事業の目的と目標

事業の目的と目標の立て方【誌上セミナーvol.3】



清水直樹
事業の目的と目標は、その事業の最終的な姿です。本は始めから読むが、ビジネスは終わりから始める、というのは良く知られた言葉です。本記事では、マイケルE.ガーバー氏が過去に行った講演内容の中から、事業の目的と目標の描き方をご紹介していきます。講演が行われたのは1980年代~1990年代と古く、使われている例や言葉も古いですが、内容は今でも普遍的です。ぜひお役立てください。
マイケルE.ガーバー氏・・・世界700万部のベストセラー「はじめの一歩を踏み出そう」の著者であり、世界No.1の中小企業アドバイザー(米INC誌による)に選ばれた。当サイト「仕組み経営」のもとになっている思想を提供してくれた人物。詳細はこちら>>
(以下、1980年代のマイケルE.ガーバー氏の講演内容)

サマリー

  1. 事業の究極の目的を設定し、人生と事業の同期を実現する。
  2. 事業の目標(青写真)を明確にし、成長のための明確なビジョンと方向性を定義する。
  3. 事業における主要な影響者を把握し、彼らのフラストレーションを解決する。
  4. 顧客が抱える主要なフラストレーションを特定し、その解決策を通じてビジネスを圧倒的に差別化する。

 

目次

事業の究極の目的

それではビジネスを発展させていく7つのステップについてお話ししよう。

最初のステップは、私が「事業の究極の目的」と呼ぶものだ。

1つの部屋を思い描いていただきたい。薄暗くてすてきな部屋に、70人か80人の人がいて、きれいに装飾された椅子に全員が静かに座っている。落ち着いた色の布地の椅子で、カーペットと壁のカーテンも同じ色だ。音1つない。全員が座っていて部屋の前方を見ている。部屋の前方には演壇があって、その上にテーブルがある。大きなテーブルだ。テーブルの両端にろうそくがあって静かに明滅している。ろうそくの間に箱が1つある。そして箱のなかにいるのがあなただ。板のように硬直したあなただ。これがCODだ。つまり、おだぶつになる日 (crap out date) だ。

この部屋が思い描けたら、これを考えて欲しい。部屋の四隅から1つの声が聞こえてくる。それはあなたの声だ。それは録音で、部屋のみんなにあなたの人生を語っている。船で進んだ川。登った山。接した人々。今ここに座っている瞬間、刻一刻と過ぎ去る時間の全部が2度と戻ってこない瞬間なのだ。でもそれが理解できない。人は死ぬ運命にあるということに対する自覚が欠けていて忙しさにかまけているからだ。

あなたがお陀仏の日に何が読まれるのか?

家に帰ってやってみて欲しい。あなたがおだぶつになった日に読まれる文章は、どんなものなのか?もう何を後悔しても手遅れになってしまった日に読まれる、あなたの人生について書くのだ。

私たちを殺すのはおこなったことの罪ではなく、おこなわなかったことの罪だ。

それを考えればあなたは人生に何を求めているのか? がわかるだろう。注意して欲しいのは、私は「大きくなったら何がしたいか」と尋ねているのではないということだ。「何になりたいか」と尋ねている。「する」ことについてではなくて、「なる」ことについて言っているのだ。

することとなることには、大きな違いがある。多くの人、そして多くのビジネスでは、何かになることが全く考慮されていない。だから彼らはビジネスのために消耗してしまう。本当は、その正反対でなければならないということを大昔に忘れてしまっているのだ。

ビジネスとは人生の目的を達成する手段である

事業の究極の目的をしているのに、人生の話を持ち出した理由は、自分の人生に何を求めているかを理解することが非常に重要だからだ。それを理解していない限り、どうやってビジネスでそれを達成するかという次のステップに進めない。

それが自分をビジネスから切り離して、距離を置いてビジネスの真の姿を見る第1段階だ。ビジネスを始めることは、目的への手段であり、それ自体が手段ではない。ひたすらにやって、ひたすらに忙しくして、ひたすらに消耗するなら、生きるか死ぬかになってしまう。本当に生きるか死ぬかになってしまう。自分自身を失ってしまう。

人生について4つの考え方

では、事業の究極の目的を作る上で、これから紹介する4つをじっくり考えて欲しい。

私は思想を持っているが、私は自分の思想とは別の存在である。私が自分の思想に支配されてしまうことはない。

私は感情を持っているが、私と自分の感情とは別の存在である。私が自分の感情に支配されてしまうことはない。

私は体を持っているが、私と自分の体とは別の存在である。私が自分の体に支配されてしまうことはない。

そして最後に、私はビジネスを持っているが、私と私のビジネスは別の存在である。私が自分のビジネスに支配されてしまうことはない。

それでは、自分とはいったい何者なのだろうか?

