マイケルEガーバー著「起業家精神に火をつけろ!」要約と解説」

「起業家精神に火をつけろ!」要約|後編・学ぶべき6領域



マイケルE.ガーバー氏の著書「起業家精神に火をつけろ!」の要約と解説、その後編です。

前編では本書のパート1にあたる「起業家精神とは何か」を扱いました。この後編で扱うのはパート2、起業家が実際に何を学ぶのかという実務の話です。具体的には、リーダーシップ・マーケティング・財務・マネジメント・顧客満足・見込み客の創出という6つの領域を順に見ていきます。

前編をまだお読みでない方は「起業家精神に火をつけろ!」要約の前編から先にご覧ください。前作にあたる「はじめの一歩を踏み出そう」の要約も合わせてどうぞ。

「8.他者との格闘」「9.起業の目的とは何か?」「10.第一の課題」「11.第二の課題」「12.第三の課題」の解説

目的とするべき目的など存在しない。(中略)スモールビジネスのために働くことをなぜ僕が大切に思っているのか、というきみの質問に対しての唯一の答えは、わからない、ということなんだ。この仕事がとても大切だということはわかっているよ。だから自分でコミットした。でも、コミットした理由はわからないんだよ。この仕事が突然に現れて、とても興味を持った。抵抗し難い魅力があったんだよ。

よく講演家やコンサルタントは、”何をやるかより、なぜやるかが大事”ということを言います。しかし、実際のところ、なぜこのビジネスをやるのか?を考えて起業した人は少ないと思います。ほとんどの人は、このガーバー氏のように、何かがきっかけとなり衝動で起業します。ガーバー氏は40年以上、スモールビジネスの支援をしていますし、その仕事に情熱を持っていると思います。

しかし、なぜこの仕事が重要なのか?を考え抜いて始めたわけではありません。引退生活に入ろうと思っていた時、たまたま知り合いの紹介でシリコンバレーの起業家に会い、彼のビジネスに販売システムが欠けていることに気が付いたことが起業のきっかけです。そして、これは面白そうだ、という衝動に駆られ、引退するのをやめてビジネスをスタートしたのです。

私も今の仕事をはじめたきっかけは、90%以上は偶然です。たまたまガーバー氏と会い、これはやらないといけない、という衝動に駆られてスタートし、いまに至っています。

なぜ、そのような衝動が起きたのかは、いまだに自分でも明確には説明できていません。起業というのは、子供がスポーツ選手を見て「自分も将来ああなりたい」と思うようなものです。そこに、なぜやるか?というような論理的な説明などないのです。

 

ビジョンとは、感情を通して私たちに呼びかけるものであり、目的とは、ビジョンを論理的に整理したものなんだ。

この文章は前文の続きの件です。ここでいうビジョンが先ほどの衝動のようなものです。「何をやるかより、なぜやるかが大事」と言われます。しかし実際の起業家の中では「何をやるか?(WHAT)”が最初にきます。

サイモン・シネックという人物が書いた、名著「Whyからはじめよ」という本があります。優れたリーダーは、まず、なぜそれをやるか?(WHY?)から伝える、というのが中心的なメッセージです。これはいまの話と矛盾するように聞こえるかもしれませんが、起業家の頭の中にあるWHATを説明する手段がWHYなのです。

起業家が、これをやりたいという衝動(WHAT)は、他の人には理解できません。他の人は起業家と同じ体験をしていませんし、衝動が起きるきっかけも体験していないからです。これをやりたい、とWHATだけを伝えても他の人には伝わりません。だからWHYから始めなさい、ということなのです。

多くの経営者が経営理念を言葉にすることに苦しみます。理念や目的がないからではありません。自分の中にある衝動を、自分でも説明できないからです。

 

映画「ベスト・キッド」を覚えているだろうか?(中略)空手の達人は「ワックスをかけ磨く」ことと、空手をマスターすることの関係を知っていた。しかし、空手をマスターするために何が必要かを知るはずもない少年は、ワックスがけと空手に関係があるとは思ってもいない。経験不足からくる見習い段階でのいらだちは、様々な世界に共通するものであり、技術をマスターする前の段階で挫折してしまう。

ガーバー氏は、ワールドクラスの会社を作る方法は技術であり、訓練によって身に付けることが出来る、と言っています。その訓練の中には、一見すると理不尽で、ワールドクラスの会社を作ることとは関係がないように見えることも含まれています。

