仕組み経営実践会はこちらから

仕組み化のための書籍第二弾「起業家精神に火をつけろ!」の要約と書評 その1

本記事では、マイケルE.ガーバー氏の2冊目の本、「起業家精神に火をつけろ!」の解説をしていきたいと思います。

この本、大きく分けるとパート1とパート2に分かれています。パート2は、彼の会社が提供していたコーチングプログラムの一部が抜粋されています。パート1は、前作「はじめの一歩を踏み出そう」に登場したサラとのやり取りの続きになっています。

このうち、どちらかというとパート1のほうがおもしろいです。パート1は「起業家精神」についての考えが記載されています。これは前作にはなかった内容です。

なぜガーバー氏がこの2冊目を書いたのか?ガーバー氏は、コーチング会社を起業し、数多くの企業を仕組み化し、成功させてきました。しかし一方、彼自身が高齢になるにつれ、何か物足りないものを感じ始めたのです。

自社のクライアントは成功しているように見えるけれど、何か欠けている。その欠けているものは何なのか?を追求していくと、経営者に「起業家精神」が欠けていると気が付いたのです。

クライアントは仕組み化して自由になり、経済的にも成功した。しかし、仕組み化してそこそこの会社を作るだけでは世界は変わらないと気付いたのです。

ガーバー氏が常々モデルとしていたレイ・クロックは、たしかに会社を仕組み化して成功しましたが、彼の根底には起業家精神がありました。ガーバー氏は、もともと、その起業家精神を経営者に伝えていきたかったのですが、彼の作ったコーチングプログラムや書籍(はじめの一歩を踏み出そう)では、それが伝わらなかったのです。

そこで、2000年代に入り、彼は自分が作った会社を離れ、起業家精神を伝えるための新しいビジネスを考え始めます。「起業家精神に火をつけろ!」は、まさにその過渡期に書かれた本です。

だから前半のパート1は「起業家精神」についての記述が多くなっています。

その「起業家精神」とは何なのか?それも本書を読み解いていくと理解できるようになります。では前置きが長くなりましたが、内容に入っていきます。

 

「序文」&「イントロダクション」の解説

私にとって、成功や改善とは、私の前に突然現れる祝福や奇跡を受け入れるべく、十分にオープンであり、準備ができていることだった。

「真っ白な紙と初心者の心」

これがガーバー氏のプログラムに参加する際の前提条件です。経営者はある程度売り上げが上がったり、経営の経験が長くなると、どうしても頑固になり、自分の箱の中に入ってしまいます。やがて”俺流”のやり方に固執します。

他にうまくいっているやり方や、大きな機会があったとしても、目に入らなくなってしまうのです。そして、自ら可能性を閉じてしまいます。だから、ガーバー氏は受講者に対して、”何が新しいことが得られるのか?”という批判的な頭でプログラムに参加するのではなく、開かれた心でプログラムに参加することを要求しています。

 

一人の会社か、3000人の会社かというのは重要ではない。世界に通用する方法で取り組む決意をすることが重要なのである。

世界に通用するような会社を作った起業家は、最初から世界に通用するような会社を作ろうと思っていた人が多いです。

”散歩のついでに富士山に登った人はいない”とは、漫画家ジョージ秋山が作品の中で紹介した言葉です。会社もそれと同じです。ワールドクラスになろうと決めた起業家だけが、ワールドクラスの会社を作ることができます。

 

私たちは起業に関する次のような常識を、何度となく覆してきた。
・起業家の素質は先天的なものであり、後天的に身に付けられるものではない。
・起業家の素質に恵まれた人はごく少数である。
・起業家精神とは科学ではなく、芸術である。
(中略)起業家的な会社とは、どんなものだろうか?それは起業家的な意識が、すべての従業員に行き渡っている会社のことである。

ガーバー氏によれば、起業家精神とは、「すべての人に備わっている人格の一つ」です。だから何かのきっかけでその人格が刺激されれば、起業家精神が目覚めるのです。ガーバー氏自身、初めての会社を創業する前には、普通の百科事典のセールスマンでした。それが友人の紹介でシリコンバレーの会社の販売を手伝ったことがきっかけで、起業家として成功する道を見つけ出しました。

同じように、あなたの会社の社員にも起業家精神が備わっています。それを刺激し、彼らが自分の持つ能力を発揮できるような会社を作ることがリーダーの大きな役割といえるでしょう。

 

本書はワールドクラスの起業を作るために書かれている。会社として生き残る方法を書いたものではない。毎日の仕事を何とかやり過ごすためではない。平凡な人間が、平凡な会社で、平凡な経験をするために書かれた本ではない。本書は非凡なことについて書かれている。

