金太郎飴とは?ビジネスでの意味と一貫したブランドの作り方

  • 2019年4月21日
  • 2026年9月16日
  • その他


清水直樹
金太郎飴は、どこを切っても同じ金太郎の絵柄が出てくる飴です。これをビジネスの組織に例えてみると、”どこをとってもその会社らしい”ということになります。スターバックス、ディズニー、アップルなど偉大なビジネスは”どこを取ってもその会社らしい”という特徴がありますね。ここではそれに倣って中小企業がブランド化するための仕組みをご紹介します。

 

金太郎飴とは?ビジネスでの意味

金太郎飴とは、棒状の飴のどこを切っても、切り口に同じ金太郎の顔が出てくるお菓子のことです。ビジネスではこの性質をたとえに使い、「どこを見ても同じものが出てくる状態」を指します。

 

金太郎飴はことわざではない

「金太郎飴」で検索すると、ことわざや故事成語として意味を調べている方が多いようです。ただ、これはことわざではありません。実在するお菓子の作り方から生まれた比喩表現です。

同じ意味で「金太郎飴のような」「金太郎飴的な」「金太郎飴状態」といった言い方もされます。どれも指している中身は同じです。

 

このたとえは、良い意味と悪い意味の両方で使われる

注意しておきたいのは、この比喩が正反対の二つの意味で使われることです。

悪い意味で使うときは「金太郎飴のような社員ばかりだ」「金太郎飴的な商品」のように、個性がない、どれも似たり寄ったりだ、という批判になります。

良い意味で使うときは「どの店舗に行っても同じ品質」「誰が対応しても同じ体験」という、一貫性への評価になります。

この記事で扱うのは後者です。ただし、この二つは紙一重でもあります。どこで分かれるのかは、記事の後半で扱います。

 

ビジネスにおける金太郎飴理論とは?

アップルやディズニー、スターバックスなど、偉大なブランドを作った会社を見てみましょう。このような会社の共通点は、

どこを取ってもその会社らしい

ということです。

いつでもどこでも同じ体験が出来る

地元のスタバに行こうが、離れた都市のスタバに行こうが、いつも同じ体験をすることが出来ます。だからこそ私たちは、ちょっと高くてもスタバに行こうとするわけです。なお、スターバックスにマニュアルはないと言われる理由については別の記事で詳しく扱っています。

人は、自分が気に入った同じ体験を届けてくれる会社の商品やサービスを使います。それがブランドへと繋がっていきます。

中小企業がそういった会社の真似をするためには、会社の仕組みに一貫性が必要になります。

仕組みの一貫性こそがブランドを生み出す

仕組みに一貫性がある会社ほど、外部から見た時に“スゴイ会社”と見られる傾向があります。

  • どこの店舗に行っても同じ体験が出来る
  • 誰に対応してもらっても同じ体験が出来る
  • いつお願いしても同じ体験が出来る

というように、どこをとっても、“その会社らしい”ことを顧客や社員が感じることが出来、多くの人を魅了する会社になります。ディズニーを運営するオリエンタルランドは、その代表例と言えます。

これを私たちは金太郎飴理論と呼んでいます。金太郎飴のように、その会社をどこから切っても、”自社らしい”ということが、ブランドにつながります。

 

成功している会社は共通している

トルストイの名作小説のひとつアンナ・カレーニナの冒頭にこんな言葉があります。

「幸せな家族はいずれも似通っている。だが、不幸な家族にはそれぞれの不幸な形がある」

これの意味するところは、幸せな結婚生活を送るには、多くの条件をクリアしないといけないということ。

例えば、

  • 惹かれあっていること
  • 金銭感覚の一致
  • 子育てに関する価値観の一致
  • 親戚関係の相性が良いこと

などなどです。

これらどれかひとつでも不整合が見られると、そこから結婚生活が破たんしていきます。

ひとつのホツレが全てを壊す

会社経営もこれと全く同じです。価値の高いブランドを作ろうと思ったら、様々な要素を整合させていかなければならず、どれかひとつでも辻褄が合わないことがあると、全体の歯車が狂ってしまいます。

たとえば、評判の良いレストランに行ったとします。店内の雰囲気も良い、料理も評判通り、スタッフの対応も素晴らしい。しかし、会計の時になって、ぞんざいな対応がされた、という体験をすれば、そこが原因になり、全体の印象を一気に落としてしまいます。

金太郎飴型のビジネスを創るには?

金太郎飴型ビジネスによくある批判としては、マニュアル型対応ではいまの時代、生き残れない、というものです。これはチェーン店などの多店舗展開している会社に良くある批判です。


 

金太郎飴方式とは?なぜ批判されるのか

「金太郎飴方式」という言い方もあります。同じものを、同じ品質で、たくさん作る進め方のことです。人材育成や商品開発の文脈では、たいてい批判として使われます。「金太郎飴方式の研修」と言えば、全員に同じ内容を流し込むだけの研修、という意味になります。

この批判は、半分は当たっています。当たっているのは手順を揃えたときです。

一人ひとりの動き方まで細かく決めてしまえば、たしかに同じような社員ができます。そして目の前のお客様が想定と少し違う状況だったとき、誰も対応できなくなります。

 

揃えるのは「手順」ではなく「結果」

一貫したブランドを持つ会社を実際に見てみると、社員は決して画一的ではありません。むしろ個性的な人が多いくらいです。では何が揃っているのかというと、判断のよりどころと、顧客に対する約束の中身です。

