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「現場の仕事を半分以上削減、CEOを交代して次のステージへ」 一般社団法人Eirene University 創業者 柏野 尊徳様インタビューレポート

今回のインタビューレポートは、一般社団法人Eirene University(アイリーニ・ユニバーシティ) 創業者の柏野 尊徳さんです。

公式HP:https://ems.eireneuniversity.org/

 

柏野さんは、最初、仕組み経営のオンラインプログラムを受講いただいたのち、仕組み経営導入パッケージ(https://entre-s.com/7install)を受けられました。

導入から1年経った今では、現場の仕事を半分以上削減、CEOも交代され、組織を次のステージに進ませるための活動に注力されようとしています。

以下、どのようにして進めてきたのかをインタビューさせていただきました。

 

清水

では、今の仕事から教えてもらっていいですか?

 

柏野

今の仕事は、非営利組織の社団法人で、教育研究事業をやっています。イノベーション・マネジメントをテーマに、主に企業関係者に向けて専門的な知識やトレーニング機会を提供しています。例えば、デザイン思考のような考え方やプロセス、イノベーション活動に必要なチームビルディングの方法や組織構築のポイントなどです。

 

清水

今の組織を作ったのはいつぐらいで、どういうきっかけですか?

 

柏野

原型は2012年の2月ですね。大学で出会った勉強仲間3人と、あるゼミへ一緒に入ろうとしてました。でも、僕だけ受かって他の2人が落ちてしまって。

 

清水

よくあるパターンですね。

 

柏野

そこで「自分たちで勉強会を立ち上げよう」と言い出して始めたのが事業体の原型です。最初は完全に趣味のボランティ活動でしたね笑。そのときのテーマがイノベーション活動を支援する「デザイン思考」という考え方、プロセスでした。2012年3月にスタンフォード大学に行く機会があり、そこで現地の講師から学んだり、本を読んだりしてました。最初は自分たちの学びのためにやってましたね。

 

清水

そこから会社にして、事業の立ち上げをするとき、顧客を獲得しなきゃいけないと思うんですけど、その辺はどうやりましたか?

 

柏野

スタンフォード大学の教材を翻訳して、無料でWEBサイトに載せたんです。すると、24時間で1万件を超えるダウンロードがあって、3日経って2万件超えました。その時は、何かビジネスをしようとは考えてなかったですね。ただ、なるべく多くの人に読んで欲しいと思っていたので、いわゆる「メルマガ登録すると無料で読める」形式にはしないで、ページ上のボタンをクリックすればすぐPDFがダウンロードできる形式をとりました。

結果的にその方法がうまくいってフェイスブックやツイッター等でかなりシェアされました。シェアしてもらいやすいような教材名を考えたりはしたので、そのあたりは狙い通りになって楽しかったですね。結果的に「デザイン思考」というキーワードで検索すると、グーグルで常に1ページ目に出るようになりました。ワークショップもすぐ満員になりましたね。

 

清水

それでお客さんが来て、今回2017年10月から仕組み化を受けていただいたんですけど、それはどういうきっかけですか?

 

柏野

最初は勉強会だったグループを法人化したのが2013年7月なんですけど、ちょうど法人化する前に「はじめの一歩を踏み出そう」を読む機会がありました。これは必要だ、と強く感じました。というのも、起業するのはそのときで3回目で、それまでは「仕組み化」っていう発想もなくやってたんです。「今度はちゃんと作らなきゃ」と思いましたね。

本を読んだ後にやったのは、オンラインでダウンロードできる英語ワークシートの記入でした。当時の学生メンバーと分担しながら出来るところをやろうと。だけどあんまりうまくいかなかったかな。僕を含めて、当時誰も組織づくりの専門知識や経験なんてなかったですから。

仕組みを作ろうという意図は2013年ぐらいからあったんだけど、実際作るのは結構ハードルがありましたね。そしてその仕組を作ってさらに運営して回す、というのはもっとハードルが高い印象でした。そうやって月日が流れた2017年、人も増えたきたし、そろそろ本格的にやらなきゃ、と思いました。たまたま清水さんの会社に直接相談できるサービスがあることを知り「ここに頼もう」という流れですね。

 

清水

取り組み始めて、何からやりましたっけ?

