必然的に成長する会社づくり

必然的に成長する会社の創り方



清水直樹
今日は、必然的に成長する会社の仕組みづくりについてご紹介します。先日(2023年6月)、仕組み経営サミットというイベントを開催し、仕組み経営を導入していただいているお客様の事例をご紹介する場を設けました。その中で私が冒頭でお話ししたテーマについて、改めてこの記事でご紹介したいと考えています。

※なお、記事はYoutubeにアップしたリプレイ動画の書き起こしになっています。動画でご覧になりたい方は動画でご覧ください。その下に欠き起こしを載せております。

 

 

物の見方(視点)を変える

物の見方を変えることで会社が劇的に変わる可能性についてお話ししようと思います。

本当の発見の旅人は、新しい景色を探すのではなく、新しい目で見ることだ

という言葉があります。これは、アメリカの作家が残した言葉で、私も好きで頻繁に引用しています。多くの経営者は新しいノウハウや知識、仕組みを求めて研修会やセミナーに参加し、本を読むことが一般的です。しかし、今ある自分の会社や商品、サービス、社員などを新しい視点で見ることも重要です。

会社は機械か生き物か?

会社は機械か生き物か
会社は機械か生き物か

仕組み経営サミットで、私が最初に話したのは、会社組織を機械とみなす考え方と、生き物とみなす考え方についてでした。機械として考えると、会社は機能を実現するために存在し、利益を生み出して分配するために作られたと捉えることが出来ます。この視点では、一部を変えることで全体がうまく機能すると考えがちですが、常に人の手によるメンテナンスが必要です。

一方で、会社組織を生き物として考えると、目的は組織の存続と成長になります。この視点では、全体性を大切にし、要素還元主義ではなくホリスティックな考え方が求められます。部分を変えるだけでなく、組織全体を健康に保つ努力が必要です。例えば、他の会社の成功事例をそのまま取り入れたとしても、組織の文化や他の部門との調和に気を配らなければなりません。

会社は生き物

会社は生き物
会社は生き物

生き物としての視点を持つことで、組織自体が持つ治癒能力や健康を保つ機能を活かし、経営リーダーが常に手をかけなくても本来の姿が保たれる可能性が高まります。この視点転換が、会社組織のあり方や経営のやり方に大きな影響を与えると考えられます。

生命体の本質は生成発展
生命体の本質は生成発展

私たちが目指している組織のあり方は、生き物のように単体でオーナーの介在なしでうまく機能する姿に近いと考えています。会社組織を生き物として捉え、その本質が生成発展であることを理解しましょう。会社は自然な姿では発展するようになっており、この視点を持つことが大切です。

周りを生成発展させる

周りを生成発展させる
周りを生成発展させる

次に、生成発展するためには周りを発展させた分だけ自らも発展することが自然の法則となっています。これを組織に置き換えて考えると、会社は周りの人々や関係者を発展させた分だけ自らも成長していくという原則が成り立ちます。

人々の”ため”になるもの

その際、重要なのは人々が求めるものではなく、人々のためになるものを提供することです。求めるものとの違いを理解し、周りの人たちを生成発展させるものであることが大切です。例えば、お客様が求めるものを提供するだけでなく、その商品やサービスが彼らの生活をより良くし、発展させるものであることが必要です。

人々が求めるものと人々のためになるものは似ているようで異なり、前者ではなく後者が生成発展につながる条件となります。経済的な成功だけでなく、顧客や関係者の生活や健康を向上させることが、組織としての発展につながるという視点を持つことが重要です。

まさにこれが会社にとっての意義ということになります。それが何なのかということをねまず考える必要があるということになってきます。一つの例をご紹介します。

松濤館リーダーシップスクール
松濤館リーダーシップスクール

これは松濤館空手という道場があります。道場の師範が、マーティーキャラハンさんで、マイケルE.ガーバーさんの弟子なんです。で、ガーバーさんからビジネスを教わって、この空手道場を経営しているということなんです。

完全に差別化された空手道場

空手道場なのにリーダーシップスクールと書いてあります。ここに彼の意義が現れてるんです。彼のホームページに、「空手を通じて世の中の問題を解決するリーダーを育てています」と書いてあります。

