経営会議とは、社長と経営に関わる人たちが集まり、会社の方向に関わる判断を行う会議のことです。多くの会社で月に1回ほど開かれています。
ただ、開いている会社に話を聞くと、たいてい同じ悩みが出てきます。「気づいたら各部門の報告を聞くだけの場になっている」というものです。
この記事では、経営会議と取締役会の違い、アジェンダの作り方と例、資料に入れる項目、議事録の書き方までをご紹介します。あわせて、経営会議が報告会になってしまう3つの理由もお伝えします。
1. 経営会議とは?目的と役割
経営会議は、会社の方向に関わる判断を、社長ひとりではなく複数人で行うための場です。参加するのは社長と、経営の判断に関わる立場の人たちです。
まず押さえておきたいことがあります。経営会議は、法律に定めのない会議です。あとで詳しく書きますが、取締役会は会社法に決まりがある機関で、経営会議にはそれがありません。だから開く義務もなければ、決まった形もありません。会社が自由に設計してよい会議です。
自由だということは、逆に言えば設計しなければ何も決まらないということでもあります。何を決める場なのかを決めていないから、報告を聞く場になっていくのです。
経営会議の3つの目的
経営会議でやることは、次の3つに整理できます。
- 決める……会社としての判断を下す。ここが会議の本体
- すり合わせる……決める前に、複数の見方を出し合う
- 見る……決めたことがどうなったかを確認する
このうち「見る」だけが残った状態が報告会です。数字の報告を聞いて、質疑応答をして、次回また報告を聞く。決める場面が一度もないまま1年が過ぎている会社があります。
経営会議と経営チームの違い
似た言葉に「経営チーム」があります。この2つは指しているものが違います。
- 経営チーム……人の集まり。誰が経営の判断に関わるのかという顔ぶれ
- 経営会議……その人たちが集まる場。いつ、何を、どうやって決めるのかという運営
順番としては、先に経営チームを決めて、そのあとに会議の運営を決めます。メンバーが決まっていないまま会議の形だけ整えると、その日たまたま手が空いていた人が集まる場になります。
経営会議は英語で何と言うか
英語では「management meeting」「executive meeting」と表現します。組織そのものを指すときは「management committee」という言い方もあります。
注意したいのは「board meeting」です。これは取締役会を指す言葉なので、経営会議の訳として使うと意味が変わります。海外の相手に説明するときは、法律上の機関である取締役会と、社内で任意に開いている会議を区別して伝えてください。
2. 経営会議と取締役会の違い
ここがいちばん誤解の多いところです。結論から書きます。
- 取締役会……会社法に定めのある機関。設置している会社では、法律で決められた職務がある
- 経営会議……法律に定めがない。会社が任意に設けている会議
会社法によれば、取締役会の職務は3つです。業務執行の決定、取締役の職務執行の監督、そして代表取締役の選定と解職です。取締役会はすべての取締役で組織すると定められています。
一方、経営会議には何の定めもありません。参加者も、頻度も、決められる範囲も、会社が決めます。
取締役会でしか決められないこと
実務でいちばん大事なのはここです。会社法は、取締役会が個々の取締役に任せてはいけない事項を挙げています。主なものは次のとおりです。
- 重要な財産の処分および譲受け
- 多額の借財
- 支配人その他の重要な使用人の選任および解任
- 支店その他の重要な組織の設置、変更および廃止
- 社債の募集に関する重要事項
- 取締役の職務執行が法令や定款に適合することを確保するための体制の整備
- 定款の定めに基づく役員等の責任免除
つまりこれらは、経営会議でどれだけ議論しても、それだけでは決まりません。取締役会を設置している会社なら、取締役会の決議が必要です。
ここを取り違えている会社があります。経営会議で新しい支店の設置を決め、そのまま動き出してしまう。あとから手続きの不備が見つかる、という形です。経営会議は「議論して案を固める場」、取締役会は「法律上決める場」と考えると整理しやすくなります。
なお、自社の機関設計がどうなっているか、どの案件が該当するかは会社によって違います。判断に迷う場合は、顧問の弁護士や司法書士に確認してください。
取締役会を置いていない会社の場合
中小企業では、取締役会を設置していない会社も多くあります。その場合の決め方は、取締役が何人いるか、定款にどう書いてあるかによって変わります。まず自社の定款を確認してください。
取締役会がない会社では、経営会議が実質的な意思決定の場になります。だからこそ、そこで何をどう決めるのかを自分たちで書いておく必要があります。法律が決めてくれないぶん、会社が決めるしかないのです。
他の会議との違い
社内には複数の会議があります。経営会議の位置づけを他と比べておきます。
- 経営会議……経営に関わる人が集まり、会社の方向に関わる判断をする
- 全社会議……全社員が集まる。主な目的は情報の共有と方向の共有
- 定例会議……部門やチームで繰り返し行う会議の総称
- 部門会議……その部門のなかの実務を進める
