標準化されたカスタマイズ

標準化されたカスタマイズ



清水直樹
本記事では、職人型で経営をしているデニスが、安定した売上を立てるヒントを求めてマイケルE.ガーバー氏にアドバイスを求めた様子をご紹介します。顧客ごとにカスタマイズされたサービスにこだわるデニスは、カスタマイズの標準化というコンセプトを知り、新しい事業機会を発見します。

マイケルE.ガーバー氏・・・世界700万部のベストセラー「はじめの一歩を踏み出そう」の著者であり、世界No.1の中小企業アドバイザー(米INC誌による)に選ばれた。当サイト「仕組み経営」のもとになっている思想を提供してくれた人物。詳細はこちら>>

職人型経営者の悩み

デニス:私はマーケティングリサーチの専門家として独立起業しました。 いまは様々な交流会などに参加し、提携先やクライアントを探そうとしています。今日の質問は、安定する売上の基盤を作り、成長させるには、他に何をすべきか?ということです。

MG: あなたは新しいクライアントにマーケットリサーチを提供しているのですか?どのようにしてやっているのですか?カスタマイズされたプログラムですか?

デニス:そうです。私が提供するリサーチは全てカスタムされたものです。それが私のキャリア25年で培ってきたものです。

起業家熱に駆られた職人

MG: では、あなたはマーケティングリサーチの権威であるということですね。あなたがやったことを私は何と呼んでいますか。それを起業家熱に駆られた職人と呼んでいます。 デニス:その通りですね。

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MG: それは真の起業家のあるべき姿とは正反対です。個人的に責めているわけではありませんよ。あなたに真実をお伝えしたいのです。 あなたはマーケットリサーチの会社を立ち上げ、増え続けている全ての顧客にカスタマイズされたリサーチを提供しようとしている。そして、それに応じてくれた顧客がいる。

あなたの質問、「安定する売上の基盤を作り、成長させるには、他に何をすべきか?」という質問に答えるならば、デルコンピューターのように、標準化されたカスタマイズを行うことです。考えてみてください。標準化されたカスタマイズです。

標準化されたカスタマイズとは

あなたは全てのリサーチプロジェクトがユニークだと思っているでしょう。顧客ごとにニーズが異なり、それに対する解決策も異なると。そのように、あらゆる顧客のニーズに応えられることがあなたにとって誇りであり、強みであり、顧客が自社を選んでくれている理由だと思っているでしょう。

しかし、あなたはそう思っていないかもしれませんが、全てのリサーチプロジェクトはこれまであなたが何年もかけて学んできたことの複製です。ステップ1ステップにステップ3ステップ4というように。

いまのやり方では、職人が経営する会社の域を出ることが出来ません。そして、売上はいつも不安定になります。全てのプロジェクトの価格や支払日、かかる工数が予測不可能であるからです。

あなたが悪いわけではありませんよ。世の中のほとんどのサービスビジネスはそのように運営されています。一方で、大きく成長するサービスビジネスは、そのやり方とは一線を画しています。

そして、あなたにも大きな機会があります。あなたの問題への解決策でもあります。

標準品でありながらニーズを満たす

それが、標準化されたカスタマイズ化です。デルのサイトに行けば、私だけのためにカスタマイズされた商品を得ることが出来ます。標準化された部品をまとめ上げることによって、その結果を生み出しているのです。

私は私のニーズに合わせて、私のために設計されたコンピューターを購入します。私の期待、私の経験、それで何をしたいが、何をしたくないか等によってカスタマイズされます。

これらのことが、デルのサイト上で全て行われます。それから彼らは完全に標準化された工場で、それがカスタマイズされたものであっても、私の解決策を提供してくれます。

言っていることがわかりますか?

デニス:はい、わかっていると思います。

顧客を真に理解するとは

MG:世の中には、リサーチの新しい方法を開発し続けているリサーチ会社はありません。彼らはやり方を学んだことを、とてもとても上手にやっているだけです。予測可能なプロセスによってあなたは、全てのクライアントに対してより安く、より効果的に、彼らが経験したことないような方法で出来るようになるのです。

これが意味することは、あなたは、リサーチの新しい方法を設計しなければならないということです。 それがあなたにとって何を意味するかを考えてください。それからあなたがこれから新しく構想する事業で、それを複製することを考えてみてください。

全ての人は、顧客のことを真に理解せずにビジネスをしています。だから毎日大きな間違いを犯し続けています。

顧客のニーズはバラバラに見えるようで、本当は共通している問題があります。その問題を発見することが、真に顧客を理解するということです。

ガーバー氏の事例

MG:その問題には顧客自身も気が付いていません。だから解決法もわかっていません。私が1977年にこの世界の旅をスタートしたとき、同じようにやりました。私が訪問した全ての中小企業経営者は、自分の問題が何かを知りませんでした。だから断片化された問題を、断片化された解決策で解決しようとして日々忙しくしていたのです。

彼らの問題は、会社が仕組みで成り立っていることを知らないことであり、それに対する私の解決策は、会社全体が商品であると捉え、新しい視点で設計しなおすことでした。

あなたは、マーケティングリサーチを通じて、どのように彼らの問題を解決できるでしょうか?どうやってやりますか?それを考えてください。

やれますか?