通常、空手道場というのは、空手の型を習ったりとか、黒帯を取ったりとか、そういうことを求めてみんなやってくるわけです。つまり人々が求めるのはそういうことなわけです。

しかし、彼は気づきました。自分の道場の目的はそれではないと。彼のエリアでは、子供の犯罪率が非常に高いのです。彼もこれは常々問題であると感じていたわけです。その時に、ガーバーさんの教えを受け彼が日頃感じているような問題を、空手を通じて解決できるんじゃないかと気がつきました。道場に通ってくる人たちのためになることは、空手を通じて世の中の問題を解決するリーダーになることだと気が付いたのっです。なぜ子供が犯罪を犯すかというと、自分の人生に対してリーダーシップを持っていない、主体性を持っていない、これが原因であると彼は考えたわけです。そこで空手を通じて、自分の人生に主体性を持って生きる、つまり自分自身のリーダーになるということをやらないといけないと考えたんですね。

空手で精神を育てていきます、と提唱して道場を運営してるわけです。そうすると他の空手道場とは完全に一線を画す、完全に差別化された道場になるんですね。他の道場は、型が習えますよ、黒帯が取れますよ、と言っているわけですが、彼の道場は主体的に生きることを目指していますと言うわけです。

これが人々が求めるものじゃなくて、人々のためになるものを提供する、ということになります。

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何が欲しいかを聞いても差別化は出来ない

人々が求めるものを提供しても基本的には差別化できないんですよね。例えばお客さんに何か欲しいですか?と聞きます。これこれこういうスペックでこれぐらいの機能でこういう商品が欲しいと言うわけですね。問題はお客さんは、同じことを他のサービス提供者にも言うわけです。そうすると後はもう価格の勝負にしかならないわけです。なので、求めるものを提供しようとしても、差別化が全くできない。

一方で、人々のためになるものは差別化ができます。なぜかというと、何がお客様のためになるのか、何が社員のためになるのかは、その人自身の生き方の哲学とか、価値観とか信念、それによって変わってくるわけなんです。なので、何がためになのかというのは、完全にその会社オリジナル、その人オリジナルの話になってくるんです。

マーティンキャラハンさんの話で言いますと、このエリアには子供の犯罪率が高くて、それを自分の事業を通じて解決できるんだと考えたのはおそらく彼だけだと思うんですね。他の会社にはそれは思いもつかない話なわけです。これは彼の人生経験とか、日頃考えてる哲学思想、そういったものが現れてビジネスに生かされているのです。

仕組みには目的が必要

となると、何が人々のためになるかを考えることが、その人オリジナルの想いになり、完全に差別化されたもの、独自のものになってくるということです。そうすると価格競争に陥らずに、商売ができるようになります。
後で仕組みの話も出てきますが、仕組み化するにあたって、会社を大義、何が人々のためになるのかを決めないといけないです。ためになるものを提供するために、「じゃあこういう仕組みを作りましょう」というような話になってくるわけです。そもそも目的がなければ、どういう仕組みが必要かがわからないのです。
ぜひ皆さんも関係者のためになることは、一体何なのかということを考えていただくと良いと思います。

仕組みづくりは細胞分裂

仕組みが解決策
仕組みが解決策
次の視点が仕組みに関連することになります。いま考えた目的を達成するために仕組み化された会社にしていきましょうということになります。仕組みは細胞分裂だと思っていただいていいと思います。最初に会社組織は生命体と言いましたけれども、生命体が成長していくのは、細胞分裂して自分のコピーを作って成長していくわけですね。
会社組織も同じで、会社の中でうまくいってることとか、うまく機能していること、これを複製していくことで会社が成長していくということになります。

ゴミを集めて急成長

O2EBrands
O2EBrands
ここでいつもご紹介している例を紹介します。O2Eブランドという会社があります。創業者が中古のトラックを7万円で買って、街中を走ってゴミ収集の仕事を始めたんです。それが今どうなってるかというと、年商で850億円以上になってます。この会社は創業者がやっていた仕事を細胞分裂させて、急速に成長しました。

問い:何を複製すればいいのか?