それがわかったとき、あなたの主要な目標を知ることになるだろう。

さて、もう一度聴こう。あなたの究極の目的は何なのか?

事業の目標(青写真)

ビジネス発展における第2ステップ。事業の究極の目的が描けたら、次はそれを実現するためにビジネスにどうあって欲しいかが問題だ。

  • 事業の大きさはどのくらいか?
  • 粗利益はどのくらいになるのか?

事業の最終的な姿を描く

あなたは起業家として、作業にではなく結果に集中する必要がある。しかし、ビジネスが最終的に取ることになる姿が分かっていなかったら作業に集中するしかない。なぜ、自分がそれをしているかを理解していなければ、ひたすらに作業に携わる職人的な仕事で消耗してしまう。やる事は毎日100万も見つかるだろう。もしやることがなかったら、やることをでっち上げる。なぜか? 何かをしていないとあなたは存在しないのと同じになってしまうからだ。

ひたすらに何かをやる。ただ、売る。作る。何かをする。とにかく何かをする。たとえ何もすることがなくて、作るものがなくても。それによってあなたは忙しくなり、消耗してしまうのだ。

100万ドルのビジネスか? 200万ドルのビジネスか? 1000万ドルのビジネスか? 5000万ドルのビジネスか? 完成したときにいくらであるべきか? 粗利益はどのくらいか? 税引前利益はどのくらいか? 税引後利益はどのくらいか?できあがったビジネスに対して、人に「これはあなたがしたのか? どのようにしたのだ? 何てすごいんだ!」に言ってもらえるようなビジネスを創る必要がある。

青写真が目に見えるまで考える

そして、事業はいつ完成するのか? 完成はいつか? 戦略は何なのか? 場所はどこか? 地元なのか? 地域なのか? 全国的なのか? それはシドニーなのか? ロサンジェルスなのか? ティワナなのか? 場所はどこか? その数はいくつか? どのように運営するのか? あなたはこれらの質問の全部を自分に対してしてみる必要がある。顧客は誰だろうか?

ビジネスが完成したときに、顧客は具体的にどんな人たちなのか? そのビジネスで何を築き、誰のために築くのか? ビジネスのほとんどが運営されることになる商業圏はどこか?どれだけの顧客数がその商業圏において見込めたらいいのか? 計画している利益を上げるために。



これら諸々の質問である。完成したときにビジネスはどのような姿をしているのか? ビジネスの青写真が描けていなければならない。最終的に完成したときのビジネスの姿を見つめ、毎日、あなたはそれを部下に告げるのだ。このビジネスの青写真こそ重要だ。

大抵の人たちはビジョンを口にしても抽象概念、単なる言葉でしかなく、言葉をもてあそんでいるに過ぎない。自分が行おうと考えていることの確固たる青写真を描く能力が問題なのだ。

事業を通じて人生の目的を達成させる

ところで、人生の目的は、もっと活力を持ち、生き生きと生きることだ。そして、ビジネスの目的は、その人生を反映することだ。その過程において、もっと生き生きと生きる可能性が得られるのだ。

従ってビジネスの目的は、単に作業をするだけでは得られない選択肢を得ることだ。作業はあなたを束縛するが、ビジネスは解放する。少なくともビジネスにはあなたを解放する力がある。解放が実現するにはビジネスはどのような姿を取る必要があるのかが問題となる。

売れる価値のある事業を作る

理解して欲しいのは、自分のビジネスを売れる状態にしなくてはならないということだ。あなたのビジネスは売らなくてはならないと考えたとき、買い手は買うべき理由を持つことが必要になる。

実際に会社を売却するかどうかはどうでもいい。売れる価値のあるビジネスにすることが大切なのである。

あなたのビジネスを買うあらゆる人たちに対して、正当化できる理由をもたなければならない。買ったことを正当化できる理由、会計士に対して、代理人に対して、妻に対して、夫に対して正当化できる理由である。

あなたのビジネスはいつ完成するか?