たとえば、ガーバー氏がクライアントに組織図を作るよう求めたときのことです。ほとんどのクライアントは、会社を成長させるためになぜ組織図が必要なのか?を理解できなかったそうです。

本書の中では、ガーバー氏はワールドクラスの会社を作るためには、自己を深く見つめないといけないと、サラに伝えます。サラは最初はそれが会社を作ることと何の関係があるのかを理解できませんでしたが、徐々にその重要性に気が付いていきます。
たとえば経営者の価値観は企業文化に直結します。経営者の人生計画は会社の長期計画に影響します。そして経営者の思考の癖が、組織の弱みにも強みにもなります。

本書に出てくるサラのように、ぜひ一度、ご自身の情熱は何なのか?人生の目的は何なのか?そして、それがどういまのビジネスに影響を与えているのかを見つめてみてください。

 

「リーダーシップを学ぶ」の解説

リーダーシップにおいても普遍的なルールが存在する。

経営者は、自分で自覚しているにしろ、していないにしろ、リーダーシップが必要な立場にあります。一方で、”リーダーシップ”という言葉ほど、多様な定義が存在する言葉もないかもしれません。そこで仕組み経営では、リーダーシップを3つのカテゴリーに分けて定義をしています。

・リーダーシップスタイル
・リーダーシップスキル
・リーダーシップシステム

の3つです。

リーダーシップスタイルというのは、その人独自のリーダーとしての在り方を指しています。たとえば、スティーブジョブズとビルゲイツは全くスタイルが違いますが、両者とも優れたリーダーであることには違いありません。


リーダーシップスキルというのは、あらゆるリーダーに求められる一定のスキルを指しています。リーダーシップスタイルがどうであれ、リーダーとしてのポジションにある人には必ず求められる能力のことです。

リーダーシップシステムというのは、組織に内在するリーダーシップの仕組みです。これがあるかないかで、リーダーが交代しても組織が上手くいくかどうかが決まります。

これら3つのカテゴリーに分けることで、リーダーとして何をしなくてはいけないかが明確になります。

 

明快な長期のビジョンを持ってビジネスを立ち上げる人はそういないから、ほとんどの人は、目の前で起きることに反応しているだけなんだ。そして、反応する能力とリードする能力とを混同しているんだよ。この二つの能力はまったくの別物なのにね。

ガーバー氏は、職人型ビジネスと起業家型ビジネスの大きな違いとして、ビジョンの有無を挙げています。ビジョンがなければ、必然的に目の前の仕事をすることだけに集中することになります。

目の前の仕事をこなす。部下の仕事を評価して訂正する。部下を育てる。社内の調整をする。こうした「物事に反応している」だけでは、リーダーの仕事をしているとは言えません。ビジョンが何なのか?どうすればそこに行けるのか?を決めることがリーダーとしての大きな仕事になります。

 

起業家の仕事、マネージャーの仕事、職人の仕事、それぞれのために一定の時間を毎日とっておく。どの仕事にどれだけの時間を費やすかは重要ではないけれども、最初に決めた割合を守って仕事を続けてみよう。

これはメルマガでも何度もお伝えしていますが、大半の中小・スモールビジネス経営者は、職人の仕事が70%、マネージャーの仕事が20%、起業家の仕事は多くても10%しかしていません。

ガーバー氏は、職人型ビジネスから抜け出す第一歩は、自分がどんな仕事に時間を使っているのかを知ることだと言っています。彼がビジネスをスタートさせた当時、クライアントには、まずタイムログという時間の記録を取ってもらっていたそうです。

1週間分の仕事の内容を事細かに記録することで、どれだけ職人の仕事に没頭してしまっていたか?を自己認識できるのです。そののち、仕事を整理して、やることとやらないことに分けていきます。これはリーダーシップスキルのうちの一つ、整理力です。

 

「マーケティングを学ぶ」の解説

僕たちが本当の起業家になるために学ぶ7つのルールは、ひとつずつ順番に積み上げていくブロックのようなものではなく、パズルのピースのようなものなんだ。どのピースが欠けていても、ワールドクラスの企業を作るというパズルは完成しない。

