内発的動機づけとは?高める方法や例についてご紹介します。



清水直樹
今日は内発的動機づけについて、その意味や外発的動機づけとの違い、具体例、高める方法などについて解説します。

 

内発的動機づけとは?

内発的動機づけとは、内的報酬によって引き起こされる行動を指します。つまり、ある行動が自分にとって自然に満足できるものであるため、その行動を起こす、というわけです。これは何か外的報酬を得るため、あるいは罰を避けるために行動を起こす動機づけとは異なります。

内発的動機づけと外発的動機づけ

内発的動機づけを理解するために、反対語である外発的動機づけとの比較をしてみましょう。

内発的動機付けは内面から、外発的動機付けは外面から生じます。内発的動機付けがあるときは、自分が楽しいから、個人的な満足が得られるからという理由だけで活動に従事します。

外発的動機付けの場合、あなたは外的な報酬を得るために何かをします。これは、お金などの見返りを得ることや、職を失うなどのトラブルを回避することを意味します。

動機 目標
内発的 その活動がやりがいがあるから、楽しいから、満足できるからやっている。 目標は内面から生まれ、その成果は自律性、自己実現性といった基本的な心理的欲求を満たすものになる。
外発的 お金やモノなど、外的な見返りを得るために活動をする。 目標は結果に焦点を当てたもので、基本的な心理的欲求を満たすものではない。お金、名声、権力、結果の回避など、外的な利益を伴うもの。

 

たとえば、あなたはこの記事を読んでいただいているわけですが、どのような動機でこの記事にたどり着きましたか?

上司から何か指示されたから情報を探していた、または何かレポートを書くのに必要だから検索した、というのであれば、金銭的な報酬を得たり、罰を避けるために行動したことになります。これは外発的動機づけによる行動になります。

一方、単純に好奇心から記事が目に留まった、検索してみた、ということであれば、それは内発的動機づけによる行動になるでしょう。

 

なぜ内発的動機づけが重要か?

この記事は経営者向けに書いていますので、経営者にとって、なぜ内発的動機づけを理解することが大切かを考えてみましょう。

経営者としては、会社の目標に向けて、社員に行動してほしいと思っていると思います。そのために、目標が達成出来たらボーナスを上げたり、昇格させたりするわけです。これらは外発的動機づけをすることによって、社員に働いてもらう試みです。通常は人事制度においてこのような外発的動機づけを行います。

しかし、心理学上、外発的動機づけだけでは、必ずしも人は最大限のパフォーマンスを発揮しないとされています。

 

社員に期待以上の仕事をしてもらうには内発的動機づけが必要

一般に、社長が社員に求めるのは、”期待されるレベルを超えた働きぶり”です。”期待されるレベルを超えた働き”をする社員は、エンゲージメントが高いとされます。エンゲージメントが高い社員が増えるということは、多くの社員が顧客の期待を超えようとして行動する、または上司から言われた以上の働きをしようとするので、当然ながら業績に良い影響をもたらします。

給与やボーナスなどの金銭的、物的報酬による外発的動機づけは、社員の不満を解消することにはつながります。それによって、仕事の手抜きや怠慢は避けることかも知れません。

しかし、その効果は、「期待されるレベル」までです。

それ以上の働きを期待するには、内発的動機づけが必要となります。

内発的動機づけがなされると、”そうするのが好きだから、そうしたいと思うから喜んで期待を超える仕事をしよう”とします。

これは経営者にとっても、社員にとっても望ましい状態と言えるでしょう。

 

内発的動機づけの具体例

次に、内発的動機づけにはどんな種類があるのか、例を見てみましょう。

内発的動機①:達成したい

タスクまたはプロジェクトを成功裏に達成することを切望することです。この動機がある人は、自発性があり、自ら課題を探し、知識やスキルセットを成長する機会を探します。一般に、ハイパフォーマンスを発揮するアスリート、経営者、起業家、科学者は達成に動機付けられていますが、その他の職業でも達成動機を持つ人はいます。

たとえば、単に健康維持のためにジムに通い始めた人がいたとしましょう。最初はちょっと汗を流すくらいだったものが、徐々にウェイトトレーニングにはまる人がいます。こういう人は、もっと重い重量を挙げたい、もっと筋肉を付けたい、という内面的な達成動機に動かされています。

 

内発的動機②独立性(自主性)

自分の仕事やプロジェクトに責任を持ち、自主的に行動することを楽しんでいる人たちは、この動機を持っています。いわゆるフリーランサーと呼ばれる人たちや、研究者、起業家、職人などは、自分の判断で生きたい、働きたいという気持ちが強く、独立性(自主性)によって動機付けられていることがよくあります。

 

内発的動機③尊敬や名声

人から尊敬されたり、称賛されて名声がとどろくことに動機づけされる人もいます。彼らはその動機を実現するために、自分の能力を高めたり、発言力を高めようとする傾向にあります。特徴としては、彼らが持っている知識や能力を他の人々に共有するために無償でも周囲を手伝うことが挙げられます。著者、政治家、職人的な起業家もこの動機づけに動かされることが多いようです。