繰り返しあなたに聴こう。

あなたのビジネスはいつ完成するのか?言い換えれば、いつ売れるようになるのか?である。あなたの最終目標は、より生産的で、効率的で、特権的に運営されるビジネスをつくることであり、そのビジネスは他のビジネスからは差別化されている。あなたの仕事はそのビジネスをつくり出すことである。

完成するとはどのような状態か?

では、そのときビジネスの規模はどうなる? 粗利益はどのくらいになるのか?「そんなこと知るか。そんなことしてどうなる」とあなたは言うだろう。推測するのだ。それが現在あなたのすべきことなのだ。だから推測するのだ。数字を出すのだ。

買いたいと思われる会社を創る

建設業を例に挙げよう。建設業は売上総利益率15%としよう。そして3年後にビジネスを売るとする。私が買い手だ。あなたは「これがビジネスの業績だ」と言う他の建設会社ではなく、あなたのビジネスに対して私が夢中になるためには数字はどうあるべきか? そのとおり、高くあるべきだ。いくらなら十分に高いといえるか? 15%というのなら20%の方がいい。5%なら8%の方がいい。2%なら4%か3%だ。簡単だ。

他社との比較の仕方

そして、問題は、買い手の心の中で抜きんでるようにするにはどうしたらいいかだ。3年後にビジネスを買う者、それはあなたかもしれない。つまり、あなたが経営を続けるかもしれない。またはビジネスを探している誰かかもしれないが、購入が正当化されるためにビジネスは何を生み出せなければならないか?

私たちは自分のビジネスが取るべき姿を描いているのだ。あなたは新しい商品を作っている。事業それ自体が商品なのだ。

何から始めたらいいか? 競合する商品を検討するのだ。この場合の競合する商品とは、他のビジネスだ。その商品はどんなポジションにあるのか、どのように売りに出され、どのように事業が営まれ、どう評価されているのか? 稼働率はいくらかで、どう管理されているのか? どうパッケージされているのか? 価格戦略はいかなるもので、その利点はどのようなものか? どのように運営され、材料は何で、何が約束されているのか?

事業の目標を作成するときにすべきはこういったことである。お店で売られている他社の商品やサービスを調べるだけでは不十分である。彼らがどのようにそれを生み出し、どのように販売し、何を約束し、どのように改善し、どのように運営しているかが問題なのだ。競合者のビジネスと比較して自分のビジネスを有利でかけがえがないポジションに付けるにはどうしたらいいだろう?

経営者にとって事業は最大の投資

あなたは自分がしようとしているのが今までで最も重要な投資なのだと気づいているだろうか? この投資、つまりビジネスは、他のどんな投資よりも大きなリターンを生む可能性があるのだ。そして、その投資はいつでもあなたが管理できる可能性がある。市場の力は関係がない。信じられているのとは裏腹に、市場の力はほとんどの普通のビジネスには関係がない。

事業は今日の世界で最も素晴らしい投資機会の1つであり、あなたはそこから利益を引き出すポジションにいるのだ。本当に上手くやるならば、非常に短い期間でそこから利益を引き出せるのだ。その代わり、あなたは自分がすべきことを心得ていなくてはならない。

顧客が自社を選ぶ理由は何か?

では、あなたの会社を別の角度から考えてみよう。顧客が、他の会社ではなく自社を選んでくれる、やむにやまれない最大の理由は何だろう。さあ、この質問を会社の従業員にしてみよう。彼らが、他の会社ではなく自社で働いてくれている、やむにやまれない最大の理由は何だろう。次に、同じ質問を商品の供給先にしてみて欲しい。商品供給先が、他の会社ではなく自社を選んでくれる、やむにやまれない最大の理由は何だろう。

今度は銀行や投資家に聞いてみよう。私の会社にお金を貸してくれる会社が、他の会社ではなく社を選んでくれる、やむにやまれない最大の理由は何だろう。

あなたの仕事は、このようなイメージを描くことだ。

事業の成長はこれで決まる

事業の目的と目標は自分自身を満足させるものであるが、それと同時にビジネスの4つの主要な影響者を満足させるようにビジネスを機能させるイメージを描くことが欠かせない。