本書で紹介されている7つのルール(今後紹介していきます)は、もともとは、「セブン・センター・オブ・マネジメント・アテンション」と呼ばれていたものです。日本語にすれば「経営陣が気に掛けるべき7つの分野」といえるかも知れません。

私たちは今ではこれを、「7つの経営力学」と呼んでいます。引用文にもあるとおり、リーダーシップやマーケティング、財務といった7つの分野は互いに依存し合っています。まさに力学と言えるものです。

私たちのコーチングの現場では、最初に「リーダーシップ」から始めます。そのあと他の分野に進み、もう一度リーダーシップに戻ってくることが少なくありません。

「これを考えるにはビジョンに立ち戻る必要があるよね」
「戦略的指標はこっちのほうが良かったんじゃなかったかな」
(※ビジョン、戦略的指標ともにリーダーシップ分野の仕組みの一つ)

というように、仕組み化を進めていけばいくほど、会社のすべてのパーツが密接につながっていることがわかってきます。だからマーケティングはこっち、経営理念はこっち、ブランドはこっち。そうやってあちこちからノウハウを持ってきても、一貫性が取れません。

会社全体の仕組みを貫く軸を持っている会社こそが、一貫性のある会社とみなされ、強いブランドを築くことが出来ます。この章に例として出てくるスターバックスやフェデックスはそのような会社と言えます。

 

次のレッスンでは、会社にとっての専売特許とは何なのかを考えてほしい。

「専売特許」は、いわゆるUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)のことです。USPは、広告のプロであるロッサー・リーブスが世に広めた概念です。いまではマーケティングを語るのに欠かせない言葉になっています。

専売特許と訳されているとおり、まるで特許のごとく、”自社だけがその市場に提供できる売り”という意味です。

USPがある会社は市場でとびぬけた存在になることが出来ます。他の会社が提供できないものを売っているので、顧客は自社に来るしか選択肢がありません。

しかし、本書にも書かれていますが、本当の意味でUSPを持っている会社は極端に少ないのが現実です。USPとは、つまりは顧客との約束です。

”これが出来るのはうちだけですよ”と顧客に約束をして、お客様にお金を払っていただくわけです。だからUSPを創るには、単にキャッチコピーを考えればいいわけではありません。USPを考える時点で、本当にその約束が守れるのか?と考える必要があります。

約束を守るためには、自社内部の仕組みが必要なのです。実際にはその内部の仕組みこそが、自社の独占的な資産と言えます。USPを持っている会社が少ない、というのは、その内部の仕組みを創るのが難しいから、という理由があります。


とはいえ、USPは勝手に出来上がるものではなく、意図しなければ生まれることもありません。本書にあるように、周りにある会社を見回してみて、専売特許を持っている会社とはどんな会社かを探してみてください。

 

「財務を学ぶ」の解説

スモールビジネスの経営者は、常にお金のことを考えているか、お金について考えることから逃げているかのいずれかである。もっと良いお金との付き合い方があるはずである。

お金に対する価値観は、人それぞれです。スモールビジネス経営者の中で、意外と多いのは「修道士」と私たちが呼んでいるタイプです。修道士はお金とはなるべく関わりたくないと思っている人たちです。

会計士や担当者に財務・経理を任せて放ったらかしにしていたり、良い仕事をすればお金はあとから付いてくると自分に言い聞かせており、お金について考えないことが美徳だと信じています。

本章の中では、ガーバー氏が財務面を共同創業者に任せって切りにしていたために起こったトラブルについて記載されています。当時のガーバー氏は、修道士タイプだったのかも知れません。会社が初期の頃は修道士タイプでも生き残れますが、規模が拡大していくにつれ、お金の現実と向き合うことが求められます。

そこから逃げていると、どうなるか。まったく儲かっていない事業に投資をしていたり、実際には赤字事業だと気づかなかったり、本来得られるべきキャッシュフローを逃していたり。非常に大きな壁に突き当たることになります。

お金のことを気にしすぎてもいけませんが、かといって修道士のままでも問題があります。

 

私たちは意識しないうちにも、自分たちの人生、ビジョン、目標を実現可能なものへと縮小してしまう。それに合わせて、財務的な目標も前例を参考にして、縮小してしまう。

いわゆるスモールビジネスオーナーと起業家は、財務に対する考え方がまるで違います。スモールビジネスオーナーは、会社のお金と個人的なお金の区別があいまいで、財務状況を社員に対して共有することにも抵抗しがちです。