 

内発的動機④権威(権力)

この動機を持つ人は、他者に影響を与え、導くことによって満足を得ようとします。周囲との関係性において、公式にしろ、非公式にしろ権威や権力を持ち、他の人を管理したり、プロジェクトを主導したり、自分で意思決定をすることを好んだり、より大きな組織を率いることを望みます。

自らリーダーとして手を上げる人や、昇進意欲が高い人などがこの動機を持っている傾向にあります。

 

内発的動機⑤人との交流

人と交流する仕事に満足を見出す人たちもいます。また、人に貢献をすることも彼らにとっては満足を満たすものになります。そのため、進んでチームのために働いたり、ボランティア活動に参加する傾向も強いと言えます。



病院、介護、ホテル、飲食店、非営利団体などで働く人たちは、この動機を持っていることが多いです。

反対に、リモートワークで自宅で自分一人で仕事をしたり、一人でビジネスを新しく始めたりすることは、魅力的ではないと感じます。

 

内発的動機⑥安定性

安定した収入、社会保障や、心理的、身体的安全性を望む人たちもいます。彼らにとっては、職場環境や福利厚生、給与制度、会社の信頼度などが非常に大事になります。

彼らは自分の立場を失うことを恐れる傾向にあり、それが理由で、あまり目立った活動や言動をしないようにすることもあります。公務員や大手企業にはこういった動機で働いている人が多いかもしれません。

 

内発的動機⑦公平さ

何よりも自分が公平に扱われることに動機づけされます。それは会社の中で評価であったり、社会的な立場であったりします。公平さを求めるために会社と闘うことも辞さないことがあります。

 

内発的動機を高めるには?

以上見てきた通り、内発的動機にはいくつかの種類があります。全ての人は一定程度、すべての動機づけを持っていると考えられますが、人によってどの動機づけに強く作用されるかが異なるでしょう。

たとえば、「①達成」という動機付けが強い人であっても、「⑤人との交流」を全く求めない人はまずいないでしょう。

基本的に「⑥安定性」を求める人であっても、何かを「①達成」したときには満足感を覚えるでしょう。

こんな感じで強弱はあれ、すべての人は一定程度、すべての内発的動機の要因を持っていると言えます。

では、各内発的動機について、その動機付けを高め、彼らがさらにパフォーマンスを発揮できるようにするにはどうすればいいでしょうか。

以下にいくつかのヒントをご紹介していきます。

内発的動機の要因 高めるには?
達成
  • 高い目標を設定させる
  • 目標への階段をつくり、こまめに達成感を味わえる仕組みを創る
独立性(自主性)
  • 指示を最小限にし、やり方を任せる
  • 独立開業制度を設ける
尊敬や名声
  • 表彰制度を創る
  • プレゼンや発表の機会を創る
権威(権力)
  • (管理を怠らずに)大きな仕事を任せる
人との交流
  • チームワークが求められる仕事に従事してもらう
  • 顧客と直接接する仕事に従事してもらう
安定性
  • 給与制度や福利厚生などの説明を怠らずに行う
  • 職場の心理的、身体的安全性を高める

 

公平さ
  • 透明性のある人事制度を創る

 

内発的動機を活用する

以上、内的動機づけの種類などをご紹介してきましたが、実際に内発的動機を人生や仕事に活かすことが大切です。

自分の内面的動機づけを知る

自分が何によって動機づけられるのかを理解することは大切です。それによって、自分が最大のパフォーマンスを発揮できる働き方や環境が変わってくるからです。

たとえば、私の場合であれば、上記のうち「②独立性(自主性」が最も強い動機付けであり、二番目は「①達成」です。

この動機付け要因を活用するには、

  • 組織に雇われず自分でビジネスを始める
  • 顧客に振り回されないように自分の哲学や相手にしたい顧客像を明確にする
  • 長期的な目標を立て、定期的に見直す
  • 短期的な目標を立て、達成感を得る機会を増やす

等を意識して働くことが大切になります。

 

管理職は部下の内的動機づけを把握すること

社長をはじめとして、部下をもつ管理職の方々は、それぞれの部下がどんな内発的動機を持っているかをある程度把握しておくと良いでしょう。

それによって任せる仕事を調整したり、コミュニケーション方法を変えたリすることが出来ます。

 

内発的動機を高める仕組みづくりなら

以上、内発的動機づけについてご紹介をしてきました。なお、「仕組み経営」では、内発的動機を高めるための人事の仕組みづくりから、コミュニケーション(会議システム)など、会社の仕組みづくりをお手伝いしています。詳しくは以下の体験ウェブセミナーからぜひご覧ください。

>仕組み化ガイドブック:企業は人なりは嘘?

仕組み化ガイドブック:企業は人なりは嘘?

人依存の経営スタイルから脱却し、仕組みで成長する会社するための「仕組み化ガイドブック」をプレゼント中。

CTR IMG