それが顧客、自社の従業員、供給先、貸主だ。

彼らにフラストレーション(欲求不満)を感じさせるのは何か?あなたのような人と仕事をする上で、彼らが欲求不満を感じる重要な要因は何だろう。

例えば、建設会社と仕事をしている人が欲求不満を感じるのはどういうところだろう。宝石店に来店した人が欲求不満を感じるのはどのようなところだろう。会計士と仕事をしている人が欲求不満を感じるのはどのようなところだろう。弁護士と仕事をしている人が欲求不満を感じるのはどのようなところだろう。人はどういった欲求不満を抱くものなのか。

大きな欲求不満となるのは、相手が約束した時間通りに現れなかったり、面倒を起こしたりすることだ。今からあなたが作ろうとしている会社が経営の中で解決しなければならないのはどのような欲求不満だろうか。



大抵の場合、ある会社が売っているものと、別の会社が売っているものとの間には、決定的な差などないのである。Nordstrom(デパート)で売っているものは、Macy’sやEmporiumなどで売っているものと全く同じだ。

Nordstromは、何を売るのかという点で、自身を差別化しているわけではない。そうではなく、どのようにビジネスを行うのかという点において、自身を差別化しているのだ。どのようにビジネスを行うかということが、非常に本質的な問題となってくるのだ。

あなたの事業で絶対的に重要なもの

だから問題は、みなさんの事業で絶対的に重要なものが何なのか?ということだ。

例を挙げよう。Lenscraftersという会社を知っている方はいるだろうか? 驚嘆すべき会社で、数人の人たちによって創設された。事業アイデアは、1時間でできあがる眼鏡だ。つまり彼らは眼鏡業界の問題点を検討したのだ。眼鏡をかけている方なら誰でも知っていることだが、眼鏡を作るにはどうしたらいいか? まずは眼鏡店に行ってレンズの調整で、次がフレームだ。フレームを選ぶと、店員が言う。「1週間 — 2週間かかります。ご来店の際に調整を行います。よろしいでしょうか。あれこれ調整が必要になるかもしれないので」行ったり来たり、行ったり来たり。そうではないだろうか?

眼鏡店のフラストレーションを解決

そもそも眼鏡店に行くのは、自分に合った眼鏡を手に入れるためだ。そのために様々な面倒を我慢しなくてはならない。そこで誰かが言った。「客が来たときに『1時間でできます』と応じられたらどうだろう」と。

問題は「待つ必要がある」。解決は「それは違う。1時間程度でできあがる」だ。さらにはすてきなショッピングセンターに店を構えて、待っている間に様々なことができるようにするのだ。なぜ1時間なのか? 食事を取る時間が1時間だからだ。その間に、あなたは食事を取ったり、眼鏡を調整して作ってもらったり、デザイナーを選んだりできる。店に戻って眼鏡を受け取り、時間に間に合うように仕事に戻れる。素晴らしいビジネスだ。

問題なし、急いだり、待ったりもなし。費用は少し高くなりますが。

これが、彼らが思い描いた「結果」だ。でもそのためにどうしたらいいかが分からない。分かっていたら、すでに誰かがやっているだろう。彼らはどうしたか? 彼らは店内に製作設備を設置する方法を考案したのだ。誰にでも製作できるようにシステム化し、高いスキルを持ったプロでなくてもレンズを作れるようにしたのだ。

彼らは5年後には、このとてつもないビジネスを3億9400万ドルで売却したのだ。なぜか? 成功したからだ! 彼らは自分たちが追い求める「結果」が何であるかは知っていたが、どうしたらいいかは分かっていなかった。誰もやったことがなかったのだから。そこでどうしたらいいかを考え出したのだ。

「30分で届かなかったら無料」はキャッチコピーではない。

ドミノ・ピザはどうだろう? 彼らは他のどんなピザ店とも競合しない存在だ。 何分以内にピザが手に入る? 30分だ。なぜ30分か? 30分を過ぎてしまったらもうピザなど欲しくないからだ。

「もっと早く手に入らないだろうか?」「できるとも」

顧客との約束を守るために何をすべきか?

彼らはどうやったのか? 速い車を持っている者を雇ったのか? 違う。彼らは分かっていた。ピザが食べたいが、ピザハットのピザほど旨くなくてもいい客がいることを。そして30分以内にどうしても欲しい客がいることを。しかしそのためには何をしたらいいか?