そこそこ売上が上がってくると、自分の収入も安定してくるため、この引用文にあるように積極的な財務戦略をとることがありません。また借り入れにも消極的になりがちです。

一方、起業家はお金は会社を成長させるために活用しないといけない資源と考えており、積極的にお金を循環させようとします。「お金は天下の回りもの」という日本の言葉があります。起業家はまさにそういう考えの持ち主です。ビジョンを追うために必要な資金を外部から積極的に調達し、それ以上の価値を世の中に提供します。

 

経営者として私は、お金には絶え間ない注意が必要であることを学んだ。毎日、いや毎時間注意を配るべきである。

最近は中小・スモールビジネスでも日次決算をしている会社も増えています。社会が動くスピードが上がっているので、財務上の判断もスピードを上げてやっていく必要があります。

いまでは現場と会計を連携できるクラウドツールも普及していますので、そういったツールも積極的に活用すべきと言えるでしょう。

 

財務の責任者である共同経営者に、僕は最高経営責任者としての責任もゆだねてしまった。

先ほど言った通り、ガーバー氏は本章の中で、財務面を共同創業者に任せって切りにしていたために起こったトラブルについて記載しています。これも中小・スモールビジネス経営者に非常に多い失敗パターンです。

”右腕に任せてるから”
”彼が上手くやってくれているから”

というのは一見すると理想的に思えますし、人を使うことが上手い経営者、とみなされることもあるでしょう。しかし、その実態は、特定の人物に依存してしまっている職人型ビジネスです。現実を把握する仕組みがないままに、人を信じ切ってしまい、大きなトラブルに陥ります。

ひどい場合だと、信じていた人にお金を持ち逃げされたりします。この引用文にある通り、「作業」を任せるのと、「責任」を任せるのは大きく違います。少なくとも財務においては、「責任」は最後まで経営者が持っているべきものと言えるでしょう。

 

「マネジメントを学ぶ」の解説

重要な通過点を経験したときに持つ感情は、将来への期待の持ち方に影響を与える。失望を感じることが多いのであれば、これからも失望を感じることになるだろう。一方で、感動することが多いのであれば、これからも感動し続けるだろう。(中略)リーダーの役割は、組織の思考パターンを平凡なものからワールドクラスに飛躍させることにあるんだ。

運が良い人は、何が起きても運が良いと感じ、運が悪い人は何が起きても運が悪いと感じる、といわれています。それが行動にも影響を与えて、人生の結果にも影響が与えます。

私たちは、会社もそれ自体が生き物のようなものであり、独自の人格を持っているとお伝えしています。それを考えると、会社に何か起こったときにどう反応するかは、過去に似た出来事へどう反応してきたか?によって決まります。

それがここで言っている組織の思考パターンです。より一般的な言葉でいえば、「企業文化」と呼べるかもしれません。企業文化とは、職場がアットホームだとか家族的な雰囲気だとか、そういうことではありません。それはそれで重要ですが、企業文化はもう少し深いレベルの話で、意思決定をどのように行うか?ということに影響します。

企業文化のベースにあるのは、創業者がそれまでの人生で培った個人的な価値観や信条です。ガーバー氏はこの本の中で、企業文化という言葉を使ってはいません。

しかし本章の内容からすると、経営者の重要な役割のひとつはここにあります。企業文化をいかにして自社にとって好ましいものへ変えていくか?であると言っていいでしょう。


ちなみに企業文化については、私が昔勉強会で使った資料がこちらにアップしてありますので、ご興味ある方はご覧ください。

 

イノベーションとマニュアル化が異質なもので、相いれないと決めつけるのは簡単なことさ。誰もが同じ結果が得られるようなマニュアルを創れば、私たちは創造力を失ってしまうかも知れない。しかし、イノベーションとマニュアル化が両立可能だとすれば、どうだろう?

