能力を未来進行形でとらえる、

「能力を未来進行形でとらえる」とはどういう意味か?



清水直樹
今日は「能力を未来進行形でとらえる」という概念について解説します。

能力を未来進行形でとらえるとは?

「能力を未来進行形でとらえる」とは、現在の自分の能力で「できる」「できない」を判断せず、未来のある一点で達成すると決定し、その実現に向けて現在の自分の能力を日々高め、努力を絶えず行うことを指します。

これは京セラ創業者稲盛氏が掲げたフィロソフィに書かれている言葉ですが、経営者やこれから事業を立ち上げようとする方にとっても非常に重要な考え方ですので、以下に詳しくご紹介していきましょう。

京セラフィロソフィにどう書かれているか?

以下は京セラフィロソフィから引用です。

新たな目標を立てるときは、あえて自分の能力以上のものを設定しなければなりません。今はとてもできそうもないと思われる高い目標を、未来の一点で達成するということを決めてしまうのです。そして、その一点にターゲットを合わせ、現在の自分の能力を、その目標に対応できるようになるまで高める方法を考えるのです。

現在の能力をもって、できる、できないを言うことは誰でもすることです。しかし、それでは新しいことや、より高い目標を達成することなどできるはずはありません。

今できないものをなんとしても成し遂げようとすることからしか高い目標を達成することはできないのです。

なぜ能力を未来進行形でとらえる、という考えに至ったのか?

京セラを創業したばかりの当時、名古屋には多数の陶器メーカーが存在していたため、稲盛氏はそこへ自社の製品を売り込むべく足を運びました。しかし、既に大手陶器メーカーから製品を仕入れていたお客様から新規の注文を受けることは難しく、大手メーカーが作りたくない難易度の高い製品の制作を依頼されることが多かったといいます。

それに対し、資金力や技術力に乏しかった稲盛氏は、「それはムリです」と断ることはできず、「なんとかしましょう。やりようによってはできるかもしれません」と言わざるを得なかったと言っています。

その結果、帰社後にスタッフに試作品の制作を依頼する際には、「私はできると言ってきた。これを今からがんばってやろうと思う」と語りました。

それに対し、スタッフからは「それはムリです」という反応が返ってきました。それは事実、試作品の制作は困難であり、未経験のものだったと稲盛氏は認めています。しかし、その困難さをそのまま受け入れることはできず、「我々の能力というのは、未来進行形でとらえようやないか」という考え方を提唱したと述べています。

ウソか方便か?

その際に、スタッフからは「稲盛さん、ウソをついて注文を受けてきたのでは?」と指摘されたそうです。しかしそれに対し、稲盛氏は「私の能力というのは未来には、これが可能になるはずだ。ウソというのは、試作品が完成しなかったときに『ウソをついた』と言える。試作品ができあがったらウソではない」と反論しました。

稲盛氏は「ウソ」ではなく「方便」を使っていたと語っています。つまり、3ヵ月後に試作品を持ってくることができなかったときには、「ウソをついた」と言われても「申し訳ない」と謝るべきだが、それまでは「方便」であると主張したそうです。

これについては、社内で頻繁に議論が交わされ、毎日が難易度の高い挑戦に満ちていたと稲盛氏は振り返っています。その中で唯一信じられることは、「自分の能力を未来進行形でとらえる」という考えだったと述べています。

自分の無限の可能性を信じる

能力を未来進行形でとらえるには、自分の能力は無限に成長していくものだと信じることが欠かせません。そう考えなければ、未来の約束などできませんからね。

私たち人間は、日々、未来に向かって進化し続ける存在なのです。自己の能力は、未来へと向かうにつれて増大していくという事実を、私たちの人生の根幹に置いて、積極的に人生を設計することが求められています。

だからこそ、今現在で考えると難しく思えることでも、5年後には十分に達成可能となるのです。この進歩を信じることで、ビジョンの実現に進んでいくことが出来ます。

 

能力を未来進行形でとらえて成功した例

能力を未来進行形でとらえる、という言葉は稲盛氏が使った言葉ですが、成功した起業家はほぼ例外なくこの考え方を持っています。すぐに思いつく例として、ビルゲイツ氏がいます。