簡単だ。顧客から30分以内の場所に店舗があればいい。彼らにはそれが分かっていた。顧客から30分以内の場所に店舗がある必要がある。マクドナルドと同じようなものだと考えて、商圏はどうしなければならないか? 具体的に顧客をどう設定すればいいのか? 30分以内を実現するために、商圏の顧客数は何人ならいいのか? 頭の中だけで、紙の上だけでビジネスを築くロジスティックが想像できるだろうか?

30分で届かなかったら無料、というのは良く知られたキャッチコピーだが、これはキャッチコピーの問題ではない。事業アイデアの問題だ。

たった1つの前提のうえにすべてを計算するのだ。その前提とはピザを30分以内に顧客に届けることであり、それに基づいて立地やキャパシティのロジスティックを決定するのだ。他の誰かではなくわれわれのピザを買ってもらえるだろう。なぜなら素晴らしく旨いピザを1時間後に食べるよりも、それほどでもないピザを30分以内に欲しい客がいるからだ。

全ては顧客像から始まる

それは誰か? 仕事から帰ってきた母親だ。母親には、腹を空かせて待っている子供たちがいる。母親は料理をしたくない。ドミノは、顧客層の変化、顧客の実態の変化のために、非常に明確な顧客層を相手にする非常に明確なビジネス機会があることに気がついたのだ。子供たちに食べさせるためにスピードが必要だと気づいていたのだ。「今すぐ欲しいよ、今すぐ欲しいよ」ドミノは配達した、配達する方法を見つけ出したのだ。彼らがビジネスにおいて売るのはピザではない。彼らは何を売っているのか? 言ってみれば時間を売るサービスだ。

さて、あなたの顧客は何を望んでいるのか?方法はひとまず置いといて、顧客は何を望んでいる?

その答えを見つけることこそが問題なのだ。すでに成功した者にとっては分かりきったことだ。しかし彼らがそれを実現するまではどうしたらいいかが分からなかった。そうでなかったら、他の誰かがしていたはずだ。しかし分かった瞬間に、それは分かりきったことになるのだ。

フランチャイズするかのように考える

では、あなたのビジネスの中心にあるのは何か? 核となるチャンスは何か? 自分のビジネスをフランチャイズしようとしていると想定しよう。実際にフランチャイズにするかどうかはどうでもいい。フランチャイズするということは、自分が持っているものを差別化するアイデアが必要ということだ。自分のものでなくてはならない。自分のビジネスを他の人たちのビジネスから差別化するアイデアだ。

あなたの周りにあるチャンスは何か?

その起業家的な問題があなたに突きつけられている。完成したときにビジネスはどんな姿を取る必要があるか? あなた自身に依存するわけにはいかない。30分ごとにピザを配達するのはあなたではない。そんなのは馬鹿げている。あなた自身に依存するわけにはいかない。フェデックスはフレッド・スミスに依存していない。ディズニーランドはウォルト・ディズニーに依存していない。ウォルトはゲートの所で客を迎えたりはしなかった。乗り物に案内したりはしなかった。あなたは言う。「しかしそれはディズニーだからだ」しかし全て同じなのだ。会計事務所におけるチャンスとは何か? 法律事務所におけるチャンスとは何か? 洋服店や床屋におけるチャンスとは何か?

美容室業界の革命

Super Cutsのことを聞いたことがある方はいるだろうか?私は創業者を知っている。彼はトラックの運転手だった。彼はどのようにしてSuper Cutsを作ったかを話してくれた。Super Cutsはアメリカにおける非常に大きなフランチャイズだ。彼はドラッグをやっていた、そして、酒を飲んでいた。ある日彼は酒場にいて、人生に絶望していた。彼は37歳だった。誰かが言った。

「ちょっといいかい? 信じないだろうけど、私の友達と同じようにやったらどうだろう。美容専門学校に行ったらどうだ」

ちなみにこれは本当の話だ。「友達は美容専門学校に行って、素晴らしい職を手に入れてその仕事が気に入っているんだ」そこでSuper Cutsの創業者になる予定の男、ジムに言った。