たとえば受付の仕事を、次の二つの書き方で比べてみてください。

手順で書いた場合……電話に応える。来訪者に挨拶する。伝言する。

結果で書いた場合……自社のブランドに沿うよう、会社にコンタクトしてくる人たちとのやり取りをうまく調整し、利害関係者との関係構築、関係維持をアシストする。

上の書き方では、書かれていない場面が来たときに動けません。下の書き方なら、何のためにその仕事があるのかが分かっているので、初めての場面でも判断できます。こうした書き方は職務記述書に落とし込んでおくと社内で共有できます。

つまり、手順を揃えると金太郎飴のような社員ができ、結果を揃えると金太郎飴のようなブランドができるということです。冒頭で「良い意味と悪い意味は紙一重」と書いたのは、この違いのことです。

 

ありふれたやり方を複製しても意味がない

もう一つ気をつけたいのは、揃えること自体が目的になってしまう場合です。

他社と同じような仕事のやり方をそのまま再現可能にしても、その会社ならではの魅力が無ければ、顧客にとっては選択肢の一つに過ぎません。ありふれた仕事のやり方を複製するだけでは、仕組み化にかけた手間のほうが大きくなってしまいます。

先に決めるべきなのは、揃え方ではなく何を揃えるかです。自社が顧客に対して何を約束しているのか。自社の独自性がどこにあるのか。ここが決まっていれば、揃えるべき結果も自然に決まります。決まっていない状態で仕組みだけ作ると、平凡なやり方が正確に繰り返される会社ができあがります。

 

金太郎飴型ビジネス=マニュアル化、ではない

しかし、金太郎飴型ビジネス=マニュアル化ではありません。

作業マニュアルをばっちり作って成功している会社もあれば、細かいマニュアルがなくても成功している会社もあります。

なぜ彼らが成功しているかというと、マニュアルがあるから、無いから、ではなく、彼らの価値観に合わせて社内の仕組みを創り、自社らしさを保っているからなのです。マニュアルは自社らしさを保つための道具のひとつであって、目的ではありません。

成功をもたらすものは何だろうか?答えは人材マネジメントの在り方だけでなく、価値観を重視する姿勢、さらには価値観、戦略、人材の整合を取ることである。
Charles O‘Reilly スタンフォード大学教授 「隠れた人材価値」著者

 

金太郎飴型ビジネスを創るには仕組み化

では実際にはどうすれば、アップルやスターバックスなどのブランドが出来るのでしょうか?

やるべきこととしては次のようなことが挙げられます。

  1. 顧客にどんな体験をしてもらいたいか?を明確にする……ここが空欄のまま先に進むと、揃える対象が決まりません。言葉にするときは「丁寧な対応」ではなく、お客様が帰り際に何と言っていたら成功なのか、というところまで降ろします。判断のよりどころとしてはコアバリューが使えます。
  2. すべての接点で顧客に同じ感情を持ってもらうための仕組みを作る……接点を書き出すところから始めます。問い合わせ、見積もり、納品、請求、アフターフォロー。一つでも抜けていると、そこが先ほどのレストランの会計と同じ場所になります。
  3. 仕組みに基づいて働けるよう社員教育を行う……教えるのは手順だけではありません。なぜその手順なのかを一緒に伝えます。理由を知っている人は、書かれていない場面でも判断できます。
  4. 仕組みを改善し続ける……現場で見つかったずれを拾い上げ、直した内容を全員に戻します。この往復が止まった時点で、仕組みは書類になります。

優れたブランドを持つ会社では、これらが非常に高度なレベルで実践されています。実際に行うには、時間も労力もかかりますが、そのリターンは非常に大きいものです。

 

金太郎飴に関するよくある質問

金太郎飴はことわざですか?

ことわざでも故事成語でもありません。棒状の飴のどこを切っても同じ顔が出てくるという、実在するお菓子の性質から生まれた比喩表現です。

「金太郎飴のような会社」は褒め言葉ですか?

文脈によって変わります。社員や商品について言うときは、個性がないという批判の意味で使われることがほとんどです。一方、顧客体験や品質について言うときは、どこでも同じものが届くという評価になります。社外に向けて使うときは、誤解されない言い方を選んだほうが無難です。

社員を金太郎飴のようにするという話ではないのですか?

違います。揃えるのは社員の振る舞いではなく、顧客が受け取る結果のほうです。手順まで揃えてしまうと、想定していない場面で誰も動けない会社になります。

マニュアルは作ったほうがいいのですか?

作った会社も、作らずに成功した会社もあります。大事なのはマニュアルの有無ではなく、自社が何を約束しているのかが社員に共有されているかどうかです。ただ、人数が増えてくると口頭での共有は追いつかなくなるので、書き残しておくほうが現実的です。

中小企業でも金太郎飴型のビジネスは作れますか?

作れます。むしろ規模が小さいうちのほうが、社長の考え方が全員に直接伝わるぶん有利です。店舗や拠点が増えてから揃えようとすると、それまでのやり方が場所ごとに固まっているので、直す手間が大きくなります。

何から始めればいいですか?

顧客との接点を紙に書き出すところからです。最初の問い合わせから、その後のフォローまでを一列に並べてみてください。そのうち、担当者によって対応が変わっている箇所が一つは見つかります。そこが最初に手をつける場所です。


 

まとめ

金太郎飴とは、どこを切っても同じ顔が出てくる飴のことです。ビジネスでは、どこを見ても自社らしさが感じられる状態のたとえとして使われます。

ただし「金太郎飴方式」という言い方が批判として使われるとおり、揃え方を間違えると、個性のない会社ができあがります。分かれ目は一つで、手順を揃えているのか、結果を揃えているのかという点です。

手順を揃えれば金太郎飴のような社員ができ、結果を揃えれば金太郎飴のようなブランドができます。他社との違いをどこに置くのかを先に決めてから、仕組みづくりに入ってください。

 

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