“平凡な人が非凡な結果を出せる仕組みを作ること“というのがガーバー氏が教えている原則のひとつです。この章の冒頭には、VISA創業者のディー・ホック氏の言葉が引用されています。

“平凡な人間であっても、夢と挑戦する自由と決意を持ち、適切な環境を与えられれば、必ず非凡なことを達成できるものだ。”

ちょうどザッポスに訪問した際、これの良い例がありました。ザッポスの社内ツアーの後、実際に働いている人と質疑応答をする時間がありました。そのとき担当してくれていた人は、もともと内気で、休みの日はずっとテレビゲームをしているような人だそうです。

彼が一番いやなのは、会社の会議。内気なために何も発言できず、自分を無視して話が進んでいくのが耐えられませんでした。あるとき、ザッポスは社内の会議のルールを変え、全員が発言する仕組みにしました。彼は自分の意見を言えるようになったのです。それを機に、積極的に働けるようになり、いまは社員体験を改善するチームで活躍しています。

人を変えようとするのではなく、仕組みを変えることで、社員の可能性を発揮させたのです。このように、ディー・ホックがいう「適切な環境」を作ることは経営者の最も大事な仕事のひとつといえるでしょう。

 

他者の目をなくして、自分を見ることは難しい。たった一人でワールドクラスの企業を作り上げた起業家など存在しない。ワールドクラスの起業家は、同じくらい優秀で、明確なビジョンと成長への意欲を持ったワールドクラスの人たちに囲まれていた。

私たちはコーチングをご提供しているので、経営者の方に他者の目をご提供しているということになります。やっていて、本当に他者の目の必要性を感じます。自分にもそういうコーチがいたら、、と思うこともあります。

ここでもザッポスの例を挙げさせていただきます。ザッポスのCEO、トニー・シェイはこの会社にかかわることになったとき、最初の社員としてノードストロームのバイヤーをスカウトしました。
ノードストロームは顧客サービスで非常に有名なデパートで、そこのバイヤーが出来立ての会社に参加することなど通常あり得ません。

しかし、トニー・シェイはワールドクラスの会社は、自分だけではできないと知っていました。そこで業界の大先輩を口説き落としたのです。

また、ザッポスには、ライフコーチというポジションがあります。このポジションは、社員に対して“他者の目”を提供する役割であり、文字通り、社員に対して人生のコーチングを行います。社員の人生をサポートすることで、社員が顧客のサポートに集中できるようにしているのです。

ザッポスではコーチや創業メンバーなど、関わり方はどうあれ、他者の目を謙虚に受け入れるようになっています。

 

「1.起業家の視点」の解説

ビジネスを立ち上げる人は多いが、起業家のように考え、行動し、夢を持ち、成功または失敗する人はごく少数である。これは悲劇であるばかりではない。才能に対する犯罪でもある。スモールビジネス経営者の大半は、登山を始めることなく、ふもとの小さな丘だけでスモールビジネスという旅を終わらせてしまうのだ。

日本では、独立して会社を作っていれば誰でも”起業家”とみなされてしまいます。しかし、そのような”いわゆる起業家”は、独立することが目標であり、スモールビジネスを経営することが目的になってしまっています。

一方の”本当の意味での起業家”は、急速に拡大することを前提としたビジネスを作ります。ガーバー氏は、”スモールビジネスとは、急速に拡大するビジネスの初期段階に過ぎない”と言っています。

長年、スモールビジネスを経営していると、小さいことが当たり前、小さいから仕方ない、拡大させる必要がない、というように”小さいことに慣れて”しまいます。

しかし、この引用文にあるように、それでは、あなたの才能を100%活かしきれていないともいえるのです。

 

起業家精神とは第一に、創造する力である。(中略)あなたの仕事は、起業家になることでも、創造することでもなく、起業家になるためのプロセスにコミットして、起業家と同じような訓練を重ねることである。

このくだりは少し理解が難しいかもしれません。ガーバー氏は、”起業家とは創造する者であり、ビジネスの発明家である。”と言っています。ただし、何かすごいビジネスを発明しよう、と思っても出来るものではありません。そうではなく、起業家のように考え、起業家のように行動すること、その訓練を重ねることで、いつしか偉大な起業家のような起業家精神を呼び起こすことができる、といっています。

そして、起業家のように考え、起業家のように行動するために、ガーバー氏は偉大な起業家に共通して内在する4つの人格を発見しました。それが、ドリーマー、シンカー、ストーリーテラー、リーダーです。

ドリーマーは夢を見る人格、シンカーは事業モデルを構築する人格、ストーリーテラーは周囲にWHYを伝える人格、リーダーは仕組みを作って物事を実行する人格です。

これは私たちがいつもお伝えしている、職人、マネージャー、起業家という3つの役割うち、起業家の役割をさらに細かく分けたものと思っていただくとわかりやすいでしょう。

経営者、起業家としてどんな仕事をするべきか?と迷ったら、上記4つの人格を思い出していただくとよいでしょう。

 