「よしやろう。どうせ失うものなどない」

美容専門学校に行くことに決めて、実際に行った。彼みたいな人は他にいなかった。同じ年代の者は他にいなかった。身長が1メートル90センチもあるのは美容専門学校で彼一人だった。彼は勉強した。していることに夢中になった。しかし本当に熟達したわけではない。そして卒業が近づいた。美容専門学校のオーナーがジムの所に来て言った。そして言った。



「ちょっとドライブに付き合わないか。こいよ」

そこで車に乗り込んだ。自分が所有しているものをジムに見せて回った。彼は美容専門学校のオーナーだった。湾の向こう側にも美容専門学校を所有していた。ブティックを所有していた。サロンを所有していた。自分の「帝国」を見せて回った。そして言った。

「私は機械工だった。ある日ある人が来て言った。『美容専門学校に行こうと思ったことはないか?』そして私は行ったのだ。この業界のビジネスチャンスは信じられないくらいだ。どんな間抜けでもできるんだ」

ジムは次のように言った。

 

「その瞬間私はひらめいた。チャンスを見た。かつて誰もしたことがないことをするチャンスを見た。経験がない者に髪の切り方を教えて、消費者は低料金をオーナーは非常に高い利益を得る方法を教えるチャンスだ。そしてシステムの構築を始めた。それがSuper Cutsシステムになったのだ」

素人でも運営できる美容室

システムに沿って髪を切る方法だ。彼はビジネスをフランチャイズ化して100のフランチャイズを売った。フランチャイズを買ったのは床屋ではなく会計士のような人たちだった。美容師ではなかった。まったく無経験の素人の手でビジネスが機能したからだ。低コスト、高インパクト、完全にプロフェッショナルで予測可能な散髪が男でも女でもたったの7ドル。

元々は、予測不能なのに18ドルか20ドルを取っている世界でだ。しかも正確に15分間でできるのだ。そんなの不可能だと言われるだろうか? 彼らはやったのだ。すぐに使えるシステムを作ったのだ。彼は自分で髪を切ったのだろうか? 1度も切らなかった。チャンスを見たからこのシステムを創ったのだ。

あなたのビジネスにおけるチャンスは何か?

ここであなたにしたい質問は「あなたのビジネスにおけるチャンスは何か?」だ。事業の目標は、その質問に対する答えを反映したものでなくてはならない。チャンスに関する質問へのあなたの回答は、あなたの顧客のためのチャンスとしてだけではなく、すべての人たちのためのチャンスともなるだろう。

Super Cutsの場合のチャンスは、たいした経験のない初心者でも好きなことをして、働いて金を稼げるということだった。彼らは、髪を切ってプロフェッショナルな結果を出す方法を人々に教えたのだ。集中的なトレーニングプログラムを行い、たったの2週間しかかからない。それで成功したか? 疑問の余地がない。現在では、アメリカに3000を超えるSuper Cutsがあるはずだ。その全員が、大半のビジネスオーナーより儲けている。アイデアはシンプルだ。あなたのビジネスの背後にあるアイデアはどんなものか? 問題はそれなのだ。

顧客のフラストレーションは何か?

あなたに質問をしたい。今度は従業員の立場からの質問だ。あなたのビジネスで働く人たちの主要なフラストレーションは何か? 何が主要フラストレーションなのかが分かっているだろうか? あなたのビジネスで従業員をいらいらさせる要因は何か? 言っていることが分かるだろうか?

4つのタイプのフラストレーションを解決する

書きとめたフラストレーションの全部を見てみれば、これらのフラストレーションが視覚的現実、感情的現実、機能的現実、財務的現実のいずれかに結びついているのが分かるだろう。視覚的な主要フラストレーション、感情的な主要フラストレーション、機能的な主要フラストレーション、財務的な主要フラストレーションだ。

するとそれらの正体が見えてきて、絞り込むことができるだろう。絞り込んでいくと、主要フラストレーションが見えてくるはずだ。あなたのビジネスに関わる人が毎日あなたのところやあなたの業界において経験する主要フラストレーションが見えてくるはずだ。それが差別化のチャンスにつながるのだ。これらの主要フラストレーションをどう根絶するかを考えて差別化するのだ。ビジネスにおける視覚的フラストレーション、感情的フラストレーション、機能的フラストレーション、財務的フラストレーションをどう根絶するかを考えるのだ。

あなたのビジネスに接したときにそれらフラストレーションとは真逆のことを経験するようにするのだ。だからこそ、あなたと接する人たちはそれを特別であると考えるのだ。

人を魅了する事業にする

フラストレーションを根絶できれば、例えば、機械工は他の修理工場よりあなたの修理工場で働きたいと考えるはずだ。列を成してあなたの前にならぶだろう。例えば、弁護士は他の弁護士事務所よりあなたの弁護士事務所で働きたいと考えるはずだ。彼らは列を成してあなたの前に並ぶだろう。あなたが意図的に選び出した顧客 の心の中でそのポジションを確立するために何するべきだろうか?

