対する見方や考え方は違うと思いますが、私にとって禅とは、I AM(私は私である)ということです。これがビジネス、または人々に欠けていることなのです。

実際のところ、みんなI AM NOT(私が私でない状態)になっています。なぜなら、みんな注意散漫になっているのです。いまやっていること、やりたいこと、ほしいもの、そういったもので自分自身を失っています。尊厳と意義ある人生を創るために自己を見つけるのではなく、自分自身を失っているのです。

私は、中小企業にかかわる人たちは、ほかのどんな仕事をしている人よりも、アントレプレナーシップを発揮することが出来ると信じています。

それによって、ほかの仕事やキャリアでは出来ないような、人々に深いインパクトを与えることが出来ます。それは芸術のようなもの、創造物のようなものです。活力があり、生き生きとして、やるべきことに目覚めていて、何かを作るために現在に集中している人たちと会うことは、とても素晴らしいことです。

それが「禅と中小企業経営」を書いた理由です。

ほかの書籍も同じです。特に世界中に広がっている本も同じです。私の最初の本は29ヶ国語に翻訳され、中小企業経営とアントレプレナーシップに関する最も重要な本といわれています。それは私にとってとても誇らしいことです。INC誌が世界No.1と呼んでいることも誇らしいことです。

スティーブジョブズの例

そのようなことが出来たのは、私がビジネスについて他の誰よりも知っていたからではありません。マーケティングやテクノロジー、マネジメント、財務について他の誰よりも知っていたからではありません。

それは私が、創造的で、生産的で、人々の琴線に触れるようなビジネスを作ることがどういうことか、その本質を理解していたからだと思います。

とてもよい例があります。スティーブジョブズ、そして彼が開発したもの、アップル社の例を挙げましょう。

みんなジョブズと他の人の違いを聞きたがります。彼は偉大な人物でした。この地球上で最も価値のあるブランド、アップルを創りました。大学を中退していますし、1年目の授業も終えていません。落第して、精神的な探求のためにインドに行きました。そこでまた失望し、戻ってきました。そして似合わないエンジニアの仕事に就き、すぐに辞めて、家の父親のガレージにこもりました。

そして当時、他に類の見なかった会社、アップルを創りました。彼はビジネス、マーケティング、テクノロジーについて詳しかったわけではありません。

みんなそういった知識がビジネスを成功させるために必要だと言っていますが、彼はそんなこと知りませんでした。しかし、彼はアップルを作ったのです。

なぜそんなことが出来たのか?

その理由がいまいったようなことなのです。

今に集中する

いまいる場所、この瞬間に集中すること、そしてそこから生まれてくる本当の情熱を感じることです。そうすれば世の中のことが見えてきます。何を知らないのかに気がつきます。好奇心を抱き、なぜ自分が生まれてきたのかを探求し始めます。



私は、私たちみんなが、なぜ生まれてきたのか?なにをするために存在しているのかを発見する場所を作りたいと思いました。

その発見のプロセスによって、うちなるアントレプレナーシップが目覚めるのです。

スティーブジョブズがガレージの中でやったように、真っ白な紙と初心者の心に戻るのです。私はすべての人に彼と同じことが出来る力が備わっていると信じています。

あなたの知っている人たちが同じような力を持っていると思えば、素晴らしいことではないでしょうか。誰もがそれまで想像もしたことのないようなことを出来るのです。

真っ白な紙と初心者の心で、世の中の人々の琴線に触れるようなものを創造すること、それがどういうことかを理解できるでしょう。一緒に夢を見に行きましょう。素晴らしい体験になるはずです。

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一流経営者は何が違うのか?

私の知り合いにヨガのインストラクターがいます。また、世界的に有名な格闘家もいます。また、起業家やテクノロジーの世界にも一流の知人がたくさんいます。

よく聞かれるのは、彼らが持つ独特の特性は何か?ということです。

言い換えれば、武術家が知らなくてはいけないこと、ヨガのインストラクターが知らなくてはいけないこと、起業家が知らなくてはいけないこと、それらは何かということです。

真実を言えば、それらは全く共通するものなのです。彼らはみな同じ環境、状態にあります。

散漫か没頭か?

それは日常の仕事に対して散漫になっているか、没頭しているか?です。

散漫と没頭について考えてみてください。

その二つの言葉の違いを感じ取ってください。その二つの言葉の対立を感じ取ってください。

没頭とは、現在に集中している、ということです。格闘家は現在に集中していなければ、格闘家といえません。

起業家も同様に、現在に集中して、自分がコミットしたビジネスを創ることに没頭していなければいけません。

ヨガのインストラクターは没頭していなければ、現在に集中していなければ、緊張感や焦点や技術、魅力を失います。

ですから、散漫か没頭か、その状態が大切なのです。

意識をその場所、今現在に向けることで、邪魔になるものを消し去ることができます。そして、没頭でき、物事をあるがままにみて、驚異的なことを成し遂げられます。

私たち人間は、そのために存在しているのです。

私は何年も人々をそういった状態に戻すのを手助けしてきて、とても驚くような結果が出ています。

本来彼らがいるべき場所、本来の彼ら自身に戻すのです。私の書籍、記事、講演で、その他の創造物で、普通では見通すことの出来ないものを捉えることが出来ました。それは現在に集中していたからです。

あなたも同じようにすることができます。私が書いてきたもの、行ってきたことは、すべてそのような方法によるものなのです。

それは革新的で、自己を超越する体験です。自己を変革させる道のりの中で、周りのもの全てを変革させることが出来ます。私にとっては、それこそが真の起業家精神です。周りのものの在り方を一変させるのです。

ありえないように聞こえるかも知れませんが、私はこのようなことを何年も行ってきた経験から、79歳になった今、心の底から確信を持って言えます。

あなたも可能性に対して心を開いた分だけ、偉大なことを成し遂げられます。

 

社員の意識を高めるには?

