報連相(報告、連絡、相談)とは?
まず報連相とは一体何なのかを改めて復習しておきましょう。
報告とは?
辞書によれば、報告とは「ある任務を与えられた者が、その用務の情況・結果などを述べること」とあります。この定義によれば、報告は基本的に部下から上司に、または後輩から先輩に、というように、組織の立場上、下の者から上の者に行うことと言えます。
報告の目的は、仕事の進捗や結果を上司と部下で情報共有し、仕事を進めていくにあたって、問題がないか、上司と部下の認識が合っているかを確認することです。
報告がうまく行っていないと、部下がミスをしたのに上司がそれを知らずに、顧客に大きな迷惑をかけたり、上司が部下に依頼した内容と大きく異なる仕事をしているのに気が付かない、などの問題が起こります。
連絡とは?
次に連絡ですが、こちらも辞書によれば「通信手段などを用いて関係者に通知する」とあります。報告と似ているようですが、報告は部下から上司に対して行うのに対し、連絡は上下関係に関わらず、その情報が必要な関係者全員に対して行うもの、という違いがあります。
たとえば、「本日都合により早退します」「今日のミーティングでは〇〇を持参してください」というのは上司だけではなく、同僚にも連絡すべき事項と言えます。これらの連絡事項は同僚にとっても重要なことだからです。
また、連絡は、”上司から部下へ”行うこともあります。
たとえば、会社の重要な決定事項や計画、仕事の仕方などを部下に連絡することがあるでしょう。連絡が出来ない部下も困ったものですが、部下に重要な事実を連絡しない上司も困るものです。部下からすれば、”なんでそれを先に言ってくれなかったんだ”というようなことがあるからです。
相談とは?
最後に相談ですが、こちらも辞書によると、「問題の解決のために話し合ったり、他人の意見を聞いたりすること」を指します。仕事上で使われる相談は、主には部下から上司へ、後輩から先輩に行うものというイメージが強いでしょう。ですが、こちらも同僚同士、上司から部下への相談、というのもあったりしますので、基本的に社内の様々な関係性において行われるものと考えてよいでしょう。
相談が上手くできないと、一人で悩みを抱えこむことになり、誤った判断を下してしまったり、いつまで経ても仕事が終わらない、ということにもなります。適した人に適したタイミングで相談を行うことで、仕事の生産性は向上します。
報連相が出来ないのをその人のせいにしてはならない
社内に報連相が出来ない人がいることで悩んでいる上司や経営者は多いと思います。ここで考えたいのは、どのようなことを、どのようなタイミングで、どのような方法で報連相するかは、基本的にその人の価値判断に依存している、ということです。
つまり、上司が好むような報連相をする人は、”報連相が出来る人”と認識され、そうではない人は、”報連相が出来ない人”とみなされるというわけです。
上司と部下の報連相に対する価値判断が異なるため、問題が起こるわけです。
部下が報連相をしないのは上司の責任
たとえば、部下Aさんは、”これくらいのことは上司に報告する必要はないだろう”と思って上司Bに報告しなかったとします。一方、上司Bは、”それは報告してほしかった”と考えていれば、上司Bさんは部下Aさんのことを報連相が出来ない人だ、と認識することになります。
次に、部下Aさんが部署移動し、上司Cさんの下についたとします。部下Aさんは、上司Bさんの下で働いた経験から、”細かいことまで報告したほうが良いだろう”と考えるようになっています。そうなると、部下Aさんは上司Cさんに頻繁に報告することになります。
一方、新しい上司Cさんは、”細かいことは報告しなくていいので、自分で判断してやってほしい”と考える上司だったらどうなるでしょう。部下Aさんが頻繁に報告してくるのをうっとうしいと感じ、”そんなことはいちいち報告しなくていいので、勝手にやってくれ”となります。
部下Aさんは良かれと思って報告の頻度を上げたのに、上司Cさんからすると、部下Aさんは報連相が下手な人、となってしまうのです。
こうなると部下Aさんは不幸です。上司の報連相に関するご機嫌を伺いながら仕事をしなくてはならなくなります。これでは上司部下のコミュニケーションコストが大幅にまし、生産性が下がってしまいます。
報連相を人依存にしない
私たちは日頃、会社の仕組み化をご支援していますが、このように、人によって価値判断が異なり、その人の勘や経験に業務が依存している会社のことを”人依存の会社”と呼んでいます。
人はそれぞれ経験が異なり、その経験から得られた価値観が異なるので、組織の人が増えれば増えるほど、価値判断の違いからくるトラブルは増えるのです。先ほどの部下A、上司B&Cさんの例は、まさに人依存の典型例です。
報連相はルール作りで徹底させる
そこで、報連相のルール作りが大切になってきます。ルール作りを行うことで、報連相のやり方を属人化させず、社内で統一させることが出来ます。これにより、上司部下や同僚同士のムダないざこざやコミュニケーションコストを削減することが出来ます。
以下に報連相を上手く機能させるためのルールをいくつかご紹介していきます。
報連相のルール①仕事を委任する時点で報告ルールを決め、確認する。
報連相が上手くできないのは、いつ、どこで、どのように報連相するかを予め決めていないことに原因があります。
これはつまり、報連相が出来ない部下の問題ではなく、仕事を任せる上司の問題なのです。
そこで、仕事を任せる際に、報連相の仕方を決めておくことが大切です。会社としては、”部下に仕事を任せる際、このようなことを確認するように”とルールを決めておくことです。
- 具体的には、仕事を任せる際、
- 成果物は何なのか?