彼らが聞きたいことを言えるようにビジネスを組織的に運営するためには、ビジネスにおいて何をする必要があるだろうか? それは何度も何度も繰り返すことができるのだ。それが、あなたの事業目標の背後にあるアイデアである。あなたはどこへ向かうのか?

あなたのビジネスは最終的に成し遂げられた時点でどのようなものになっているのだろう?それがあなたの事業目標になる。言い換えれば起業家的な機会なのだ。

それがわかれば、あなたのビジネスに違いを付けるために、もっと早く何かをしなければならないかも知れない。もしくは、もっと簡単に、もっと安価に、上手く、もっと繊細に行なわなければならないかも知れない。

何をやるべきかは、あなたの事業目標によって決まるのだ。

何らかの方法で、あなたのビジネスは定量化できる必要がある。より優れていること、より安価であること、より質が高いこと、このようなことが定量化できる必要があるのだ。

そうすれば人々はその違いが理解できるからだ。

素晴らしいサービスも仕組み化されなければ意味がない

あなたは素晴らしいサービスのホテルやレストランに行ったことがあるかも知れない。従業員はこの上なく素晴らしいことをするかもしれない。しかし、その時の自由裁量に基づいて行うならば、意味がない。あなたのビジネスがそれを一貫して行えないなら、それをやり抜く術を持っていないなら何の意味もない。素晴らしいビジネスが築かれることがない。他者から差別化する独自のものを築くことが出来ない。繰り返すことができないのだから、顧客を繰り返し満足させる能力は得られないのだ。

繰り返し素晴らしいサービスを出来るか?

かつて、素晴らしいバーテンダーがいた。その素晴らしいバーテンダーは、顧客サービスこそ自分のすることだと心に決めた。そこで彼は他の人かがしていることの真似をして「マイケル、飲み物でもどうかい?」と言った。そして私は「もらうよ、アントワーヌ」と返した。「よし、マイケル、何でもいいぞ。何がいい?」「Beck’sビールはあるか?」「それはないんだ。他に何が欲しい? 他の何かだ」、このようなやり取りの後、とうとう何をもらうかが決まった。とうとう決まったのだ。そして受け取った。

座って飲んだ。彼が雇ったすてきな若い女性が、時々やってきて飲み物をつぎ足してくれた。彼は本当に仕事にいそしんだ。

次に来店して、腰を下ろしたとき、私はくつろいで飲み物を待った。すてきな若い女性が来るのを待った。

しかし彼女の姿はなかった。私は言った。「アントワーヌ、この間、飲み物を運んでくれた若い女性はどうした?」「辞めたよ」「別の人に変えたのか?」「いいや、彼女は役に立つ以上に面倒を起こすものでね」「バーで何があったのだ、アントワーヌ?」「飲むかね?」「もらうよ」



3回目に行ったときのことだ。すると「コーヒーはどうかね?」ときた。

私が言いたいことがわかるだろうか。

アントワーヌは素晴らしいバーテンダーだった。そして、彼が雇った彼女も素晴らしいサービスをしていた。しかし、続かなかった。繰り返すことが出来なかったのだ。繰り返して実行する能力がないなら、どうなるだろう。顧客はもう戻ってこない。

卓越した事業の作り方

卓越した起業家はどのようにして卓越したビジネスを築くのか? まさにいま述べた方法で築くのだ。自分の顧客は誰か? 従業員は誰か? 供給元は誰か? 貸主は誰か?何をすれば、彼らのフラストレーションは癒やされるのか?何をすれば考えてもみなかった満足を与えることができるだろうか? それを考えてみるのだ。それこそがビジネスの創造だ。ビジネスは商品なのだ。それ以外の何物でもない。事業それ自体が商品であり、それ以外の何物でもない。

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