線を引く目安を一つ挙げます。今週中に決めないと業務が止まる話は現場の会議、3か月先に効いてくる話が経営会議です。この線を先に引いておかないと、緊急の話が必ず重要な話を押しのけます。
3. 経営会議が報告会になる3つの理由
ここがこの記事の中心です。多くの会社で経営会議が報告会になります。原因は参加者のやる気ではありません。3つの構造から起きています。
理由1.決める議題と知らせる議題が混ざっている
いちばん大きい原因です。アジェンダに「営業部からの報告」「製造部からの報告」「新規事業について」と並んでいると、何が起きるか。
報告は必ず決議を押しのけます。報告には終わりがないからです。数字の説明が長引き、質問が出て、その場で細かい話に入り込む。気づけば予定の時間になっていて、いちばん決めたかった議題が「次回に持ち越し」になります。
これが毎月続くと、決める議題は永遠に先送りされます。そして参加者は「この会議では何も決まらない」と学習します。
理由2.決め方が決まっていない
意見が割れたときにどうするかを、あらかじめ決めていない会社が多くあります。すると割れた瞬間に「じゃあ社長が決めてください」に戻ります。
これでは経営会議を開いている意味がありません。社長が一人で決めるなら、会議は要らないからです。多数決なのか、社長が最終判断するが反対意見を必ず記録に残すのか。どちらでもよいので、先に決めておいてください。
理由3.決まったことが次回まで追いかけられない
その場では決まるのに、次の会議で誰も確認しない。すると決めたことをやらなくても何も起きない状態になります。
対策は単純です。会議のいちばん最初に、前回決めたことがどうなったかを確認する。この5分を固定するだけで、決定事項の実行率が変わります。
3つとも、参加者の性格や意識とは関係がありません。議題の並べ方、決め方の取り決め、最初の5分。どれも会議の設計の問題です。
4. 経営会議のアジェンダの作り方
では実際にどう組むかです。
議題を3種類に分ける
アジェンダを作るとき、議題を必ず次の3つに分類してください。
- 決める……この会議で結論を出す
- 相談する……結論は出さないが、意見を集めたい
- 知らせる……共有するだけ。議論しない
そのうえで、「決める」議題を先頭に置いてください。時間が足りなくなったときに削られるのは、いつも後ろの議題だからです。
さらに「知らせる」議題は事前に配り、会議では読み上げません。質問がある人だけがその場で聞く形にします。ここを変えるだけで、会議時間の3割ほどが空きます。空いた時間は「決める」に回してください。
アジェンダの例(月1回・90分の場合)
実際の組み方の一例です。
- 0〜5分……前回の決定事項の確認(やったか、やっていないか。理由の説明は不要)
- 5〜20分……数字の確認(事前配布済み。質問のみ受ける)
- 20〜70分……決める議題(1件あたり15〜25分。2〜3件まで)
- 70〜85分……相談する議題
- 85〜90分……決まったことの読み上げと、担当者・期限の確認
決める議題を1回に4件以上入れないでください。入れると、どれも中途半端な議論のまま時間切れになります。決まらなかった議題が積み上がると、会議そのものへの期待が下がります。
議題の集め方と締切
議題は当日に出させないでください。会議の3日前を締切にして、事前に集めます。そのとき、出す人には「決めたいのか、相談したいのか、知らせたいのか」を必ず書いてもらいます。
これを求めると、出す側が自分で整理するようになります。「何を決めてほしいのか」を一行で書けない議題は、まだ議題になっていません。
5. 経営会議の資料に入れる項目
資料の作り方で悩む会社も多くあります。基本は1議題につき1枚です。厚い資料は読まれません。
「決める」議題の資料には、次の5つを入れてください。
- 背景……なぜこれを決める必要があるのか(3行以内)
- 選択肢……考えられる案を2つ以上。1案しかないなら、それは報告であって決議ではない
- 推奨案とその理由……出した人がどれを推すか、なぜか
- 決めてほしいこと……この会議で何を決めるのかを一行で
- 決まった場合に動くこと……誰が、何を、いつまでに
このうち2つ目の「選択肢」がいちばん抜けます。1つの案だけを持ってきて説明すると、会議は「承認するかどうか」の場になります。参加者は賛成するか黙るかしかできません。案を2つ以上並べて初めて、議論する材料がそろいます。
資料を作りすぎない
経営会議のために何日もかけて資料を作っている会社があります。これは本末転倒です。資料づくりに使った時間は、そのぶん現場の仕事から引かれています。
見た目を整える必要はありません。上の5項目が入っていれば、手書きでも成立します。資料の完成度と、決定の質は関係がありません。
6. 経営会議の議事録の書き方
議事録は、発言をそのまま書き起こすものではありません。次の4つが書いてあれば十分です。
- 決まったこと……結論を一行で
- 決めた理由……なぜその案を選んだのか
- 誰が、何を、いつまでに……実行する人と期限
- 持ち越したこと……決まらなかった議題と、次にいつ扱うか
いちばん抜けやすいのは2つ目の「決めた理由」です。結論だけを残すと、半年後に「なぜこうしたんだったか」が分からなくなります。前提が変わったときに見直せるのは、理由が書いてある場合だけです。