まだ無いものを売ったビルゲイツ

1980年、IBMがパーソナルコンピューターの開発を計画し、オペレーティングシステム(OS)を求めてマイクロソフトに接触した時、ビル・ゲイツはまだそのOSを開発していませんでした。しかし、彼はIBMに対してOSを提供できると約束しました。その後彼はシアトル・コンピュータ・プロダクツ社から既存のOS(QDOS)を25,000ドルで購入し、それをIBM PCのOSとしてIBMに提供しました。これが後のMS-DOSとなり、そして更にWindowsとなります。

ビル・ゲイツがこの契約を果たすためには、現在の能力を超える行動をとらなければなりませんでした。しかし、彼は未来の一点、つまりIBMにOSを提供するという目標を設定し、そのための手段を考えました。その結果、彼はパーソナルコンピューター業界をリードする企業の地位を確立することができました。

これはマイクロソフト創業の物語として、さらにはコンピューター業界を一変させた伝説的な交渉として、つとに有名な話です。ビルゲイツはある意味、IBMに嘘をついて契約した、と思われなくもないですが、稲盛氏の言葉を借りれば、これは方便なのです。ゲイツ氏はOSを手に入れることが出来る、と確信していたから契約を先にしてしまったのです。

作る前に売った

また、別の例でこんなエピソードもあります。非常に有名になった某英会話教材の会社の話です。その会社の創業者は英語の教材を販売しようと思っていましたが、彼がまず行ったのは、作る前に売る、ということでした。

彼は教材がまだ開発していないときに、新聞広告に教材の広告を出しました。そこで非常に多くの問い合わせや申し込みを受けることが出来ました。そこで初めて、「この教材にはニーズがある」と思い、急いで教材を開発して購入者に発送したのです。

これもこの教材は必ず開発できるという未来時点での能力を確信していたからこそできた芸当です。もし、教材が開発出来たら広告を出そう、と考えていたら、いつまでたっても完成しなかったかもしれません。

能力を未来進行形でとらえるためには?

では能力を未来進行形でとらえるために必要なことをまとめていきましょう。

1. 自社(自分)の未来像を描く

成功への第一歩は、明確な未来像を描くことです。自社(または自分自身)がどのようなビジネスを行い、どのような商品やサービスを提供し、どんな能力を持つ社員を育てるのかを具体的にイメージしましょう。ビジョンは、理想の未来を示す地図のようなものであり、これによって道筋が定まります。



2. 未来像に向けた行動を行う

一度未来像を明確にしたら、それに向けた行動を起こす必要があります。

私たち仕組み経営では、いつもIBM初代社長のトーマスワトソンの話をご紹介しています。

IBM が今のような会社になったのには、3 つの特別な理由がある。

一つ目は最初から、私たちの会社は最終的にどんな会社になるのか、という明確な青写真を持っていたこと。

二つ目は、そんな会社であるならば、どんな風に行動すべきかを自問自答していたこと。

三つ目は、私たちは最初から、既に思い描いた会社になっているかのように振舞っていたことだ。

トーマス・ワトソンの言葉にもあるように、まずは明確な青写真を持つことです。その青写真に基づいて、毎日自問自答し、ビジョンに向けた行動を積極的に取り組みましょう。成功するためには、未来の自分を想定し、その未来の自分になっているかのように振る舞うことが重要です。

3. チャンスが来たら、それにイエスと言う

未来に向けて行動を進めていくと、どこかのタイミングでチャンスが現れることがあります。たとえば、一件も実績が無かったとしても、「うちの会社はこういうことが出来ます」と触れ回っていれば、何かのタイミングで、実際に依頼が来るわけです。逆に、「理想像はあくまで理想。いまはこんなことが出来ないから」といって、今現在出来ることしか周りに言っていなければ、それ以上の依頼が来ることはありません。

4. 実現のための努力

チャンスを掴んだ後は、後に引くことはできません。自分の可能性を信じて、その実現のために全力を尽くしましょう。自らを追い詰めることで、成長の可能性が最大限に発揮されます。成功するためには、努力と忍耐が欠かせません。自分の限界に挑戦し、困難を乗り越えることで、未来進行形での成功を実現することができるでしょう。

 

まとめ

以上、能力を未来進行形でとらえる、について解説しました。これは成長を続ける会社を創りたい経営者にとっては欠かせない考え方だと思います。ぜひ参考にされてください。

なお、仕組み経営では、会社のビジョンの確立からそれを実現するための仕組みづくりまで一貫してご支援しております。詳しくは以下から仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。

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