そこで、仕組みで成長していくためには、どこを複製可能にすればより多くの価値を提供できるか?という問いが決定的に重要です。
皆さんがされている様々な業務とか様々な仕事があると思うんですけども、その中には何かしらうまくいってることがあると思うんですね。うまくいってることがなければ、おそらく皆さんの会社も潰れているはずなんで、何かしらうまくいってところがあるはずなわけです。その部分を細胞分裂させるわけです。どうすればもっと多くのお客様に価値が提供できるのか?この問いが非常に大切です。
これまでの話まとめますと、まず、会社を生命体として考え、その目的、事業の意義を打ち立てて、それを実現させていくために仕組みという発想を取り入れていくということです。
ここまで稼ぐ仕組みができていくわけです。となると次の問題としては、その稼ぎを続けていくことです。

頂点に居続けるためには人格(文化)が大切である

人格=文化
人格=文化
そこで重要なのはこの第五の視点です。仕事は、その人の人格、内面を反映する鏡であると言えます。頂点に到達するには能力が必要だが、頂点に留まり続けるには人格が不可欠であるという諺があります。誰が述べたかは少々記憶が曖昧ですが、おそらくは著名なバスケットボールのコーチであったと思われます。
企業も同じく、一度収益を生む仕組みが確立されれば、それを継続することが肝要となります。継続するためには、人間においては人格という観点が重要となりますが、これを企業に置き換えれば、企業の文化という要素に繋がってきます。個人の人格というものは、企業においてはその文化ということになります。文化を磨き続けなければならないのです。

企業文化は経営者の人格から生まれる

そして、企業の文化がどのように形成されていくかという視点において、経営陣の人格がその反映となると言えます。収益を継続するためには企業の文化が肝要であり、その文化は、経営リーダーが築いた人格から生まれてくると言えるでしょう。それゆえ、経営リーダーが人格を磨き続けない限り、企業の文化は向上しないという論理が成り立ちます。

企業文化は日本文化のサブカルチャー

ここで考慮しておかねばならないもう一つの要素は、企業の文化を検討する際に、私たちが事業を営む国は日本であるという事実です。おそらく、皆さんの勤める企業の社員の多くは日本人であることから、皆さんの企業文化は、日本という国の文化のサブカルチャーとして考えるべきです。したがって、企業文化はある程度、日本の文化に準拠しなければ継続が難しいと言えるでしょう。

日本文化の特徴

従って、日本の文化が如何なるものかを理解しておくことが肝要であると言えます。日本の文化の特徴は総括的に述べると、持続性が非常に大きな特質となります。
日本は世界最古の国家です。諸説はありますが、少なくとも最低でも2000年以上の歴史があり、最も長い歴史と言えば2683年にも及ぶものです。神武天皇が即位してからの2683年の歴史を有しており、2023年の時点で見ても、これは世界一の長寿国家であることは間違いありません。極めて高い永続性を有する国となっています。
なぜそうした特徴が生まれたのか、それを理解しておくことは重要ですね。私たちもやはり企業を永続させていきたいという思いがあると考えますので、皆さんも日本という国の永続性の理由に興味を抱くことでしょう。

国家永続性の要因

八紘一宇
八紘一宇
これに関しては様々な説が存在しますが、確かなのは日本の建国の精神、発祥の流れから日本の文化が形成されていると言えるでしょう。日本の建国の精神は八紘一宇、つまり、日本全国が四方八方一つの屋根の下である、日本国民が一つの家族であるというものです。家族として協力し合いましょうという思想です。基本的には、家長である天皇一族がおられて、それ以外の人たちは兄弟姉妹として捉えられます。
そして、日本の文化の特徴として挙げられるもう一つは、カリスマ的指導者や法律に頼らず、自然と収まるという考え方です。カリスマ的な社長は一時的には良い結果を生むかもしれませんが、その依存は危険であるとされています。法律を厳格にし続けて反映し続けた国は歴史を持たないこともあります。
また、文字による経典がないという特徴もあります。他の宗教や思想体系と異なり、日本には経典が存在しませんでした。神道が存在する以前は、神道と他の宗教との違いは経典がないことにあります。これは文字がなくても日本が収まってきた理由の一端と言えるでしょう。
さらに、日本の文化において話し合いで決めることが重視され、皆で協力して進める文化が根付いています。これは会社組織においても大切なことであり、みんなの同意を取ることが非常に重要です。最後に、日本の文化は善悪が曖昧であり、人情が大事にされるという特徴もあります。これは日本の物語や文学においても反映されており、よく考えたら悪とされる行為が物語として語り継がれることがあります。