 

柏野

会議の仕組み化がメインでしたね。僕のサラリーマン経験って社員4人ぐらいの零細企業で半年働いたぐらいなんですけど、その会社も仕組みはなかったので「情報をルーチンで共有する」という経験がゼロでした。他のメンバーからしたら「勝手に話を進めちゃう人」「聞いてない話がどんどん進む」みたいな状況になってしまう。

自分が原因で社内に混乱を起こしてしまっていたので、まずは会議をちゃんとしようと。仕組み化する前の状態は、何か問題があったらその場で集まって突発的にミーティングをしていました。そして、その回数がどんどん増えて、みんなが疲弊していく。これはよくないなと。そこでまずは毎週会議をやることにしたわけです。

 

清水

基本だけど、会議は重要ですね。

 

柏野

めちゃくちゃ重要ですね。会議の重要性を考える上で、アンドリュー・グローブが書いた『ハイアウトプット・マネジメント』もかなり参考になりました。この本は、職人・マネージャー・起業家の役割の中だと、特にマネージャー系の話が結構入っています。仕組み化をしたい人には必読本だと思います。

 

清水

ほかは、理念体系も整理しましたよね。

 

柏野

そうですね。ミッション、ビジョン、バリューも作って。それも楽しかったですね。

 

清水

この辺作って、変わったことありますか?

 

柏野

僕は最初から世界レベルの総合大学を作りたいと思って起業したんですが、大学作りにそこまで興味がないメンバーもいて。ビジョンがまとまってくると「そういう方向性だと僕は私は違うかな」っていう感覚は明確になったと思います。

 

清水

実際、卒業した人もいましたね。

 

柏野

そうですね。まあ、そこはビジョンの明確化だけに限らず、僕自身の経営者としての立ち振舞が未熟だったこともあり、他意はなくても不信感を持たれるようなことがあったりしたので、色々なことが重なった結果だとは思います。もちろん、ビジョンが明確になったことで、「この会社じゃない方がいいかな」っていう感覚は大きいと思いますね。幸い、会社の成長にしたがって創業期のメンバーが辞めていくケースがあることは実際のケースや本から学んでいたので「おー、これが例のあれか」みたいな感じはありました。やっぱり知識って大事だなと思いました。

 

清水

そうですね。パターンを知っておけばね。

 

柏野

パターンがわかってると、そのばその場で混乱やストレスはあるにしても、長い目で見て良い方向に向かってるとわかりますね。

 

清水

去年と比べると大体倍ぐらいのチームになっているという話でしたが、もともとはどういう体制だったんですか?

 

柏野

2017年は僕を含めたフルタイム3人とパート1人でした。

 

清水

で、3人が講師もやると。

 

柏野

そうですね。3人とも職人的にやっていた、みたいな感じです。

 

清水

そこから今はどういう体制になっているんですか?

 

柏野

講師は、新しく入った人やパートナーの講師の方が担当してますね。

 

清水

柏野さんの現場の仕事はかなり減ったんですか?

 

柏野

そうですね。おかげさまで半分くらい。気持ち的にはもっと減っているかもしれません。もしかしたら6、7割ぐらい減っているんじゃないですかね。

 

清水

では柏野さんのメインの仕事はどんなことですか?

 

柏野

マネージャーとしての仕事が多いですね。プロセスがちゃんと回っているかや、メンバーの労働環境がいいかどうかを考えたり。毎週必ずやっているのが1人1時間の1on1レビューです。5人に対してやってます。気になっていることや仕事の障害を聞いてサポートしたり、仕事を進める上での知識や考え方を共有したりしてますね。

例えば、あるクライアントに横柄な人がいて、社員の1人があまり付き合いたくないと思ってる。「対等じゃないから嫌だ」という話で。「とはいえ、売り上げにも影響が出るしどうしよう」という状況でした。そこで「win-winじゃなければno-dealでいいよね」と。『7つの習慣』の発想ですね。お金以外にも大事なことある、という話をしました。そういう考え方を共有するは結構重要だと思います。

 

清水

ストレスたまって生産性下がりますしね。

 

柏野

そうなんですよね。キャッシュは確かに増えるかもしれないけど、みんなの心の負荷が増えたんじゃ会社経営してる意味ないですからね。

 

清水

仕組み化に取り組んで、社員の方の働き方とかに変化はあったりしますか?