ガーバー氏が提供している重要なコンセプトの一つが、

「数値化」⇒「イノベーション」⇒「組織化(マニュアル化)」⇒「数値化」⇒「イノベーション」⇒・・・

という事業開発サイクルと呼ばれるものです。引用文にあるように、仕事のマニュアル化だけでは足りません。その効果を測る仕組み(数値化)と、結果を改善する仕組み(イノベーション)が要ります。マニュアル化だけに重点が置かれると、いわゆる官僚型の企業文化になります。

一方で、事業開発サイクルを回せるようになれば、”整っていながらも創造力の発揮できる組織”が出来ます。そのような組織は市場で競争優位性が高いだけではなく、働いている社員にとっても仕事の工夫の余地が生まれ、働き甲斐のある組織になります。

 

どのような会社であっても、社会が大きく変化して、存在意義を失い、顧客の要望にこたえられなくなる時は来るものさ。それを予め予想して、新しい会社 – 起業家としての第二の人生の始まり – の準備を進めなきゃならないんだ。

この一文は、本書の中で私が最も好き、かついつも念頭においているものです。本当の起業家は常に、既に利益を上げている事業(古い会社)を仕組み化して整えると同時に、新しい事業(新しい会社)を創造していきます。

ニトリ創業者の似鳥さんも次のような言葉で同じことを表現されています。

”事業環境の変化を予測し、正しい計画を立てられるかどうかが、会社の運命を決めます。”

私たちも、お客様と一緒に年間計画を創るときには、自社の周りで、どんな環境の変化があるかを検討するところから始めていきます。環境変化を考慮していない計画は自己中心的であり、無意味だからです。

 

もし、オールアバウトパイをもう一度やり直すことになった時、守り続けたいと思う聖域はあるだろうか?もし聖域があるとすれば、それはワールドクラスの企業になるために役立つものだろうか?

私が初めてガーバー氏と出会い、初めて彼の講義を受けた時、最初に言われたのが、「Blank piece of paper and beginner’s mind」(真っ白な紙と初心者の心)で取り組めということでした。

これは禅の思想にも通じるものです。当時はいまいち意味がわかりませんでしたが、今ではわかります。職人型ビジネスから起業家型ビジネスへ変わるためには、自分の人生を白紙の状態、初心者の心で見つめ直す必要があります。そこからビジネスを作り直すことになります。

自分の凝り固まった価値観や習慣がビジネス変革の妨げになっていることが良くあるからです。本書の中で、ガーバー氏がサラに問いかけたように、次の2つの質問、

・もう一度いまのビジネスをやり直すことになった時、守り続けたいと思う聖域はあるだろうか?
・もし聖域があるとすれば、それはワールドクラスの企業になるために役立つものだろうか?

をぜひ考えてみてください。

 

「顧客満足を学ぶ」の解説

今回登場する「顧客満足」は、原書では「クライアント・フルフィルメント」です。クライアント・フルフィルメントとは、メルマガで何度もご紹介をしていますが、顧客に提供するすべてのものを指します。

病院であれば、患者が来院してから退院するまでに体験するすべてのことです。ネット通販であれば、注文が入ってから商品を届けるまでに行うすべてを指します。

というわけで、本当は「顧客満足」と訳してしまっては若干概念が違うのですが、混乱を招くので、今回は顧客満足という言葉をそのまま使わせてもらいます。

 

マーケティングのリーダーとしてあなたは、自分の会社が同業他社とはまったく違って見えるような約束を果たしてきたはずである。顧客満足のリーダーとして、あなたは約束を守るための顧客満足システムを設計し、実行し、改善しなければならない。

英ヴァージングループは、ヴァージン航空やヴァージンコーラ、ヴァージンギャラクテックなど単一ブランドで複数の業種に展開している、世界でも珍しい会社です。当然ながらブランドとは何かを熟知している会社なのですが、その創業者リチャードブランソン氏は、「ブランドとは約束である」と言っています。

見込み顧客に対して「うちの会社はこのような価値を提供します」と約束する。その約束を実際に守り続けられるかどうかが、ブランド力を決めます。一般にブランドというと、綺麗なウェブサイトや店舗の見た目、知名度を思い浮かべるかもしれません。しかしいま述べたことを踏まえると、それらはブランドの一要素にすぎないと分かります。

本書が紹介する経営の7つの分野でいえば、約束をするのはマーケティングの機能です。そして約束を守り続けるのが、今回のテーマである顧客満足システムになります。ブランド力を高めたい。他社と差別化されたブランドを創りたい。そう考えるなら、この顧客満足システムを完成させる必要があります。つまり、顧客があなたの会社と出会ってからのすべてのやり取りを、他社と差別化する。そのうえで、そのやり取りが属人的にならないよう仕組みにしていくことが求められます。


 

顧客転換指数(一般客から優良顧客に何人が転換されたか)、顧客維持指数(顧客との契約期間や顧客の購買量=顧客の生涯価値)、顧客乗数(ひとりの顧客から何人の顧客が紹介されたか)。これらの3つの指標を組み合わせたものが、あなたの会社の顧客満足指数となり、顧客満足システムが上手く機能しているかを測るモノサシとなる。

ガーバー氏の基本的な教えのひとつは、会社で起こるあらゆることを数値化しなさい、というものです。この数値化していくにあたり重要なことは、

・何が「重要な数字」なのかを知ること
・何がその「重要な数字」に影響を与えるのか?