デニス:やります。ありがとうございます。

 

編集付記)標準化されたカスタマイズに向けて

以上、デニスとの問答を通じて、標準化されたカスタマイズをご紹介しました。このコンセプトは言い変えれば、パターンオーダーと言えます。

私たち仕組み経営でもこの考え方を取り入れ、標準化されたカスタマイズによって企業の仕組み化を支援しています。

対話だけでは理解しにくかったかも知れませんので、このコンセプトについて解説を加えておきましょう。

カスタマイズと標準化の違い

サービスビジネスの多くが、デニスのようにフルカスタマイズされたサービスを提供しています。それが仕組み化を難しくしています。

逆に標準化されたサービスは効率が良いものの、顧客ニーズに応えにくくなります。

以下カスタマイズと標準化のメリットとデメリットの比較をしてみましょう。

 

カスタマイズ 標準化
メリット 1. 顧客満足度の向上: 顧客の個別ニーズに対応し、よりパーソナライズされたサービスや製品を提供できる。 1. 生産効率の向上: 大量生産に適しており、コストを削減し、生産効率を向上させる。
2. ブランドロイヤリティの構築: 顧客にとって独自性があり、ブランドへの忠誠心が高まる。 2. 一貫性の確保: 製品やサービスが一貫しており、信頼性が向上する。
3. 新しい市場の開拓: 個別の市場セグメントに対応しやすく、新しい市場の開拓が可能。 3. スケーラビリティの向上: 大規模な需要に対応でき、急激な成長にも柔軟に対応できる。
4. 競争優位性の構築: 他社との差別化が図れ、競争優位性を構築しやすい。 4. 人材育成の容易化: プロセスが決まっているため、人を育てるのが比較的容易
デメリット 1. コストの上昇: カスタマイズは開発や提供のコストが高まりやすい。 1. 顧客ニーズへの対応不足: 一般化されたサービスや製品では、特定の顧客ニーズに十分に対応できない。
2. 人材育成が困難: 案件ごとに変動要素が多く、それに対応できる人材を育成することが難しい。 2. 個別要件への適応困難: 特定のニーズに合わせることが難しく、新しい要件への迅速な適応が難しい。
3. 一貫性の欠如: カスタマイズが進むと、一貫性が損なわれ、ブランドイメージが揺らぐことがある。 3. ブランド差別化の難易度: 標準化された製品は他社との差別化が難しくなる。
4. スケーラビリティの制約: 大量生産に向いていないため、急激な需要変動に対応しにくい。 4. 顧客ロイヤリティの低下: 顧客にとって特別感が薄れ、他社に乗り換えやすくなる。

 

標準化されたカスタマイズのメリット

そこで、標準化されたカスタマイズというコンセプトが有効になります。標準化されたカスタマイズが出来れば以下のようなメリットがあります。

  • 効率の向上: 標準化されたカスタマイズは、製品やサービスの生産プロセスを効率化できます。標準化された要素を使用することで、生産の合理化が可能であり、これがコスト削減や迅速な製品提供につながります。
  • 品質の一貫性: 標準化されたカスタマイズに基づく製品やサービスは、一貫して高い品質を維持しやすいです。標準化されたプロセスを使用することで、変動が少なくなり、品質管理が向上します。
  • コスト削減: 標準化されたカスタマイズにより、生産プロセスやサービスの提供においてコストが削減されます。共通のプロセスや要素を使用することで、原材料調達から製造・提供までのコストが低減され、企業は競争力を保ちやすくなります。
  • 柔軟性の向上: 標準化されたカスタマイズは、一般的な要素を基にしていますが、一方で顧客の特定のニーズにも対応できます。これにより、標準的なプロセスを通じて大部分の要求に対応しながらも、必要に応じて個別の要望にも柔軟に対応できる柔軟性が得られます。
  • ブランド統一性: 標準化されたカスタマイズは、製品やサービスにおいて一貫性のあるブランドイメージを構築します。共通の要素やデザインを使用することで、ブランド統一性が生まれ、顧客にとって企業や製品の識別が容易になります。

標準化されたカスタマイズの実践ステップ

  1. 市場調査と顧客分析:
    • 目標市場やターゲット顧客を明確にし、彼らのニーズや要望を把握します。
    • 顧客の嗜好や優先事項を調査し、共通する要素や特定のカスタマイズが求められるかを判断します。
  2. 標準化要素の選定:
    • カスタマイズ可能な要素と標準的な要素を区別します。
    • 一般的な要素を選定し、これを基にして製品やサービスを標準化します。
  3. プロセス標準化:
    • 生産やサービス提供のプロセスを標準化します。これには製造プロセス、品質管理、サービスの手順などが含まれます。
    • 一般的な手順や規格を確立し、これを遵守することで品質の一貫性を確保します。
  4. カスタマイズオプションの提供:
    • 一般的な製品やサービスに対して、顧客が選択できるカスタマイズオプションを設けます。
    • カスタマイズの範囲や方法を明示し、顧客が容易に選択できるような仕組みを整備します。
  5. トレーニングと教育:
    • 従業員に対して、標準化されたプロセスとカスタマイズオプションの提供方法についてのトレーニングを行います。

以上、ぜひご参考にされてください。

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