- いつ途中の報告を行うのか?(日程だけではなく、時間までを決める)
- どのように報告を行うのか?(メールか、面談か、電話か、等)
といったことを上司と部下で確認し、合意することです。
報連相のルール②上司は唐突な報告を求めない
仕事を任せ、報告のルールを決めたら、上司は唐突な報告を求めないことが大切です。唐突な報告を求めるとは、部下の背後を動き回り、部下の動きを常に監視し、“どんな調子だ?”と曖昧な質問をすることを指します。
このように部下に対して、急に、また、頻繁に報告を求めることは、非生産的になります。急に報告を要求されても、部下はその準備ができていないため、まともな報告が得られることはありません。そればかりか、状況の一部だけしか見ることができず、誤解を招く可能性もあります。
したがって、報告のルールを決めたら、部下を信頼し、ルールにしたがって報告の機会を待つことです。
報連相のルール③コミュニケーションツールで報連相の場を創る
最近ではリモートワークも広がり、電話や対面ではなく、チャットなどのコミュニケーションツールで連絡を取り合うことも増えているでしょう。そこで、コミュニケーションツールの運用ルールを決めておくことが大切です。
たとえば、
- このスレッドは〇〇に関する報告、連絡、相談を行う
- このスレッドは全社宛、このスレッドは自部門宛に使う
- 読んだら確実にリアクションを行う
- リアクションを受けたら、確認したものとして進めてよい
等々です。
報連相のルール④会議のルールを決める
報連相を確実に行うためには、会議の仕組みをしっかり整えることが大切です。会議は、報告連絡相談の場でもあるからです。大半の会社では、会議に仕組みづくりが必要だと考えられていないため、放っておくと、会議主催者の個人的な勘や経験、その時々の感情で会議が進んでしまいます。そのため、本来、連絡すべきことがあるのに、時間が無くて会議で取り上げられなかった、会議中の雰囲気が悪くて、本来、報告すべきことを報告できなかった、ということが発生してしまうことがあります。これは致命的なミスにつながりかねません。
会議には例えば以下のようなものが含まれます。
- 朝礼/終礼
- 1on1ミーティング
- 週次会議
- 月次会議
- 四半期会議
これらそれぞれの会議で、何を議題として挙げ、何を決めるかを明確にしておくことが大切です。
会議についてより詳しいことは以下の記事に載せておりますので、合わせてご参照ください。
報連相のルール⑤オープンドアポリシー
オープンドアポリシーは主に「相談」を促すのに大切な考え方です。オープンドアポリシーとは、上司が自分の部屋のドアを解放しておき、部下が気軽に相談できるような風土を作ることを指します。海外の会社の場合、管理職クラスには、それぞれに個室が用意されていることが多く、このような名前がついています。日本では大半の会社には個室がありませんので、常にオープンの状態といえます。とはいえ、上司が常に忙しそうにしていては、部下が相談しようという気になりません。そのため、いつでも聞く耳を持っているよ、と伝えておくことが大切です。
報連相の中でも、相談は、これは相談しても良いことなのか、自分で考えるべきことなのか、と逡巡することが多いことがあります。そのため、気軽に話せるランチの場や非公式なミーティングの場などを用意し、オープンドアを実践することが大切になるでしょう。
報連相が出来ないのは、その人のせいではなく、ルールが無いから
以上、報連相のルール作りについてご紹介しました。大切なことは、報連相が出来ない人がいるからといって、それを本人の資質や能力のせいにしないことです。放っておけば報連相の仕方はバラバラになっていくものなのです。そのため、報連相はあくまで会社側の責任と考え、ここで述べたようなルール作りを実践していくことが求められるでしょう。
なお、「仕組み経営」では報連相のルールなどを含め、会社を”人依存”ではなく、”仕組み依存”で成長させていくためのご支援をしています。詳しくは以下の仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。