私たちのクライアント、ビジネスオーナーの最大のフラストレーションのひとつは、私の書籍に書いてあるように、システムを作って、会社の外側から働くようにした場合、どうやって自社の社員に、自分と同じくらいの高い意識を持って、責任感を持って働いてもらえるか?どうやってセールス、マーケティング、運営、財務、生産などの領域で、学ぶ必要のあることを学んでもらうことができるかということです。



社員に今以上のことをやってもらうにはどうすればよいか?

答えは、それは不可能だということです。あなたにそんな力はありません。人を動かすことで生み出す結果を管理できる、というのは全く間違った思い込みです。

あなたが社員に何かをやるように期待し、両者の間に緊張関係が生まれた瞬間、彼らからの抵抗を生むことになります。

何かを言われたり、束縛されたり、責任を取りたいと思う人はいないからです。

彼らに何かをしようとするのではなく、あなたの内面で何かを変える必要があります。

会社は学校である

あなたが鼓舞されていない限り、人々を鼓舞するコミュニケーションはできません。

人々を鼓舞するようなビジネスのストーリー、人々があなたと一緒に、現状を超えてそこに辿り着きたいと思えるストーリーが何かを理解していない限り、あなたが彼らのモチベーションを上げるのではなく、彼らの内面から動機付けがなされない限り、いつも同じことが起こります。

自分がやってほしいことを社員にやってもらいたい、という不可能な課題にいつも悩まされるでしょう。

彼らがこれまでに体験したことのないようなインスピレーションを受け、あなたと働きたいと思えるようにしなくてはならないのです。

私が伝えている考え方があります。

私のウェブサイト、またはEメールの署名には、”すべてのビジネスは学校である”と書かれています。これが意味することは、ビジネスは、そこで働いている人にとっての学びの場であるということです。

あなたが雇った社員、契約している人、アウトソーシング先の人、その会社が出すべき結果を生み出すために働いている全ての人たちは、生徒になるのです。

その会社で働いている全ての人が生徒なのです。彼らに”生徒になりなさい”と言うべきだ、という意味ではありません。彼らは自ら学ぶ必要性に気がつくのです。

そこで次なる質問は、彼らに何を教えるかです。あなたの会社を学校と考えたとき、社員は入社することで、その学校に入学する特権を得ることになります。入学料が無料の学校です。あなたは彼らにギフトを提供しているのです。

成長というギフト、学びというギフト、なりたい自分になるというギフト、彼らは今以上の自分を目指し続けることになります。

あなたは成長にコミットし、自分自身にコミットしている社員と、継続的なかかわりを創ることができるようになります。

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社員に教えるべきこと

では、あなたは何を教えるのか?

それが5つのエッセンシャルスキルです。

これはすべての人が訓練すれば学ぶことのできるものです。

一つ目が集中力です。これがもっとも大切です。

二つ目は判別力です。社員が集中力がもっとも大切であることを理解したら、いまに集中し、邪魔されない、集中する力を手に入れたら、次はその集中力をどこに注ぐかを見極める必要があります。それが判別力です。何が大切で、何が大切でないのかを見極める力です。

三つ目は組織化・秩序化です。あるべき場所にあるべきものをおいていくことです。優れた会社は、これがとてもうまく機能しています。ディズニーランドにいってみればわかるでしょう。すべてのものが素晴らしく整っています。これは創業者であるウォルト・ディズニーが、集中力、判別力、組織化・秩序化をよく理解していたからです。

四つ目のスキルはイノベーションです。あなたの会社にやってくる人が、これまで述べた集中力、判別力、組織化・秩序化、そしてイノベーションの能力を身につけたと想像してみてください。

彼らは、仕事をするための、より優れた方法を探し続けます。常にいまより良い方法があります。最高の方法は神のみぞ知るところですが、いまより優れた方法にすることは出来ます。最高の方法を探究し続けることが出来るのです。それがあなたの会社で行われると想像してみてください。

五つ目のスキルはコミュニケーションです。集中力、判別力、組織化・秩序化、イノベーション。



いまに集中する力、何が大切で何が大切でないかを知る力、混乱が起こらないように秩序を保つ力、会社を極度に差別化し、成長させるために、方法やプロセス、システムを改善し続ける力を手に入れたら、それらを表現するためにコミュニケーション力が必要になります。

これらのことが全てのビジネス、すなわち学校で行われなければいけません。

それを社員に教えることを想像してみてください。それを毎日実践します。それらが為されたとき、どんな違いが生まれるか想像してください。

これら5つが自立した心を作るために必要なスキルです。それがあなたの会社の社員に違いをもたらすでしょう。それがあなたに違いをもたらすでしょう。

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