もう一つ。反対意見が出たときは、それも残してください。結論と違う意見があったという事実が記録に残っていると、あとで状況が変わったときに立ち返れます。何より、書き残される前提があると、次から反対意見が出やすくなります。
議事録は誰が書くか
社長以外の人が書いてください。そして持ち回りにするのを勧めます。書く側に回ると、議論を構造で聞くようになります。参加者を育てる場としても機能します。
書いた議事録は、会議の翌日までに参加者へ回します。時間が空くほど記憶が薄れ、確認されないまま流れます。
7. 経営会議の参加者・頻度・時間
参加者は誰にするか
社長と、経営の判断に関わる立場の人です。人数は社長を入れて3〜5人が動かしやすい規模です。多くても6〜7人までにしてください。8人を超えると、議論の場ではなく報告会になります。
役職で自動的に決めないでください。肩書きが役員でも、反対しても何も止まらないなら、その人は実質的に決める側ではありません。
頻度は月1回が基本
月1回を基本にしてください。週1回にすると、扱う議題が現場の話に寄っていきます。それは経営会議ではなく部門会議です。
四半期に1回だと、決定が遅れます。市場の動きに対して反応できるのは、月1回が下限だと考えています。
時間は90〜120分
90分から120分が現実的です。それ以上長くすると集中力が持たず、後半の議題が雑になります。時間を延ばすより、決める議題の数を減らしてください。
司会は社長以外が務める
これは重要です。社長が司会をすると、議題の順番も、議論の打ち切りも、社長が握ることになります。参加者は社長の様子を見ながら話すようになり、率直な意見が出にくくなります。
司会は社長以外の人が務め、社長は一参加者として発言する。この形にすると、議論の質が変わります。
8. 経営会議に関するよくある質問
社員が何人になったら経営会議が必要ですか?
人数よりも、社長のところで決裁待ちの列ができているかどうかで判断してください。目安としては、社長が全社員の仕事ぶりを直接見られなくなる20〜30名あたりで必要性が出てきます。ただし10名でも、社長が判断を抱え込んで動けなくなっているなら、その時点で始める価値があります。
経営会議と取締役会は同じ日に開いてもいいですか?
実務では同じ日に続けて開いている会社もあります。ただし議事録は必ず分けてください。取締役会は法律上の機関で、決議の記録の扱いが違います。同じ議事録にまとめてしまうと、あとから何をどちらで決めたのかが分からなくなります。
経営会議で決めたことは、いつ社員に伝えますか?
決まった週のうちに伝えてください。伝えるのは決定事項だけでなく、なぜそう決めたのかまでです。結論だけが降りてくると、現場は「上で勝手に決まった」と受け取ります。理由が伝わると、判断の基準そのものが共有されていきます。
▶経営方針とは?例文と作り方|中小企業のひな形と発表会の進め方
オンラインで開いてもいいですか?
問題ありません。むしろ移動時間がないぶん、頻度を保ちやすくなります。ただし決める議題があるときは、発言していない人を必ず指名して意見を求めてください。オンラインでは沈黙が同意に見えてしまいます。
参加者が発言しません
多くの場合、発言しても何も変わらなかった経験が積み重なっています。まず、出た意見のうち一つでも採用して、それを議事録に残してください。意見が形になった実例が一度できると、次から発言が出ます。
意識を変えようとする前に、意見が反映される経路があるかを確認してください。経路がないまま「もっと発言してほしい」と伝えても、状況は変わりません。
議題が集まりません
「何かありませんか」と聞いているからです。この聞き方では出てきません。決まった問いを用意してください。たとえば「今月、社長の判断を待っている案件はありますか」「3か月以内に決めないと困ることはありますか」です。問いを具体的にすると、議題は出てきます。
9. まとめ
経営会議についてご紹介してきました。要点を整理します。
- 経営会議は法律に定めのない任意の会議。だから会社が設計しないと形が決まらない
- 取締役会は会社法上の機関。重要な財産の処分や多額の借財などは取締役会の決議が要る
- 報告会になる原因は3つ。議題が混ざっている、決め方が決まっていない、次回まで追いかけていない
- アジェンダは「決める・相談する・知らせる」に分け、決める議題を先頭に置く
- 議事録には結論だけでなく、決めた理由と反対意見も残す
最後に、この記事でいちばんお伝えしたかったことを書きます。経営会議がうまくいかない原因を、参加者の姿勢に求めないでください。
発言が出ないのも、報告会になるのも、決まらないのも、会議の設計から説明がつきます。議題の並べ方、決め方の取り決め、議事録に何を残すか。どれも今日から変えられるものです。
そして、ここまで決めたことを1枚の文書に残してください。この文書があると、メンバーが入れ替わっても経営会議は続きます。会社の判断が社長の頭のなかではなく、会議という仕組みの側に移っていくのは、この一線を越えたときからです。
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