ビジネスをあえてゼロから再スタートする、真の起業家になるための鍵はここにある。

以前、経営者は”古い会社”と”新しい会社”という二つの会社を経営しなくてはいけない、とお伝えしました。この引用文に書かれていることがまさにそれです。

ガーバー氏は長年、経営者と接してきた中で、職人的な視点で作られたビジネスを変革していくことは難しいことに気が付きました。
だから、あえて、職人的視点で作られた会社を“古い会社”と呼び、起業家的な視点で作る会社を“新しい会社”と呼んだのです。

ガーバー氏は本書の中で、“もし、いまやっている職人的な仕事にこだわりがないとしたら、どのようにしてもう一度やり直すか?”という質問を提起しています。ぜひこの質問について考えてみてください。

 

「2.情熱と目的と訓練」の解説

起業家精神を学ぶことと、音楽をはじめとするほかの技術を学ぶことに変わりはない。

ガーバー氏は、この文脈で、私たちが抱いている間違った固定概念について話しています。それは、「起業することや経営することは、一種のアートである」という概念です。この固定概念があるために、多くの人が何も学ぶことなく起業し、自己流で経営してしまいます。

このような固定概念が作られる原因は、メディアや書籍で紹介される”一般的ではない起業家像”です。だいたい、メディアで取り上げられたり、書籍を出したりするような会社は、他の会社がやっていないような、自社独自の考え方や手法を紹介しています。

そのようなユニークさがなければ、メディアが取り上げたり、書籍を出したりする理由がないからです。私たちの多くは、そのようなユニークな起業家や経営者を見て、”経営とはアートであり、先天的な才能が必要だ”と思ってしまいます。

だから学ぼうとする意欲もなく、自己流のセンスや感覚で経営してしまいます。しかしながら、そのようなユニークなやり方で経営しているように見える会社であっても、実際には、いわば”経営の型”に沿ってうまく経営しています。

先週まで米国企業の視察にいってきたのですが、各企業ともそのカテゴリーでは世界No.1ともいえるワールドクラスの会社でした。一見すると、それぞれが異なる経営のやり方をしていましたが、その本質を見ると、すべて同じ型に沿って経営をしていました。

たとえば、
・ビジネスを行う目的が極めて明確であること
・組織を運営する上での基本的な価値観が明確であること
・各役職の役割と責任が明確であること
などです。

私たちの目に見えている各社の違いは、ビジネスを行う目的や価値観の違いが表に出ているものなのです。

本章のなかで、ガーバー氏は起業家精神とは方法論である、と書いています。”論”と表現されているとおり、起業することや経営することにはある程度の型があります。その型に自分の目的や価値観を当てはめることで、自分らしい会社ができるものです。

 

起業家精神は、厳格な訓練を重ねることと、素直な心を持つことを要求する。そして、素直な心とは、高い目的に向かって情熱を傾けるときに現れるものである。

長らく自分で経営していると忘れがちなのが、ここで出てくる”素直な心”です。素直な心とは、自分に必要な教えを広く受け入れることです。ガーバー氏はこれを英語では、”Blank Piece of paper, and beginner’s Mind(真っ白な紙と初心者の心)”と表現しています。
自分が成功できれば良い、自分の好きなようにやれればよい、というだけであれば、素直な心は要らないかもしれません。自己流でもそこそこまではいけるからです。

しかし、私たちがここで話している本当の起業家のように高い目的を達成しようと思うと、いつかその自己流では限界があることに気が付きます。そのときにはじめて、子供のころのように、素直な心を持つことの必要性を再度理解するものです。

 

鳥のように飛びたいとあこがれ続けるのは、魂の情熱であり、ビジョンを追求するのは知性の情熱である。(中略)この2つを統合することが、起業家的なビジョンを追求するうえで不可欠なのである。

仕組み化は、どちらかというとテクニカルな話に陥りがちであり、ここでいう知性の情熱だけに偏る傾向があります。知性の情熱だけで作られたマニュアルや仕組みは、運用し続けることが難しくなります。

魂の情熱、つまりビジネスの目的や価値観が欠けたマニュアルや仕組みは、組織のメンバーがその必要性を感じることができないからです。

とにかく自分が自由になりたい、と言ってご相談にいらっしゃる経営者の方は、だいたいこの課題にぶち当たっています。そういった経営者の方の特徴は、ご自身の人生の目的を失っていることです。それがために、組織にいる社員の方々にもそれぞれ人生の目的があることを理解していません。したがって、組織が極めてビジネスライクでドライな状態で運営されています。