です。

たとえば、視察に行った米Infusionsoft社はガーバー氏のクライアントで、急成長中のIT企業です。同社は自社独自の「重要な数字」を定義し、社内の誰でも見られる場所に大きく掲示していました。

彼らは何が自社にとって「重要な数字」なのかを考え抜いて、独自の式で計算できる数字を導きだしました。その数字さえ改善すれば利益も上がるし、顧客の満足度も高い、という数字です。その数字を知り、社内のどんな活動がその数字に影響を与えるのかを知っていれば、日々やるべきことは明確になります。その明確さは生産性の高さにも繋がります。

 

顧客満足のリーダーとして、きみが取り組むべきことは、生涯にわたる顧客との関係を想像しながら、思いやりと共感のあふれる接客の方法を考えることなんだ。もしこれが実現すれば、顧客は親友に接するように、敬意とやさしさと愛情をもってきみにも接してくれるだろう。

本章のテーマである顧客満足システムを創るには、

  1. 顧客との接点をすべて洗い出す
  2. 自社のブランドとは何だったのかを思い出す(定義する)
  3. そのブランドの約束を満たすように、すべての接点を考え直す
  4. それらを文書化する

という手順で行います。

私たちのコーチングを受けていただいている方に、これらの手順を社内でやっていただくと、新しい発見がいくつも生まれることが多いです。そして、いまやっている業務の改善点を見つけることが出来ます。

その改善を続けていくと、引用文に書かれたレベルに到達できます。「顧客は親友に接するように、敬意とやさしさと愛情をもってきみにも接してくれるだろう」という状態です。

これは難しいことではありますが、実現できれば他社とは全く異なる価値を顧客に提供でき、業界内でも一目置かれる会社になることが出来ます。ガーバー氏は、この顧客満足システムこそ、最初に取り組むべき部分であると言っています。ぜひあなたも、顧客の視点で、自社の顧客満足システムを見直してみてください。

 

「見込み客の創出を学ぶ」の解説

見込み客の創出を継続しない企業は、過去の顧客基盤を食いつぶすだけになってしまう。豊かに果実を結んでいた樹も、手入れを怠れば実を結ばなくなる時期は来るものである。真剣にワールドクラスの企業を作りたいと考えるのであれば、見込み客の創出というプロセスを止めてはならない。

経営者の中には、意外なほど新規顧客の獲得に関心がない方もいらっしゃいます。たとえば、

・独立してから受託型のビジネスをしており、これまで新規顧客を探す必要がなかった場合。
・リピート顧客がほとんどの場合。
・よくわからない/スキルがないからやっていない場合。

などです。時には、集客しなくてもやっていけている、ということを誇りにしている方もいらっしゃいます。しかし、この引用文にあるとおり、あらゆる会社は、見込み顧客の創出活動を続けなければ、衰退していってしまいます。

今現在、リピート顧客が100%だったとしても、その顧客基盤は、いずれ縮小していきます。顧客はたとえ、あなたの商品やサービスに完ぺきに満足していたとしても、あなたのビジネスと取引をしなくなることがあるからです。

・引っ越しのために物理的に来店できなくなった。
・転職やキャリアチェンジであなたのサービスが必要なくなった。
・年齢を重ね、あなたのサービスが必要なくなった。
・望む結果を手に入れ、あなたの元から”卒業”した。
・死亡や病気

などなど、あなたの商品、サービスの品質とは無関係に顧客が去っていくことがあります。したがって、いまのビジネスを維持するためだけにも、何かしらの方法で見込み顧客を創出し続ける仕組みが必要なのです。

 