家族主義経営は正しいが・・・

さて、同様に、社員は家族であると言う社長は多いように思われますが、それを公言するかどうかは微妙なところがあるかもしれません。家族主義で経営する社長の意図は良いと考えますが、実際に社員の前であるいは外部に向けて公言することには検討が必要でしょう。実際には社長だけがそう考えているケースが結構多いからです。
社員は給料がもらえれば良くて、会社は家族ではなく単に仕事をする場であると考えていることが多いものです。そのため、社長が家族主義だからといって社員を縛りつけようとするのは慎重に考えるべきであり、個別の事情を理解しておくべきであると個人的に考えております。
いずれにしろ、このような日本の文化を理解しておくことは非常に重要だと思います。その上で会社の文化を築いていく話になります。冒頭でも述べた通り、会社の文化は社長の人格が基盤となって発展していくわけですが、経営者が会社に対して様々な影響を与えることは、親が子供に与える影響と同じように重要なものです。その影響には良いものも悪いものがあり、したがって、会社の文化を良いものにするためには、まず経営者が会社に与えている悪い影響を取り除く必要があります。そして、その上で経営者が会社に対して良い影響を与えることが大切だと思います。
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経営者が与えている悪影響を取り除く

経営者が与えている悪影響
経営者が与えている悪影響

まず、悪い影響を省く方が重要ですね。何かを始める前に、まずは悪い要素を取り除くことが仕組み化の原則とされています。社長自身が会社に与えている悪影響は、どんな社長でもあると思われます。通常、それに気づくことはありませんが、どんなに優れた経営者であっても、完璧な人間ではないため、その社長の個人的な悪い部分は必然的に会社に影響を与えてしまっています。

それを意識し、できる限り取り除くことが大切です。例えば、社長がお金にルーズであれば、会社もお金にルーズな傾向が強まります。競争心が強い経営者であれば、会社も競争志向の強い環境になるでしょう。ただし、競争心が強すぎると、会社内での対立や不和が生まれることもあります。また、社長が他人を信頼できないと考えていると、管理が厳しくなり、社員の疲弊が生じる可能性があります。社長がいざこざを避けたがる性格であれば、問題が放置されがちな状況になるかもしれません。こうした経営者の悪い部分が、会社に影響を及ぼしているというケースがあります。これは仕組み経営のカリキュラムの中では、「組織の機能不全」としてご紹介しています。

経営者の人生を会社に持ち込む

経営者が与えている良い影響
経営者が与えている良い影響
とにかく、会社における問題は、まずはその原因が自身の人格にあることを理解することが肝要であると考えます。これを取り除くことで、良い影響を与えることができます。親が子供に影響を与えるように、経営者が会社に対して良い影響を与えることが求められます。
経営者の人生の目的、ビジョン、理念が会社の価値観や企業文化と結びつき、経営者の人生計画が会社の経営計画に反映されていくのです。これらは切り離しては考えられません。したがって、問題を取り除くと同時に、経営者の人生における目的や価値観が反映された会社を築くことが極めて重要です。その一貫性が取れるほど、経営者も幸せに働き、社員も幸せに働くことができ、その結果として生まれる商品やサービスも顧客に喜ばれるものとなります。これが経営者が会社に対して与える良い影響です。

まとめ:必然的に成長する会社の創り方

まとめますと、会社は本来的に成長する生命体として捉え、その成長を促進する方法として、細胞分裂に例え、仕組みを構築していくことが大切です。会社の文化を形成するためには、リーダーの人格が反映された文化を育む仕組みが必要です。そして、経営者が会社に与える悪い影響を取り除くと同時に、経営者の人生の目的や価値観が反映された会社ビジネスを構築することが求められます。これにより、経営者が超えた会社が発展し、社員や顧客も幸せになるというモデルが形成されます。
以上が、仕組み経営サミットでお話しした「必然的に成長する会社の仕組み」についての内容です。



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