経営者が魂を失っているために、組織も魂を失い、顧客を魅了することができず、平凡な状態で行き詰っています。この課題を乗り越えるには、本書に出てくる”人生の目的”をもう一度発見しなおすことなのです。

 

「3.気乗りしない起業家」「4.職人から真の起業家へ」「5.気乗りしないコーチ」「6.想像するための余裕を創造する」「7.なぜ起業家は行き詰るのか?」の解説

本書を読んだことのない方のために簡単にあらすじをご説明すると、、、

これらの章では、「はじめの一歩を踏み出そう」の主人公、サラとガーバー氏が再会したシーンが描写されています。「はじめの一歩・・・」の中で、サラはガーバー氏との出会いで、会社を仕組み化するということを学び、新たにスタートを切りました。

その後、会社は変わり始めるものの、時がたつにつれ、心の中の葛藤を感じ始めます。そして、ガーバー氏の講演会に参加して、もう一度、アドバイスを依頼します。

ガーバー氏は、どうしようか悩むものの、もう一度、ゼロからサラのような起業家に対して何を提供すれば良いのかを考えるためにサラの依頼を受けることになります。

 

私たちが指摘するべきだったのは、顧客(ガーバー氏の顧客=経営者)のビジネスに欠けているものではなく、顧客自身に欠けているものだったのだ。ビジネスのために働くのはやめよう、と呼びかけながらも、私たち自身もまた、顧客のビジネスのために働いていたのである。

ビジネスオーナーが変わらない限り、ビジネスは決して変わることはない、とガーバー氏は言っています。サラとの再会で、ガーバー氏が感じたのはまさにそれでした。

仕組み化の方法論を提供しても、経営者に起業家的な視点が欠けていたり、ビジネスに対する情熱が欠けていたりしては、結局ビジネスが長続きしないということなのです。

サラは自社「オールアバウト・パイ」への情熱を失いつつあり、どうすればよいのか悩みガーバー氏に会いに来たのです。我々もガーバー氏ほどの年月ではありませんが、日本で彼の思想を伝えてきて感じるのがまさにこの点です。

ここでいう”顧客自身に欠けているもの”というのは、経営者の人生における情熱であり、目的です。ビジネスの前に、経営者自身の人生が大事です。人生の情熱や目的が何なのかを発見できるまでは、先に進めないのです。

 

退屈で長続きしないビジネスが作られるのをたくさん見てきた。起業家的な情熱を見つけられない経営者は、起業家的な情熱を持たないままの状態で、マニュアルやシステムやトレーニングプログラムを作るからなんだ。

仕組み化したい、と言ってこられる経営者の中には、すでに長年経営をされてきて今のビジネスに疲れ切っているようにみえる方もいらっしゃいます。

先ほど言った通り、今のビジネスに情熱を失っている場合が多く、とにかく仕組み化して自由になりたい、ということなのです。実際のところ、マニュアル作りなどは技術的な話なので、そのような状態でも出来なくはありません。

しかし、ここに書いてある通り、経営者がその状態では、大して役に立たないマニュアルができるだけです。いまの会社(ガーバー氏の言う「古い会社」)に情熱を失っている経営者は、まずゼロから考え直し、自分にとっての「新しい会社」とは何なのかを創造しなくてはいけません。「新しい会社」への情熱が経営者をもう一度、起業家的に動かす原動力になります。

 

起業家は作業に対して情熱的ではない。作業とは新しいものを発見するためのものではなく、何かを完成させるためのものである。作業が重要ではない、ということではない。作業は終わらせるべきである。しかし、作業を終わらせることは、創造ではない。作業では、結果を予想することができる。起業家は結果を予想して仕事に取り掛かるわけではない。起業家は創造するために取り掛かるのである。

”作業”をするのは、経営者の中の「職人の人格」です。会社が小さければ、もちろん、経営者もこの作業をする割合が増えます。しかし、会社が成長するに従い、作業をすることから手を放し、創造する仕事へと移らなくてはなりません。

実際、仕組み化にある程度成功してくると、経営者には時間のゆとりができます。その時間のゆとりをどう使うかが大事です。職人気質が抜けない経営者は、作業をしていないと不安になってしまいます。そして、本来、社員がやるべき仕事も奪って、自分でやってしまいます。

そうなると人が育たず、成長にも限界が生まれてきます。だからまず経営者は、時間のゆとりがある、という状態に慣れる必要があります。私の知り合いの経営者は、ある時から、午前中は会社に行かないことに決めました。強制的に作業をしない時間を作ったのです。

そして、午前中を先ほどの”新しい会社”の創造に使った結果、いまでは午前中どころか、ほとんど出社しなくても会社が成長するようになったのです。