見込み客を創出するプロセスでも、きみは作業に追われてはならない。情熱を開放することで想像力を働かせてチャンスを発見することがリーダーの役割なんだよ。

集客活動は、会社の業務の中でも、最も多様な選択肢がある活動かもしれません。集客の方法は数多くあります。広告、チラシ、看板、ジョイントベンチャーなど、挙げればきりがありません。それが原因で、多くの手間と労力、そしてテストが必要なのが集客活動です。

ここで注意しておきたいのは、無料の集客はない、ということです。よく「無料で集客しましょう」というような広告(それ自体が矛盾してますが、、)を出している業者がありますが、まずありえません。

SNSやブログ、SEOなどの広告費がかからない集客をするにしても人件費が必要だからです。時給10万円の社長が1時間かけてSNSの投稿や、やり取りをしてれば、10万円のコストがかかっていることになります。その分、広告をかけたほうが効果が高いかも知れません。

ここで言っている、「作業に追われてはならない」というのは、そういう意味です。まずは投資効果が高い集客のルートをひとつでも見つけ、その運用を仕組み化します。その後、同じようにして集客のルートを増やしていきます。

 

スモールビジネスの経営者は、いつもこんな不満を言っている。「なぜ私がアイデアを出すばかりで、従業員は創造的になってくれないのか」(中略)優良顧客を多く獲得したいのであれば、家路につく従業員の後を追うべきである。従業員の家を訪れて、どのような生活を送っているのかを知るべきである。


本文の中で、ガーバーは、集客のアイデアを生み出すのに、積極的に社員を巻き込むことを推奨しています。中小・スモールビジネスにおいては、役職や部署を問わず、全員が集客を意識することが大事になってきます。そのためにも、各社員が日々どんな気持ちで仕事をしているのかを経営者が理解しなくてはいけない、と言っています。

 

たとえマーケティングの知識を持っていなくても、様々なアイデアを生み出す能力を備えていることに彼らは気付いてくれるだろう。こうしてワールドクラスの企業にふさわしい創造的な文化が定着していくんだよ。

これはメルマガでも何度もお伝えしていますが、仕組み化やマニュアル化することで、官僚的な組織になっては意味がありません。「イノベーション・マニュアル化・数値化」のサイクルを回します。整っていながら創造的でもある組織を作っていきます。

社内に仕事のルールや習慣があることで、ルーチン的なことに頭を使わずに済み、他の創造的なこと(本章でいえば新しい集客のアイデアを生み出すなど)に時間を使えるようになります。結局のところ、仕組み化とは人々がより創造的になるための手段なのです。

 

あとがき

さて、以上で本文からの引用は終わりますが、本書の「あとがき」の冒頭にこんな言葉が引用されています。

エレノア・ルーズベルト

”自分が不可能だと思うことをやらなければならない。”
— エレノア・ルーズベルト

この言葉はいつもお伝えしている「職人」と「起業家」の違いを端的に表していると思います。職人は日々、自分が出来ると既にわかっていることをやりに職場に行きます。一方の起業家は、不可能かも知れないが、大事なことを発見しに職場に行きます。

ガーバー氏も、次のような言葉を残しています。

”あなたにとって不可能なこと、あなたの存在より大きいこと、あなたが恐怖を感じることを成し遂げることに価値を置く。もしそうでなければ、それはあなたがやるに値しない。”

あなたがいまやっていることは、これまでにあなたがやってきたことを越えていますか?

あなたの社員がやっていることは、これまでに彼らがやってきたことを越えていますか?

人間は元来、成長を求めるものであり、成長できるという実感が仕事に対する動機や創造性を生み出します。それは経営者であろうと、社員であろうと、顧客であろうと同じです。関わる人々がより成長できるビジネスを創ろうとすることが起業家の大きな役割でしょう。

以上で「起業家精神に火をつけろ!」の要約を終わります。この本は前作に比べると難解です。細かい部分には、いまの日本のビジネスに合わない箇所もあります。それでも前編と後編を通してお読みいただいたことで、仕組み化と起業家精神が何を指すのかを、より深く理解いただけたはずです。

合わせて読みたいガーバー氏の記事

詳しくは以下から仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。


>仕組み化ガイドブック:企業は人なりは嘘?

仕組み化ガイドブック:企業は人なりは嘘?

人依存の経営スタイルから脱却し、仕組みで勝手に成長する会社するための「仕組み化ガイドブック」をプレゼント中。

CTR IMG