 

柏野

そうですねー。例えば、定例会議を始めたことで、社内の混乱やストレスは減ったという声はありました。お互い何しているのかがそれまでより簡単に把握できるようになりました。

 

清水

情報共有ですね。

 

柏野

やっぱり情報共有ですね。それがすごく大事。

 

清水

今後のことなんですが、柏野さんの個人的なこれからの計画は?さっき留学に行くっておっしゃってましたけど。

 

柏野

そうですね。海外に留学して博士号取得するのが短期的な目標です。海外のネットワークを作りながら、もう一段階上の仕事をする準備をしたいと思ってます。

 

清水

なるほど、レベルを上げていくということですね。

 

柏野

今はまだ日本がメインの事業ですけど、世の中に上質な学習機会を増やしていくのがミッションなので、国境を超えた仕事をもっと増やしたいですね。

 

清水

留学はそのための第一歩だと。

 

柏野

そうですね。世界への入り口みたいな感じで、次のステップアップと思っています。今よりもっと世の中に貢献できる状態をつくるために。

 

清水

会社を離れるわけですよね。

 

柏野

そうですね。最大で5〜6年ぐらい。

 

清水

戻ってきたときに、どんな感じの組織になっていたらいいかな、ってありますか?

 

柏野

今運営している「アイリーニ・マネジメント・スクール」が、イノベーションを学ぶ場所として国内で最初の選択肢に上がるポジションが理想ですね。コースの修了生が、各自のフィールドで成果を出していくことを、今以上に支援する体制が備わっている状態です。

 

清水

もともとデザイン思考から始めたけど、それがきっかけでほかの考え方をどんどん入れていく、という感じですかね。

 

柏野

そうですね。デザイン思考というより、上質で高度な学びの場を作りたいんですよね。「総合大学を作る」というビジョンはそのための方法ですね。大学の中には色々な学部があって、経営学部だと会計専攻もあれば戦略専攻もある。さらにその専攻の中に「イノベーション・コース」があったら、デザイン思考はそのコースの中の1クラスですね。僕はずっとそういう感覚でやってるので、デザイン思考も重要で面白いテーマだと思いますけど、リーン・スタートアップでもビジネスモデル開発でもなんでもいいわけですね。実務家の役に立つのであれば。

 

清水

ただデザイン思考というキーワードは流行ってましたよね。

 

柏野

そうですね。ただ、会社を始めた時はその感覚なかったんですよね笑。スタンフォード大学でデザイン思考を学んだわけですが、枠組みとしては「ソーシャル・イノベーションとデザイン思考」というテーマの短期留学プログラムでした。そのときってデザイン思考知らなかったし「デザイン?俺には関係ないや。でもソーシャル・イノベーションは面白そう」って考えてましたらから笑。ただ、実際に現地でデザイン思考を学んだら面白かった。スタンフォードが発行している教材があると教えてもらい、翻訳を始めた。翻訳教材を公開したらすごく読まれて需要があるとわかった。そしてビジネスモデルを作った…という流れですね。

だから「これだ!デザイン思考だ!」って感覚は今まで一度もないです笑。福沢諭吉が、日本にも必要だと思って海外から「ブックキーピング(簿記)」の発想を輸入した、というのと同じイメージです。別に福沢諭吉自体は簿記の専門家ではないですしね。僕もそれぐらいの感覚ですね。

 

清水

僕も確かにそうですけどね。仕組み経営をたまたまやっているだけですけどね。

 

柏野

松下幸之助も、一生かけて電球作りたかったわけじゃないでしょうし。人々の暮らしが豊かになることがビジョンの最初にあって、当時は電球が広く世に広がることが重要だったはずなので。こういうと雑に聞こえるとかもれませんが「世の中が良くなるならなんでもいい」ってのが本心ですね。20歳で起業してからそこはずっと一貫して変わってないです。

 

清水

最後の質問なんですけど、1年間やってきて、一番よかったことって何ですか?

 

柏野

卒業したメンバーもいるんですけど、小さい組織を大きくするために必要なことや、その過程で起こる色々な現象について、実際に体験して学ぶ機会をある程度提供できたことですね。僕自身のモチベーションは、周りの人が学んで成長して、世の中に貢献していくのを見ることなので、それができるかどうかが一番大事ですね。色々とネガティブな体験もさせたとは思うんですが、どういうふうにグループから組織へ変わっていくのかを、多少なりともみんなで一緒に体験できたことはよかったんじゃないかと感じています。

 

清水

学習の機会を社内で提供できたんですね。

 

柏野

そうですね。これからも組織としてずっと大事にしたい価値観ですね。

 

清水

なるほど、今日はありがとうございました。

 

柏野

こちらこそありがとうございました。

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